授与機関名 順天堂大学 学位記番号 乙第 2280 号 The factors associated with pain severity in patients with knee osteoarthritis vary according to the radiographic disease severity: A cross-sectional study (変形性膝関節症患者の疼痛関連要素は X 線的疾患進行度により変化する:横断研究) 清村 幸雄(しむら ゆきお) 博士(医学) 論文内容の要旨 変形性膝関節症(膝 OA)の疼痛は侵害受容性疼痛に分類され、その主要構成要素は炎症 と機械的負荷とされる。膝 OA は進行性疾患であるが、これまでに疾患進行度の視点に よる疼痛と疼痛構成要素との関係についての詳細は明らかにされていなかった。そこで 本研究は、膝 OA の疼痛構成要素は X 線疾患進行に伴い変化するとの仮説を検証するた めに行われた。 膝痛を主訴とする閉経後女性のうち、続発性膝 OA を除いた 160 人の Kellgren/Lawrence (K/L)分類 2~4 度の内側型膝 OA 患者(平均年齢 70.5 歳)を対象とした。対象者を早 期群(K/L2; 67 名)と進行期群(K/L3 と 4; 93 名)の 2 群に分けた。2 つの疼痛スコア(疼痛 の Visual Analog Scale[VAS] と 日 本 版 膝 関 節 症 機 能 評 価 尺 度 の 疼 痛 関 連 項 目 [JKOM-pain])に対しての血清 interleukin(IL6)濃度、血清高感度 C 反応性タンパク質 (hs-CRP)濃度、立位膝 X 線下肢骨アライメント Anatomical Axis Angle(AAA)の影響に ついて重回帰分析を用いて検討した。解析は対象者全体、早期群および進行期群につい て行われた。 対象者全体では血清 IL6 濃度と AAA が 2 つの疼痛スコアに有意な影響因子となった。 しかし、早期群では血清 IL6 濃度のみ、進行期群では AAA のみが疼痛スコアに対して の有意な影響因子であった。よって、血清 IL6 濃度が早期膝 OA、AAA が進行期膝 OA の疼痛と関連することが明らかとなった。膝 OA 疼痛の主要構成要素は、疾患進行によ って炎症から機械的負荷に変化していくことが示唆された。
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