センターハウスを造ります。

1994年、堀部安嗣建築設計事務所設立。
2002年、
「 牛久のギャラリー」で第18回
新建築賞吉岡賞を受賞。2003年から東
京理科大学非常勤講師、2007年から京
都造形芸術大学大学院教授を勤める。
着に応えてくれない家﹂、と言った
けど、段々と貧相になる家です。
﹁愛
スとして建築することにしました。
よる設計を依頼し、センターハウ
目の建築家2人に、このテーマに
トハウス﹂を掲げました。質の低
このセミナーは﹁質の高いローコス
に用いられた言葉です。
ナー﹂の参加者募集のための広告
﹃中間層﹄攻略のための工務店セミ
この文言は、大阪で開催された﹁新
工務店セミナーが掲げた言葉は、住
それが真に望みたい家です。
に応えてくれる家がほしいのです。
長い必要と、長い好みと、長い寿命
りません。仮にコストは低くても、
ん。陳腐化するような家は欲しくあ
子義弘の建築実践の場であるアトリ
に師事し、堀部さんは、建築家・益
東京藝術大学名誉教授の益子義弘氏
2人の建築家は共に、建築家であり
住宅は、ファッションではありませ
い﹁ローコスト﹂はあまたあります。
宅にとって、最もプリミティブ 根(
エ に 学 び︵ 19 9 1∼ 19 9 4年 ︶、
松澤穣氏に依頼。
それらの家は、コストを下げるた
みたいな家﹂と言った人がいます。
せてしまう家です。
で、時間が経てば経つほど、色褪
れています。竣工した時がピーク
た、難易度が高い建築である。外
が融合された、あるいは複合され
﹁住宅はプライベートとパブリック
住宅を手がけてきた建築家です。
暮らす人と街並みを精緻につなぐ
堀部さんは、土地と季節、そこに
れることでしょう。
ながら、環境に溶けるように建てら
委員会は、今、最も脂が乗り、注
そ こ で﹁ 里 山 住 宅 博 in 神 戸 ﹂実 行
ところではないでしょうか。
ないと、よく分からないのが正直な
のか、目に見えるものとして示され
がどんな姿を持ち、どんなカタチな
なりの暖をとれると考えました﹂
太陽熱を利用して床暖房にすれば、か
ンは不要、冬も、南斜面を活かして、
の中を抜けるように配慮すればエアコ
のですが、山からおりてくる風が、家
∼5℃低い程度です。夏、気温は高い
昼間は東京とほぼ同じくらい、冬は 4
には川が流れています。気候は、夏の
南側はひらけていて、数十メートル先
葉は似合いません。相互の仕事を見
ま す が 、 お 二 人 に﹁ 競 演 ﹂ と い う 言
子による競演だね﹂と言った人がい
ほ と ん ど 重 な っ て い ま す 。﹁ 兄 弟 弟
れました。2人が師事された時期は、
︵ 1990∼ 199 4年︶を勤めら
外構コードを依頼していますが、
計画として結実しました。
ンハウスを兼ねてはどうか、という
て、この住宅博のインフォメーショ
れならいっそ、センターハウスとし
方々であり、論議を重ねる中で、そ
ウスの設計者として依頼されていた
2人の建築家は、もともとモデルハ
現をはかることを決意しました。
1963年東京生まれ。東京芸術大学美術学部建築科
卒業、同大学研究科建築設計修了、オーストリア国
費留学、東京芸術大学益子研究室助手、2013年多摩
美術大学環境デザイン学科教授、2003年 (株)松澤
穣建築設計事務所代表。安宅賞(東京芸術大学)
・匠
美賞(東京芸術大学)
・PROLEGOMENA賞(ウィーン
工科大学)・SDレビュー新人賞(鹿島出版会)・OM地
鹿沼の自邸
域建築賞・マロニエ建築・景観賞(栃木県)。
﹁社員食堂の、古びたお湯呑み茶碗
最初はテカテカ・ピカピカしている
観やたたずまいはパブリックであ
お二人の言葉をよく読むと、考え
演依頼者のインタビュー記事から︶
こそ、決められることがある﹂︵講
は、実行委員三社が担
センターハウスの施工
点になります。
ウィークデイの営業拠
センターハウスは、
まで迫っており、竹林の奥は杉の林、
てた自邸です。家の北側は竹林が間近
﹁北関東の山あいの、緩い南斜面に建
次のように語っています。
雄︶を受賞した自邸の家について、
OM地域建築賞︵審査委員長/奥村昭
心とされ、寡作の建築家です。氏は、
松澤さんは、研究と教鞭の仕事を中
活動を行ってこられました。
い﹂という強い思いを抱いて設計
適合した原始的なものを見出した
﹁必然性のあるフォルムや、環境に
根幹をなすことをやってみたい﹂
者共同・協同・協働して発意し、実
感を持ち、センターハウスを、三
なく、このミッションに強い使命
単なるジョイント工事というので
イシンビルド
︵代表/清水一人︶は、
務 店︵ 代 表 / 本 峰 久 ︶・ 株 式 会 社 ダ
表/森田寛人︶・株式会社いなほ工
実行委員である株式会社三ツ輪︵代
セプトを示す建物です。
ンと、同時に、この住宅博のコン
る建物であり、インフォメーショ
n 神戸﹂を訪ねた人が、一度は寄
センターハウスは、﹁里山住宅博 i
円で依頼できます。
します。出展工務店は、月額3万
者名簿に記載していただくことに
ンフレット・資料類を手渡し、来場
者をモデルハウスにご案内し、パ
お預かりして、ウイークデイ来場
展工務店から依頼を受け、カギを
難題です。センターハウスは、出
のは、人の面でも、経費の面でも
クデイに人を派遣し、張り付ける
て、土日・祭日はともかく、ウイー
遠隔地から出展する工務店にとっ
また、﹁これが住宅と言えるような
と語っています。
います。
﹁里山住宅博﹂は、田瀬理夫さんに
り、外壁や屋根は風景の一部であ
まつざわ みのる 松澤穣
応えてはいけない。建築家だから
このセンターハウスは、出展工務
松澤さんは藝大益子研究室で助手
事務局/いなほ工務店 〒661-0001
兵庫県尼崎市塚口本町4丁目7番8号
ておられることは実によく似てい
建築家/東京藝術大学
る。建築主の思いや趣味は一時の
ましこ よしひろ 店が学べる模範例ともなります。
益子義弘
ることに気づきます。
めプラスチック成型部品が多用さ
源的・純粋 で)、ベーシック 基(本的・
初歩的 な)ものです。しかし、それ
設計を、堀部安嗣氏と
人もいます。
センターハウスを造ります。
華美ではないけど、野暮でない家。
News
強・用・美を統合した、新時代の家づくりとは?
専門学群環境デザインコース卒業。
益子義弘アトリエ
News
里山住宅博
in神戸
神奈川県生まれ。1990年、筑波大学芸術
発行/里山住宅博 in 神戸実行委員会
名誉教授。
1940年東京に生ま
れる。1964年東京藝
術大学建築科卒業、
1968年同大学院修
了 。吉 村 研 究 室 助 手
を経て、永田昌民氏とM&N設計室を開設し、建
築 家 と し て 活 動 。主 な 著 書 /『 建 築 へ の 思 索 ─
場所を紡ぐ』(建築資料研究社)『湖上の家、土中
の家─世界の住まい環境を測る』
『住風景を創
る』(彰国社)『家ってなんだろう』(インデック
ス・コミュニケーションズ)ほか。
7
欲望であり、その要望に建築家は
市原の家
ほりべ やすし 堀部安嗣
優れた建築家なら、ヨダレが出る
えます。
アゲハチョウがやってきます。
ですね。ミカンの木を植えると、
い。蝶々も、トンボも、住人なん
力を入れますので、外構費は、普
込みで1080万円です。緑化に
です。土地価格は、出展料・広告費
ないのですね。
の本質価値は、コストの多寡では
の工務店が多いのですが、住まい
るとすると、最大限 23 20万円
通の予算より100万円余分に見
げ た﹁ 住 宅 の 五 原 則 ﹂ に 共 感 を 覚
い た ア ン ト ニ ン・ レ ー モ ン ド が 挙
大阪のセミナーで言われて
̶
たか
ような得難い土地です。
﹁里山住宅博﹂プロデューサー小池一三氏に聞く
これまでにない、
︿まち﹀のつくり方
すね?
を建築費と見ることが出来ます。
小池
彼が戦前に出した図面集と
田瀬さんの知恵は具体的で
̶
瀬理夫さんですね。
小池
そうです。小さな瓶にメダ
どんなふうですか?
か、分厚い自伝など読み直してい
ランドスケープは、あの田
̶
きっかけは何ですか?
小池
﹁一坪里山﹂運動に一緒に取
聞き手
前評判が高いようですね。
小池
U Rから今回の土地を買われ
カを飼う場合、休耕田の土を入れ
ておくと、バクテリアが栄養を供
小池
対象は30∼40歳代、年
ます。
えました。
り組んできた仲です。
給し、水を浄化してくれるので雨
収で見ると、夫婦共働きで5 00
購入層の対象から見ると、
̶
たコスモさんが、傾斜地付の土地を
は、家の庭しかないと?
水だけで育つんだ、とかね。
どう扱ったらいいのか苦慮され、私
がネットワークしている、尼崎のい
小池
そうです。街路樹や公園の
失われた在来種を守れるの
̶
なほ工務店さんを通じてご相談を受
らモデルハウスになり得ると考え
最大住宅取得者層でもあり、だか
ゆる、新
﹁中間層﹂です。この層は、
建築家ですが、この五原則を見る
小池
レーモンドはモダニズムの
宅ではないですね。
ルームに押し込める西洋住
̶
緑を植える植栽屋さんは在来種を
在来種の緑は、外来種と比較する
望まれる住宅像に話を進め
̶
る人でしたね。
と、日本の建築をよく分かってい
総合住宅展示場のモデルハ
̶
ました。
∼700万円層でしょうか。いわ
けたのが切っ掛けでした。
宝物の土地だと?
と、色が薄く、表情がやわらかい
たいと思います。想定される建築
望まれる住宅像は?
小池
そうです。傾斜土地は南ひ
と田瀬さんは言います。日本人ら
費から入っていいですか?
言っていたら商売になりません。
な壇の土地を理想としますが、北
しい色彩感覚を育てたい、と言わ
﹁ヘタ地﹂の土地を、これは
̶
傾斜でしてね。しかし、京都のい
ウ ス よ り 、 10 0 0 ∼ 2 0 0 0 万
でもない﹂というフレーズは、こ
﹁華美ではないけど、野暮
̶
円も低いコストですね。
の五原則にありますね。
小池
今回の建物は、モデルハウ
スであると同時に建売住宅です。
小池
そうです。応募されている
小池
そうです。工務店が造る﹁普
れます。
土地と建物を合わせて35 00万
工務店の建築コストは、高級志向
い庭は北側に面しています。南は
ではないと?
円以内が、近隣の建売住宅の相場
の住宅博に永田さんも参加された
3.直截であること (Direct/簡素で明快な家。節約は浪費より美しい) 4.正直であること (Honest/正直で、律義な家。 構造自体が仕上げで あり、同時に唯一の飾り)
質を見極めることが高級)
田瀬さんと組まれて緑に目を開か
れました。そんな繫がりもあって、
昌民さんが亡くなられて1年経ち
﹁小さな家﹂の設計者、永田
̶
う機会にしたいですね。
通の家﹂を、多くの人に見てもら
います。学び合って、
これからの
﹁普
追
※悼文は、左記
サイトにてご覧いただけます。
web
京都市生まれ。OMソーラーの創始者のひとり。
そ の 功 績 に よ り、「愛・地 球 博」で「地 球 を 愛 す る 世 界 の
100人」に選ばれる。「近くの山の木で家をつくる運動」
の提唱者・宣言起草者としても知られる。( 財 ) 住宅建築省
エネルギー機構理事・ソーラー住宅推進協議会会長、国交
省「木の家から林業再生を考える委員会(委員長/養老孟
司)」委員などを歴任。
【主な現職】町の工務店ネット代表/住まいネット新聞「び
お」編集人。手の物語有限会社代表取締役/NPO法人緑
の列島ネットワーク名誉理事。
【主な著書・編集】『仕事の創造』( 共著/岩波書店 )『木の
家に住むことを勉強する本』( 編集人/農文協 )『OMソー
ラ ー の 家』(共 著 / 建 築 資 料 研 究 社)『働 く 家』(編 著 / 農
文協)『リンゴのような家』( 新建新聞社 ) 住宅雑誌『チル
チンびと』『住む。』などを創刊し、編集人を務める。
田瀬さんは、人だけが住民
̶
その斜面を近景にして、三田盆地
小池
住むのは、人間だけではな
な建物を実現しているという工務
2.単純さ (Simple/すべてを取り去ったときに残る本質と原理) 逆光、北側の庭は順光なんです。
を中景に、後背の山々が遠景で見
通の家﹂の基本はここにあると思
でしょうね。
工 務 店 は 、 繰 り 返 す ﹁小さな家﹂の設計者・
︶
ました。追悼文 ︵ ※
を拝読し、感銘
今回いろいろな建築家が参加して
か?
を受けました。
永田昌民さんのこと
小池
むろん簡単なことではあり
小池
新建ハウジングの求めに応
こ と で 練 磨・ 上 達 で
きる?
ません。ただ建築家が一回性の﹁特
じて書いた一文です。私の娘の家
www.s-housing.jp/archives/47359
こいけ いちぞう 小池一三
工務店にやれるでしょう
̶
殊解﹂の仕事であるのに対し、工
を永田さんに設計していただいて、
ありがとうございました。
̶
務店は繰り返し設計し、施工でき
そのことも書きました。
もし生きておられたら、こ
̶
ます。
しかし、注文住宅の工務店
̶
は、建築家以上に建てる家ごとに
違うことをやっています。
小池
そこが問題ですね。折角の
強みを生かし切れていません。日
本の工務店は、国際的に見て、難
しい建築基準法も長期優良住宅も
クリアできる能力を持っているの
に、建築家の仕事になると、こな
すだけで身に付かないことが多い
ようです。
一手間、二手間掛ければよ
̶
。
…
くなるなら、みんなやれる筈です
が
小池
建築家から学んで、設計力
を内部化し、このコストで、こん
永田昌民
造園家・田瀬理夫さんと組まれての仕事
5.経済が大事 (Economy/安くつくることでなく、ムダをしないで、本 アントニン・レーモンド/チェコ出身の建築家。フランク・ロイド・ライ
トのもとで学び、帝国ホテル建設の際に来日。その後日本に留まり、モダ
ニズム建築の作品を多く残す。日本人建築家に大きな影響を与えた。
小池
多分ね。永田さんは、晩年、
店が伸びていますね。
1.自然 (Nature/ナチュラルではなく、大きな自然を意味するネーチャー)
06-6429-9489
Te l /
永田さん設計の
「小さな家」。下の写真は小池さんの娘さんの家。建築費1800万円でした。
出展申込みに関するお問い合わせは、
里山住宅博 in 神戸実行委員会まで。
います。
アントニン・レーモンド「五つの原則」
Web/ http://kobe-sumai.jp