第30回愛媛和算研究会資料発表 - 和算への旅

第 30 回 愛媛和算研究会
『現代数学教育に取り入れたい和算家の解法』
(資料発表)
長崎和算研究会
〒856-0827
米光 丁
大村市水主町 1-978-90
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はじめに
第 30 回愛媛和算研究大会のご案内を頂き、参加できないが資料発表ということでお願いできれば
と思い、『精要算法』巻之下(1781 年藤田定資著)の問題を『初等数学』(松田康雄氏発行)という研究誌
に掲載さて頂いている和算講座の次回分を発表してみます。皆様のご指導、ご教示をお願いします。
『精要算法』巻之下、問題 37. より
原文
問題.37
今図の如く、直角三角形内に大中小の円が内接している。
中円の直径 4635 寸、小円の直径が 2060 寸のとき大
円の長径はいくらか。
小円
釣
答曰く 大円の長径 7031 寸 000 有奇
術
大
中径に小径を掛けて平方に開きこれを天とする。天を
円
股
中
2 倍して中径と小径を加えてこれを地とする。1.5 より
円
斜率( 2)を引き余りに地を掛けてこれを人とする。
人に 2 天を加え人を掛けてこれを平方に開き、人と天
を加えると大径に合問
- 1 -
術
天= 中径×小径= 4635×2060=3090
地=2 天+中径+小径=12875
人=(1.5- 2)地=1104.500389
(人+2天)×人= (7284.500389)×1104.500389=2836.50022
大径= (人+2天)×人+人+天=7031.000609 寸となる。
(解法)
解法)1. 『精要算法集解』北川孟虎著文政 8 年 1825 年の解法
補助円を加え『算法天生法指南』第五巻会田安明著(1810)・『精要算法』等の結果を利用したもの。
1.黒円(補助円)を入れ
小
釣
小
⇒
大
釣
⇒
大
中
円
小
円
中
円
股
全
大
股
中
2.全= 大・ 中+ 大・ 小+ 中・ 小を利用する。
A
小円
O3
O1
O1
極
⇒
円
小
円
大
中
O2
O4
B
D
E
O4
円
B
C
股
D
E
△OBE に大円と B の間に極小円を内接させて考える。大円、中円、小円、極小円の中心をそれぞれ
O1,O2,O3,O4、各円の直径を d1,d2,d3,d4 とすると
d1
d1 d4 d4
O1B の長さは
2= + +
2 ,
2
2 2 2
d1
BE の長さは d1d4,O1E の長さは
2
2(d1-d4)=d1+d4 両辺を平方して 2(d12-2d1d4+d42)=d12+2d1d4+d42,
d12-6d1d4+d42=0
d4=3d1± 9d12-d12=3d1-2 2d1 ,d4=2d1-2 2d1+d1
d4=2d1-2 2d1+d1=( 2d1- d1)2
,
d4= d1( 2-1)
小
円
ここで『算法天生法指南』第五巻会田安明著(1810)
・『算法新書』千葉胤秀著(1830)
全
・『精要算法』巻之下前問結果などを利用する。
円
※『初等数学』第 72 号和算講座 35 回(拙著)
大
を参照してください。
円
- 2 -
中
円
全=甲= 大・ 中+ 大・ 小+ 中・ 小
だから
全=d1,大=d4 ,中=d2,小=d3 ,とすると
d1= d4・ d2+ d4・ d3+ d2・ d3
d2・ d3=A とおく
d1-A- d4 ( d2+ d3)=0
d4= d1( 2-1)より
d1-A- d1( 2-1)( d2+ d3)=0
d2=4635 寸、d3=2060 寸
A= 4635×2060=3090 , 2-1=B, B2=3-2 2≒0.171572 とおく
d1-3090= d1B( d2+ d3)
d12-6180d1+9548100=d1B2(d2+2A+d3)
d12-d1(6180+2208.9895)+9548100=0
d12-2d14194.49475+9548100=0
d1=4194.49475± 17593786.2-9548100(-は不適当)
d1=4194.49475+2836.491882=7030.986632
d1≒7031 寸
(解法 2.)
2.)内接円に六斜を書き、子丑+寅卯=辰巳(トレミーの定理:『数理無尽蔵』1830 年池田純夫著を
利用したもの
『精要算法解』梅村重徳著明治 4 年(1871 年)より
子丑+寅卯=辰巳(トレミーの定理)を利用する。
小
釣
小
⇒
大
大
卯 辰 丑
中
円
子
股
中
巳
寅
(解法)
六斜便覧矩合によって
氐= 大( 中+ 小)
(『算法助術』(前田賀前著 1841 年)第 40 番より)
子=
大
2
(子は直角三角形に内接する大円の半径の斜辺)
大氐
丑=
( 大+ 中)( 大+ 小)
小
氐
大
卯 辰 丑
子
(『算法助術』第 51 番より)
- 3 -
巳
寅
中
寅=
卯=
大 中
大+ 中
小
大 小
大+ 小
大
O
大A 2
2 寅
(証明)
正弦定理より
中
B
1
1
寅 2= 大 2- 大 2cos∠BOA
2
2
1
1
大-中
大 中
大 小
= 大 2- 大 2・
,寅=
同様にして卯=
2
2
大+中
大+ 中
大+ 小
大( 大+ 小)
辰=
2 大+小
小
(証明)
卯
中勾 辰
子
子卯
中勾=
(『算法助術』第 25 番より)
大
辰= 子2-中勾2+ 卯2-中勾2=子
=
大
2
(
卯2
1- 2+卯
大
子2
1- 2
大
中
大
)2
2
大 小
1 大( 大+ 小)
1-
+
・ =
大2
大+ 小
2
2 大+小
大( 大+ 中)
同様に巳=
2 大+中
子丑+寅卯=辰巳(トレミーの定理:『数理無尽蔵』)に代入する
大
大氐
大 中
大 小
大( 大+ 小) 大( 大+ 中)
・
+
・
=
・
2 ( 大+ 中)( 大+ 小)
大+ 中
大+ 小
2 大+小
2 大+中
1
大2氐
大2( 大+ 中)( 大+ 小)
{
+大 2 中小-
}=0
2
( 大+ 中)( 大+ 小)
2
{
大( 中+ 小)
( 大+ 中)( 大+ 小)
+ 中小-
}=0
2
2
2 大( 中+ 小)+2 中小-( 大+ 中)( 大+ 小)=0
2 大 中+ 2 大 小+ 中小-(大+ 大 小+ 大 中)=0
大 中( 2-1)+ 大 小( 2-1)+ 中小-大=0
( 2-1)( 中+ 小) 大+ 中小-大=0
( 2-1)( 中+ 小) 大=大- 中小
平方して
大(3-2 2)(中+小+2 中小)=大 2-2 大 中小+中小
ここで中=4635 寸、小=2060 寸、 中小=3090 寸を代入して
大(3-2 2)(4635+2060+6180)=大 2-大 6180+9548100
大 2-大(44805- 225750)+9548100=0
大 2-25750 大(1.74- 2)+9548100=0
大=12875(1.74- 2)± 128752(1.74- 2)2-9548100
- 4 -
大=4194.500389± 128752(1.74- 2)2-9548100 (-は不適当)
=4194.500389+2836.500215
=7031.000604 寸
≒7031 寸となる。
同様の問題を扱っている文献
『滋賀の算額』桑原秀夫・山口正・吉田柳二著昭和 52 年 p.16 大浜神社
『算法浅問抄解義』和算書の紹介北原勲著平成 17 年 p.91
などがある。
おわりに
「愛媛和算研究会」に参加させてもらいこの問題の説明をすべきところ、資料発表とさせて頂きました。
大変心苦しいところがありますが、この資料を先生方が生徒の皆さんに利用して頂けるならば
たいへん幸せに思います。
尚「初等数学」・「和算を楽しむ会・大村」・「長崎和算研究会」・「チャレンジ問題」のレジュメは毎
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てみてください。
- 5 -