PR GRAM REP RT プ ロ グ ラ ム レ ポ ー ト UTOKYO INNOVATION SUMMER PROGRAM2014 COMMENCEMENT CELEMONY 1 東大イノベーションサマープログラム(TISP2014)は多くの感動と達成感とともに成功裏に終了しました。昨年 始まったこのプログラムは、今回も昨年同様、世界各地の有力大学から極めて多くの応募がありました。問題意識 が高く、モチベーションに満ちた優秀な学生 60 名による 2 週間のプログラムは毎日が充実した密度の高いものと なりました。今回は地域イノベーションがテーマで、東京プログラムでイノベーションの起こし方を学んだ後、東 北プログラムでは高校生 24 名とともに地域からイノベーションを生み出すことを試みました。高校生に対するワ ークショプを設計し、実施するというのがプログラムの最後の活動でしたが、最初は尻込みをしていた高校生が、 最後はスキット(寸劇)を交え英語で自分たちのアイデアを発表する姿は感動的でした。高校生にモチベーション を与えることができたという体験が、参加者にとって大切な財産になることと思います。参加学生の今後の成長を 大いに期待します。 東京大学 i.school エグゼクティブ・ディレクター 堀井秀之 2 UTOKYO INNOVATION SUMMER PROGRAM(TISP) 東大イノベーション・サマープログラム 東京大学におけるイノベーション教育 ∼イノベーションの学校 i.school∼ 2009 年より東京大学では、 i.school(アイスクール)という教育プログラムが開校され、東京大学の学生を中 心にイノベーションを生み出す力を養うためのイノベーション教育を実践しています。i.school の教育プログラム は、20∼30 名の参加者を対象としたワークショップから構成され、年間に 6 回程度のワークショップを開催して います。i.school の特徴は、プロダクトデザインを中心とせず、テーマにサービスデザイン、社会的企業のデザイ ン等、様々な対象をバランス良く取り上げるところです。i.school における教育プログラムの目標は大きく 3 つ。 ①創造性を求められる課題を与えられた時、最適なワークショッププロセスを設計できるようになること、②新し くてインパクトを生み出すモノやコトを作り出せるという自信を持つこと、ならびに、③それらを設計したい、作 り出したいという動機付けをもつことです。 世界の大学生との他流試合 ∼東大イノベーションサマープログラム∼ 2013 年より i.school は、東大イノベーション・サマープログラム(TISP)を始めました。このプログラムは世 界の大学と東京大学の学生それぞれから 30 名の応募を募り、2013 年は海外からは 800 名を超える応募がありま した。学生は、ハーバード、オックスフォード、バークレイなど世界の有力大学からの参加があり、また東京大学 の学生も選考により 30 名が選抜され、参加します。参加者は夏休みの 2 週間を共にし、イノベーション教育にお けるスキルセット、マインドセットを集中的に学びます。スキルセットとは、ワークショッププロセスを設計する ための知識やスキル、グループワークを上手く進めるためのスキルなど。マインドセットとは、新しいアイデアを 提案することは楽しいことであるというような気の持ちようのことです。自分のアイデアを提案して賞賛されたと いうような成功体験を積み重ねることによってマインドセットは育ちます。これらを世界の大学生との他流試合と いう環境で学ぶことで、世界においても通用するイノベーションの力が身に付けられるのです。 地域の高校生へのイノベーション教育に挑む ∼モチベーションを生み出す∼ イノベーション教育の上で、実は最も重要なのがモチベーションです。何のためにイノベーションを起こしたい と思うのかという質問に対して、明確に答えられることが重要です。i.school では、モチベーションをどのように 教育するのかがイノベーション教育の最大の課題でした。そこで、2014 年の TISP では「地域イノベーション」 をテーマに、前半の9日間の東京プログラムで地域の良さを発見し、イノベーションにつなげるスキルセットとマ 3 インドセットを学びます。一方で後半の5日間の東北プログラムでは、岩手県立遠野高等学校の高校生 24 名とと もに、地域イノベーションを生み出します。大学生は高校生向けのワークショップをデザイン、実施し、参加した 高校生らは自分たちのアイデアを発表します。最初は尻込みしていた高校生が最後は英語で寸劇を交えて地元でイ ノベーションを起こすためのアイデアを発表してくれました。こうして高校生の変化を目の当たりにした大学生は、 自分たち自身でもイノベーションを起こすことに挑戦したいと思う動機付けが芽生えたのでした。 地域の高校生からはじまるイノベーション ∼地域イノベーションを目指すプログラム∼ いま多くの地域でイノベーションが求められています。しかしながら、よそ者である東京の大学生たちがやって きて調査を行い、アイデアを提案したところで果たして地域のイノベーションにつながるのでしょうか。例えアイ デアが良かったとしても、実行可能でなければイノベーションとは呼べません。そして、その地域に住んでいる住 民からすると、大学生がやってきて提案したアイデアを実現するために継続的に支援するのは厳しいものです。そ こで大学生と地域をつなげる一つの解になりうるのが、その地域の高校生たちへのイノベーション教育です。地元 の未来を担う彼らが、地域の魅力を大学生たちと一緒に再発見し、アイデアを地元に対して提案する。その過程で 高校生らは、新しいものを自ら生み出す方法論や楽しさを体験し、さらに地元に対する誇りや想いが生まれます。 そして、こうした想いをもった高校生が提案するアイデアこそ、地域住民は継続的にサポートをし、実現につなげ ていけるのではないでしょうか。これからも TISP は、世界中の大学生にとっての最大の学びの場であると同時に、 地域イノベーションのエンジンとしてのモデルとなることを期待します。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- PROGRAM SCHEDULE / プログラムスケジュール TOKYO PROGRAM / 東京プログラム 7/30・7/31 フィールドワーク・ワークショップ:TOKYO の融合の理解 8/1・8/2 イノベーション・ワークショップ I:地域イノベーションからのアイデア発想 8/4・8/5 イノベーション・ワークショップ II:和紙からのアイデア発想 - 先進都市東京を表現する - 8/6・8/7・8/8 - 東京オリンピックの新しい機会を創造する - ケースメソッド・ワークショップ:東日本大震災とアンレプレナーシップ TOHOKU PROGRAM / 東北プログラム 8/9・8/10 8/11・8/12 8/9・8/13 地域イノベーション・ワークショップ:遠野における地域イノベーションの実践 ファシリテーション・ワークショップ:遠野の高校生へのイノベーション教育プログラムの創造 アウトリーチ活動:大槌町への訪問 / 日本文化体験 4 Fieldwork Workshop: Understanding the Fusion of "TOKYO" フィールドワーク・ワークショップ: TOKYO の融合の理解 I think field observation is very suitable to begin the program because that way you can get a big picture of Tokyo as well as a lot of unique & interesting details. It is also a great way to get to know each other. Neysa Nadia Lestari / Universitas Indonesia 東京プログラムの前半では、フィールドワークやイノベーションのワークショップに取り組みます。東京は世界最 大級の都市型集積経済をなしていますが、他方来る 2020 年のオリンピックに向けて次の発展のフェーズに移行し つつあります。そうした中、 「融合」という言葉が東京を理解する鍵となります。本ワークショップでは、世界から 集まった参加者とともに、浅草寺に代表される日本の伝統と、スカイツリーに代表される近代性が融合した街並み を持つ浅草などを筆頭に、東京各地を巡り、東京の「融合」という一面を探りました。そして、イノベーションの 鍵となる観察力と、物事の文脈を読み解く力を講義と実践の両方から学びました。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------日時:7/30・7/31 会場:都内各所、東京大学 駒場キャンパス KOMCEE ファシリテーター:横田幸信 / 東京大学 i.school ディレクター 5 i.school Workshop I: Creating from Regional Innovation: Projects to attract people visiting the Tokyo Olympic Games イノベーション・ワークショップ I: 地域イノベーションからのアイデア発想 - 東京オリンピックを新しい機会を創造する - The method of thinking analogically used in this school of innovation seemed to me a more realistic way of rethinking innovation. Your way of thinking is key in innovation. Sadiq Gulma / Pan African University 本ワークショップは、地域の課題とそれを克服してきた地域イノベーションの事例の分析を行い、それらの価値を 形成するメカニズムの抽出をしました。これらのメカニズムを、事前に実施していた東京のフィールドワーク・ワ ークショップでみつけた魅力的な価値と掛け合わせることで、2020 年の東京オリンピック・パラリンピックに訪 れる人々を惹きつける新しいアイデアを考え、提案しました。参加者は i.school が提供するアナロジーを用いた思 考法によるアイデア創出のエッセンスを、ワークショップを通じて学びました。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------日時:第 1 回 8/1・8/2、第 2 回 8/4・8/5 会場:東京大学 駒場キャンパス KOMCEE ファシリテーター:堀井秀之 / 東京大学 i.school エグゼクティブ・ディレクター 6 i.school Workshop II: Expressing Tokyo, the Leading-Edge City: Using Japanese traditional paper WASHI イノベーション・ワークショップ II: 和紙からのアイデア発想 - 先進都市東京を表現する - RCA's workshop was exhaustively following the rull of "think through making". It was very intensive and difficult but enabled us to experience a sense of genuine creativity. Hisataka Kizu / i.school, The University of Tokyo 日本の伝統である「和紙」は数世紀にわたって様々な用途に用いられてきました。今回はその和紙をテーマとして 焦点をあてました。和紙がもつそのユニークな機能を生かした新しい現代的な活用法を考え出すために、参加者は Think Extreme(常識を越えろ) を念頭にいれたブレインストーミングを用いるなど、系統的なアイデアを膨ら ませていく様々手法を用いながら、和紙に対する自分の概念の限界を広げるなどしました。ロイヤル・カレッジ・ オブ・アート(RCA)が実践するアイデア発想から実際に手を動かすプロトタイプまでを行い発表することで、参 加者は英国で実践されているイノベーション教育のエッセンスを学びました。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------日時:第 1 回 8/1・8/2、第 2 回 8/4・8/5 会場:東京大学 駒場キャンパス KOMCEE ファシリテーター:Miles Pennington / Royal College of Art Team 7 Case Method Workshop: Tohoku 3.11 Disaster & Entrepreneurship ケースメソッド・ワークショップ: 東日本大震災とアンレプレナーシップ It showed how it is necessary to push the boundaries of our thinking, to reinvent ourselves and distance from traditional thinking, as well as work hard and passionately, to turn an idea into reality, and continue it to expand and to improve. Gonzalo Ortega / Universidad Politecnica Madrid What impressed me most was the activeness of international students in discussions and time for questions. Moreover, they found a lot of new and revealing ideas that we, or indigenous people would never think of. The whole day was filled with stimulus and novelty. Misa Hiraga / The University of Tokyo 東京プログラムの後半からは東日本大震災が、東北、さらには日本に対してどのような影響を及ぼしたのか。第一 線で活躍する方々の体験談や想いを聴き、東北の復興の未来について意見交換をしました。またケースメソッドの ワークショップとして、まず 2011 年 3 月に他地域同様に巨大津波に見舞われたにも関わらず、小中学生の高い生 存率を誇り「釜石の奇跡」と呼ばれた岩手県釜石市の防災教育を題材に、社会問題が内在する因果構造と対応する 解決策の分析手法を学びました。また、ビジネスによって被災地区に経済的および社会的な価値を生み出した起業 家に焦点をあてた事例も二つ扱いました。「イチゴ農家の復興」:被災した宮城県山元町のイチゴ農家の復興を支 援した NPO 法人 GRA の事例。そして、「石巻工房」:世界的に知られたデザイナーたちの手がける DIY キット や家具の生産、販売を行う宮城県石巻市にある工房の事例です。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------日時:8/6・8/7・8/8 会場:東京大学 駒場キャンパス KOMCEE ファシリテーター:山崎繭加、中井祐、小松崎俊作、山中礼二 / Case Method Team 8 Idea Creation: Creating regional innovation in Tono City アイデア創出ワークショップ: 遠野における地域イノベーションの実践 We broke up into our fieldwork groups and applied some of the techniques we learned in the Tokyo Program to Tono. We discussed findings, opportunities, and preliminary ideas derived from those opportunities. It was a great chance to truly understand the meaning of regional innovation. During group presentations, I was surprised to find that all groups picked up on essentially the same charms and resources of Tono City. Our consensus was an encouraging confirmation of the city s value, at least from an outsider s perspective. Jenny Byun / University of California, Berkeley 東北プログラムでは、岩手県遠野市を舞台に、地元の遠野高校の高校生たちと合流をし、ホップ、わさび、暮坪カ ブの生産者、ジンギスカン販売店、どぶろく・燻製豆腐など、各チームで別れフィールドワークを行い、夜には地 域の方々の家に宿泊(民泊)しました。大学生と高校生のそれぞれのフィールドワークの視点を織り交ぜることで、 遠野の地域資源を見直することを目指しました。そして、その地域資源から地域イノベーションにつながるアイデ アの創出に挑戦し、そのアイデアを高校生たちの前で発表。高校生たちからアイデアの評価をしていただきました。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------日時:8/9・8/10 会場:遠野未来創りカレッジ / 岩手県遠野市 / 民泊 ファシリテーター:小川悠、TISP2014 学生スタッフ / TISP TEAM 9 Workshop Facilitation: Creating & facilitating a workshop for Tono High-school students ファシリテーション・ワークショップ: 遠野の高校生へのイノベーション教育プログラムの創造 Claps and cheers filled the hall as the high school students received certificates for their 3-day program. On the third day, the students were fully engaged in our workshops and came up with piles of crazy goods and services to improve Tono. The Team Wasabi high school students came up with the Iro-iro Food Coop, which one aim was to pass down traditional cooking skills from the elderly to the youth. Although their ideas may not be implemented, the workshops allowed high school students to realize their town s potential, and above all, gave the students pride to be a Tono citizen. Looking at the presentations, the university students realized how we could change other s lives, and were filled with unitary hope that the high school students bring a bright future Tono. Kotoe Kuroda / The University of Tokyo 東北プログラムの後半は、大学生参加者がこれまでのプログラムで身につけてきたことを生かし、高校生へのイノ ベーション教育のワークショップの設計を行いました。設計が終わると、高校生を対象にワークショップを実践し ました。アイデアの発表では、大学生顔負けの堂々とした高校生参加者による発表がされ、 「遠野大好き」と声を揃 えるパフォーマンスをするなどのアイデアが生み出されました。こうして初めは消極的な様子も見られた高校生も、 ワークショップを通じ、新しいアイデアを考え、形にし、多くの人の前で堂々とアピールできるようになっていま した。大学生はイノベーション教育をつくる過程を学んだだけでなく、こうした高校生の変化を目の当たりにし自 分自身もイノベーションを起こすことに挑戦したいと思う動機付けが大学生に芽生えることを目指しました。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------日時:8/11・8/12 会場:遠野未来創りカレッジ ファシリテーター:小川悠、TISP2014 学生スタッフ / TISP2014 TEAM 10 Outreach Activity: Visiting Ootsuchi-cho / Japanese Cultural Experience アウトリーチ活動: 大槌町への訪問 / 日本文化体験 Our first destination in Tohoku was Otsuchi-cho, a coastal town in the Iwate prefecture. In Otsuchi-cho we were able to make direct observations of the areas that were devastated by the 2011 Tohoku earthquake and tsunami. We were given a firsthand account of the event from the survivors and had the privilege to hear their personal experiences. We learned that in order to create regional innovation, it is important to understand the real situation of the region and recognize the needs of the local community. Our visit to Otsuchi-cho enabled us to comprehend the seriousness of the situation and the problems the people of Otsuchi-cho were facing. Woohyun Leo Jo / Seoul National University TISP のアウトリーチ活動として、東北プログラムの初日に東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県大槌町に訪れ ました。現地の方の協力のもと、震災当時の状況や復興に対する想いについて直接町の方からお話しを伺いました。 震災から私たちはなにを学ぶことができるのか。参加者それぞれが、現場を見て、触れて、感じることで、震災に ついて考える貴重な機会となりました。また、東北プログラムの最終日には、地元の方々が企画してくださった日 本文化体験が行われました。剣道の指導や日本の昔から伝わる遊びなど、海外から参加者はもちろん、日本の参加 者も、みなが一つになり、東北プログラムでの最後の時間を地元の方々と共に過ごしました。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------日時:8/9・8/13 会場:大槌町 / 遠野未来創りカレッジ ファシリテーター:おらが大槌夢広場 TEAM / 遠野未来創りカレッジ TEAM 11 高校生の感想文 TISP を通じての心情の変化 - 岩手県立遠野高等学校 1年 北湯口至 私は今夏の TISP での体験を通して、地元、遠野に対する見方や、その他のことにも、変化がありました。 私は、ジンギスカンのチームで活動しました。そこで、ジンギスカン用のバケツを売っている金物店を見学に行 ったり、スーパーマーケットでジンギスカンが販売されている様子をみたり、安部さんのところへ行ってお話を伺 ったりしました。その中で私は、東大生の皆さんのジンギスカンに対する考えが私たち遠野の人間とは違うのだと 分かりました。 それは、私たちは、焼肉をするときには「とりあえずジンギスカン」なのですが、他の地域ではそうではないと いうのです。どういうことかというと、他の地域では焼肉といえば豚肉か牛肉などが主な食材ですが、遠野ではそ れとほぼ同じライン(寧ろそれ以上の位置)にジンギスカンがあるのです。私は今までそれが普通だと思っていた ので他の地域とは違うのだと知って驚きました。 この一連の見学において、私が最も学んだことは、東大生の皆さんをはじめとする大学生の皆さんの学ぶ姿勢に ついてです。どんなに些細なことにも気になったことは積極的に質問し、答えを突き詰める、その姿勢を見習わね ばならないと感じました。それと同時に、自分が質問されたときには知識や語彙が足りずにうまく説明ができない こともあり、 (特に海外の学生さんには)申し訳ない気持ちになりました。ですから、これから先、もっともっと知 識をつける必要があると思いました。ここに書いたことは、今回の体験を通じて学んだことのほんの一部です。他 にもたくさん得るものはありました。今回は、TISP に参加することができて、本当に勉強になったし、何よりも、 すごく楽しかったです。本当に有難うございました。 12 TISP で変わった考え方 - 岩手県立遠野高等学校 1 年 宮崎加菜 この夏の「東大イノベーション・サマープログラム」は、私にとってとても思い出に残るものでした。数ヶ月経 った今でもとても印象深く残っています。 TISP は「遠野」について考えるということでした。事前学習のときに「遠野の魅力はなんですか?」という質問 に対し私が一番に出てきた魅力は「自然」でした。しかし、その時「自然しかない」というようなマイナスの考え 方だったと思います。田舎だから、都会に比べて何もない、何か大きな建物があるわけではない、観光する場所も かぎられている、そんな風に遠野の魅力に深く知っていなかったと思います。 プログラム中に海外の学生や東大生の方からよく聞いたのは「人が優しい」ということ「自然がきれい」という ことでした。私は、ずっと遠野に住んでいたのにあまり気付くことができませんでした。それは、いつの間にか当 たり前になって慣れすぎていたからだと思います。当たり前のように接してきた私たちの周りの人は違う目線で見 てみると、遠野の大きな魅力の一つだったと気付きました。また、私自身遠野の一番の魅力だと思っていた自然を 褒められると、なんだか自信になりました。 プログラムを通して学んだことは、 「少し視点を変えて見るだけで新しい発見がある」ということです。海外の学 生、東大生の方に聞いた遠野の魅力は、どれも自分の中で当たり前になっていて実はそれが魅力だということに気 が付けました。視点を少し変えただけで新しい発見があると学びました。 プログラム前は「遠野は自然しかない」というようなマイナスの考えでした。しかしプログラムを通して「遠野 には自然がある」と考えられるようになりました。さらに、特産物、市民の優しさなど遠野には魅力がたくさんあ ると気付き、プラスの方向に考えるようになりました。他の市や都会はたくさんの魅力で溢れていて羨ましいとば かり思っていたけど、今は遠野も同じくらいいいところだし、まだまだ可能性が溢れていると思います。遠野のた くさんの自然と、たくさんの人の優しさの中で生活できて、またそこが私の地元で良かったと思うようになりまし た。このプログラムに参加できて本当に良かったです。 TISP を通して - 岩手県立遠野高等学校 2 年 熊谷遼 この夏休み、東大イノベーションサマープログラムに参加して得たものは2つあります。 まず1つは、遠野の良いところを再発見できたことです。プログラムの初めは地元の遠野について悪いイメージ を持っていたが、グループで意見を出し合い、特産品など実際に遠野について触れることで、良いイメージを持つ ことができたことは故郷に自信を持つことにつながりました。 2つめは、留学生と交流することで外国の文化に触れることで、海外への意識が強くなったことです。それぞれ の国には独特の生活様式や言語が根付いており、それは非常に興味が湧きました。海外との関係が自国に影響を及 13 ぼす今日においては、それは自らを成長させるのに役立つと思います。また、外国の文化からは遠野に活かせるこ ともあるはずであるから、これからの遠野を考えたときに今回のプログラムで知ったことを力にしたいと思います。 今回、大学生や留学生との交流を通して学んだことを活力として、今後の学校生活を送ろうと思う。 学んだこと - 岩手県立遠野高等学校 2 年 加藤みのり 東大イノベーションサマープログラムでは東大生や海外の大学生のみなさんと遠野について話し合いました。イ ノペンとポストイットを使ってひたすら遠野の良いところを出したり、こんな施設がほしいということや、使わな くなったものを再利用して新しいものを作りたいなど、現実では不可能かと思われることもとにかく書いて意見を 出しました。今考えると、 「いろいろおかしなことを言ったな」と思います。しかし、大学生のみなさんは「とにか く量を出して」と言っていました。量を出すことでそれぞれの意見が繋がったり、そこからまた新しい意見が生ま れたりしました。すると最初は不可能だと思っていたことも、なんとかすれば可能になるのではないかと希望にも なりました。思ったことを次々と意見として出すことで素晴らしいことが思いついたり、新たなことに気づくこと ができるということを学びました。 そしてたくさんの意見を出すことで改めて遠野の良いところに気づかされたり、遠野を好きになる気持ちが強く なりました。この年になって自分の住んでいる町について考えられる時間を設けて頂いたことに感謝しています。 意識改革 - 岩手県立遠野高等学校 1年 佐々木奏 私は、TISP に参加したことで、様々な事を感じ、学ぶことが出来た。その中でも大きく二つのことについて、参 加以前と以後で考えがかわった。一つ目は、遠野に対する意識だ。三日間のプログラムを通して、遠野のことにつ いてたくさん考えた。その時に、自分が地域のことをあまり理解していなかったことに気がついた。大学生に遠野 のことについて訪ねられたときに、満足に答えることができない自分がとても恥ずかしかった。また、16年住み 続けて「何も無い田舎だ」と思っていたが、自然や伝統など私の周りには誇れるものがたくさんあることに気がつ いた。そして、たくさんの人に私達の自慢の遠野を知ってもらいたいと思うようになった。二つ目は、私の人生に おける「英語」の存在についてだ。たくさんの国の人々がいる中で、英語を通してお互いのことを知れたことに、 感動を覚えた。自分の扱える言語が一つ増えることによって、いくつもの道が開け、世界が広がるのだと思った。 それまで受験対策としてしか視野に入れていなかったが、学びたい気持ちが私の中でとても大きなものになった。 もちろん簡単に習得出来るものではないが、精一杯の努力をしてゆくつもりだ。 始めは参加に不安や緊張ばかりだったが、このプログラムに参加できたことで、私の人生に様々な可能性と選択 肢が生まれた。東大生・海外学生の皆さん、TISP に関わっているすべてのひとに感謝の気持ちでいっぱいだ。 14 大学生の感想文 We cannot teach people anything; we can only help them discover it within themselves. Galilei Galileo Sadiq Gulma / Pan African University Googling through the web on a faithful day, I found this interesting opportunity about a Summer Innovation Camp in Japan. I thought the application was speaking directly to me because I felt connected to the whole program. This was because of a number of reasons. First of all, there were many instructors of the program who we share the same career background with; civil engineering. Secondly, I like to think of creating new things. Unfortunately, I haven t created anything new. I thought if I attend an innovation workshop, I will learn how to create innovation. Furthermore, I am studying in a university that has innovation attached to its name. I felt it was my responsibility to create innovation as a student of that institution. I applied to TISP 2014 hoping to get a proper training on how to create innovation. After attending the program, it left me with many deep impressions. One is the ease with which everyone can create innovation. Through the brainstorming and workshops, every participant was thinking more creatively as compared to the first day of the program, when we were told to come up with new ideas about new services in a shopping mall. Another impression is how it changed my thinking about where innovation can be created. I had thought innovation can only be created when you are in a certain environment. Contrary to that wrong thinking, TISP made me realize innovation can be created anywhere. The workshops in TISP 2014 expanded my thinking capacity about innovation. Creative thinking can indeed be taught. The workshops showed me how to think about innovation from two different perspectives. One using analogy, which I find very effective. And the extreme thinking, one that I found 15 fascinating. The multicultural and multidisciplinary structure of TISP defined to me how creating innovation with diverse thinking improves the quality and translation of the idea to many people. Some ideas look one dimensional on first glance, but when people of different nationalities start commenting, you realize that it translates into many new meanings to them. The last part of TISP, teaching High School students how to create innovation has left me with a huge impression. It has given me experience in which I will be more than willing to share whenever I find the opportunity. I believe a lot of people do not realize the power of creating things that lies in their hands and existing in their environments. However, when you are guided and shown the way, thinking creatively becomes easier. Considering I come from Africa, where there are many opportunities to do so many things. Many people in Nigeria can benefit much from creating regional innovation. Economically, we are a nation of more than 170 million people. There is a lot of economic and human resources that can be utilized for creating regional innovation. I will be more than willing to teach people how to create regional innovation whenever I find an opportunity. Not all businessmen are entrepreneurs, but all entrepreneurs are businessmen. I think what makes them to different is the creativity the entrepreneurs bring into businesses. I hope to guide or be part of a team that will create regional innovation anywhere in the future. I hope to extend my new thinking ways in offering solutions to local businesses in environments I find myself in. TISP is really a worthwhile experience I will forever treasure. Conclusively, the quote by the famous Italian Philosopher, Engineer, Physicist etc. mentioned at the beginning of this piece signifies what I took out most from my Innovation Camp in Japan. In my own words, it helped me realize the great potential for innovation lying both in my hands and existing in my environment. It is truly unlocking hidden potentials. 16 「体験」によって変わっていく価値観 - 東京大学 学際情報学府 石倉一誠 昨年留学に行き、様々な価値観や知識を持つ多国籍の学生と意見を交わすことの面白さ、外部の目線から見た日本 の興味深さを知ってしまった。あの体験をもう一度したい!と強く思っていた。 そして、もうひとつ重要な動機は、被災地をまだこの目で見たり、具体的に何かアクションを起こしていなかった ことにある。何かしたい何かしたい、と思いつつ何も出来ないでいたので、TISP はとてもよいチャンスだと思った。 TISP に参加した感想は、間違いなく「参加してよかった」。この一言に尽きる。日本が好きで TISP に参加するため に来日した学生、日本のことはよくわからないが面白そうだから参加した学生など、様々な視点や価値観が TISP には混在していた。日本人学生にしてもそうだ。海外で長い間過ごした人、生まれてずっと海外に住んでいて、つ い最近初めて日本の学校に通い始めた人、留学経験のある人、純粋な日本人学生…。あの 60 人は、私が所属した コミュニティの中で間違いなく最も多様性が高いグループであった。東北での数日間には、それに加えて東北の現 地の方々や高校生が加わるのだ。その面白さと言ったら筆舌には尽くしがたいものがあった。 そういった多様性がもたらしてくれる刺激の最たるものは、自分に無かった/失われていた視点を与えてくれるこ とだと思う。高校生の純粋で、真っ直ぐな瞳が忘れられない。真剣に、精一杯目の前のものを学ぶ姿勢は、TISP で 得た刺激の中でも今後絶対大切にしたいと思っている。また、民泊で受け入れてくださった NPO の方々やその子ど もたち。彼らの努力をサポートしたい、純粋に子どもたちが将来素敵な人生を過ごせるにはどうしたら良いか、と いう視点で TISP に関わらせてくれた。 TISP で過ごした 2 週間のあいだ、講義ではない時間にもさまざまな人と触れ合うことで、知識ではない、なんとい うか「体験」によって自分の価値観が変わっていくのを感じた。何気ない会話や交わす質問、彼らのものを見る眼 差しや反応をつぶさに見ているうちに、自分のなかの何かが変化していく感覚を持った。TISP を終えたあと、それ らを振り返って、「ああ、なんていい経験だったんだろう」と思った。 東京に戻ってきてまた忙しい日々が始まるが、東北で学んだあの純粋な姿勢や他の学生が教えてくれた価値観を大 切に守りながら、自分も他者に影響を与えられる人になりたい、と思った。 17 参加者・応募者データ 海外選抜 計 29 名、東大選抜 計 27 名、遠野高校選抜 計 24 名 海外選抜(大学・人数) :アールト大学/Aalto University 3, カリフォルニア大学バークレー校/University of California, Berkeley 3, ソウル大学/Seoul National University 2, 清華大学/Tsinghua University 2, ブラ ウン大学/Brown University 1, 大連工科大学/Dalian University of Technology 1, ESB ビジネススクール/ESB Business School 1, チューリッヒ工科大学/ETH Zürich 1, ベルリン自由大学/Free University Berlin 1, 韓国 外国語大学校/Hankuk University of Foreign Studies, 1, マサチューセッツ工科大学/MIT 1, パン・アフリカ大 学/Pan African University, Institute for Basic Sciences, Technology and Innovation 1, 北京大学/Peking University 1, タンマサート大学/Thammasat University 1, 香港大学/The University of Hong Kong 1, トゥ ールーズ・スクール・オブ・エコノミクス/Toulouse School of Economics/Keio University 1 ポツダム大学 /Univeristy Podstam/Germany 1, インドネシア大学/Universitas Indonesia 1, ケンブリッジ大学/University of Cambridge 1, ローザンヌ大学/University of Lausanne 1, オックスフォード大学/University of Oxford 1, ポリテクニカ・デ・マドリード大学/UPM Universidad Politecnica Madrid 1, 延世大学/Yonsei University 1. 海外選抜(専攻・人数) :工学 4, 経済・経営 4, デザイン 3, 心理学 2, コンピューター工学 2, 日本学 1, 未来学 1, 教育学 1, 情報学 1, 建築学 1, 生物学 1, 哲学 1, 放送学 1, 自然科学 1, 園芸学 1, 政治学 1, 環 境学 1, 数学 1, 英語学 1. 東大選抜(専攻・人数) :教養_文 3, 教養_理 3, 公共政策学 2, 法律・政治学 2, 経済・経営学 3, 心理学 1, 教育学 1, 後期教養 1, 医学 2, 機械情報工学 1, 建築学 1, システム工学 1, 情報学 2, デザイン科学 1, 技 術経営戦略学 1, 生命科学 1, 科学 1. 応募者データ:海外:427 名 / 東大:80 名 (順不同) 18 CORPORATE SPONSORS 株式会社フューチャー・デザイン・ラボ 三菱自動車工業株式会社 江崎グリコ株式会社 住友精化株式会社 株式会社日立製作所 株式会社東芝 デザインセンター ジブラルタ生命保険株式会社 (順不同) Copyright (C) Center for Knowledge Structuring, The University of Tokyo. 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