山椿/花水木 - 第二東京弁護士会

Yamatsubaki
山 椿
7
踵の骨の骨折
悩み多き弁護士
助け、次のステップの後押し
足には自信があった。若い
弁護士は半分カウンセラー
ができれば…と。
男性弁護士と一緒に歩いても
だと思っているが、紛争は解
6年前にひめしゃら法律事
決して遅れをとらなかった。
決しなければならない。その
務所を設立した。判・検事で
依頼者にも「先生、フットワ
狭間でいつも悩む。
あれば定年の65歳の直前であ
ークいいですね」とほめられ
近頃改めて裁判(広い意味
った。5年たてば若手も一人
前になり「引退」して趣味の
ていた。
と こ ろ が、 で あ る。 昨 年
山菜採りと絵を描くなど悠々
末、踵の骨を骨折してしまっ
自適の生活ができると期待し
た。ギプスをはめられ、約1
ていたが、そううまくはいか
か月はどこに行くのもタクシ
ない。
「古希」の今でも「所
ー。モノレールの階段を一段
長」という立場で日々働かね
踏み外しただけ、しかも最初
ばならず、いつまでも事件活
のレントゲンでは発見されな
動に追われるとわが身がすり
いくらい小さな骨だったが、
きれてくる感じもする。
骨折は骨折、診断は「全治3
「志は千里にあり」たい?
か月」であった。
曹操の詩の一節に、
昨年9月に70歳になったが
(老驥は櫪に伏して)
老驥伏櫪
自 分 自 身「 古 来 希 な 」 年 を
杉井 静子
迎えたことが信じられなかっ
●Shizuko Sugii
(21期)
志在千里(志は千里に在り)
(烈士は暮年にして)
烈士暮年
壯心不已(壮心已まず)
た。しかし、この「事故」で
で調停審判なども含む)の結
とあり、共感する自分がい
果 が、 依 頼 者 の 人 生 そ の も
る。
弁護士46年
のを狂わせる重大な結果を生
「引退したい」というのは
今年で弁護士登録46年目と
む、ということを痛感する。
意外と本心ではないのかもし
なる。弁護士になった時は24
えん罪事件に限らず、離婚事
れない。
歳の独身で、どこに行っても
件 で も 離 婚 が 認 められ るか
昨 年9月 か ら 今 年 の1月 ま
弁護士には見られなかった。
どうか、誰が親権者になるか
で、八王子市にある東京薬科
まだ女性弁護士が少ない時
は、夫婦のみならず子どもの
大学の漢方薬物学の聴講生と
代で、
「あんた本当に弁護士
人生にかかわる。法曹はその
して通った。
か!」
「女はたよりないので男
ことを肝に銘じなければなら
最近になって林望さんの
「もう若くない」ことを思い
知らされた。
の弁護士に変えてくれ!」と
ない、と思う。
よく言われた。その上、三人
私は、いわゆる「やり手弁
ピケティの「21世紀の資本」
の子どもを産み育てながらの
護士」でも「勝ち組弁護士」
とか読んでいる。今でも「志
弁護士活動。
「半人前弁護士」
で も な い。
「負け組弁護士」
は千里に在り」たいと思って
を自認していた。だから、
「え
でいいと思っている。裁判で
いるのかもしれない。
ばらない、優しい、親切」を
いい結果が出なくても、依頼
モットーにしてきた。
者に寄り添い、気持の整理を
「文章の品格」とか、トマ・
36 NIBEN Frontier●2015年5月号
D10888_36-39.indd 36
15/04/08 13:24
山椿 花水木
Hanamizuki
花水木
7
弁護士になって欠かさず続
達と同様のノウハウ等を中堅・
たいと常々思ってきた。故に、
けていることが3つある。DHA
若手も持ち、増員の効果として
一弁護士にすぎない私でも自由
(頭をよくしたいと思い)
、ポリ
より広く多くの人に同様のサー
に思うところを記載してよいと
フェノール(心臓を強くしたい
ビスを提供できるようになるな
いうこの機会に、少し意見させ
と思い)を飲むことと本誌を読
らば有益と思うし、教育が充実
ていただいた次第である。
むことだ。いろいろあり早くに
していれば若手も自分の仕事に
ところで、本来の私は政治的
独立状態になった私にとって、
なこととは無縁である。サプリ
他の先生の仕事ぶりを拝見する
の効果は不明だが、何とか十
機会は多くなく、本誌で惜しみ
数年弁護士として生きて来られ
なく自己の知識やノウハウを披
た。1つ1つの仕事に一所懸命
露してくださる先生方の記事に
対応することで、また次の仕事
は、随分と仕事のやり方や考え
をご紹介いただける様になると
方を教えていただいてきた。
よく言われるが、正にそのとお
今、弁護士増加の中で頻繁
りだと思う。弛まぬ努力と研鑽
に若手の保護が叫ばれている
は依頼者のためにも自己のため
が、職域の拡大や会費の減額
にも重要だと、綺麗ごとではな
の話が中心との印象がある。し
く感じている。
かし、私自身のことを振り返
猫のグリと。
ってみるに、若手に最も必要
今は同期と二人で事務所を
経営しており、後輩弁護士もで
なのは、自助努力は前提とし
柳楽 晃秀
て、やはり弁護士としてのノウ
●Akihide Nagira
(55期)
ハウ、知識、経験を得ることで
きた。昔一人で事務所を運営し
ていた時もあったため、仲間が
いるのはとても有り難いと実感
はないかと思う。これらがない
少し安心感を持てるようになる
できる。ただ、昔はよく依頼者
内は職域を拡大したところで活
と思う。ノウハウ等を享受した
に携帯番号をお伝えしていたた
かすことはできないし、これら
中堅・若手がそれをより進化さ
め、今でも事務所ではなく直接
なくして職域を拡大しても社会
せ先達にフィードバックするこ
携帯に連絡があることが多い。
の不利益になる気がする。それ
とも大事と思う。そうしてより
それにより依頼者とのつながり
故、私は過度な会費減額はせ
実力の伴った競争が弁護士間
を保てた面があるし顧客サービ
ず、逆に弁護士会の資金を充
に生まれれば、弁護士へのニー
スになってよいと思うが、眠る
実させその人的物的拡充を図る
ズも新たに生じるのではないか
まで(携帯の電源を切るまで)
とともに、先達のノウハウ等を
と思う。
緊張が解けない悩みもある。
中堅・若手に伝える教育作業に
私は元々弁護士増員に反対
さて、今回私より若手の方
もっと費用を回し、若手育成お
だが、それはさて置き、増員を
に役立つことを記載したかっ
よび弁護士全体のレベルアップ
進めたならその対をなすものと
たが、うまくできず申し訳な
を図るべきではないかと思う。
して、利害関係や特定の団体に
い。ただ、私の記述は別とし
単に弁護士の人数を増やすの
とらわれない、全体を見据えた
て、本誌で勉強することは有
みでは混乱が生じるだけである
中堅・若手へのノウハウ等の伝
益と思うので、最後にそれを
が、当該分野でトップを走る先
授、教育を積極的に進めて貰い
お勧めしたい。
NIBEN Frontier●2015年5月号
D10888_36-39.indd 37
37
15/04/08 13:24