ミッション提案書(最終版)

UNISAS
SPindle
×
AXELSPACE CUP CanSat Challenge 2015
第 1 回審査資料
チーム名
Keio Team Wolve’Z
大学名
慶應義塾大学
Project Manager 氏名
波田野 恭祥
メールアドレス
[email protected]
AXELSPACE CanSat Challenge 2015 [ Keio Team Wolve’Z・慶應義塾大学 ]
目次
1
CanSat ミッション設定の背景 ......................................................................................................... 3
1.1
提供サービス・プロダクトの概要 ................................................................................................ 3
1.2
国内外の状況 ................................................................................................................................. 4
1.3
実現性の検討 ................................................................................................................................. 5
1.4
今回の CanSat 開発による実現性の実証 ...................................................................................... 7
2
CanSat のミッション・ステートメント .......................................................................................... 8
3
CanSat のサクセスクライテリア ..................................................................................................... 8
4
CanSat のミッション・シークエンス .............................................................................................. 9
5
CanSat のシステム要求.................................................................................................................. 10
6
CanSat 設計 .................................................................................................................................... 11
7
開発要素 .......................................................................................................................................... 13
8
試験計画・結果報告 ........................................................................................................................ 14
8.1
試験計画....................................................................................................................................... 14
8.2
試験結果報告 ............................................................................................................................... 18
9
開発メンバー ................................................................................................................................... 19
10
スケジュール ............................................................................................................................... 20
11
予算計画・報告............................................................................................................................ 22
参考文献 ................................................................................................................................................. 23
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1
CanSat ミッション設定の背景
1.1 提供サービス・プロダクトの概要

サービス・プロダクトの説明
月は地球上に暮らす人類にとって神秘的な存在である.日本においては,月の影の模様が兎に見える
ことから,さまざまな逸話とともに「月に兎がいる」と古来より伝承されてきた.この兎の模様は大規
模な天体衝突によって生じたことが月周回衛星かぐやのデータによって明らかにされた[1] が,今なお私
たちは地球上からはるか遠くに描かれた「月の兎」に魅せられていることに変わりはない.
現在,米ルナエンバシー社は「月の土地」を個人に販売し,権利書を発行する「地球圏外の不動産業」
を行っている.月の土地は 1 エーカーあたり 2,700 円から提供されており,図 1 に示す土地の権利書,
月の憲法,月の地図などを販売している[2] .大切な人へのプレゼントや記念に,多くの人々がこのサー
ビスを利用しており,たとえばアメリカ元大統領,ハリウッドスターのような著名人や NASA 職員をは
じめ,全世界で 130 万人以上の人々が月のオーナーとなっている.しかし,月の土地を所有するという
ことはあくまで形式の上であり,これらの購入した土地の具体的な用途は定まっていないのが現状であ
る.当然,オーナーは土地を何にも利用せずに持て余しており,購入した土地を活用できるサービスが
あれば利用しようと思うはずである.
そこで,購入した月の土地の新たな利用サービスとして,
「月面地上絵」を提案する.ここで地上絵の
イメージ図を図 2 に示す.月面地上絵とは,オーナーの所有する月面に地上絵を描き,それを撮影した
画像を提供するサービスである.まず,自律走行ローバをロケットに乗せて月へ輸送し,着陸後にロー
バはオーナーの所有地へと移動する.オーナーは描きたいメッセージを注文し,我々はそのメッセージ
を地上でプログラムし,自律走行ローバに送信する.プログラムを受信したローバは月面にメッセージ
を描き,描いたメッセージを月周回軌道衛星から撮影する.その撮影した写真をオーナーのもとに届け
る.以上の行程が今回提案するサービスの一連である.オーナーは描く内容を自由に決められ,絵でも
文字でも,シチュエーションに合わせたメッセージを描くことができる.遠くはなれた月からのメッセ
ージプレゼントは,何より忘れられないものになる.
©ルナエンバシ―社
図 1 月の土地の権利書
図 2 地上絵作成例
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
サービス・プロダクトが社会にもたらす価値
今回提案する月面地上絵は,宇宙葬[3],月の土地所有につづく,新たな宇宙サービスと位置付けている.
本サービスを契機として今後さまざまな宇宙サービスを豊富に提供していくことで,私たち人類が宗
教・国家・民族の別なく地球上の生物であるという宇宙的価値観を育んでいく一助になると考えている.
また,国家ではなく民間が主体となって積極的に地球外活動を行っていくことで,地球全体をあげての
宇宙進出につながると考えている.
1.2 国内外の状況
国内外の既存宇宙サービスに,エリジウムスペース社の宇宙葬がある[4]. 宇宙葬は,故人の遺灰など
を収めたカプセルをロケットに載せて宇宙空間に打ち上げるサービスである.販売価格は 241,000 円で
あり,サービスの中には遺灰の打ち上げの他に,追悼メッセージの刻印や宇宙葬の完了を示す証明書が
含まれている.これまでにない葬式形態の提案は,遺骨の一部にその人らしさを見出そうと広く受け入
れられている.
市場調査では新たな葬儀サービスの潜在需要は小さくないことがわかり,2 年以内に 3,000
人程度の応募を見込んでいる.
宇宙葬は,私たちが生きた証を地球外に残したいという思いを実現するサービスである.私たちの痕
跡を宇宙に残すという意味で今回提案する月面地上絵サービスと類似しているが,月面地上絵と宇宙葬
はそのメッセージ性が異なったものであると考えている.宇宙葬が私たちの人生の最期を宇宙に残すサ
ービスであるのに対し,月面地上絵は今を生きる私たちが大切な人への思いを月に託すサービスである.
インターネットの発達により連絡が容易にとれるようになった一方で人と人のコミュニケーションが希
薄化していくなか,月面地上絵はこれまでになく手間をかけ気持ちのこもったメッセージであり,必ず
受け取った人の心を動かすものである.
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1.3 実現性の検討
今回提案する「月面地上絵」サービスのビジネスモデルキャンバスを作成し,図 3 に示した.
Business Model Canvas
パートナー
Key Partner
主な活動
Key Activity
提供する価値
Value Proposition
ルナエンバ
シー(企業)
マーケティン
グ
衛星開発メー
カー
デザイン
ロケット開発
メーカー
広告代理店
神秘的な感動
信頼
顧客セグメント
Customer Segment
宇宙(月)
ファン
メッセージ
主なリソース
Key Resource
チャネル
Channel
ハード・ソフ
トウェア
アーティスト
(絵描き)
広告
ルナエンバ
シー(企業)
ロマンチスト
月
コスト
Cost Structure
打ち上げ費
顧客との関係
Customer Relation
収入
Revenue Stream
製造費
サービスの
代金
開発費
図 3 ビジネスモデルキャンバス
以上のビジネスモデルキャンバスを踏まえ,本サービスの実現性について以下で検証する.まず,ビ
ジネスターゲットについて考える.本サービスでは,このビジネスターゲットを月の土地を販売する企
業であるルナエンバシー社の顧客と想定する.ここで,本サービスとビジネスターゲットの関係を図 4
に示す.現在,月の土地を 1 エーカー2,700 円ほどでルナエンバシー社から購入することができるが,現
在のサービスは土地の権利書をもらえるだけであり,実際に所有しているという感覚が得られにくい.
ここで本サービスにより,所有する月の土地を有効利用することができるようになるため,既存の土地
所有者の利用や新規顧客の増加が見込まれる.ルナエンバシー社にとっては月の土地を個人所有する価
値が高まることから,顧客数の増加につながると考えられるため,ルナエンバシー社と業務提携できる
可能性は大いにあると考えられる.また,掘削による地上絵という性質から,書いたものを消すことも
できるため,何度でも描画を行うことができ,売り切り型から継続収入型へとシフトすることができる
可能性がある.
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ルナ
エンバシー社
月の土地
顧客
お金
・月の土地を所有している130万人
・新規顧客
お金
地上絵
地上絵
サービス
図 4 ビジネスターゲット関係図
つづいて,費用面について考える.現在行われている民間による月面無人探査を行うコンテスト Google
Lunar X-Prize に参加している日本のチーム「ハクト」の開発には,打ち上げ用ロケットや月着陸のラン
ダーなどの用意費用も含め約 30 億円の費用がかかると見込まれている[5] .本サービスでも開発にこの
程度の予算が必要であると仮定する.また,実際に打ち上げるローバの重量を 30 kg,幅を 60 cm (CanSat
の 27 倍の重量,3 倍のサイズ)を想定しており,その重量のローバの打ち上げ費用は Astrobotic 社のラ
ンダー相乗りサービスを用いて打ち上げ費用を 25 億円と見積もった[6] .次に地上絵の作成証拠となる
衛星写真は,外注するものとし 1 回の撮影料を 6 万円とする.この衛星写真は,現在運用中の月周回衛
星ルナー・リコネサンス・オービタ[7] を用いるものと仮定し,値段はこのルナー・リコネサンス・オー
ビタと同等の分解能を持つ地球の周回衛星 WorldView-1 の衛星写真の販売価格を用いた[8] .また,この
ローバと同程度の無人月面探査ローバとして 58 kg のチャンドラヤーン 2 号(インド)が計画されてお
り,このローバは分速 6 m で走行する[9][10].本サービスのローバも同じ速度で走行できるものとし,1
エーカー内の 30 m×10 m の土地に幅 50 cm で描画することを考えると,すべての面積を描画するのに
100 分かかると算出される.ここで,描画を行う土地を新たに販売する形式をとり,描画間の移動を最
小限に抑える.販売する土地を 1 エーカー,60 m×60 m の土地と想定すると隣り合った土地の移動には
最高で 20 分必要となる.描画と移動合わせて 120 分となり,1 日で最大 12 個の地上絵を描画すること
ができる.
今回提案するサービスを,一回 100 万円で提供すると,5,851 回の地上絵の作成で支出費用を回収す
ることができる.ここで,世界の超富裕層は 5 %いるとされており[11],売ることを想定した回数 5,851
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回は,月の土地所有者 130 万人のうちの 5 %である 6.5 万人よりも尐ないため,実現性が高いと言える.
また, 1 日の最大描画回数から 486 日,つまり二年以内で支出費用を回収できる.
最後に技術面について考える.提案するサービス・プロダクトに最低限必要な技術的要素とその対処
方法について以下で説明する.

月輸送と着陸:既存の月輸送を行う企業である Astrobotic 社のランダーに相乗りすることで実現す
る

描画開始地点への移動:GPS を用いることができないため,スタートラッカ等を用いて自己位置を
推定する.

描画:描画目的地から掘削機能などを用いて地上絵を作成する.その際,スタートラッカでは地上
絵を描くのに十分な自己位置推定の精度が得られない[12]ため,ホイールオドメトリを使用する必要
がある.

描画完了確認:地上絵作成の証拠として,月周回衛星などを用いて撮影した地上絵の画像を地球の
地上局に送信する.ここで,月周回衛星ルナー・リコネサンス・オービタの解像度が 50 cm である
ことから,1 エーカーに 50 cm の太さの線で描画することで,衛星による撮影が可能となる.
また,月の環境下におけるミッション実行の問題点として月の極低温での熱源問題が挙げられるが,
その解決策として月探査ローバの一般的な技術である放射性同位体を用いた保温および発電技術[13]を用
いる.
1.4 今回の CanSat 開発による実現性の実証
前節で述べた実現性のうち特に技術面において,詳細に自己位置を推定しながら地上絵を描画するシ
ステムを作成し,その有効性を ARLISS にて実証する.本ミッションでは,広大な土地に着地し,目標
地点に向かって走行を行い,所定の場所で地上絵を作成することを目的としているため,広大な砂漠を
持つ ARLISS において実証する必要があると考える.そこで ARLISS では,想定するローバと CanSat
のスケールの差から,1/3 スケールで実証を行い,1 kg のローバを開発し,10 m×3.3 m の土地に 17 cm
の線で描画を行う.ここで,地上絵の作成においては,ホイールオドメトリを用いて自己位置を推定し,
作成を行う.この際,レゴリスという砂質[14]を考慮すると,スタックおよびスリップを想定した設計が
望まれる[15][16].また,ARLISS におけるロケット打ち上げは,月への打ち上げ環境に模擬できるため,
ロケット搭載時の耐震性や耐衝撃性を検証することができる.
実証では,まず着陸後ゴール方向に向けて 50 m 走行したあと,その地点で描画を開始する.描画後,
ゴールに向けて走行する.ゴール到達後,ローバに無線でプログラムを送信し,再度ゴール付近で描画
を行う.この 2 回の描画により実際に描画が行えるかの可否,及び月面を想定したプログラムの送信に
よる描画の可否の双方を実証することを目的とする.
月面での環境において本ビジネスを実現するためには,これらの ARLISS での検証に加えて自律走行
ローバの自己位置を推定することと,ローバへの電源供給の 2 つの要素が必要となる.そのうち,月面
での自己位置を推定する手段としてスタートラッカまたは電波情報による自己位置推定技術を用いるこ
とを構想している.また,電源に関しては,月面では太陽光発電や,放射性同位体での発電を主として
行うものとする.
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2
CanSat のミッション・ステートメント
本プロジェクトは,月の土地に地上絵を作成し顧客に画像を提供する「月面地上絵」サービスの
実現を目的とする.ARLISS では,月面に地上絵を作成する技術を確立するために,所定の場所で
描画を行う機構およびシステムの実証実験を行うことをミッションとする.
3
CanSat のサクセスクライテリア
ミッション・ステートメントの達成可否は次の方法によって判断する.
・地上絵の完成度が TBD %以上
評価方法:TBD m の高さから地上絵を撮影した画像を用いて特徴点を検出し,想定する地上絵
とのベクトルの誤差を算出
・描画した線の幅が 17 cm 以上である割合が TBD %以上
評価方法:描画開始地点から,描画した線の幅を TBD cm 間隔ごとに計測
・地上局から無線で描画指令を送信
評価方法:無線受信の有無を記録媒体に保存
・目標地点から GPS 誤差(TBD m)以内に到達
評価方法:CanSat の到達地点と目標地点の距離をメジャーで計測
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4
CanSat のミッション・シークエンス
製作する CanSat のミッション・シークエンスを図 5 に示す.
本ミッションはミッション開始後,準備,発射・放出,降下,走行,解析のフェーズごとに行い,走
行フェーズにおいて 2 回の描画を行う.ここで,カムバック・コンペティションのゴールを本ミッショ
ンでのゴールとし,描画開始地点①は着地地点からゴール方向に 50 m の地点, 描画開始地点②は無線
指令で与える GPS 座標の地点とする.
ミッション開始
砂漠搬入
パラシュート展開
準
備
降
下
停止
無線指令
受信
放出検知・無線ON
No
Yes
地上局起ち上げ
着地検知
No
描画開始地点②
まで走行
Yes
電源ON
動作確認
問題なし?
描画開始
地点検知
パラシュート分離
No
No
Yes
描画開始地点①
まで走行
描画
Yes
描画開始
地点検知
経過時間測定開始
No
機体の回収
走
行
電源OFF
Yes
ロケット搭載
打ち上げ開始
放出
発
射
・
放
出
描画
ゴールまで走行
ゴール
検知
取得データ解析
ミッション終了
No
Yes
図 5 ミッション・シークエンス
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解
析
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CanSat のシステム要求
製作する CanSat のシステム要求を表 1 に示す.
表 1 システム要求
番号
シークエンス
要求
(R1)
φ146 mm 高さ 240 mm の筒に収納可能であること
(R2)
重量が 1050 g 以内であること
(R3)
(R4)
ミッション全体
ミッション遂行に十分な TBD mAh 以上の電源を有すること
500 m 以上の無線通信が可能であること
(R5)
記録媒体にデータが保存できること
(R6)
誤差半径 20 m 以内の位置情報が取得できること
(R7)
電源が入れられること
(R8)
準備
電源 ON を確認できること
(R9)
キャリア内で通信機能が停止すること
(R10)
発射時の荷重 10 G に耐えられること
(R11)
上昇時の振動 25 GRMS に耐えられること
(R12)
放出時の衝撃 25 G に耐えられること
(R13)
(R14)
発射・放出
パラシュートの開傘時に 12 G の衝撃に耐えられること
キャリアから自重で落下可能であること
(R15)
パラシュートが絡まないこと
(R16)
キャリアからの放出を検知可能であること
(R17)
放出検知の後,通信を開始すること
(R18)
パラシュートが開傘できること
(R19)
降下
(R20)
(R21)
(R22)
(R23)
(R24)
(R25)
(R26)
(R27)
(R28)
パラシュートで TBD m/s まで減速できること
パラシュートが絡まないこと
着地
分離
走行
描画
ゴール
着地衝撃に耐えられること
着地を検知できること
分離指令により,パラシュートを分離できること
目的地の方向へ走行できること
走行停止できること
所定の場所で描画を実行できること
所望の絵が描けていること
ゴールを検知できること
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CanSat 設計
製作する CanSat の概要図を図 6 に示す.筐体にはバッテリー,マイコン,走行用モータ,無線,記
録媒体,分離機構,各センサを搭載する.また,描画機構は図 6 のように機体下部に設置し,描画時に
は描画用モータを用いて描画を行う.
設計する CanSat のシステム設計図を図 7 に示す.搭載センサは,GPS,光センサ,エンコーダ,デ
ジタルコンパスを用いる.搭載センサを用いて取得したデータをもとにマイコンで処理を行い,走行用
モータ,描画機構,分離機構に指令を出力する.さらに,無線による地上局へのデータ送信および記録
媒体への制御履歴の書き込みを行う.
バッテリー・マイコン等
進行方向
バッテリー・マイコン等
描画機構
タイヤ部
タイヤ部
描画用モータ
(a) 収納時
描画機構
(b) 展開時
図 6 CanSat 概要図
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電源
電源
地上局
モータ
描画機構
無線
無線
記録媒体
PC
マイコン
分離機構
入力
出力
搭載センサ
GPS
光センサ
エンコーダ
デジコン
電源供給
電波
図 7 システム設計図
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開発要素
チームとして引き継ぎが可能な技術は以下の通りである.

GPS,デジコン,エンコーダ,光センサ,モータ制御,記録媒体
昨年度使用した部品であり知見を持っているため,センサ開発のノウハウを流用することができる.

地上局
CanSat の現在状況を把握する地上局のプログラムについて,昨年作成した MATLAB を用いたシス
テムが存在するため,流用が可能である.
新規開発要素は以下の通りである.

描画機構
今回開発する CanSat は地面に絵を描くことが必要であるため,そのための掘削機構を新規開発す
る予定である.課題は,確実に地面を掘ることが必要であり,描画用モータの出力トルクや形状,
また展開機構を試行錯誤し開発を行う.

機体
新規で開発を行う描画機構を考慮し,CAD により適切に設計する.

分離
昨年度,パラシュートとの分離機構としてテグスを抵抗の熱により切断する手法を用いたが,温度
不足により切断できない,など熱の不確実性が失敗の原因となった.今年度は機械的な機構を用い
た新しい分離機構を開発する予定である.

パラシュート
去年作成したパラシュートは成功率が高く,多くの知見を持っているが,本年度作成する分離機構
に適したパラシュートを設計する予定である.

制御アルゴリズム
今回のミッションでは,ゴールに向かって CanSat を走行させるためのプログラムに加え,描画を
行うためのプログラムが必要である.GPS を用いて描画を行うと,多大な誤差が生じることが想定
される.そこで,エンコーダを用いたホイールオドメトリによる自己位置推定を行うことで誤差を
最小限にして描画を行うプログラムを作成する予定である.

無線
昨年度は TOCOS 社の「TOCOS TWE-Strong」を用いた無線システムを作成したため,そのまま
流用が可能であるが,今年度は描画指令の受信に適した無線を用いる予定である.
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8
試験計画・結果報告
8.1 試験計画
試験項目を表 2 に示す.また,表 2 の試験計画を図 8 に示す.気球試験と ENDtoEND 試験は共同気
球試験と能代宇宙イベントで行う.
表 2 試験計画
試験
番号
試験名称
検証内容
要求
フェーズ
番号
【GPS】
精度試験
(T1)
周囲に高い建物のない開けた場
(R22)
所に 10 分間放置し,経度,緯度,
(R24)
高度の平均,標準偏差を求める.
(R25)
BBM
(R26)
(R28)
【デジタルコンパス】
精度試験
周囲に電子機器などの磁場を発
生する機器のない場所に,デジ
(T2)
タルコンパスを 10 分間放置し,
(R25)
BBM
方位の平均,標準偏差を求める.
【光センサ】
閾値光度決定試験
光センサによって光度を取得で
きることを確認する.
(T3)
また,ロケットから放出された
ことを判断するための閾値を決
(R9)
(R17)
BBM
定する.
【機体】
(T4)
衝撃試験
放出時の衝撃 25 G に耐えること
ができることを確認する.
振動試験
FM
(R11)
FM
ロ ケ ッ ト 上 昇 時 の 振 動 25
GRMS に耐えることができるこ
(T5)
(R12)
とを確認する.
(T6)
FM
防塵試験
【モータ】
(T7)
推力試験
走行を行うために必要な推力が
あることを確認する.
(R24)
EM
(R7)
EM
【回路】
(T8)
導通・絶縁試験
回路基板本体の導通箇所,絶縁
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箇所を確認する.
【バッテリー】
(T9)
発熱試験
EM
発熱を確認する.
【描画機構】
(T10)
(T11)
切り替え試験
描画の ON/OFF の切り替えがで
きることを確認する.
推力試験
地面を削ることができることを
確認する.
(R26)
EM
(R27)
EM
(R18)
EM
(R19)
EM
(R18)
EM
(R23)
EM
【パラシュート】
(T12)
強度試験
パラシュートを数十回投下し,
破損等がないか確認する.
降下速度試験
(T13)
異なる大きさのパラシュートを
数十回投下し,着地までの時間
を計測する.
開傘試験
(T14)
パラシュートを畳んだ状態のま
ま投下し,開傘できるか確認す
る.
【分離機構】
(T15)
分離動作試験
パラシュートと機体が分離でき
ることを確認する.
【地上局】
(T16)
処理速度試験
データの処理速度に遅延が発生
EM
しないかどうか検証する.
【無線】
(T17)
通信距離試験
EM
通信可能距離を確認する.
【アルゴリズム】
(T18)
制御則試験
目的地方向に向かう指令が出力
されることを確認する.
(R24)
EM
【BBM 統合】
(T19)
センサ系統合試験
すべてのセンサから正しい情報
BBM
を取得できることを確認する.
【EM 統合】
着地試験
(T20)
(T21)
走行試験
パラシュートを含む機体を投下
(R18)
し,破損等なく動作できること
(R21)
を確認する.
(R23)
目標方向に走行できることを確
(R24)
認する.
(R25)
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EM
EM
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(T22)
描画試験
ゴール検知試験
(T23)
所定の場所で描画を行うことが
(R26)
できることを確認する.
(R27)
EM
目標地点に到着したときにゴー
ルを検知できることを確認す
(R28)
EM
る.
【FM 統合】
(T24)
気球試験
能代宇宙イベントの競技を本試
FM
験とする.
描画ミッション試験
(T25)
描画開始地点まで到達し,描画
(R24)
を実行できることを確認する.
(R25)
(R26)
FM
(R27)
(T26)
ENDtoEND 試験
能代宇宙イベントの競技を本試
験とする.
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R 全て
FM
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BBM
4
月
2
週
4
月
3
週
4
月
4
週
5
月
1
週
EM
5
月
2
週
5
月
3
週
5
月
4
週
6
月
1
週
6
月
2
週
(T1)【GPS】精度試験
(R22)(R24)
(R25)(R26)(R28)
(T2)【デジタルコンパス】
精度試験
(R25)
(T3)【光センサ】
閾値光度決定試験
(R9)
(R17)
FM
6
月
3
週
6
月
4
週
7
月
1
週
7
月
2
週
7
月
3
週
7
月
4
週
8
月
1
週
8
月
2
週
(T19)【BBM統合】
センサ系統合試験
(R24)
(T7)【モータ】推力試験
(T8)【回路】
導通・絶縁試験
(R7)
(T9)【バッテリー】
発熱試験
(T10)【描画機構】
切り替え試験
(R26)
(T11)【描画機構】
推力試験
(R27)
(T12)【パラシュート】
強度試験
(R18)
(T13)【パラシュート】
降下速度試験
(R19)
(T14)【パラシュート】
開傘試験
(R18)
(T15)【分離機構】
分離動作試験
(R23)
(T16)【地上局】
処理速度試験
(T17)【無線】
通信距離試験
(T18)【アルゴリズム】
制御則試験
(R24)
(R18)
(R21)(R23)
(T20)【EM統合】
着地試験
(T21)【EM統合】
走行試験
(R24)
(R25)
(R26)
(R27)
(T22)【EM統合】
描画試験
(T23)【EM統合】
ゴール検地試験
(R28)
(T4)【機体】
衝撃試験
(R12)
(T5)【機体】
振動試験
(R11)
(T6)【機体】
防塵試験
(T24)【FM統合】
気球試験
(T25)【FM統合】
描画ミッション試験
(R24)(R25)
(R26)(R27)
(T26)【FM統合】
END to END試験
図 8 試験計画
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AXELSPACE CanSat Challenge 2015 [ Keio Team Wolve’Z・慶應義塾大学 ]
8.2 試験結果報告
試験を行い次第,追記する.
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AXELSPACE CanSat Challenge 2015 [ Keio Team Wolve’Z・慶應義塾大学 ]
9
開発メンバー
CanSat 開発メンバーを表 3 に示す.
表 3 開発メンバー
役割
氏名
学年
CanSat 経験
その他の開発や特筆すべき研究
PM
波田野 恭祥
M1
2014
昨年度,分離機構,プログラム統合を担当
開発員
小屋迫 優士
M1
2014
昨年度,回路を担当
田中 幸也
M1
2014
昨年度,機体設計を担当
殿木 春香
M1
2014
昨年度,無線,パラシュート設計を担当
石塚 愛梨
B4
小澤 僚太郎
B4
杉原 有理花
B4
黒須 純
B4
田巻 櫻子
B4
松井 忠宗
B4
澤口 聡太
B4
平澤 遼
M2
2013, 2014
茂木 渉
M2
2013, 2014
太刀川 健
M2
2013, 2014
メンター
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AXELSPACE CanSat Challenge 2015 [ Keio Team Wolve’Z・慶應義塾大学 ]
10 スケジュール
開発スケジュールの予定を表 4 に示す.
BBM では,センサ類,モータ,無線,記録,分離機構,地上局,制御則の単体開発を行い,これらを統
合したプログラムが正しく動作するものを作成する.
EM では,機体の製作を終えて,走行および描画が可能な機体,制御指令を開発する.
FM では,EM での不具合を改善し,すべての試験に合格した機体を作成する.
表 4 開発スケジュール
月
週
開発計画
ミッション提案
3月
2
第 1 回 AXELSPACE CUP 審査会
機構検討
設計
3
外部審査,大会
AXELSPACE CUP ミッション提案書
概念設計
1
4月
開発・試験
センサ開発
機体設計
4
5
5月
単体試験
6
7
BBM 完成
統合試験 (BBM)
8
機体完成・統合
9
走行試験
(@矢上グラウンド)
10
描画試験
6月
(@矢上グラウンド)
11
開傘試験
(@丸子橋)
12
13
EM 完成
AXELSPACE CUP ミッション提案書
14
第 2 回 AXELSPACE CUP 審査会
15
7月
着地試験
(@丸子橋)
耐久試験
衝撃試験
振動試験
16
8月
17
技術交流会 (UNISEC 総会)
気球試験
共同気球試験
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18
FM 完成
共同気球試験審査資料
ENDtoEND 試験
能代宇宙イベント
23
データ解析
ARLISS
24
ミッション評価
25
報告書作成
19
20
21
9月
10 月
22
26
AXELSPACE CUP 最終審査会
27
28
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11 予算計画・報告
製作する CanSat の予算計画を表 5 に示す.AXELSPACE CUP の補助金 25 万円と研究室の出資金
を合わせた 310,270 円の予算補助により,本ミッションを成功させたい.
ここで,具体的な予算計画について説明する.モータに関しては,EM で着地試験を行うため,モー
タの故障などにより,EM に最も費用がかかることが予想される.各センサに関しては,FM 機体を作成
するために,新しくセンサを購入するため,FM に最も費用がかかることが考えられる.また,描画機構,
分離機構に関しては,BBM で機構を検討するため,予算計画に示した費用が必要であると考える.
表 5 予算計画
BBM
EM
FM
その他
計
1,800
0
0
0
1,800
0
5,000
5,000
0
10,000
本体(ネジ等)
2,000
1,000
1,000
0
4,000
GPS
2,800
2,800
5,600
0
11,200
デジコン
3,528
3,528
5,292
0
12,348
光センサ
500
500
500
0
1,500
6,300
3,150
3,150
0
12,600
回路基板
815
1,630
815
0
3,260
回路素子
6,000
4,000
1,000
0
11,000
0
7,884
2,628
0
10,512
4,000
4,000
2,000
0
10,000
描画機構
15,000
5,000
5,000
0
25,000
分離機構
5,000
2,000
2,000
0
9,000
15,200
30,400
15,200
0
60,800
6,650
2,300
2,300
0
11,250
microSD
400
400
400
0
1,200
microSDキット
300
0
0
0
300
12,000
8,000
4,000
0
24,000
500
0
0
0
500
本体の主要部分(既成品)
本体の主要部分
(自主製作)
無線
電池(回路)
電池(モータ)
モータ
パラシュート
マイコン
マイコンケーブル
打ち上げ費
―
―
―
90,000
90,000
累計
82,793
81,592
55,885
90,000
310,270
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AXELSPACE CanSat Challenge 2015 [ Keio Team Wolve’Z・慶應義塾大学 ]
参考文献
[1] 産総研:月の表と裏の違いをもたらした超巨大衝突を裏付ける痕跡を発見, 産総研, http://www.aist.
go.jp/aist_j/press_release/pr2012/pr20121029/pr20121029.html. (2015 年 3 月確認)
[2] 月の土地|火星の土地|ルナエンバシージャパン, ルナエンバシージャパン, http://www.lunaremb
assy.jp/.(2015 年 3 月確認)
[3] 株式会社銀河ステージ-スペースメモリアル(宇宙葬), 銀河ステージ, http://ginga-net.com/plan/
space/.(2015 年 3 月確認)
[4] 記念宇宙葬, ELYSIUM SPACE, http://elysiumspace.com/.(2015 年 4 月確認)
[5] 三菱電機 from ME:DSPACE 狙え、優勝!日本の「ハクト」が月面レースに挑む理由, 三菱電機,
http://www.mitsubishielectric.co.jp/me/dspace/column/c1412_2.html.(2015 年 3 月確認)
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ビタ, JAXA, http://spaceinfo.jaxa.jp/ja/lro.html.(2015 年 3 月確認)
[7] 宇宙情報センター/SPACE INFORMATION CENTER:ルナ・リコネサンス・オービタ, JAXA, h
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[8] ワールドビュー1 号(WorldView-1)衛星・センサの概要・諸元 宇宙開発と共に, 宇宙技術開発株式会
社衛星画像データサービス, http://www.sed.co.jp/sug/contents/satellite/satellite_worldview1.html.
(2015 年 3 月確認)
[9] Malti Bansal, Now We Set To Settle On Moon: Chandrayaan Dscovery Paves The Way, R
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[10] OUTCOME BUDGET OF THE DEPARTMENT OF SPACE GOVERNMENT OF INDIA201
3-2014,
[11] 日本の富裕層は 101 万世帯、純金融資産総額は 241 兆円, 野村総合研究所, http://www.nri.com/Ho
Ho/jp/news/2014/141118.aspx.(2015 年 4 月確認)
[12] 西田信一郎, 今後の宇宙探査に向けた技術課題, 自動車制御連合講演会, 大阪, 2009.
[13] 嫦娥 3 号月着陸、日中の月探査で明暗分かれる, 日経ビジネスオンライン, http://business.nikkeib
p.co.jp/article/tech/20131219/257271/?P=3&nextArw.(2015 年 3 月確認)
[14] Paul D. Spudis, “月の科学―月探査の歴史とその将来”, シュプリンガー・フェアラーク東京, 200
0. http://isro.gov.in/sites/default/files/pdf/budget/Outcome%20budget2013-14.pdf. (2015 年 4 月確
認)
[15] 久保田孝, 月・惑星環境における探査ロボットの設計, 日本ロボット学会誌, Vol.17, No.5, 1999, p
p.609-614.
[16] 狼嘉彰, 月・火星探査ローバ, 日本ロボット学会誌, Vol.12, No.7, 1994, pp.979-985.
(以上)
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