﹁ 船 進 む ﹂ — 南回り世界一周の航海をして わが思いを、五七五の川柳=一行詩の世界に託す 1 はじめに 勧奨退職の募集に応じ2年前に58歳で35年の高校教員生活 を終えました。3が月の非常勤がありましたが、今はヒマな自由 人です。 そんな私が還暦を前にして、ピースボートの船で世界一周をし ました。私にとって一つの決意であり、ある意味で100日を超 える修行生活でありました。今これを思い出しつつ﹁川柳=一行 詩﹂ ? として冊子にまとめています。これを作るのに思い当たっ たのは、船内で知り合った人生の大先輩であられる陶芸家北口氏 への謝意の意味があります。自由闊達に生きることを見せていた だきました。 寄港地: 横浜、 神戸、 コタキナバル ︵マレーシア︶、 シンガ ポール、ポートルイス︵モーリシャス︶、トマアシナ︵マダガスカ ル︶ 、 マプト ︵モザンビーク︶、 ケープタウン ︵南アフリカ︶、 ウ オルスビスベイ︵ナビミア︶、リオデジャネイロ︵ブラジル︶、ブ エノスアイレス ︵アルゼンチン︶、 モンテビデオ ︵ウルグアイ︶、 ウシュアイア︵アルゼンチン︶、ヴァルパライソ︵チリ︶、カヤオ ︵ペルー︶ 、ラパヌイ︵イースター島、チリ︶、パペーテ︵フランス 領タヒチ︶ 、ボラボラ︵タヒチにある小島︶、ホニアラ︵ソロモン 諸島︶ 2014年11月21日 ︵金︶ より2015年3月5日 ︵木︶ までの105日間 ピースボート、ジャパングレイス、オーシャンドリーム号 小泉 重夫 2 アジアからアフリカへ 船進むかすむ富士山旅思う 船は、太平洋湾岸を進んでいます。まだこれから先への不安が ありました。 船進むはるか﹁詩国﹂か﹁淡字縞﹂ 船から見えた四国と淡路島にかけたものです。 船進むついにニホンとお別れだ だいぶ知り合いが増えててきました。船は現在、沖縄沖を航行 中です。 船進むときめき叶う希望あり 時差調整のために時計を1時間遅らせた時です。初めて外国に いることを実感しました。 初めての運動暑い汗をかく 洋上健康教室に入って汗を流しています。最初から結構疲れま した。 テーブルマナーでもフォークよりハシが楽 食事でのちょっとしたトラブルに遭遇しました。 夢を見る初寄港あす空晴れる いよいよ明日の朝は﹁コタ・キナパル﹂︵マレーシア で ) す。 何を読む寝ながら思うひと区切り 船に持ち込んだ数学専門書で丁度1つの節を精読しました。 3 ビクトリアきみの名前は滝、勝利 船が揺れていますが、喜望峰を目指しています。 海荒れる白い波立つ希望もち 連作﹁船浮かぶ﹂です。 朝が来た煙が伸びて船浮かぶ 朝やけの大西洋に船浮かぶ 夜があける波が静かだ船浮かぶ 船の右舷にアフリカ大陸の山並みが見えています アフリカよはるかに望む大陸だ いい勝負の将棋仲間が、次に﹁ビクトリア湖﹂に行くと言いま したので、 、、 国境待つ待たされる日に2回 パスポートを持ち、泊まりがけでモザンビークから南アフリカ でのサファリに行く途中のことです。 別れ際キリンあいさつサファリにて ﹁マドゥワラ私営動物保護区﹂からの出る時のことです。私に はキリンが﹁さようなら﹂と言っているように見えました。 それなりに充実した日々今日もまた モザンビークを出発し、また長い単調な船旅です。 4 船の上クリスマスイブ初めてだ 船進む海の真ん中クリスマス 船内にもクリスマス行事があります。 赤ワイン結果残念体重が クリスマスで少しアルコールの量が増えました。その結果でしょ うか。 ナビミアに荒涼たる大地あり アフリカから南アメリカへ 空の青単調な日々白い雲 比較的穏やかな海です。 サンベッド海の真ん中日陰なし 船のデッキにあるジャグジーの傍にいます。 暗やみに三連星が光ってる 夜明け前明けの明星願い事 まだ暗い朝の4時過ぎに目が覚め、デッキを散歩しました。 地の涯 は(て 今 ) 度は何を示すのか 夜明け前雲の切れ間に光さす ナビブ砂漠にあるデューン7という砂丘で作りました。 南アメリカ大陸を目指して大西洋を進んでいます。 5 朝6時からの﹁洋上太極拳﹂の寸前です。 かなたよりいつものごとく日が上がる 年の初日の出です。 2015 海原を船進むとき波光る いつものように船が航行していましたが、、、 数学よお前は何故に難しい 調和積分のホッジ理論を勉強しています。 囲碁負けて教えてもらう定跡を M氏との対戦でした。 ロープウェイ登り下りでスリルあり コパカバーナ小さなビキニ君思う リオデジャネイロで作りました。 目の前を白波が立つ胸騒ぎ 今日はいつもより海が荒れているように感じます。 落ち込む日初日にもどりやり直し 歩き方体の歪み指摘あり なんとなく﹁気持ちが﹂落ち込みます。 6 振りかえるはるか島影ウルグアイ の大河ラプラタ川の河口を航行中です。 km 思い出す成人式の我が想い ﹁洋上成人式﹂に出席しました。 波高く海ねずみ色空くもる 全長275 鳥が鳴きゆっくり歩く話をきく 南米最南端ウシュアイアを目指していますが﹁天候不順﹂です。 海光る流れる波のその先に 大西洋から太平洋へ モンテビデオの郊外にある﹁有機農園﹂でのことです。 ベートーベンの四重奏響く波にあう ﹁ラズモフスキー﹂というタイトルの弦楽四重奏を聞いていま す。 旅なかば見直したいぞ我がパターン 日以上の旅も半分を過ぎました。自戒です。 100 強風が吹いています。でもパタゴニアは楽しみです。 7 深呼吸緑の中に沼がある 湖沼地帯へのトレッキングに参加しました。 船進む海に切立つ山に雪 残雪が流れ込むパタゴニア パタゴニア・フィヨルドを航行中です。 湾内の島々を抜け船進む 氷河を初めて見ました。 空晴れるここは地の果てパタゴニア 運河出て大海原に突き当たる パタゴニアから太平洋にもどりました。 海と空グレイに染まる船進む 波が高く天候が不順です。 気がつけば白髪増えて老い実感 鏡を見て気がつきました。旅が始まってからです。 知り合いに話しかけるぞ笑い顔 顔見知りでも、まだ話したことがない人のことです。 丘の町世界遺産にワインあり チリの港街ヴァルパライソのことです。 8 ひた走る大平原にガイヤあり 朝の食事のときです。Aさんから刺激を受けました。 席となり新たな出会いここにあり 久しぶりに日の出を見ました。 朝が来た海のかなたに日が昇る ﹁船上健康教室﹂でもらった万歩計で毎日計測しています。 夕焼けよ今日一万歩明日もまた ガランとしています。 ルームメートは二人とも短期ツアーに出かけています。部屋は 四人部屋一人で過ごす今日だけ した。 ペルー料理を作ったときの作です。既視感、私の舌に合う味で デジャビュか思い出の中のあの料理 ﹁エコ・ビレッジ・ガイヤ﹂にバスで向かう途中です。 南米最南端ウシュアイアを目指していますが﹁天候不順﹂です。 思い出す名刺をもらいオカぐらし 久しぶりに名刺交換? をしました。これは人間関係の第一歩 でしょうか。 エチケット心くばりを思う日々 少しばかりのマナー違反を感じました時の作です。 9 山の上岩を積み上げ遺跡あり 絶海の孤島イースター島に向かっています。 海の涯 は(て 孤 ) 島をめざして船進む 月あかり暗闇に1つ星がある イースター島に関する寄港地情報がポスティングされました。 日がしめす絶海孤島船進む ついに60歳になる2月が来ました。 考える還暦祝い船の上 月初め自分で企画誕生日 マチュピチュにて、これ以上の言葉がありません。 ツアー終わり新しき旅繰り返す カヤオでの4日間が終わりました。 南アメリカから日本へ まだ続く海また海の この日々が 今日で旅行期間の3分の2が過ぎました。 一等星となり満月君がいる 10 月の夜に明けの明星あこがれだ 君思う星を隠して雲に月 満月の日の明け方、船の上のデッキで作りました。 島めぐり我が人生もひと回り 日が沈むオロンゴ岬グッドバイ 半周しモアイさよならイースター島 船はイースター島の沿岸を進んでいます。 カギ忘れ中から開けるルームメイト うっかりして、カードキーを持たずに外出してしまいました。 腹下すされども気持ちに力あり 精神力で? 下痢と戦います。 サンデッキ空青く日差しガンガン 日光浴を楽しんでいます。 始まった運動会だ海の上 若者よ応援の顔空高く 洋上運動会でのヒトコマです。 あこがれのタヒチは近い海の青 その言葉タヒチ ゴーギャン黒真珠 11 夢に見た青いサンゴのボラボラよ 悔いはなし赤ジャージ着てウマイ酒 還暦の誕生会です。3ヶ月前まで他人だった9人の方に祝って もらいました。 よく見れば人にはあるぞ意外性 航路説明会でフランス領タヒチのことを聞いた後です。 人は何故船に乗ったか考える Aさんがプールで泳ぎTさんが囲碁を習いPさんがデッキで日 消滅日いきなり明日やってくる 短時間での天気の変化です。 船すすむ雨のち曇りそして晴れ 秘密? を垣間見たような気がします。 光浴をしていました。 下船後の生活思うこの頃は 少しずつ日本に帰ってからのことを考えています。 黒真珠高い安いはヒト次第 タヒチ島の真珠店でのことです。 シマ暮らしこれがアコガレ理想郷 ボラボラ島の離れ小島でのことです。 日付変更線を越えました。船の上では2月20日は事実上あり ません。 12 懐かしい島影見える雨にぬれ 雨ですが、もうすぐソロモン諸島です。 夜明け前暗やみの中日が昇る 海の果て何を思うか今の君 光さす暗やみの中あこがれが まだ薄暗い朝焼けの時、デッキを歩いて作りました。 大砲と青き海あり平和あれ ガダルカナル島ホニアラの海岸に朽ち果てた日本軍の大砲を見 つけました。 青き空太平洋ただ一人 船のデッキを散歩中ですが私しかいませんでした。 できるかな平和をつくる少しずつ 海荒れる行く末思い不安あり ﹁死刑制度﹂に関する講演を聞いたあとに作りました。 夢さめて今日がピークか暑い日だ 3ヶ月ぶりに赤道に近づいています。 日光が波とぶつかる目の前で 暑い日です。バーベキューに参加しました。 13 青き空卒業式ひと区切り 雲白く卒業だ青き空 オメデトウ卒業生未来あれ 3月1日には卒業式が行われていると思います。 白い鳥西のかなたに日が暮れる 波高しされど日本へ真っしぐら あと5日なごりおしいか海の音 下船説明の文章が来ました。 日が登る100日前と変わらずに 伝わるか人への思い優しさよ 夜にはフェアウエルパーティとディナーがあります。 思い断ち荷造りをする半日で 荷物を整理していると色々なことが思い出されます。 久しぶり電話の声で思わず笑う やっと電話がつながりました。家族へのコールです。 14 エピローグ 五七五のリズムと言葉のわかりやすさに留意したつもりです。 また健康教室でいっしょになった村上氏と知り合い自作の俳句を 見せていただいたこともヒントになりました。 15
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