vitamin B群が補酵素の構造の一部に

酵素enzyme
2015/04/24-1&2
生化学講義
担当:尾西
からだの中のほとんどすべての反応に関わり,
その反応の全体の過程を変化させずに
反応速度を増加させる
タンパク質触媒である
名称
推奨名
系統名
日常的な使用に便利
酵素が明確に特定される必要があるときに使用される
推奨名
基質substrateの名称 +接尾辞アーゼase グルコシダーゼ,ウレアーゼ
触媒する反応 + ase
乳酸デヒドロゲナーゼ
それ以外
ペプシン,トリプシン
系統名 国際生化学分子生物学連合International Union of Biochemistry and
Molecular Biology, IUBMBは酵素を大きく6種類に分類し,系統名を決定
1
酵素番号(EC 番号)
図3-4
図3-5
1. 酸化還元酵素(オキシドレダクターゼ,Oxidoreductase)
2. 転移酵素 (トランスフェラーゼ,Transferase)
3. 加水分解酵素(ヒドロラーゼ,Hydrolase)
4. 脱離酵素 (リアーゼ,Lyase)
5. 異性化酵素(イソメラーゼ,Isomerase)
6. 連結酵素(合成酵素)(リガーゼ,Ligase) (Synthetase)
2
酵素の名称
基質が2つある場合には
コロン(:)で結ぶ
酵素の推奨名
アルコールデヒドロゲナーゼ
EC 1.1.1.1
酵素番号
アルコール : NAD+ 酸化還元酵素
酵素の系統名
R-CH2OH
アルコール
+
NAD+
ニコチンア
ミドアデニ
ンジヌクレ
オチド
(酸化型)
⇌
R-CHO
アルデヒド
+
NADH
+
H+
ニコチンア
ミドアデニ
ンジヌクレ
オチド
(還元型)
3
酵素 enzyme の特性
1. タンパク質,RNA(リボザイム)
2. 活性部位active site
3. 酵素反応の第一段階は酵素基質複合体ESの生成
4. ESは酵素生成物EPに変わり,ついで酵素と生成物に解離する
5. 触媒効率
反応速度106 反応の結果自らは変化せず
6. 特異性(基質特異性,反応特異性)
7. 補助因子(補酵素,補欠分子属)
8. 調節可能
9. 細胞内局在
10. 温和な条件(常温,常圧,中性付近のpH)
11. 平衡を変えない
12. 活性化エネルギーを低下させる
13. その他(アイソザイム,変性)
4
酵素反応
E+S
⇄
ES
→ EP → E + P
• 酵素 enzyme
E
• 基質 substrate
S
• 酵素‐基質複合体
ES complex
• 酵素‐生成物複合体 EP complex
• 生成物 product
P
5
反応は遷移状態を経由して進行する
酵素は活性化エネルギーを低下させる
6
リボザイム ribozyme
触媒機能を持つRNA分子
テトラヒメナのrRNAの自己スプライシング
リボヌクレアーゼP
ハンマーヘッド型リボザイム
ヘアピン型リボザイム
ヒトデルタ型肝炎ウイルス由来リボザイム
スプライソソーム
リボソーム
mRNA
ribosome
7
アイソザイム isozyme
同一個体にあり,同じ反応を触媒する異なる型の酵素
乳酸脱水素酵素 は四量体
異なる遺伝子に由来する2種類,骨格筋型 M 型と,心筋型 H
型のサブユニットから構成
M4
M 3H
M2H2
5種のアイソザイム
MH3
H4
8
触媒は活性部位で行われる
鍵と鍵穴モデル(lock and key theory, Emil Fisher, 1894年)
酵素が酵素‐基質複合体を形成する時,酵素が極めて高い特異性で基質を
認識する機構は,鍵穴が鍵を正しく識別する機構に類似するものと考えた.
9
誘導適合モデル (induced fit model, Daniel Koshland, 1968年)
基質の結合が酵素の立体構造の変化を引き起す
リアーゼの活性部位を説明
基質A-Bが酵素に結合する
酵素のコンホメーションが変化
(酵素の触媒に関与する残基が適正に
配置される)
AとBとの間の結合にひずみが生じてそ
の切断が容易になる
10
補助因子を必要とする酵素がある
補助因子(非タンパク質性低分子化合物や金属イオン)
•補欠分子族 prosthetic group
•補酵素 coenzyme
•補因子 cofactor
アポ酵素 +
補助因子 → ホロ酵素
11
補欠分子族は酵素分子に共有結合などで
強固に組み込まれている
ピリドキサールリン酸
フラビンモノヌクレオチド
フラビンアデニンモノヌクレオチド
チアミンピロリン酸
ビオチン
金属 Co, Cu, Mg, Mn, Zn (金属酵素 metalloenzyme)
半透膜
透析で除かれない
低分子
12
補因子は酵素あるいは基質と可逆的に会合
酵素,あるいはATPの様な基質と,容易に解離しうる形で一時的に
結合する =透析により除くことが可能
一般的な補因子は 金属イオン
金属により活性化される酵素を
metal-activated enzyme
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補酵素
ビタミンB 群が補酵素の構造の主要部分を構成
ビタミンB群
補酵素
関わる反応等
B1 (thiamine)
チアミン二リン酸(TPP) アルデヒド基転移の運搬体
B2 (flavin)
FMN, FAD
酸化還元
B6
ピリドキサールリン酸(PLP)
アミノ酸代謝
ナイアシン
NAD+, NADP+
酸化還元
パントテン酸
補酵素A(CoA)
アシル基転移の運搬体
B12
コバラミン
水素移動の水素運搬体
ビオチン
ビオチン
カルボキシ基転移
葉酸
テトラヒドロ葉酸
C1単位の担体
テキストp.46~
9月に講義
14
多くの因子が反応速度に影響
速度理論 kinetic theory(衝突理論 collision theory)
結合を形成しうる距離範囲に接近あるいは衝突
エネルギー障壁を乗り越える運動エネルギー
A. 温度
温度が高くなると,運動エネルギーが高まり,反応物の衝突頻度が増
え,反応速度が上昇
10℃の温度上昇により起きる生体反応の速度上昇率,Q10(温度係
数)=2
より高温になると,酵素の三次元構造を形成している非共有結合を破
壊(変性)ヒト酵素では45-55℃
15
水素イオン濃度 pH
pH = -log [H+]
pH = 5
[H+] = 10-5
活
性
(
%
)
pH = 9
[H+] = 10-9
3 4
5
6
7 8
pH
9 10 11
酵素の活性部位の荷電状態
酵素の変性
極端なpHは酵素の変性をもたらす可能性
基質の荷電状態
酵素により異なる至適pH
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酵素濃度
酵素活性の測定
酵素反応の測定では初速度 initial velocity(vi)を用いる
反応産物の蓄積がほとんどないので,逆反応を無視できる.
酵素量に対して大過剰量の基質を通常用いる.
酵素活性に対する酵素濃度の影響を調べると,
初速度は酵素濃度に比例する
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基質濃度の影響
A
B
C
vi: 初速度(反応速度)
[S]:
基質濃度
:S
:E
Vmax: 最大反応速度
C点:高い基質濃度で,
反応速度が横ばいにな
る
双曲線状
hyperbolic
酵素分子の結合部位が
基質で飽和するため
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ミカエリス・メンテンの式
Michaelis-Menten式(1913年)
反応速度と基質濃度との関係(赤線)を表した式
Vmax[S]
v = ――――――
Km + [S]
反
応
速
度
v: 反応速度
[S]:基質濃度
Vmax:最大反応速度
図3-6
基質濃度
Km:ミカエリス定数 Michaelis constant
(ある特定の酵素量によって到達できる最大速度 Vmax の 1/2 の反応速度を与える
基質濃度)
ほとんどの酵素の場合,基質は,その酵素のKm値に近い細胞内濃度で存在する.
これにより代謝産物の濃度変化に対応した反応速度を自動的に調節できる
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ラインウィーバー・バークプロット
Lineweaver-Burk plot
図3-6
ミカエリス・メンテン式の両辺の逆数を
とって式を整理する
1/v = (Km + [S]) / Vmax[S]
1/v = Km /Vmax[S] + [S]/Vmax[S]
1/v = Km /Vmax[S] + [S]/Vmax [S]
1/v = Km /Vmax x 1/[S] + 1/Vmax
Lineweaver-Burk式(1934年)
反応速度の逆数を基質濃度の逆数に対してプロットすると直線関係得られる
KmやVmaxを求めることが容易
阻害形式の検討に用いることができる
このプロットをLineweaver-Burkプロットまたは二重逆数プロットとよぶ.
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阻害剤 inhibitor
不可逆阻害
阻害剤が非可逆的に結合
(システインプロテアーゼに対するヨード酢酸)
可逆阻害
阻害剤が可逆的に結合
競合阻害
competitive inhibition
非競合阻害 noncompetitive inhibition
不競合阻害
uncompetitive inhibition
阻害剤は薬として利用
1.スタチンstatin:HMG-CoAレダクターゼを阻害:高脂血症治療薬
アセチルCoA →→ HMG-CoA → メバロン酸 →→ コレステロール
2.ノイラミニダーゼ阻害薬:抗インフルエンザ薬
ザナミビル水和物(リレンザ),リン酸オセルタミビル(タミフル)
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競合阻害(competitive inhibition)
阻害剤が酵素の基質結合部位に結合する(阻害剤と基質の構造が類似)
阻害剤の濃度は一定
Vmax
競合阻害剤の阻害効果は,基質濃度を上げることにより解除される
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非競合阻害
• 阻害剤は酵素の基質結合部位とは別の部位に結合する.
• 基質の酵素への結合を妨げない.
• 阻害剤の量に対応する酵素,基質が不活性になる.
Vmaxが小さくなる
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不競合阻害
• 阻害剤は,酵素基質複合体にのみ結合する
p
P
[S]
1/[S]
24
酵素活性の調節
生細胞では代謝産物の流れは一方向性
最も遅い反応が全体の流れを調節(律速反応)
Aの流れが全体の
流れを調節
B:エネルギー
順位が変わらないと
しても全体では流れ
が進む
真核生物では逆反応は別の細胞内区画で行われたり,
特殊な代謝中間体が一方に存在することで両者が共存できるようになっている
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酵素活性の調節
代謝経路における律速反応の触媒能力 = 酵素分子の濃度
x
本来の触媒効率
1. 酵素の触媒効率の調節 数秒から数分
リガンドの可逆的結合
共有結合性修飾による調節
2. 酵素量の調節
酵素合成の調節
酵素分解の調節
(アロステリック調節)
タンパク質限定分解: 不可逆的
リン酸化:
可逆的
数時間
酵素誘導
酵素抑制
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アロステリック効果(多くの場合複数のサブユニット)
1.酵素の基質結合部位と異なる部位に低分子のリガンドが結合してその活
性が変化する現象
このような機能を持つ酵素:アロステリック酵素
活性がリガンドによって調節される現象:アロステリック制御
活性を調節するリガンド:アロステリックエフェクター
酵素にアロステリックエフェクターが結合すると,酵素の立体構造が変化し,
その結果,活性が変化する
フィードバック調節
例)AからB の反応を触媒する
A → B → C
酵素に最終産物 E 結合部位
(基質結合部位とは異なるアロステリック部位)をもつ
→
D →
E
2.基質自身がエフェクターとなって酵素活性が変化する(一つの酵素に同
一種類の基質が複数個結合し,その結合に協同性が見られる現象)
先に結合した基質がタンパク質の立体構造の変化をうながし,次の基質の結
合しやすさや酵素活性を変える
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アロステリック酵素の反応曲線はシグモイド状
(S字状)を描く
v
[S]
bはS字形となって正の協同性が表れている.bに正のアロステリックエフェクター
を加えると活性化されてS字の程度が小さくなり,aの曲線になる.
一方,bに負のアロステリックイフェクターを加えるとS字の程度が大きくなってc
の曲線になる.
アロステリック酵素では,基質濃度変化を敏感に反応速度に反映させるのに都合
がよい場合がある
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アロステリック効果の指標 Hill係数 (n)
n=1
n>1
n<1
Michaelis-Menten型の挙動
正の協同性
負の協同性
Hill式
v
Vmax[S]n
= ──────
Kmn + [S]n
この式をを変形
Vmax-v
log──── = n(logKm-log [S])
v
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共有結合性修飾
哺乳類の主要酵素は可逆的な共有結合性修飾により調節されている
プレニル化 (ファルネシル化(C15),ゲラニルゲラニル化(C20))
糖鎖結合
イソプレン
ヒドロキシ化
脂肪酸付加
メチル化
アセチル化
リン酸化―脱リン酸
ヌクレオチド化
ADP-リボシル化
NAD+
ADP-リボース
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リン酸化―脱リン酸
(相互変換,構造と機能の変化を引き起す)
プロテインキナーゼ
プロテインホスファターゼ
プロテインキナーゼは,ATPの 位のリン酸基をセリン,トレオニンあるいはチ
ロシン残基のヒドロキシ基に転移し,O-ホスホセリン,O-ホスホトレオニンある
いはO-ホスホチロシンに変える.リン酸化されたタンパク質はプロテインホス
ファターゼの触媒によってリン酸基が加水分解により除かれ,非修飾型タンパク
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質に復帰できる.
タンパク質の限定分解
不活性なタンパク質として分泌され,特定の分解により活性になる
多くのプロテアーゼは不活性な前駆体酵素(チモーゲン)として分泌される
ペプシノーゲン
ペプシン
トリプシノーゲン
トリプシン
キモトリプシノーゲン
キモトリプシン
自己消化から守る
迅速な対応(動員)を可能にする
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タンパク質の限定分解 がキモトリプシン(CT)のAsp102His57-Ser195の3つ組残基からなる触媒部位を形成
活性キモトリプシン
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2酵素量の増減による調節
タンパク質は常に合成され,分解されている(タンパク質の代謝回転)
酵素量は合成と分解のバランスで決まる
構成酵素constitutive enzyme:常に一定量合成
誘導酵素inducible enzyme:環境条件の変化に応じて合成量変化
常に一定,構成的であるが,生理的要因,ホルモン,食事により影響
誘導
合成を誘発する誘導物質の存在
基質類似物質
ホルモン(転写を調節)
抑制
代謝生成物が過剰に存在すると抑制により関連酵素の生合成
を抑制(アミノ酸合成系酵素,ヌクレオチド合成系酵素)
誘導も抑制も,調節を受ける遺伝子の上流域に位置する特殊なDNA
配列(cisエレメント)と異所から作用するtrans-acting転写調節タ
ンパク質を介する機構で行われる.
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酵素誘導の例
グルコースで生育した大腸菌
↓
乳糖を唯一の炭素源として培養(グルコースなし)
↓
最初は乳糖を代謝できない
↓
1~2分経過
β-ガラクトシダーゼが菌体内に大量に合成され(誘導),乳
糖を利用できるようになる
β-ガラクトシダーゼ
乳糖(ラクトース) → D-ガラクトース
+
D-グルコース
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分解による調節
テキスト141頁
ユビキチン-プロテアソーム経路
動物において,多くのタンパク質を分解
ユビキチンubiquitin
アミノ酸 76 個からなる小型タンパク質
(ユビキチン)が共有結合で付加(ユビ
キチン化)されるとプロテアソーム
の標的になる
プロテアソーム proteasome
ATP依存性タンパク質分解酵素群
細胞の特定のタンパク質(例,サイクリン)の調
節的な分解と欠陥タンパク質や壊れたタンパク質
の除去
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