レポートの書き方

レポートの書き方 研究者が新たな事実を発見したり、新たな理論あるいは装置等を創造したとしても、それを明
確に記述して公表しない限り成果としては認められない。研究者としての業績や能力が、一般に
公表したレポートの質と量によって判定される理由はこの点にある。新たな事実や理論を求める
ことが実習の目的ではないが、基礎的な研究技術、理論等を応用して生物学を直接体験的に学ぶ
ものである以上、学んだことがらをレポートに明確に記述することも実習の重要な内容でなけれ
ばならない。レポートの作成にあたっては、以下の諸点に注意する必要がある。 1 . レ ポ ー ト は 、 そ の 内 容 が 他 人 に 正 し く 理 解 さ れ る も の で な け れ ば な ら な い 。 レポートは、散文や詩ではない。記述に誤りがなく、論旨が明瞭であり、表現が適確である
ことはもちろんであるが、読み手の想像力によって解釈が異なる文章であってはならない。
また、レポートそれ自体として必要かつ充分な情報を含み、完結したものでなければならな
い。実習の手引書と解説に基づいて実験をおこない、実験結果もおおよそ予測できるとして
も、読み手が予めそれらすべてを了解しているものと期待して記述すべきではない。 2 . タ イ ト ル 頁 に は 実 験 の タ イ ト ル 、 学 籍 番 号 、 氏 名 、 グ ル ー プ で 実 験 し た 場 合 は 共 同 実
験 者 の 氏 名 を 記 入 す る 。 3 . [ 序 ( Introduction) ] で は 実 験 の 目 的 を 明 示 す る 。 一般的には実験の背景となる知見や理論を説明し、その上に立って当実験でなにを調べよう
とするのかを明瞭に記述する。この授業のレポートでは、テキストに記述してあるので、簡
潔に目的を列挙するだけで良い。 4. [ 材 料 な ら び に 方 法 ] で は 実 験 に 用 い た 材 料 と 、 実 験 の 手 順 、 方 法 を 記 す 。 手引書ならびに解説に基づいて実験をおこなうので、結果を理解する上で必要な最低限の点
についてだけ記述。とくに手引書には記入されていない具体的な数値などや、手引書とは異
なる操作、手順については含める。 5. [ 結 果 ] は 具 体 的 な デ ー タ を 示 す 図 ま た は 表 と 、 実 験 の 流 れ に 沿 っ て 文 章 で 記 述 す る 。
実験目的ならびに方法との関連性を明確に意識し、得られた事実のみを具体的なデータを引
用して記述する。通常推測や結果の評価等は含めない。[結果と考察]として、ひとまとま
りの結果を記述したあとに、それぞれその部分に対する考察を加えても良い。 6 . 図と表には簡単なタイトルと解説をつけ、テキストを参照しなくても内容が理解できるよう
にする。作図についての注意は、次項を参考にする。 7 . [ 考 察 ] で は 結 果 の 評 価 と 関 連 し た 知 見 と の 対 比 を 通 じ て 、 結 論 を 導 く 。 実習の目的に即して、論理に飛躍のないよう要点を論旨明解に記述する。とくに期待された
ものとは異なる結果が得られた場合には、いかなる原因が推察されるかを述べよ。 8 . [ 参 考 文 献 ] に は 、 参 考 に し た 文 献 を レ ポ ー ト の 記 述 に 表 わ れ た 順 に 列 記 す る 。 テキスト中に引用した場合は括弧内に番号で記入し、[参考文献]の項にその番号に続いて
著者名、公表年、文献のタイトル、雑誌であればその巻数とページ、単行本であれば出版社
等を記入する。 9 . レ ポ ー ト は 、 必 ず 期 限 に 間 に 合 う よ う 提 出 し な け れ ば な ら な い 。 18
なお、 レポート作成に当たっては、以下の点に注意して下さい。
1. 実験の背景、目的、方法はテキストに記述してあるので、これをレポートにその
ままコピー・ペーストする必要はない。結果と考察に必要な情報のみを、簡潔に
記述するだけで良い。
2. 結果は文章で項目に分けて順次記述し、データをまとめた図表をその中で適宜引
用する。
3. 図表は、それによって伝える情報を的確に表現するよう工夫して作成し、結果の
対応する記述の中に配置する。写真を図に含める場合の注意事項は、別ファイル
を参照する。
4. 考察は、結果とまとめて「考察と結果」としてよい。
5. の考察のポイントは以下の通り。
1. アフリカツメガエルの受精と発生
•
実験1の結果から、卵の受精環境の塩濃度と受精率ならびに精子の運動性と
の関係を論ぜよ。
•
実験2の結果から、受精における Ca の役割について説明せよ。
•
ハロゲンイオンに対する膜イオンチャンネルの透過性は、周期律表の下にあ
るものの方が大きく、F-<Cl-<Br-<I-の順である。このことに基づいて実験
2+
3の結果を考察し、多精拒否機構に関して論議せよ。
2. アフリカツメガエルの血球分化とグロビン遺伝子の発現
•
•
•
結果をもとに、アフリカツエガエル尾芽胚の造血組織と幹細胞の分化について
考察する
結果から、アフリカツエガエルの胚発生に伴う赤血球の分化とグロビン遺伝子
の発現変化について、わかったことをまとめて考察する
今回の実験に関連して、脊椎動物の発生に伴う造血組織と血球の分化、ならび
にヘモグロビン型の変化について論じる
作 図 に 当 た っ て の 注 意 点 図は、それによって何を表現し、何を読者に伝えたいかを明確に意識し、必要にして充分な情
報を盛込む。以下に、Photoshop™(WordあるいはPower Pointでも可)を用いて胚の写真を組合せ
た図を作成する場合を例にとって、注意点を列挙する。 1. 写真をトリミング(不要な部分を切除)するとともに、組合せる写真の明るさ、色調、コン
トラストなどが同等となるように調整する。縦横をそろえた区画内に配列する。 2. 全ての写真で胚の向き(前後、背腹)をそろえる。 3. 写真に A、B、C...などの記号を入れ、説明にそれぞれが何の写真かを記す。 4. 必要に応じて、注目すべき部分を矢印や記号で示し、何を示すか説明に加える(写真のサイ
ズや背景色を考慮し適当な大きさ、形、色で示す)。 5. 写真の拡大率はスケールで示す。倍率(x100 など)は、作図、プリントする際の拡大・縮小、
あるいはプロジェクターで投射したり別のファイルに転載する時等に変わってしまう。 図1.抗幼生型グロビン抗体によるアフリカツメガエル尾芽胚のホールマウント染色。胚の造血
組織である腹部血島(VBI)と赤血球の分化を観察するために、パラフォルムアルデヒド固定
した胚を、抗幼生型グロビンマウスモノクローナル抗体と HRPO 標識抗マウス IgG で処理し、
ジアミノベンチジンを含む基質液で染色した。A.尾芽胚(St. 32)の染色像。腹部血島
(VBI;白矢頭)に染色が認められる。B.尾芽胚(St. 34)の染色像。腹部血島(VBI;白
矢頭)に加えて、その周辺や血管に沿って(赤矢頭)染色が認められる。C.Aの腹部血島
を含む部域の拡大。染色された細胞が腹部血島に認められる。D.Bの腹部血島を含む部域
の拡大。腹部血島に加えて周辺に染色された細胞が見られる。BのスケールはAとBに共通、
DのスケールはCとDに共通。 19