論文 - 株式会社野村昌弘の研究所

論文要旨
北陸地方におけるコンクリート用骨材の
アルカリシリカ反応性の評価に関する研究
野
村
昌
弘
平成 19 年 1 月
1
論文要旨
2
論文要旨
博
士
論
文
北陸地方におけるコンクリート用骨材の
アルカリシリカ反応性の評価に関する研究
金沢大学大学院自然科学研究科
環境科学専攻
環境創成講座
学
氏
籍 番 号 0523142415
名
野村昌弘
主任指導教員名 鳥 居 和 之
3
論文要旨
4
論文要旨
論 文 要 旨
北陸地方におけるコンクリート用骨材のアルカリシリカ反応性の評価に関する研究
A Study on the Evaluation of Alkali-Silica Reactivity of Concrete Aggregates
Produced in Hokuriku District
Abstract
In this study, the lithological and mineralogical characteristics of reactive aggregates produced in the
Hokuriku District were investigated, and the methods of evaluating ASR for reactive aggregate in this
district was developed. A research for local aggregates has revealed that reactive aggregates supplied from
the river of this district include volcanic rock systems (andesite, rhyolite, and tuff) and sedimentary rock
systems (chert). River gravel and river sand were found to include such reactive minerals as volcanic glass
and cristobalite. On the other hand, crushed andesite stone produced from the Noto peninsula was found to
contain such clay mineral as montmorillonite as well as volcanic glass and cristobalite. Volcanic rocks with
high alkali contents were also found to be distributed over this district. Their use for concrete aggregate
can increase the alkali content of pore solutions over a long period, which may increase the possibility of
ASR in concrete. The application of accelerated mortar bar methods with external alkali supply (ASTM C
1260-1994 and the Danish method) and accelerated curing testing on cores (the ASTM and Danish
methods) to the evaluation of ASR were investigated in consideration of the influence of external salt from
the environment, such as the salt-laden air on coastal structures and the deicers on road structures.
1. 緒 言
本研究では,北陸地方の反応性骨材の岩石・鉱物的特徴とその分布状況を明らかにし,この地
方の骨材に適した ASR 評価法について検討した.岩石・鉱物学的特徴では,北陸地方のコンクリ
ート用骨材として使用されている川砂,川砂利の岩種含有率の実態を調べ,反応性骨材として火
山系岩石(安山岩,流紋岩,凝灰岩)および堆積岩(チャート)を確認した.河川産の安山岩や
流紋岩には,反応性鉱物として火山ガラスやクリストバライトを含有していることや能登産の安
山岩砕石では,火山ガラス,クリストバライトのほかに多くのモンモリロナイトなどの粘土鉱物
の含有も多く確認された.これらの岩石は同じ岩種であっても,できた年代により反応性鉱物の
種類が大きく変化し,これらを後背地とする山岳地帯より,河川の上流,中流,下流での堆積過
程が異なることから,北陸地方における河川産骨材の岩種含有率は複雑なものであった.また,
北陸地方の特徴としてアルカリ含有量の高い火山岩が分布しており,これらをコンクリート用骨
材として使用した場合,
長期にわたり,
細孔溶液中のアルカリ濃度を高める可能性が考えられた.
さらに,北陸地方の海岸部の構造物では,飛来塩分の影響を受けることや道路構造物では冬期に
散布される凍結防止剤(主成分 NaCl)による外来塩分の影響を受けることも考慮し,ASR による
i
論文要旨
図-1 北陸地方の ASR の課題と本研究の目的
残存膨張性の評価法として外部からアルカリを供給するコアの促進養生試験(ASTM 法,デンマー
ク法)を適用するとともに残存膨張性の有無の判定基準を提案し,この判定基準の妥当性につい
て検証した.北陸地方における ASR の課題と本研究の目的のながれを図-1 に示とともに,以下に
本研究によって得られた結果について述べる.
2. 北陸地方で産出する骨材の岩石・鉱物学的特徴とアルカリシリカ反応性試験の適合性に関
する研究
本研究では,日本の反応性骨材の種類と岩石・鉱物学的特徴を述べるとともに,北陸地方のコ
ンクリート用骨材(川砂,川砂利,砕石,山砂,砕砂)でアルカリシリカ反応性試験(化学法(JIS
A 1145-2001)およびモルタルバー法(JIS A 1146-2001))における試験結果の現状を調べた.ま
た,北陸地方を代表する 17 種類の骨材を対象として,4 種類の試験法にて実施した骨材のアルカ
リシリカ反応性の判定結果(化学法(JIS A 1145-2001)
,モルタルバー法(JIS A 1145-2001),
促進モルタルバー法(ASTM C 1260-1994,デンマーク法)
)の整合性を検討した.
北陸地方の主要な反応性骨材は,第三紀中新世前期~中期の海底で噴出し,熱水変質を受けて
緑色(ないし雑色)を呈する火山岩を主とする地層(グリーンタフ)からの安山岩,流紋岩およ
び凝灰岩であり,これらの続成作用により,同じ岩種でもアルカリシリカ反応性をもつものや非
反応性の骨材が複雑に混入していた.この代表的な反応性骨材である安山岩(川砂利,砕石)は,
反応性鉱物である火山ガラスやクリストバライトを含むとともに,とくに石川県能登産の安山岩
砕石では,風化・変質の過程で生成した粘土鉱物(モンモリロナイト,バーミキュライト)も含
有しているものが多くあった.一方,化学法(JIS A 1145-2001)で「無害」と判定された骨材で
ii
論文要旨
もモルタルバー法(JIS A 1146-2001)で「無害でない」と判定されたものがあり,モルタルバー
法(JIS A 1146-2001)の判定結果は,必ずしも構造物の ASR 損傷状況と一致しなかった.それに
対して,試験的に導入した促進モルタルバー法(デンマーク法)の判定結果は構造物の ASR 損傷
状況と良く一致していた.
3. 北陸地方で産出する骨材からのアルカリ溶出性状とアルカリシリカ反応に及ぼす影響に関
する研究
本研究では,北陸地方とその周辺地域の 26 種の細骨材を温度 38℃の飽和水酸化カルシウム溶液
に浸せきした.その後,浸せき日数とともに水酸化カルシウム溶液中のナトリウムおよびカリウ
ムの濃度の変化を分析し,骨材からのアルカリ溶出性状について検討した.また,北陸地方の 1972
~1985 年に建設された道路構造物 28 基から,コンクリート試料を採取し,コンクリートのアル
カリ量の現状を調査した.また,アルカリの起源をセメントと骨材とに分類し,構造物の ASR 劣
化度や岩種含有率との関係を調べるとともに偏光顕微鏡にて砂の岩種を特定したうえで,EPMA に
より骨材からのアルカリの溶出状況について分析した.
骨材からのアルカリ溶出性状に関しては,火山岩(安山岩および流紋岩)や長石類を多く含む
川砂ほどアルカリの溶出量が増大し,川砂からのアルカリ溶出量は,コンクリート 1m3 に換算す
ると,最大 0.5 kg/m3 に相当した.
構造物における骨材からのアルカリ溶出の検証に関して,コンクリートのアルカリの起源をセ
メントと骨材とに区別した結果,骨材の全アルカリ量の推定値は,0.4~4.8kg/m3 となった.セメ
ントのアルカリだけでなく骨材のアルカリも考慮し,アルカリの総量規制値を見直す必要性があ
った.また,構造物で使用された骨材で,偏光顕微鏡により長石の変質が確認されるとともに,
火成岩および変成岩の構成率が増加するほど骨材の全アルカリ量が増大した.
EPMA によるアルカリ分布状況に関して,偏光顕微鏡により確認された長石の変質部分ではアル
カリ濃度が低く,早期にアルカリが溶出する傾向が考えられた.川砂のアルカリ溶出性状試験の
傾向から,早期のカリウムの溶出は火山ガラスからのものであり,溶液の浸透に伴い,ナトリウ
ムが長期にわたり溶出することが考えられた.
4. コンクリートのアルカリシリカ反応性の評価に関する研究
本研究では,北陸地方を代表する河川流域から 27 種類の川砂,川砂利を採取し,岩種含有率を
把握したうえで普通セメントならびに高炉セメント B 種によりブロックを作製した.このブロッ
クより,コア(φ100 ㎜,φ55 ㎜)を採取し,コアの促進養生試験(ASTM 法およびデンマーク法)
を実施した.また,ASR を促進した大型 RC 試験体(φ800 ㎜,H=1500mm)を作製し,7 年間屋外
暴露を行い,ASR による挙動を追跡した.この挙動を把握したうえで 3 種類のコアの促進養生試
験(JCI-DD2 法,ASTM 法,デンマーク法)を適用し,コアの残存膨張性試験の結果との整合性に
ついて検討した.さらに,コアの促進養生試験(ASTM 法)において,養生温度および水酸化ナト
リウム(NaOH)溶液の濃度を変化させ,その膨張特性について比較検討した.さらに構造物から
採取したコアに対し,養生条件,温度 80℃の1N・NaOH 溶液浸せき法と温度 40℃の 0.5N・NaOH
溶液浸せき法の比較を行い,その妥当性についても検討した.
河川産骨材を用いたブロックより採取したコアの促進養生試験による残存膨張性の評価では,
コアの促進養生試験(ASTM 法)の膨張率は,反応性岩種の含有率(安山岩,流紋岩,凝灰岩,頁
iii
論文要旨
岩およびチャートの合計)との間に正の相関が認められ,骨材の最大寸法 25mm の場合にはコア径
φ55mm を,
骨材の最大寸法 40mm の場合にはコア径φ100mm を選択することが適当であった.
一方,
コアの促進養生試験(デンマーク法)では,コアの膨張率がコア径や骨材の最大寸法に関係なく,
安山岩,頁岩およびチャートの含有率と高い相関が認められた.安山岩が主要な反応性骨材であ
る北陸地方では,コアの促進養生試験(デンマーク法)によりコンクリートのアルカリシリカ反
応性を正確に評価できることが示された.これらのことより,ブロックから採取したコアの膨張
率を促進養生条件下(温度 80℃の 1N・NaOH 溶液浸せき,温度 50℃の飽和 NaCl 溶液浸せき)で測
定することにより,セメントと骨材の各種組合せや混合セメントの使用を考慮したコンクリート
のアルカリシリカ反応性を迅速に評価することが可能であった.
大型 RC 試験体より採取したコアの促進養生試験による残存膨張性の評価に関して,無補強試験
体では,ASR による内部膨張により,水平方向で約 0.8%の膨張率に達したのに対し,鋼板巻立て
試験体の水平方向および鉛直方向の膨張率は約 0.3%に収まっていた.無補強試験体では 7 年間で
ASR による膨張が収束しているのに対し,鋼板巻立て試験体では ASR 膨張余力が残存していた.
この結果を参考にコアの促進養生試験(JCI-DD2 法(試験日数 91 日)
,ASTM 法(試験日数 21 日)
)
の結果を照合したところ,
大型 RC 試験体の残存膨張性に対する判定規準値の整合性が確認された.
コアの促進養生試験(ASTM 法)における測定条件とコアの膨張率の関係について,水酸化ナト
リウム溶液の濃度および養生温度が大きくなるほどコアの膨張率が増加する傾向があったが,養
生温度が 40℃以下の場合には,水酸化ナトリウム溶液の濃度に関係なくコアの膨張率の相違は小
さくなった.この結果をもとに,構造物から採取したコアの評価に関して,コアの促進養生試験
(ASTM 法)の新しい養生条件として,温度 40℃の 0.5N・NaOH 溶液への浸せき法を提案し実用化
した.試験結果では,温度 40℃の 0.5N・NaOH 溶液への浸せき法は,コアの膨張性状が温度 80℃
の1N・NaOH 溶液への浸せき法に比較して,構造物の ASR 損傷状況の観察結果とよく適合した.
今後,他の反応性骨材でのデータを蓄積することにより,コンクリートの残存膨張性の評価が明
確になるものと考えられた.
5. 道路構造物の ASR 損傷度とコンクリートの残存膨張性の評価に関する研究
本研究では,北陸地方の道路構造物を対象に,建設時に使用したコンクリートの川砂利を河川
水系別に区分し,ASR による劣化度を分類するとともに,コアを採取して,川砂利の岩種含有率,
コンクリートのアルカリ量および塩化物イオン濃度を調べた.また,ASR 発生の有無およびコア
の残存膨張性を確認するために,2 種類のコアの促進養生試験法(ASTM 法,デンマーク法)の適
用性を検討した.さらに,構造物のひび割れ箇所にコンタクトゲージプラグを取付け(各面に計
10 箇所程度),コンタクトゲージプラグ間の距離をコンタクトミクロンゲージにより定期的に 3
~6 年にわたり測定し,コアの促進養生試験結果との関係について検討した.
構造物から採取したコアにより,反応性骨材として,火山系岩石(安山岩,流紋岩,凝灰岩)
および堆積岩(チャート)が確認され,その含有率は河川水系ごとで大きく相違した.とくに安
山岩の含有率が増加するほど,ASR 劣化度が増加する傾向があった.
北陸地方の特色として外来塩分や骨材からのアルカリ溶出の現状を踏まえ,外部からアルカリ
を供給するコアの促進養生試験法(ASTM 法,デンマーク法)が有効な手法と考えられた.コアの
残存膨張性の判定は,それぞれ試験日数 21 日および 91 日で 0.10%以上の膨張率を基準とするの
が有効であり,コアの促進養生試験(ASTM 法)による試験日数 21 日とコアの促進養生試験(デ
iv
論文要旨
ンマーク法)による試験日数 91 日の結果には良好な対応関係があった.
ASR によるひび割れは,構造物の表面部と内部での膨張率の差および鉄筋の拘束を反映した形で
発生していることが推察された.このため,構造物の鉄筋量を考慮し,コアの促進養生試験(ASTM
法,デンマーク法)から,5 年後の構造物の膨張率を推定することができた.
v
論文要旨
i
論文要旨
目
第1章
序
次
論
1
1.1 研究の背景
1
1.2 研究の目的
3
1.3 本論文の構成
4
1.4
6
ASR の経緯
1.5 北陸地方の構造物の代表的な劣化・損傷事例と対策
(1) 北陸地方における構造物の損傷
7
(2) 塩害による構造物の劣化現象
8
(3) ASR による構造物の劣化現象
9
(4) 複合劣化による構造物の劣化現象
10
(5) 塩害に対する補修
11
1.6 アルカリシリカ反応性の判定試験法
18
(1) アルカリシリカ反応性試験の現状と課題
18
(2) ASR 診断に用いた試験法と分析機器
21
参考文献
第2章
7
31
北陸地方で産出する骨材の岩石・鉱物学的特徴とアルカリシリカ反応性試験の適合性に
関する研究
35
2.1 概 説
35
2.2 研究の概要
37
(1) 研究の対象地域および骨材の特徴
37
(2) 骨材の岩石・鉱物学的試験
37
(3) 骨材のアルカリシリカ反応性試験
38
(4) 採取コアの岩石・鉱物学的試験および力学的試験
38
2.3 わが国の反応性骨材
39
(1) 骨材の反応性鉱物の種類と特徴
39
(2) 北陸地方における岩石の分布
41
(3) 能登産の安山岩
43
(4) 続成作用による反応性鉱物の変化
44
(5) 北陸地方の反応性骨材の岩石・鉱物学的特徴
46
2.4 北陸地方の反応性骨材のアルカリシリカ反応性とその評価
50
(1) 化学法(JIS A 1145-2001)およびモルタルバー法(JIS A 1146-2001)
の適合性
50
(2) モルタルバー法(JIS A 1146-2001)および促進モルタルバー法(ASTM C 1260-1994,
デンマーク法)による評価
52
2.5 構造物から採取したコアの ASR 損傷度と力学的性質
57
2.6 結 論
58
参考文献
59
ii
論文要旨
第3章
北陸地方で産出する骨材からのアルカリ溶出性状とアルカリシリカ反応性に及ぼす影響
に関する研究
61
3.1 概 説
61
3.2 骨材のアルカリ溶出性状試験
63
3.3 実験概要
65
(1) 調査の対象
65
(2) 骨材からのアルカリ溶出性状試験
65
(3) 構造物におけるアルカリ溶出の検証
66
(4) EPMA によるアルカリ分布状況の確認
66
3.4 骨材からのアルカリ溶出性状
67
(1) 骨材の岩種と反応性鉱物の種類
67
(2) 骨材からのアルカリ溶出性状
67
(3) 骨材の岩種および造岩鉱物とアルカリ溶出量との関係
69
(4) アルカリ溶出量と化学法(JIS A 1145-2001)における溶解シリカ量(Sc)
およびアルカリ濃度減少量(Rc)との関係
3.5 構造物における骨材からのアルカリ溶出の検証
70
71
(1) コンクリートのアルカリ量の推定
71
(2) 構造物の ASR 劣化度とセメント,骨材およびコンクリートのアルカリ量
73
(3) コアの偏光顕微鏡観察
75
(4) 構造物の経過年数と骨材の全アルカリ量
75
(5) 骨材岩種と骨材の全アルカリ量
78
3.6
EPMA による骨材中のアルカリ分布状況の確認
79
3.7 結 論
86
参考文献
88
第 4 章 コンクリートのアルカリシリカ反応性の評価に関する研究
91
4.1 概 説
91
4.2 実験概要
93
(1) 河川産骨材を用いたブロックより採取したコアの促進養生試験による残存膨張性
の評価
93
(2) 大型 RC 試験体より採取したコアの促進養生試験による残存膨張性の評価
95
(3) コアの促進養生試験(ASTM 法)における測定条件とコアの膨張率との関係
96
4.3 河川産骨材を用いたブロックより採取したコアの促進養生試験による残存膨張性
の評価
98
(1) 岩種の含有率
98
(2) 反応性鉱物の特徴
100
(3) コアの促進養生試験の結果
100
(4) 骨材の岩種含有率とコンクリートの膨張率との関係
101
(5) 高炉セメント B 種を用いたコンクリートの ASR 抑制効果
103
iii
論文要旨
4.4 大型 RC 試験体より採取したコアの促進養生試験による残存膨張性の評価
105
(1) 屋外暴露における RC 試験体の膨張挙動
105
(2) RC 試験体から採取したコアの残存膨張性の評価
106
4.5 コアの促進養生試験(ASTM 法)における測定条件とコアの膨張率との関係
108
(1) コアの促進養生試験(ASTM 法)によるコアの膨張特性
108
(2) アルカリシリカゲルの化学組成の特徴
109
(3) 構造物から採取したコアの残存膨張性の評価
110
4.6 コアを使用したコンクリートのアルカリシリカ反応性の評価法の提案
113
4.7 結 論
114
参考文献
116
第 5 章 道路構造物の ASR 損傷度とコンクリートの残存膨張性の評価に関する研究
119
5.1 概 説
119
5.2 調査および試験方法
120
(1) 調査の対象および概要
120
(2) 試験方法
120
5.3 構造物の ASR の発生状況と骨材の岩種との関係
122
(1) 川砂利の岩種含有率
122
(2) コアの偏光顕微鏡観察
124
5.4 凍結防止剤の影響
127
5.5 コンクリートのアルカリおよび塩化物イオンの浸透状況
128
(1) コンクリートのアルカリおよび塩化物イオンの含有量
128
(2) コンクリート中のアルカリ起源の分析
129
5.6 コンクリートのアルカリ量,骨材の岩種含有率とコンクリート構造物の
ASR 劣化度
130
(1) コンクリートのアルカリ量の影響
130
(2) コンクリートのアルカリ量,骨材の岩種含有率の影響
131
5.7 コアによるコンクリートの残存膨張性の評価
(1) 外部からアルカリを供給するコアの促進養生試験の適用
132
132
(2) コアの促進養生試験(ASTM 法)によるコアの膨張率と構造物の ASR 発生
の有無
132
(3) コアの促進養生試験(デンマーク法)によるコアの膨張率と構造物の ASR 発生
の有無
132
(4) 岩種含有率との関係
137
5.8 橋台内部の残存膨張性
139
5.9 コアの促進養生試験と構造物における残存膨張性の検証
140
(1) 膨張挙動
140
(2) コアの促進養生試験(ASTM 法,デンマーク法)と実構造物の膨張率との関係
141
5.10 結 論
143
参考文献
144
iv
論文要旨
第6章 結
論
147
6.1 本研究のまとめ
147
6.2 今後の課題と展望
154
謝辞
156
参考論文・副論文
157
v
第1章 序 論
第1章
序
論
1.1 研究の背景
アルカリシリカ反応(以下 ASR)は,水酸基イオン(OH-)と骨材中に含まれる熱力学的に不安
定なある種のシリカ(SiO2)との間に生ずる化学反応である.この化学反応によって生成された
アルカリ・シリカゲルは,水を吸収することによって,コンクリート内部に局部的な膨張圧が発生
し,それがコンクリートの強度の低下をもたらす 1).北陸地方の ASR は,主に昭和 40 年後半~50
年代に建設された構造物で多く発生しているが,コンクリート中のアルカリ総量規制などの ASR
抑制対策 2)が実施された昭和 60 年代以降に建設された構造物にも ASR の発生が認められるものも
ある
3)
.北陸地方の ASR による損傷は,コンクリート表面にひび割れが発生するだけではなく,
ASR による過大な膨張が発生した橋脚のはりやフーチングではせん断補強筋が曲げ加工部で破断
している事例や主筋が圧接部や曲げ下げ部で破断している事例など,構造物の耐荷性能に影響を
及ぼすような重大な損傷も発生しているのが特徴である 4).
北陸地方のコンクリート用骨材の起源は第三紀中新世前期~中期の海底で噴出し,熱水変質を
受けて緑色(ないし雑色)を呈する火山岩を主とする地層(グリーンタフ)からのものである 5).
この地層の下部は安山岩・玄武岩を主体とし,上部は流紋岩・石英安山岩を主体とする.この地
層は福井市周辺から金沢市・富山市の南方を通って立山町付近まで細長く分布し,能登半島北部
一帯にも広く分布する
6)
.また,火山活動がさらに現在の第四紀火山まで連続しており,種々の
冷却過程(結晶化の程度)と変質過程(再結晶の程度)の火山岩が後背地に存在することで,こ
れらが河川によって運ばれて堆積しているのが特徴である.北陸地方の代表的な反応性骨材とし
ては,能登半島北部で産出する安山岩砕石(両輝石安山岩)が知られているが
7)
,長野県,新潟
県,富山県,福井県などで一般に使用されてきた,河川流域で産出する砂や砂利にも火山系岩石
の反応性骨材(安山岩,流紋岩,溶結凝灰岩など)が混入しており,ASR による構造物の損傷は北
陸地方の広い地域で実際に確認されている
3)
.河川産の骨材が反応性骨材である場合は,多種多
様な岩種が混在するので,河川水系の上流部,中流部,下流部で反応性骨材の種類やその含有量
が大きく相違しているのが特徴であり,安山岩砕石,チャート砕石のような,均一な岩石組織を
もつ反応性骨材と比較して,骨材のアルカリシリカ反応性の判定や ASR の抑制対策をより困難な
ものにしている.一方,ASR 損傷構造物の岩石・鉱物学的調査では,河川砂利中の火山系岩石の反
応性骨材の中でも安山岩粒子が最も反応しており,河川砂利中の安山岩粒子の含有率とその反応
性が構造物の損傷度と関係していることが報告されている
3)
.安山岩中の主要な反応性鉱物は火
山ガラス,クリストバライトおよびトリジマイトであるが,安山岩中のガラス相の量およびその
存在形態は地域ごとに大きく相違している.また,火山ガラスや長石の風化・変質過程で生成し
たモンモリロナイト,バーミキュライトなどの粘土鉱物を含有する安山岩も多く存在する 8),9).
一方,コンクリート中のアルカリは,セメントに由来するものがほとんどであると考えられて
いる 10).そのアルカリは硫酸ナトリウム(Na2SO4)および硫酸カリウム(K2SO4)として存在し 11),
セメント原料のアルカリ起源は,粘土原料中の長石,雲母および粘土鉱物に含まれているもので
ある 12).なかでも長石は,地球上に広く分布し 13),火成岩,変成岩および堆積岩中にも存在する.
すなわち,コンクリート用骨材の中にも含有することになる.また,北陸地方のコンクリート用
- 1 -
第1章 序 論
骨材の特徴として,アルカリ含有量の高いものや粘土鉱物を含有するものは,アルカリを放出す
ることにより 13),アルカリ成分の一部が長期にわたり溶出し,コンクリートの間隙溶液中のアル
カリ濃度を上昇させることも,指摘されている 8),14).さらに,当該地域の構造物では,冬期北西
の季節風による飛来塩分の環境下や平成 3 年 3 月のスパイクタイヤの使用禁止以後に道路に散布
する凍結防止剤(塩化ナトリウム(NaCl)が主体である)が年々増えてきており,コンクリート
中のアルカリ濃度が増加している
3)
.このため,ASR 抑制対策として配合設計時に総アルカリ量
の管理や低アルカリ形セメント(
(Na2O+0.658K2O)が 0.6%以下)を使用したとしても,外部から
の塩分の供給や骨材からのアルカリ溶出により,コンクリート中のアルカリ濃度が上昇すること
や ASR の進行に伴う骨材の割れが進行することで,ASR 未反応部分の鉱物がさらに反応し,ASR
が長期にわたり継続する可能性が考えられる 15).
骨材のアルカリシリカ反応性試験は,反応性骨材の岩石・鉱物学的特徴および構造物での ASR
発生の有無を把握したうえで,それぞれの骨材に適した試験法および判定の規準値を選択するべ
きである.わが国での骨材のアルカリシリカ反応性試験は化学法(JIS A 1145-2001)およびモル
タルバー法(JIS A 1146-2001)が規定されているが,両試験法の一律の規準では適切に判定でき
ない骨材があることも指摘されている
16),17),18)
.一方,現行試験法の問題点に関連して,川砂,
川砂利の中に高い反応性をもつ安山岩が少量混入し,それが顕著なペシマム混合率をもつ場合に
は化学法(JIS A 1145-2001)では「無害」と判定されることが明らかになっている 18).また,前
述したように,粘土鉱物(モンモリロナイト,バーミキュライトなど)を含有する骨材の場合に
は,モルタルバー法(JIS A 1146-2001)にて添加されたアルカリが粘土鉱物に吸着されるために,
全体にモルタルバーの膨張率が小さくなり,同様に「無害」と判定されることがあることも明ら
かになっている 19).
北陸地方における構造物の ASR 残存膨張性の評価法は,コアの促進養生試験(JCI-DD2 法(温
度 40℃の RH95%以上に保存,φ100 ㎜,L=250 ㎜)
)にて行ってきた.この結果,「残存膨張性な
し」と評価され,構造物の ASR は「ほぼ終了した」と判断された 20).この結果をもとに補修を実
施したが,数年で再損傷が発生する場合があるとともに,構造物の定期点検の結果より,ASR に
よる劣化が進行中であることが認められ,コアの促進養生試験の結果と矛盾するものとなった 3).
また,橋脚等のコア採取では配筋の関係上,φ100 ㎜のものを採取することが難しく,小径(φ
50mm 程度)のコアで試験を実施せざるを得ないのが現状である.
さらに,今後,わが国では,骨材資源の活用と産業副産物の有効利用の観点から,フライアッ
シュセメント,高炉スラグセメントなどの混合セメントを ASR 抑制対策として使用する機会が増
えてきている 21).この際には,セメントと骨材とを種々に組合せた実際の配合にて,コンクリー
トのアルカリシリカ反応性を短期間に評価できる手法の開発が望まれている.したがって,反応
性骨材の実態調査および構造物の ASR 損傷度調査では,反応性骨材中の主要な反応性鉱物の量と
その存在形態を把握することが重要であり,それらに関しての地域ごとのデータを蓄積していく
ことが,コンクリートの品質管理および維持管理において,不可欠なものとなっている 22).
- 2 -
第1章 序 論
1.2
研究の目的
北陸地方の ASR の特色,問題点および本研究の目的を図-1.1 に示す.本研究の目的は,北陸地
方の反応性骨材の岩石・鉱物学的特徴とその分布状況を明らかにし,この地方の骨材に適した ASR
評価法を提案することにある.このため,まず北陸地方の ASR が発生している構造物に使用され
た代表的な反応性骨材を採取し,偏光顕微鏡観察,走査型電子顕微鏡観察および粉末 X 線回折に
より,反応性骨材の岩石・鉱物学的特徴および ASR ゲルの生成状況を明らかにするとともに,北
陸地方全域より収集した骨材を対象として,化学法(JIS A 1145-2001),モルタルバー法(JIS A
1146-2001)および促進モルタルバー法(ASTM C 1260-1994
23)
,デンマーク法 24))により骨材の
アルカリシリカ反応性の有無を調べ,これらの試験法の北陸地方の骨材に対しての適合性を検討
した.また,促進試験による川砂からのアルカリ溶出の現状を調べ,構造物での検証を行うとも
にコアの促進養生条件下(温度 80℃の1N・NaOH 溶液浸せき,温度 50℃の飽和 NaCl 溶液浸せき)
での膨張試験の結果より,コンクリートでのアルカリシリカ反応性を評価する手法を提案した.
現状
骨材として川砂・川砂利の使用
能登の安山岩砕石
(モンモリロナイトを多く含有)
問題点
本研究
残存膨張性の評価が適
切にできない
北陸地方の岩石・鉱物
学的特徴
JISの化学法・モルタ
ルバー法で反応性骨材
を適切に評価できない
アルカリシリカ反応性
試験の適合性の検証
コンクリート中のアル
カリ濃度の上昇(混合
セメントではフライ
アッシュ)
骨材からのアルカリ溶
出の検証
アルカリ濃度の高い火山岩の存在
混合セメントのASR抑制効果検証
法の必要性
飛来塩分や凍結防止剤による塩化
物イオンの浸透
図-1.1
低アルカリ形セメント
やアルカリ総量規制で
ASRが抑制できない可
能性あり
北陸地方の ASR の課題と本研究の目的
- 3 -
コンクリートコアに
よるASR評価法の開発
第1章 序 論
1.3
本論文の構成
本論文の題目は,
「北陸地方におけるコンクリート用骨材のアルカリシリカ反応性の評価に関す
る研究」である.本論文の構成を図-1.2 に示す.論文は第 1 章から第 6 章までの 6 章で構成され
ており,各章の概要は以下のとおりである.
第 1 章「序論」では,北陸地方における構造物のアルカリシリカ反応性による損傷の特徴と評
価手法の開発に関する研究の背景,研究の目的および本論文の構成と各章の概要を説明した.さ
らに,ASR における既往の研究,北陸地方の構造物の主な劣化事例(塩害,ASR,複合劣化)
,ASR
判定法の現状,ASR 試験方法の現状と課題ならびに本研究で行った分析方法について述べた.
第 2 章「北陸地方で産出する骨材の岩石・鉱物学的特徴とアルカリシリカ反応性試験の適合性
に関する研究」では,日本の反応性骨材の種類と分布および岩石・鉱物学的特徴を述べ,北陸地
方の ASR が発生している構造物に使用された代表的な反応性骨材(川砂利,安山岩砕石など)を
採取し,偏光顕微鏡や粉末 X 線回折により反応性骨材の岩石・鉱物学的特徴およびアルカリシリ
カ反応性を明らかにした.また,北陸地方のコンクリート用骨材(川砂,川砂利,砕石,山砂,
砕砂)でアルカリシリカ反応性試験(化学法(JIS A 1145-2001)およびモルタルバー法(JIS A
1146-2001))における試験結果の現状を述べ,さらに北陸地方を代表する 17 種類の骨材を対象と
して,4 種類の試験法(化学法(JIS A 1145-2001),モルタルバー法(JIS A 1146-2001),促進モ
ルタルバー法(ASTM C 1260-1994,デンマーク法))にて実施した骨材のアルカリシリカ反応性の
判定結果の整合性を検討した.
第3章
「北陸地方で産出する骨材からのアルカリ溶出性状とアルカリシリカ反応性に及ぼす影
響に関する研究」では,北陸地方とその周辺地域(新潟県,富山県,石川県および福井県の 4 県,
骨材の流通の関係で長野県(信越地方)
,滋賀県(関西地方)
,三重県(中部地方)の一部を含む)
の 27 種の細骨材(川砂 15 種,浜砂 3 種,陸砂 3 種,砕石 6 種)を温度 38℃の飽和水酸化カルシ
ウム(Ca(OH)2)溶液に浸せきした.また,浸せき日数と水酸化カルシウム(Ca(OH)2)溶液中の
ナトリウムイオン濃度(Na+)およびカリウムイオン濃度(K+)を分析し,砂からのアルカリ溶出
性状について検討した.一方,北陸地方の 1972~1985 年に建設された道路構造物(福井県,石川
県,富山県,新潟県)の橋台 23 基,橋脚 4 基,カルバートボックス 1 基の合計 28 基から,コン
クリート試料を採取し,コンクリートのアルカリ量の現状を調査した.また,アルカリの起源を
セメントと骨材とに分類し,構造物の ASR 劣化度や岩種含有率との関係を調べるとともに偏光顕
微鏡にて砂の岩種を特定したうえで EPMA(X 線マイクロアナライザー)によりアルカリの溶出状
況について分析した.この結果をもとに砂からのアルカリ溶出を考慮し,コンクリート中の総ア
ルカリ量を見直すことを提案した.
第 4 章「コンクリートのアルカリシリカ反応性の評価に関する研究」では,北陸地方(新潟県,
長野県,富山県,福井県)を代表する河川流域から 27 種類の川砂,川砂利を採取し,岩種含有率
を把握したうえで普通セメントおよび高炉セメント B 種によりブロックを作製した.このブロッ
クより,コア(φ100 ㎜,φ55 ㎜)を採取し,コアの促進養生試験(ASTM 法(温度 80℃の1N・
NaOH 溶液浸せき)
,デンマーク法(温度 50℃の飽和 NaCl 溶液浸せき)
)を実施し,膨張率と岩種
含有率との関係について検討し,建設時における ASR 判定手法としてコアの促進養生試験(ASTM
法,デンマーク法)を取入れることを提案した.また,ASR を促進した大型 RC 試験体(φ800 ㎜,
H=1500mm)を作製し,7 年間屋外暴露を行い,ASR による挙動を追跡した.この挙動を把握したう
- 4 -
第1章 序 論
えで 3 種類のコアの促進養生試験(JCI-DD2 法,ASTM 法,デンマーク法)を適用し,残存膨張性
との適合性について検証した.また,コアの促進養生試験(ASTM 法)において,養生温度および
水酸化ナトリウム(NaOH)溶液濃度を変化させ,その膨張特性について検討し,新しい養生条件
として温度 40℃の 0.5N・NaOH 溶液浸せき法にて養生期間を 91 日まで延長することを提案した.
さらに構造物から採取したコアに対し,
温度 80℃の1N・NaOH 溶液浸せきと温度 40℃の 0.5N・NaOH
溶液浸せきとの比較を行い,その妥当性についても検討した.
第 5 章「道路構造物の ASR 損傷度とコンクリートの残存膨張性の評価に関する研究」では,北
陸地方(新潟県,富山県,石川県および福井県の 4 県)の道路構造物(橋台 25 基,橋脚 8 基,フ
ーチング 2 基,上部工 2 基,カルバートボックス 6 基,トンネル 1 基)を対象に,建設時に使用
したコンクリートの川砂利を河川水系別に区分し,ASR による劣化度を分類するとともに,コア
を採取して,川砂利の岩種ごとの含有率,コンクリートのアルカリ量(Na2O+0.658K2O)および塩
化物イオン濃度(Cl-)を調べた.また,ASR の発生の有無およびコアの残存膨張性を確認するた
めに,2 種類のコアの促進養生試験法(ASTM 法,デンマーク法)の適用性を検討した.さらに,
構造物のひび割れ箇所にコンタクトゲージプラグを取付け(各面に計 10 箇所程度),コンタクト
ゲージプラグ間の距離を定期的に 3~6 年にわたり測定し,コアの促進養生試験の結果との関係に
ついて検討した.
第 6 章「結論」では,本研究で得られた結論を総括するとともに,今後の課題と展望について
述べた.
第1章
序
論
第2章
北陸地方で産出する骨材の岩石・鉱物学的特徴と
アルカリシリカ反応性試験の適合性に関する研究
第3章
第4章
北陸地方で産出する骨材か
コンクリートのアルカリシ
道路構造物の ASR 損傷度と
らのアルカリ溶出性状とア
リカ反応性の評価に関する
コンクリートの残存膨張性
ルカリシリカ反応性に及ぼ
研究
の評価に関する研究
す影響に関する研究
第6章
結
図-1.2
論
本論文の構成
- 5 -
第5章
第1章 序 論
1.4
ASR の経緯
日本における ASR は,1970 年以前に山形県東西村にある村山橋および長崎橋
の建物での発生事例が報告されているが
25)
,中国電力㈱
26)
,当時,全国的な問題として捉えられていなかった.
1980 年ごろ,阪神地区の橋脚で ASR が発見されると 27),ASR は北陸,中国・四国,九州などの各
地方に波及していった.これらの問題を契機にして建設省総合技術開発プロジェクト・コンクリ
ートの耐久性向上技術の開発(委員長:岡田
清)28)や日本コンクリート工学協会のアルカリ骨
材反応調査研究委員会(委員長:岸谷孝一)29)が全国的な調査を行った結果,ASR による劣化を
受けた構造物はわが国の幅広い地域に分布しており,反応性骨材も火山岩や堆積岩,変成岩を起
源とする多種多様な岩種のものが存在することが明らかとなった.同時期に米国の化学法(ASTM C
289)30)およびモルタルバー法(ASTM C 227)31)を参考にし,骨材の ASR 試験法として化学法(現在
の JIS A 1145-2001)やモルタルバー法(現在の JIS A 1146-2001)がわが国でも規格化された.
また,建設省総合技術開発プロジェクト・コンクリートの耐久性向上技術の開発では,骨材の ASR
試験法や ASR 抑制対策とともに ASR 劣化構造物の調査・診断,補修・補強方法なども提案された.
1990 年代以降,ASR 抑制対策の実施とセメントのアルカリ量の低下により新設構造物での ASR は
減少していった.
2001 年,福島県での反応性骨材の判定結果の改ざんが NHK で報道され,国土交通省からアル
カリの総量規制および混合セメントの使用を中心に捉えた新しい ASR 抑制対策が通達された.
2003 年の NHK 報道「ASR による鉄筋破断の衝撃」を契機にして,土木学会コンクリート委員会は
アルカリ骨材反応対策委員会(委員長:宮川豊章)32)を設置し,ASR の鉄筋破断の調査およびそ
の機構の解明に精力的に取り組んできた.
一方,海外での ASR は,1939 年に米国カリフォルニア州 Stanton によって,カリフォルニア
州国道崩壊原因研究の際,発見されたのが最初である 33).Stanton は損傷を受けた構造物と同一
の骨材より作製したモルタルバーの膨張率を測定することによって,高アルカリセメントと頁岩
およびチャートの組み合わせがコンクリートに異常膨張を引き起こすことを明らかにした.また,
他の反応性岩種として,オパールや安山岩があることも指摘している 33).1955 年頃,カナダのオ
ンタリオ州のキングストンで,歩道コンクリートに原因不明のひび割れが発生した.このひび割
れの原因は,カルシウム炭酸塩とマグネシウム炭酸塩がほぼ 1:1 の割合で微結晶の連晶(合体)
で存在し,水酸化アルカリ(2MOH)作用によって,ドロマイト(CaMg(CO3)2)からアルカリ炭酸
塩,炭酸カルシウム(CaCO3)とブルーサイト(Mg(OH)2)に変化するときに発生するアルカリ炭
酸岩反応と称された
34)
.なお,片山の最近の研究
35),36)
により,アルカリ炭酸岩反応とされた損
傷にはドロマイド石灰岩中の隠微晶質石英が関与していることがわかり,ASR であると判断され
た.
- 6 -
第1章 序 論
1.5
北陸地方の構造物の代表的な劣化・損傷事例と対策
(1) 北陸地方における構造物の損傷
北陸は,有数の豪雪地帯にあり,日本アルプスに代表される急峻な地形,フォッサマグナによ
る脆弱な地質,地震,火山,急流河川,冬期の厳しい季節風による波浪等の自然環境の厳しい地
域である.このように構造物は厳しい環境下におかれ,土地の高度利用化にともない高い山間部
や細く狭い沿岸地域にも幅広く利用されている.従来,ASR は,ごく限られた一部の地区に発生
する劣化現象と考えられていた.しかし,北陸地方では,平成 3 年のスパイクタイヤの廃止や海
岸からの外来塩分により複合的な劣化が発生している.図-1.3 は,北陸地方の構造物の ASR 劣化
マップを示したものである.福井県と石川県加賀市付近の ASR は九頭竜川,石川県の白山麓の ASR
は手取川の河川産骨材が原因となっている.富山県ほど ASR の劣化は生じていないが,金沢市~
加賀市にかけていくつかの構造物で ASR の発生が認められる.この原因は流通の関係で使用され
た富山県の庄川や常願寺川,福井県の九頭竜川の河川産骨材が原因となっている.また,能登半
島の ASR は安山岩砕石が原因となっている.富山県西部では,庄川や常願寺川,富山県東部では,
常願寺川,新潟県の ASR は姫川,信濃川および阿賀野川の河川産骨材が原因となっている.
飛来塩分による塩害(海岸部から500m)
ASR
凍害(白山,立山1000~1500m)
凍結防止剤による塩害は高速道路全域で発生
輪島
能登半島西岸
親不知海岸
門前
松任海岸
越前海岸
△ 白山
図-1.3
北陸地方の構造物の ASR 劣化マップ
- 7 -
第1章 序 論
(2) 塩害による構造物の劣化現象
塩害は,コンクリート硬化後,外部環境より浸透してくるケースと海砂使用のようにコンクリ
ートの使用材料にすでに含まれているケースに分けられる 37).北陸地方ではコンクリート用骨材
として長年にわたり川砂,川砂利を使用してきたことから,後者による塩害はほとんどない.ま
た,外来塩分による塩害の起源は,海からの飛来塩分と冬期に散布される凍結防止剤(主成分 NaCl,
CaCl2)とに区分される.
飛来塩分と凍結防止剤との塩害の特徴を表-1.1 に示す.飛来塩分による塩害では,海岸付近
に位置する構造物で写真-1.1 に示すように錆汁,コンクリートの浮き・はく離ならび鉄筋の断面
欠損の損傷が発生している.飛来塩分による塩害の損傷は構造物のほぼ全体にわたり塩分が浸透
し,損傷が発生する.一方,凍結防止剤による塩害では,主として写真-1.2 に示すように道路橋
の伸縮装置を有する支承周りやスノーシェッドの側壁に同様な損傷が発生している 38),39),40).
表-1.1
項
目
飛来塩分と凍結防止剤による塩害の特徴
飛来塩分による塩害
凍結防止剤による塩害
塩分の供給源
海水
凍結防止剤(NaCl,CaCl2)
塩害の規模
全体的
局部的
表面塩化物
海岸形状,海岸からの距離や標高 凍結防止剤の飛散状況や凍結防止剤の
イオン濃度 に左右される 41)
伝い水により左右される 38)
塩 化 物 イ オ ン の コンクリートの配合(W/C),セメ 飛来塩分による塩害よりも大きな傾向
拡散係数
ントの種類に左右される 42)
がある 38)
RC 中空床版
橋台
写真-1.1 海岸部の PC けたの飛来塩分に
写真-1.2
よる塩害(昭和 47 年に供用開始,平成 12
塩害(昭和 50 年に供用開始,平成 8 年撮影)40)
年撮影)
- 8 -
RC 中空床版端部の凍結防止剤による
第1章 序 論
(3) ASR による構造物の劣化現象
ASR による道路構造物の損傷は,写真-1.3 および写真-1.4 に示すように雨水,路面排水および
凍結防止剤の影響を受け易い箇所,すなわち橋台ではウイング面および竪壁前面端部に,橋脚で
ははり端部に多く発生している 3).これは,上部工には伸縮装置があり,排水樋の破損部などか
ら冬期に散布される凍結防止剤が漏水し,ASR を局部的に促進させたものと推察される.また,
トンネル(明かり巻部)では,外面における乾湿繰返しと内面における凍結防止剤の浸透の影響
を受け,ASR によるひび割れが進行している(写真-1.5 参照)3).ASR の補修として表面塗装を実
施したが,ひび割れが再発生しているものも多く存在する(写真-1.6 参照)3).また,北陸地方
の特色として,写真-1.7 に示すように橋脚のはり部ではせん断補強筋の曲げ加工部や主筋の折り
曲げ部,圧接部で鉄筋の破断が発生している事例やフーチング部では写真-1.8 に示すように側面
上部の曲げ加工部にて鉄筋の破断が発生していた事例もある 8).
写真-1.3 橋台に生じたひび割れと変色跡 3)
写真-1.4 橋脚に生じたひび割れ 3)
(富山県,川砂,川砂利使用)
(富山県,川砂,川砂利使用)
写真-1.5 トンネルに生じたひび割れとゲルの
写真-1.6 表面塗装後のひび割れ 3)
滲出 3)(石川県,川砂,川砂利使用)
(富山県,川砂,川砂利使用)
- 9 -
第1章 序 論
(4) 複合劣化による構造物の劣化現象
北陸地方では,冬期に散布される凍結防止剤の影響により,塩害と ASR の複合劣化が生じる場
合がある.交差道路を横断し側壁を延長した形式のカルバートボックスでは,写真-1.9 に示すよ
うに表面塗装による補修を実施したが,比較的早期に再劣化し,側壁にひび割れと錆汁が発生し
ている 3).なお,その後,カルバートボックスは第三者に対するコンクリート片の連続繊維シー
トによるはく落対策を行っている.また,山間部では,写真-1.10 に示すようにコンクリートが
凍害によりスケーリングを起こし,ASR によるひび割れが複合的に生じている.また,海からの
飛来塩分の影響および経年劣化によるコンクリートの中性化の進行により,内部鉄筋が腐食し,
コンクリートの浮きが発生している状況を写真 1.11 に示す.ここでは,ASR によりひび割れも一
部発生している.採取したコアにて,EPMA による塩素(Cl)の面分析を実施したところ,中性化
による塩分の濃縮現象が確認できた.
写真-1.7 橋脚はり側面の鉄筋破断 8)
写真-1.8 橋脚フーチングの鉄筋破断 8)
(石川県,安山岩砕石使用)
(石川県,安山岩砕石使用)
写真-1.9 塩害と ASR の複合劣化の事例 3)
(市街地におけるカルバートボックス,富
山県,川砂,川砂利使用)
- 10 -
写真-1.10 凍害と ASR の複合劣化の事例
(山間部における橋台,石川県,川砂,川
砂利使用)
ASR によるひび割れ
コンクリート表面
第1章 序 論
浮き
(2) EPMA による塩素のマッピング(中性化に
(1) 劣化状況
よる塩分の濃縮)
写真-1.11 塩害と ASR および中性化の複合劣化の事例
(海岸付近の橋台,新潟県,川砂,川砂利使用)
(5) 塩害に対する補修
a) 塩害に対する補修工法
塩害に対する補修工法を大別すると表面被覆工法,断面修復工法,化学的塩害補修工法および
電気化学的塩害補修工法が挙げられる.これら塩害に対する補修工法は表-1.2 のとおり細分化さ
れ,組合せて使用する場合が多く,構造物の劣化進行度に併せて選定する必要がある.とくに,
内在塩分がある場合,今後の塩化物イオン(Cl-)の挙動を十分に把握することが重要である.塩
害の劣化進行度における潜伏期では表面被覆工法が有効であり,進展期では化学的補修工法や電
気化学的補修工法,
加速期・劣化期では断面修復工法が有効であると考えられるが,施工性や工程,
工費,LCC などを考慮して選定することが望ましい.
b) 表面塗装
塩害補修工法としてもっとも広く使用されているものは,外部から塩化物イオンの浸透を抑制
する表面塗装である.表面塗装は,塩害劣化進行度が潜伏期の予防保全として適用された場合,
耐久性に優れている.昭和 61 年,北陸自動車道 親不知海岸高架橋に試験施工された表面塗装は
15 年経過後も十分機能しており,20 年程度の寿命があるものと推察された 43),44)(写真-1.12 参
表-1.2
大分類
表面被覆工法
断面修復工法
化学的塩害補修工法
塩害に対する補修工法
細分類
表面塗装
埋設型わく
浸透型塗装
―
浸透性防錆剤防食工法
塩素吸着剤工法
電気化学的塩害補修工法 電気防食工法
脱塩工法
- 11 -
第1章 序 論
写真-1.12 予防保全としてのコンリート塗装 41)
(北陸自動車道
親不知海岸高架橋 A,B ランプ,昭和 61 年施工)
6
2
Co=5kg/m 3, Dc=0.5×10 -8cm 2/sec,
10年経過
現在
5年後
10年後
30年後
50年後
3
塩化物イオン濃度(kg/m )
3
塩化物イオン濃度(kg/m )
5
鉄筋位置の塩化物イオンの挙動
4
鉄筋位置
3
2
発生限界
1.2kg/m 3
発生限界
1.2kg/m 3
1
1
0
0
0
1
2
3
4
5
コンクリート表面からの深さ(cm)
6
0
7
10
20
30
40
50
検討時からの経過年数(年)
2) 鉄筋位置(深さ 3.5cm)の塩化物
1) 深さ方向の塩化物イオンの挙動
イオンの挙動
3
(a) 鋼材腐食発生限界塩化物イオン濃度 1.2kg/m を超えないため,表面塗装が適用可
6
2
Co=5kg/m 3, Dc=0.5×10 -8cm 2/sec,
15年経過
3
3
塩化物イオン濃度(kg/m )
5
塩化物イオン濃度(kg/m )
鉄筋位置の塩化物イオンの挙動
現在
5年後
10年後
30年後
50年後
4
鉄筋位置
3
2
発生限界
1.2kg/m 3
発生限界
1.2kg/m 3
1
1
0
0
0
1
2
3
4
5
コンクリート表面からの深さ(cm)
6
7
0
10
18 20
30
40
50
検討時からの経過年数(年)
1) 深さ方向の塩化物イオンの挙動
2) 鉄筋位置(深さ 3.5cm)の塩化物
イオンの挙動
(b) 18 年後に鋼材腐食発生限界塩化物イオン濃度 1.2kg/m3 を超えるため,表面塗装が適用不可
図-1.4 表面塗装後の塩化物イオン拡散シミュレーションの事例
- 12 -
第1章 序 論
照)
.なお,進展期以降,いわゆる事後保全で内在塩分を考慮せず適用した場合,鋼材の再腐食や
断面修復部におけるマクロセル腐食によって,表面塗装が数年で劣化するケースもあった 45).
表面塗装を適用する際,塗装後の塩化物イオンの挙動を予測し,鋼材位置での塩化物イオン濃
度(Cl-)が鋼材腐食発生限界塩化物イオン濃度 1.2kg/m3
46)
に達しないことを確認する必要があ
る 47),48).そのシミュレーションの事例を図-1.4 に示す.これは内在する塩化物イオン(Cl-)が
濃度勾配にしたがって拡散する現象を差分法
49)
にて解析したものである.図-1.4 の a の場合,
表面塗装により外部からの塩化物イオン(Cl-)の浸透が絶たれ,今後 50 年間は,鉄筋位置の塩
化物イオン濃度が鋼材腐食発生限界塩化物イオン濃度 1.2kg/m3 に達しないことを表している.よ
って,表面塗装による補修が適用可能なことを示している.一方,bの場合,18 年後に鉄筋位置
の塩化物イオン濃度(Cl-)が鋼材腐食発生限界塩化物イオン濃度 1.2kg/m3 に達することを表し,
表面塗装による補修が適用できないことを示している.
(c) 浸透性防錆剤防食工法
浸透性防錆剤防食工法は,亜硝酸塩系の防錆剤(LiNO2)をポリマーセメントモルタルに混入
し,亜硝酸イオン(NO2-)を拡散浸透させ,コンクリート中の鋼材の不動態化を行うものである.
4
3
発生限界
1.2kg/m 3
2
)
鉄筋位置
30
5
モル比
塩化物イオン濃度
亜硝酸リチウム量
3
)
鉄筋位置
5
40
現在
5年後
10年後
20年後
30年後
40年後
50年後
20
10
4
発生限界1.2kg/m 3
に到達
3
モル比
6
3
7
50
亜硝酸リチウム量(kg/m
3
)
8
防錆剤混入モルタル
t=1cm
塩化物・亜硝酸リチウム(kg/m
現在
5年後
10年後
20年後
30年後
40年後
50年後
防錆剤混入モルタル
t=1cm
9
塩化物イオン濃度(kg/m
2
60
10
1
2
設計モル比
0.8の確保
1
1
0
0
-1
0
1
2
3
4
5
6
既設コンクリート表面からの深さ(cm)
0
-1
7
0
1) Cl-の挙動
1
2
3
4
5
6
既設コンクリート表面からの深さ(cm)
0
0
7
2
4
6
8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30
検討時からの経過年数(年)
3) 鉄筋位置のモル比の挙動
2) LiNO2 の挙動
(a)設計モル比が鋼材腐食発生限界塩化物イオン濃度を超える前に確保されるもの
(本工法が適用可)
60
)
鉄筋位置
5
4
3
発生限界
1.2kg/m 3
2
40
鉄筋位置
30
5
モル比
塩化物イオン濃度
亜硝酸リチウム量
)
現在
5年後
10年後
20年後
30年後
40年後
50年後
20
10
4
発生限界1.2kg/m 3
に到達
3
モル比
6
3
7
50
亜硝酸リチウム量(kg/m
塩化物イオン濃度(kg/m
3
)
8
2
防錆剤混入モルタル
t=1cm
3
現在
5年後
10年後
20年後
30年後
40年後
50年後
防錆剤混入モルタル
t=1cm
9
塩化物・亜硝酸リチウム(kg/m
10
1
2
設計モル比
0.8の確保
1
1
0
0
-1
0
3
4
5
6
1
2
既設コンクリート表面からの深さ(cm)
1) Cl-の挙動
7
0
-1
0
1
2
3
4
5
6
既設コンクリート表面からの深さ(cm)
2) LiNO2 の挙動
7
0
0
2
4
6
8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30
検討時からの経過年数(年)
3) 鉄筋位置のモル比の挙動
(b)設計モル比が鋼材腐食発生限界塩化物イオン濃度を超えた後に確保されるもの
(本工法が適用不可)
図-1.5 浸透性防錆剤防食工法のシミュレーションの事例
- 13 -
第1章 序 論
一般に亜硝酸イオンと塩化物イオンのモル比(
(NO2-)/46)
)/((Cl-)/35.5)
)
)が 0.8 以上確保
されることで効果が発揮される 50).浸透性防錆剤防食工法は,図-1.4 に示すように潜伏期におい
て表面塗装が適用できないと判断された場合に使用されるケースが増えてきている.浸透性防錆
剤防食工法の適用を検討したシミュレーションの事例を図-1.5 に示す.これはコンクリート表面
に厚さ 1cm の高濃度の防錆剤(LiNO2,原液換算 55kg/m3)添加したポリマーセメントモルタルを
貼付け,亜硝酸リチウム(LiNO2)と塩化物イオン(Cl-)の拡散状況を前項の差分法にて予測し
たものである.aの場合,設計モル比 0.8 は鉄筋位置の塩化物イオン濃度(Cl-)が鋼材腐食発生
限界塩化物イオン濃度 1.2kg/m3 に達する前に確保されることを示している.これにより,本工法
の適用が可能と判断される.一方,b の場合は,設計モル比 0.8 は鉄筋位置の塩化物イオン濃度
(Cl-)が鋼材腐食発生限界塩化物イオン濃度 1.2kg/m3 に達した後に確保されることを示してい
る.この場合,本工法は適用できないと判断され,貼付ける防錆剤混入モルタルの厚さの増加や
コンクリートを数 cm はつり後を想定した検討を行う.これらの検討の結果でも,適用不可となっ
た場合,脱塩工法や電気防食工法を適用することとなる.
(d) 電気防食工法
電気防食工法を道路橋でもっとも古く適用したのは,平成元年に北陸自動車道 大慶寺川橋で
施工された4つの工法(帯状陽極方式,導電性塗料方式,チタンメッシュ方式,流電陽極方式)で
ある(写真‐1.13参照)52).しかし,追跡調査の結果,15年経過後,一部,復極量100mV以上が確
保できない部分が明らかとなった.その原因は,電気防食を構成する2次電極や仕上被覆材など副
材の劣化によるものであった52).帯状陽極方式より採取したコアを図-1.6および写真-1.14に示す.
白金めっきチタン線の周りには空洞が発生し,コンクリートの変色も確認できた.この空洞の原
因として,通電によるパテ材中のカーボンが消耗したことが考えられた53).また,空洞が生じた
白金メッキチタン線から流出する電流のバランスが悪化し,鋼材に不均一な電流が流れ,一部,
過大な電流が流れたチタン線は,界面反応の変化による塩素ガスの発生とコンクリートのpHが低
下したことによるコンクリートの劣化の可能性も考えられた54).コア断面におけるEPMA面分析の
結果を写真-1.15に示す.塩素(Cl)の分布は,コンクリート表面付近で濃度が高く,内部に向か
うに従い減少していた.塩素(Cl)は,陽極材付近に集積する傾向があり,電気防食による通電中
写真-1.13 大慶寺川橋に施工された電気防食工 51)
- 14 -
第1章 序 論
コア採取
白金めっき
チタン線
導電性
パテ
図-1.6
鉄筋
帯状陽極方式からのコア採取 53)
写真-1.14
コアの断面 53)
効果が確認された.またセメントの主成分であるカルシウム(Ca),鉄(Fe),ケイ素(Si),アルミニ
ウム(Al)の分布は一様であり,陽極材付近のカルシウム(Ca)の溶解現象は確認されなかった55).
電気防食による通電15年間では,CSHゲルの性状には変化がないものと推察された.一方,コア表
面では塩素(Cl)の集積が確認されたが,飛来塩分とともに浸透したナトリウム(Na)は確認でき
なかった.陽極材付近では全般的にナトリウム(Na)およびカリウム(K)の濃度は低下していた.写
真-1.15から推察したように陽極材付近のコンクリートの変色は,
ナトリウム(Na)ならびにカリウ
ム(K)の濃度が減少し,コンクリートのアルカリ濃度が低下していたことを示していた.帯状陽極
方式では,復極量が確保できなくなった原因として陽極材付近のコンクリートのpH低下により,
鉄筋に対して十分な防食電流が流れなかったことが考えられた.
チタンメッシュ方式では,
図-1.7および写真-1.16に示すようにテストハンマーによる打音点検
により被覆モルタルならびにバックフィル材と既設コンクリート面との付着が絶たれ,十分な電
流が流れない状況になっていた.チタンメッシュ方式の被覆モルタルにおける塩素(Cl)のEPMA
面分析の結果を写真-1.17に示す.陽極材の付近では塩素(Cl)の集積が認められ,塩素ガスが発生
していたことが確認された.チタンメッシュ方式で復極量が確保できなくなったのは,陽極材付
近の塩素ガスの発生により,鉄筋に対して十分な防食電流が流れなかったことが原因と考えられ
た.
- 15 -
第1章 序 論
写真-1.15 コア断面の EPMA 面分析の結果(帯状陽極方式)
- 16 -
第1章 序 論
図-1.7
チタンメッシュ方式
写真-1.16
被覆モルタルの浮き(斜線部分)
(チタンメッシュ方式)
写真-1.17
被覆モルタルにおける塩素(Cl)の EPMA 面分析の結果(チタンメッシュ方式)
- 17 -
第1章 序 論
1.6
アルカリシリカ反応性の判定試験法
(1)アルカリシリカ反応性試験の現状と課題
a) 骨材の岩石・鉱物学的試験法
ASR が発生するために 3 つの要素である,反応性骨材,コンクリート中のアルカリおよび水分
が必要である.ASR を未然に防ぐには反応性の岩種を如何に確認するかが,重要である.北陸地
方の反応性骨材は,火山系岩石の安山岩,流紋岩および凝灰岩が主である.これらの岩石に含有
する火山ガラス,クリストバライト,トリジマイト,オパールが反応性鉱物となっている.反応
性鉱物を確認する手法としては,次のものがある.
1) 岩石学的な試験により骨材中に十分なシリカ鉱物が含まれているかを判定する方法
2) 骨材を過酷な条件下で化学的に処理することによって判定する方法
3) 骨材を使用して作製したモルタルの膨張率により判定する方法
1)では,岩種判定,偏光顕微鏡観察,粉末 X 線回折,示差走査熱量分析があり,熟練した技術者
による判定が必要となることから,一般的に普及していない.2)は化学法(JIS A 1145-2001),3)
はモルタルバー法(JIS A 1146-2001)が規格化されている.
b) 骨材のアルカリシリカ反応性(化学法(JIS A 1145-2001)およびモルタルバー法(JIS A
1146-2001)
)
化学法(JIS A 1145-2001)は R.C.Mielenz 等によって研究され,1948 年に ASTM C 289 として
定められた化学的方法が基本となっている 30).これは,骨材試料 25g を温度 80℃の1mol/l・NaOH
溶液 25ml に 24 時間浸せきし,アルカリ濃度減少量(Rc)および溶解シリカ量(Sc)を測定し,
判定図にて判定するものである.化学法(JIS A 1145-2001)の問題点は,以下のとおりである.
1) 温度条件が構造物のコンクリートのものとは異なり,ASR による膨張の程度を示す指標とは
ならいこと
2) 骨材中にシリカ鉱物以外にも反応する成分(炭酸カルシウム,粘土鉱物)を含有すると誤
った判断をする可能性があること
3) 廃棄ガラス起源のような骨材を含有する場合,骨材からアルカリが溶出し,判定が困難な
こと
4) 川砂,川砂利の場合,結果が判定ライン付近にプロットされ,試験誤差により判定結果が
覆ること
5) 化学法(JIS A 1145-2001)で「無害」と判定されてもモルタルバー法(JIS A 1146-2001)
で「無害でない」と判定される場合があること
6) 化学法 ASTM C 289 における「潜在的有害」の範囲を外したことによる弊害
とくに,6)は,化学法 ASTM C 289 を日本のコンクリート用骨材を適用し,モルタルバー法(現
在の JIS A 1146-2001)による試験結果との照合を行い,潜在的有害の範囲を取り払った経緯が
ある 31).潜在的有害の領域に属する骨材は,ASR がより活発に生じる可能性があるものであり,
このような骨材はペシマム混合率の影響を考慮して,モルタル試験体を作製する必要性が指摘さ
れている 56).
モルタルバー法(JIS A 1146-2001)は T. E. Stanton の研究をもとに定められたモルタルバー
の膨張を測定によって行う ASTM C 227 が基本となっている
- 18 -
31)
.これは所定の粒度調整を行った
第1章 序 論
骨材でセメントのアルカリ量(Na2O+0.658K2O)を 1.2%に調整したモルタルバーを作製し,温度 40
±2℃の RH95%以上の環境にて保存し,モルタルバーの膨張量を測定するものである.モルタル
バー法(JIS A 1146-2001)の問題点は,以下のとおりである.
1) 構造物の環境とモルタルバー法(JIS A 1146-2001)の膨張の関連性が不明確なこと
2) 湿度管理が重要であり,わずかな湿度の違いにより,膨張量が異なってしまうこと
3) 判定基準(6 ヶ月の膨張率 0.1%以上,「無害でない」)が一律であり,遅延型膨張のチャー
ト等では判定を誤る可能性あること 57)
4) 化学法(ASTM C 289)における「潜在的有害」と判定された骨材では,ペシマム混合率を明
確にする必要性があること
c) 促進モルタルバー法(ASTM C 1260-1994,デンマーク法)
促進モルタルバー法(ASTM C 1260-1994)は,ヨーロッパ,南アフリカおよびオーストラリア
などでも採用されており,各国の骨材に対応した判定基準が整備されつつある.促進モルタルバ
ー法(ASTM C 1260-1994)では,常にアルカリが供給される条件下で促進養生(温度 80℃の 1N・
NaOH 溶液浸せき)を行っているために,比較的短期間に膨張する反応性骨材に対して早期の判定
結果が得られるという利点が挙げられる.促進モルタルバー法(ASTM C 1260-1994)の問題点は
以下のとおりである.
1) 温度 80℃の1N・NaOH 溶液を取扱うことから,試験中に危険を伴うこと
2) 温度 80℃の養生槽から試験体を取り出し,15 秒以内(ASTM C 1260-1994 の規定)に計測
を終わることは不可能であり,計測データにバラツキが生じる恐れがあること
3) わが国での実績が少なく従来から用いられているモルタルバー法(JIS A 1146-2001)の膨
張量と促進モルタルバー法(ASTM C 1260-1994)で得られた結果との相関性を検討するこ
とが必要であること
4) 設定されている環境条件(温度 80℃の1N・NaOH 溶液浸せき)は,実際にコンクリートが
置かれている環境条件と大きく異なることから,判定基準の設定において両者間の膨張率
の相関性を明らかにすることも必要であること
5) チャート単体に対しての試験では,試験中にチャートが溶解し,膨張しない.しかし,他
の非反応性の岩種との混合率を変化させた場合にはペシマム混合率が存在し,非反応性の
骨材の混入量によっては反応性を低く評価する可能性があること 57)
促進モルタルバー法(デンマーク法)は,モルタルバーを温度 50℃の飽和 NaCl 溶液に浸せき
するものであり,デンマークの反応性の高いフリントを評価するために検討されたものである.
なお,北陸地方のように外来塩分により ASR が進行する地域では有効な試験法と考える.また促
進モルタルバー法(ASTM C 1260-1994)に比べ飽和 NaCl 溶液に浸せきさせるために,測定が安全
にできる利点がある.なお,促進モルタルバー法(デンマーク法)の問題点は以下のとおりであ
る.
1) わが国での実績が少なく,従来から用いられているモルタルバー法(JIS A 1146-2001)の
膨張率と促進モルタルバー法(デンマーク法)で得られた結果との相関性を検討すること
が必要であること
2) 設定されている条件が,実際のコンクリートに置かれている環境条件と大きく異なるため,
両者間の相関性を明らかにする必要があること
- 19 -
第1章 序 論
d) コンクリートバーを用いるアルカリシリカ反応性の判定法
構造物に近い方法で反応性骨材をスクーニングする方法として,コンクリートプリズム法やコ
ンクリート立体法がカナダやドイツで用いられている 58).RILEM(AAR-3)では,温度 38℃で養生す
る促進コンクリートバー法や RILEM(AAR-4)では,
温度 60℃で養生する超促進コンクリートバー法
が提案されている 59).日本においては,コンクリート迅速法(ZKT206(1997))とコンクリート法
(JCI AAR3(1987))が規格されている.コンリート迅速法はコンクリートをオートクレープ養生し,
試験前後での相対動弾性係数の変化で判定するもので 2 日程度の試験日数を要する.コンクリー
トバー法は,コンクリート中のアルカリ量(Na2O+0.658K2O)を 1.2%に調整し,湿気槽に保管,6 ヶ
月後の膨張率で判断するものである.これらの方法は,通常のコンクリートでは起こりえないよ
うな反応が生じることやこれらの促進法によって得られた結果と実際のコンクリートの ASR の挙
動との相関性について十分に検討する必要性が考えられる 60).
e) コンクリートコアを用いるアルカリシリカ反応性の判定法(残存膨張性の評価)61)
ASR による劣化構造物での補修や補強工法を決定する際,構造物の膨張性を検討する目的で,
コンクリートコアによる促進養生試験が用いられている.この膨張の目安としてコアの開放膨張
量や残存膨張量が用いられているが,前者は測定値の持つ意味は不明確であり,後者も促進環境
条件下における結果であることから,使用・環境下における膨張量とは相違することが考えられ
る.コアによる残存膨張性の評価法を表-1.3 に示す.わが国ではモルタルバー法(JIS A
1146-2001)に準拠した湿気養生法(JCI-DD2 法,温度 40℃の RH95%以上に保存)が用いられて
きたが,比較的細い直径(φ55 ㎜)で試験が可能であり外部からアルカリを供給するコアの促進
養生試験(ASTM 法,デンマーク法)を行う機会も増えている.これらの試験の問題点として以下
表-1.3
コアによる残存膨張性の評価法 62)
JCI-DD2 法
開放
デンマーク法
CSA A864-00
阪神高速
建設省総合技術開発
日本道路公団
日本道路公団
道路公団
プロジェクト
北陸支社
北陸支社
コア径
75 ㎜
規定なし
55 ㎜
55 ㎜
100 ㎜
コア長
150 ㎜
直径の 1.5 倍
150 ㎜
150 ㎜
200 ㎜
温度 20℃の
温度 20℃の RH95%
規定なし
規定なし
温度 38℃の
RH100%
以上
養生期間
5週
規定なし
規定なし
規定なし
8週
養生方法
温度 40℃の
温度 40℃の RH95%
温度 80℃の
温度 50℃の
温度 38℃の
RH100%
以上
1N・NaOH
飽和 NaCl
RH100%
溶液浸せき
溶液浸せき
養生方法
膨張
残存
ASTM 法
膨張
養生期間
残存膨張の判定
試験法の安全性
RH100%
10 週
13 週
3週
13 週
52~104 週
0.1 % 以 上 を
0.05%以上を「有害」
0.1%以上を
0.1%以上を
0.03%以上を
「有害」
(15 週) または「潜在的有害」 「残存膨張性
「残存膨張性
「有害」
(13 週)
あり」(3 週)
あり」(13 週)
(規定無し)
○
×
○
○
○
- 20 -
第1章 序 論
が挙げられる.
1) コアの促進養生試験(JCI-DD2 法)
・ 年数が経過した構造物からのコアは,採取時や養生期間中にアルカリ溶出の影響で膨張
量が小さくなり,誤った判断をしてしまうこと
・ アルカリ溶出の影響を考慮し,できるだけ大きなコア(直径 75 ㎜または 100 ㎜)が必要
であるが,橋脚等鉄筋の配置により,採取が困難な場合があること
2) コアの促進養生試験(ASTM 法,デンマーク法)
・ 実環境ではありえない促進環境としているために,構造物における膨張との対応が不明
なこと
・ コアの促進養生試験(ASTM 法)では温度 80℃の 1N・NaOH 溶液を扱うことから,試験が危
険であること(カナダでは温度条件を緩和した温度 38℃の1N・NaOH 溶液浸せき法が採用
されている)
・ 浸せき溶液のコアへの浸透に速さ,直径が異なる場合および最大粗骨材寸法の違いによ
り,膨張量が異なる可能性があること
(2) ASR 診断に用いた試験法と分析機器
本研究に使用した,岩石・鉱物学的試験法,骨材のアルカリシリカ反応性試験法およびコンク
リートに関する試験法を表-1.4~1.7 に示す.また,分析機器の外観を写真-1.18~1.19 に示す.
なお,本研究の特徴は,湿式化学分析のほかに電子線マイクロアナライザー(以下 EPMA)62)を用
いた分析や促進モルタルバー法(ASTM C 1260-1994,デンマーク法)に準拠したコアの促進養生
試験を取り入れていることにある.以下にその分析事例を紹介する.
- 21 -
第1章 序 論
表-1.4
項目
コンクリート中の
骨材の岩石・鉱物学的試験
主な試験機器
コアの展開写真装置
試験方法
コンクリートコア(φ100 ㎜, 長さ 150~200 ㎜)表面
川砂利の岩種含有
の展開写真を撮影し,撮影した画像より,岩種を判定
率の算出
する.なお,岩種区分が目視により不明確なものは研
磨薄片を作製し,偏光顕微鏡で確認する.判定した岩
種の面積を 5 ㎜ポイントメッシュカウント法により,
岩種含有率を算出する.
コンクリート中の
・偏光顕微鏡
コンクリートコアから,比較的粗骨材のない部分を選
川砂の岩種含有率
・ポイントカウンター
定し,研磨薄片(20×30 ㎜,厚さ 20μm)を 2 枚作製
の算出
する.研磨薄片から偏光顕微鏡にて判定した岩種の面
積を 0.4 ㎜ポイントメッシュカウント法により,岩種
含有率を算出し,2 枚の薄片の平均値をもってその川
砂の岩種含有率とする.
サンプル試料によ
―
る川砂利の岩種含
川砂利約 5kg を目視により,1個ずつ岩種判定を行
う.岩種含有率は,岩種ごとの重量比率により算出す
有率の算出
る.
サンプル試料によ
・偏光顕微鏡
川砂の縮分約 5g を低粘度のエポキシ樹脂中に埋込
る川砂の岩種含有
・ポイントカウンター
み,研磨薄片(20×30 ㎜,厚さ 20μm)を 2 枚作製す
率の算出
る.研磨薄片から偏光顕微鏡にて判定した岩種の面積
を 0.4 ㎜のポイントメッシュカウント法により,岩種
含有率を算出し,2 枚の研磨薄片の平均値をもってそ
の川砂の岩種含有率とする.
反応性鉱物の同定
偏光顕微鏡
コンクリートコアあるいはサンプル試料より,研磨薄
片(20×30 ㎜,厚さ 20μm)を作製し,偏光顕微鏡に
て単ニコルおよび直交ニコルで構成鉱物(輝石,斜長
石,ガラス相,粘土鉱物など)の鉱物の同定を行う.
粉末 X 線回折
コンクリートコアまたはサンプル試料より岩種を特
定し,メノー乳鉢で指頭に感じなくなるまで粉砕し,
粉末試料を作製する.粉末試料は,X 線回折分析装置
を使用して X 線回折図を求め,岩石に含まれる構成鉱
物(シリカ鉱物(クリストバライト,トリジマイト),
ガラス相(火山ガラス)および粘土鉱物(モンモリロ
ナイト,バーミキュライト))の同定を行う.
示差走査熱量分析装置
粉末 X 線回折分析と同様にして作製した粉末試料を,
示差走査熱量分析装置(温度 20~1000℃)を使用し
て DSC 曲線により,シリカ鉱物(クリストバライト,
トリジマイト),ガラス相(火山ガラス)および粘土
鉱物(モンモリロナイト,バーミキュライト))の同
定を行う.
砂のアルカリ溶出
性状試験
原子吸光光度計
砂 20g を飽和水酸化カルシウム溶液 40ml に攪拌・混
合した後に温度 38℃のプラスチック容器中の保存
し,所定の浸せき日数にて溶液中の Na+および K+濃度
を原子吸光光度分析により測定する.骨材からのアル
カリ溶出量(mg/g)は骨材 1g 当たりの等価アルカリ
溶出量(mg/g,Na2O+0.658K2O)で表示する
- 22 -
第1章 序 論
表-1.5
項目
骨材のアルカリシリカ反応性試験法
試験方法
判定
化学法
JIS A 1145-2001 に従い判定を行う.化学法は,骨材の
Sc<Rc:無害でない
(JIS A 1145-2001)
潜在的反応性に関する試験方法であり,粒度 0.15~
Sc が 10 mmol/l 以上で
0.3mm に調整した骨材試料 25g と 1mol/l・NaOH 溶液 25ml Rc が 700 mmol/l 未満の
を温度 80℃の条件で 24 時間保持した時に得られるアル 時:無害でない
カ リ 濃 度 減 少 量 (Rc : mmol/l) と 溶 解 シ リ カ 量 (Sc :
mmol/l)をもとに判定を行う.反応性の評価には,溶解
シリカ量が 10 mmol/l 以上でアルカリ濃度減少量が 700
mmol/l 未満の時および溶解シリカ量がアルカリ濃度減
少量以上となる場合,この骨材を「無害でない」と判
定し,それ以外の場合を「無害」と判定する.
モルタルバー法
JIS A 1146-2001 に従い実施する.セメントと骨材の組 試験日数 3 ヶ月
(JIS A 1146-2001) 合せによる潜在的アルカリシリカ反応性に対する試験
膨張率<0.05%:無害
方 法 で あ る . モ ル タ ル の 配 合 は 水 : セ メ ン ト : 骨 材 試験日数 6 ヶ月
=0.5:1:2.25 であり,使用セメントのアルカリ量を水酸 膨張率<0.10%:無害
化ナトリウム溶液の添加により 1.2±0.05%に調整し,
モルタルバー(40×40×160 mm)を作製する.脱型時(打
設後 24 時間)の長さを基長とし,温度 40±2℃の RH95%
以上の条件下で長さ変化を 6 ヵ月間計測する.なお,
測定値は試験体 3 本の平均とする.JIS A 1146 では,
0.05%以上(試験日数 3 ヵ月)または 0.1%以上(試験
日数 6 ヵ月)の膨張率を「無害でない」と判定する.
促進
ASTM C 1260-1994 に従い実施する.モルタルの配合は
試験日数 14 日
モルタルバー法
水:セメント:骨材=0.47:1:2.25 であり,使用セメント
膨張率<0.1%:無害
(ASTM C 1260-1994) のアルカリ量は調整せず,モルタルバー(25×25×285
mm)を作製する.モルタルバーは打設後 24 時間で脱型
0.1-0.2%:不明確
0.2%≦:有害
し,さらに温度 80 ℃の水中養生を 24 時間実施し,そ
の時点での長さを基長とする.その後,温度 80℃の
1N・NaOH 溶液に浸せきした条件下で長さ変化を 14 日
間計測する.なお,測定値は試験体 3 本の平均とする.
促進
Chatterji, S.らが提案する手法であり,モルタルの配 試験日数 3 ヶ月
モルタルバー法
合は JIS A 1146-2001 と同様であるが,使用セメントの 膨張率<0.1%:無害
(デンマーク法)
アルカリ量を調整せず,モルタルバー(40×40×160mm)
を作製する.脱型時(打設後 24 時間)の長さを基長とし,
温度 50℃の飽和 NaCl 溶液に浸せきした条件下で長さ変
化を 3 ヵ月間計測する.なお,測定値は試験体 3 本の平
均とする.
- 23 -
0.1-0.4%:不明確
0.4%≦:有害
第1章 序 論
表-1.6
項目
コアの
コンクリートの ASR 試験法(その1)
主な試験機器
・養生槽
試験方法
促進モルタルバー法(ASTM C1260-1994)に準拠し,コア(φ
促 進 養 生 試 験 ・コンタクトミク
55 ㎜,L=150)を温度 80℃の1N・NaOH 溶液に浸せきし,コア
(ASTM 法)
に取り付けたステンレスバンドの基点間の膨張量(基準長:100
ロンゲージ
㎜)をコンタクトミクロンゲージにて一定期間測定する.判定
は試験日数 21 日の膨張率が 0.1%以上を「残存膨張性あり」と
する.
コアの
促進モルタルバー法(デンマーク法)に準拠し,コア(φ55 ㎜,
促進養生試験
L=150)を温度 50℃の飽和 NaCl 溶液に浸せきし,コアに取り付
(デンマーク法)
けたステンレスバンドの基点間の膨張量(基準長:100 ㎜)をコ
ンタクトミクロンゲージにて一定期間測定する.判定は試験日
数 91 日の膨張率が 0.1%以上を「残存膨張性あり」とする.
コアの
モルタルバー法(JIS A1146-2001)に準拠し,コア(φ100 ㎜,
促進養生試験
L=250)を温度 40℃の RH95%以上にて,コアに取り付けたステ
(JCI-DD2 法)
ンレスバンドの基点間の膨張量(基準長:100 ㎜)をコンタクト
ミクロンゲージにて一定期間測定する.判定は試験日数 3 ヶ月
の膨張率が 0.05%以上,または 6 ヶ月の膨張率が 0.1%以上を
「残存膨張性あり」とする.
塩化物
電位差滴定装置
イオン濃度分析
コンクリート試料を 150μm 未満に試料調整し,JIS A 1154-2003
に従い,コンクリート中の全塩化物イオン濃度を分析する.試
料 10gを(1+6)の HNO3 で溶解し,30 分間攪拌,煮沸した後,ろ
液の塩化物イオン濃度(Cl-)を電位差滴定法により測定する.
水溶性
原子吸光光度計
アルカリ量分析
コンクリート試料を 100μm 未満に試料調整し,
「建設省総合技
術開発プロジェクト・コンクリートの耐久性向上技術の開発
(平成元年 5 月)」に従い,コンクリート中の水溶性アルカリ量
(Na2O+0.658K2O)を分析する.試料 10g を温度 40℃の蒸留水に
混合し,30 分間攪拌後,ろ液のアルカリ濃度(Na+,K+)原子吸
光光度法により測定し,等価アルカリ量(Na2O+0.658K2O)で表
示する.
セメントの
・偏光顕微鏡
セメントのアルカリ量は,片山らが提案した手法で,コンクリ
アルカリ量分析
・EPMA(電子線マ
ート中の未水和の状態で残存しているセメント粒子を研磨薄
イクロアナライ
片(厚さ 20μm)で偏光顕微鏡観察により識別し,炭素蒸着後,
ザー)
化学組成をエネルギー分散型(EDS)の EPMA を用いて,C3S,βC2S,
C3A,C4F ごとに半定量分析することにより実施する.
圧縮強度・
・圧縮強度試験機 採取したコアを試験用に切取整形し,JIS A 1107「コンクリー
静弾性係数試験
・コンプレッソメ トからのコアおよびはりの切取り方法並びに強度試験方法」,
ーター
JIS A 1108「コンクリートの圧縮試験方法」および JSCE-G502
「コンクリートの静弾性係数試験方法」に従い実施する.
- 24 -
第1章 序 論
表-1.7
項目
ASR ゲルの同定
コンクリートの ASR 試験法(その 2)
主な試験機器
試験法
―
コンクリートコアの表面に発生している反応
性岩種の周囲に発生した白色ゲルおよび透明
ゲルを確認する.また,コアの破断面では,
容易に白色ゲルや反応環が確認できる場合が
ある.
偏光顕微鏡
コンクリートからセメントペーストと骨材を
含む形で研磨薄片(20×30 ㎜,厚さ 20μm)
を作製し,骨材の反応環,骨材のひび割れや
ゲルの充填状況を確認する.
走査型電子顕微鏡(SEM)
コンクリートコアの骨材を含んだ破断面試料
(10×10 ㎜程度)に炭素蒸着後,走査型電子
顕微鏡にて ASR ゲルの形態を確認する.
ASR ゲルの
EPMA(電子線マイクロアナライ
化学組成分析
ザー)
走査型電子顕微鏡(S-2250N 型,HITACHI 社
製)とエネルギー分散型 X 線回折との組合せ
による分析(SEM-EDX)を二次電子画像および
反射電子画像にて ASR ゲルの半定量分析を行
う.
- 25 -
第1章 序 論
(1) コアの展開写真装置 5)
(2) コアの展開写真例
(3) 偏光顕微鏡
(4) ポイントカウンター
(5) 粉末 X 線回折装置
(6) 示差走査熱量分析装置
写真-1.18 岩石・鉱物学的試験に用いた装置
- 26 -
第1章 序 論
(1) 圧縮強度・静弾性係数試験装置
(2) ひずみ測定器(コンプレッソメーター)
(4) 原子吸光光度計
(3) 電位差滴定装置
(5) EPMA(電子線マイクロアナライザー)
写真-1.19 コンクリート試験に用いた装置
- 27 -
第1章 序 論
a) 硬化コンクリート中のセメントのアルカリ分析
北陸地方の ASR は,昭和 40 年後半~50 年代に建設された構造物が多く,当時,アルカリ量の
高いセメントが使用された可能性が高かった 63).しかしながら,当時の工事記録が残っていない
のが現状であり,北陸地方の ASR の劣化進行を調査するうえでセメントに由来するアルカリ量を
調べることが重要と考えた.分析は,片山ら 5)が提案する手法で建設から 20 年以上経過した構造
物からコアを採取し,未水和の状態で残存しているセメント粒子を研磨薄片(厚さ 20μm)で偏
光顕微鏡により識別した.炭素蒸着後,エネルギー分散型(EDS)の EPMA(日本電子製 JED-2140/JSM
5310LV)を用いて,アリット(C3S),ベリット(βC2S),アルミネート相(C3A),フェライト相(C4F)ご
とに半定量分析することにより実施した.富山県に位置する IMA 高架橋橋台(昭和 48 年供用,SU
セメント社製)および KUMA 橋 橋台(昭和 50 年供用,MY セメント社製)の未水和セメント粒子
の SEM 画像を写真-1.20 に示す.アルカリ量は等価アルカリ(Na2O+0.658K2O)に換算後,C3S,βC2S,
C3A,C4F の質量比率を 0.6:0.2:0.1:0.1 と仮定して計算した.その計算例を表-1.8 に示す.な
お,このセメントのアルカリ量には,注水直後に溶解する硫酸アルカリ(Na2SO4, K2SO4)などの
水溶性アルカリ量は含まれていない.
富山県 IMA 高架橋,SU セメント社製
富山県 KUMA 橋,MY セメント社製
写真-1.20 コンクリート研磨薄片による未水和セメント粒子(SEM 画像)
表-1.8 アルカリ量の算出例
富山県 KUMA 橋,MY セメント社製 5)
富山県 IMA 高架橋,SU セメント社製 5)
SiO2
TiO2
Al2O3
Fe2O3
MgO
CaO
Na2O
K2O
SO3
P2O5
計
Na2Oeq.
Na2Oeq 計
C3S
βC2S
C3A
C4F
25.35
0.12
1.09
0.92
0.41
68.45
0.12
0.10
0.50
0.00
98.05
0.10
31.01
0.56
1.55
1.13
0.00
60.93
0,78
0.59
0.53
0.26
97.34
0.23
0.84
6.61
0.08
27.65
4.57
4.27
49.05
3.49
1.86
0.03
0.00
97.60
0.47
4.70
1.42
18.67
24.39
2.88
46.65
0.39
0.02
0.00
0.09
99.21
0.04
SiO2
TiO2
Al2O3
Fe2O3
MgO
CaO
Na2O
K 2O
SO3
P2O5
計
Na2Oeq.
Na2Oeq 計
- 28 -
C 3S
βC2S
C3A
C 4F
25.36
0.53
0.84
0.25
0.71
70.07
0.34
0.34
0.51
0.25
99.20
0.34
31.53
0.20
0.77
0.61
0.00
60.12
0.26
0.19
0.08
0.66
94.41
0.08
1.04
3.69
0.04
29.95
6.96
0.00
53.16
4.76
1.34
0.00
0.00
99.90
0.56
1.60
0.98
20.25
30.98
0.97
44.51
0.52
0.08
0.00
0.00
99.79
0.06
第1章 序 論
b) 砂からのアルカリ溶出の検証
北陸地方には,アルカリ濃度の高い岩種が存在し,コンクリート用骨材として使用された砂粒
子から長期にわたり,アルカリが溶出することが考えられた.この現象を検証するために,溶媒
として水酸化カルシウム(Ca(OH)2,特級)5g を 1000ml の蒸留水で溶解し,飽和水酸化カルシウ
ム溶液を作製した.砂試料(粒径 5.0-0.60mm)の縮分 20g を 100cc のポリエチレン容器に入れ,
40ml の飽和水酸化カルシウム溶液に混合・攪拌させ,温度 38℃の恒温槽で養生し,定期的に飽和
水酸化カルシウム(Ca(OH)2)溶液中のナトリウムイオン濃度(Na+)およびカリウムイオン濃度
(K+)を原子吸光光度計で測定した.骨材からのアルカリ溶出量(mg/g)は,骨材 1g 当たりの
等価アルカリ溶出量(mg/g,Na2O+0.658K2O)で表示した.
また,溶出試験前後の骨材試料を低粘度のエポキシ樹脂中に埋め込み,切断・研磨した川砂の
岩種構成を偏光顕微鏡により特定した.その後,試料に炭素蒸着を施し,波長分散型(WDS)の
EPMA(日本電子社,JXA-8200)により,骨材粒子中のナトリウム(Na)およびカリウム(K)の分
布状況を面分析によって調べた.また,構造物から採取したコアからも研磨薄片(骨材とセメン
トペースト含む)を作製し,偏光顕微鏡にて岩種を特定し,同様に骨材周辺のナトリウム(Na)
およびカリウム(K)等の分布状況を EPMA 面分析によって調べた.試験の状況等を写真-1.21 に
示す.
(2) 原子吸光光度計による測定
(1) 恒温槽での養生
(3) 砂のエポキシ樹脂への埋込み
(4) コアから作製した研磨薄片
写真-1.21 砂からのアルカリ溶出試験
- 29 -
第1章 序 論
c) コアの促進養生試験
構造物の ASR 残存膨張性の評価法は,コアの促進養生試験(JCI-DD2 法(温度 40℃の RH95%
以上に保存)
)にて行ってきた.北陸地方は,海からの飛来塩分や凍結防止剤の散布による塩分環
境下の構造物が多いことや骨材からのアルカリ溶出により,コンクリート中のアルカリ濃度が上
昇することが推察された.このため,外部からアルカリを供給する促進モルタルバー法(ASTM
C1260-1994,デンマーク法)をコンクリートコアに適用した.コアの促進養生試験(ASTM 法)は
ASTM C1260-1994 に準拠し
23)
,コンクリートコア(φ55 ㎜,L=150mm)を温度 80℃の1N・NaOH
溶液に浸せきした.コアの促進養生試験(デンマーク法)は,促進モルタルバー法(デンマーク
法)に準拠し 24),コンクリートコア(φ55 ㎜,L=150 ㎜)を温度 50℃の飽和 NaCl 溶液に浸せき
した.なお,コアに取り付けたステンレスバンドの基点間の膨張量(基準長:100 ㎜)をコンタク
トミクロンゲージにて一定期間測定した.試験の状況を写真-1.22 に示す.
(1) コアの1N・NaOH 溶液あるいは飽和 NaCl
溶液への浸せき
(2) コンタクトミクロンゲージによる基準長
測定
(4) ASTM 法およびデンマーク法の養生
(3) JCI-DD2 法の湿気養生
写真-1.22 コアの促進養生試験
- 30 -
第1章 序 論
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Supplementary Papers, pp.A33-A59,1997.
57) 岩月栄治,森野奎二:ASTM C 1260 および JIS A 5308 による ASR モルタルバーの膨張挙動と
微細構造,コンクリート工学年次論文集,Vol.24,No.1, pp.687-692,2002.
58) 日本材料学会:アルカリ骨材反応に関するシンポジウム, pp.69-85, 1985.
59) Sims, I., Nixon, P.J. :Assessment of Aggregate for Alkali-Aggregate Reactivity
Potential: RILEM International Recommendations , Proc. of the Marc-Andre Berube
Symposium on Alkalai-Aggregate Reactivity in Concrete, pp.71-91, 2006.
- 33 -
第1章 序 論
60) 川村満紀:アルカリ骨材反応に関する歴史と世界の動向,コンクリート工学,Vol.24, No.11,
pp.5-11, 1986.
61) 鳥居和之,野村昌弘:コンクリートコアによる ASR 残存膨張性の評価,セメント・コンクリー
ト,No.715,pp.64-70, 2006.
62) 小林一輔:EPMA のコンクリート構造物への応用,コンクリート工学, Vol.43, No.7, pp.10-18,
2005.
63) 日本コンクリート工学協会:セメント系材料・骨材研究委員会報告書,p.8,2005.
- 34 -
第 2 章 北陸地方で産出する骨材の岩石・鉱物学的特徴とアリカリシリカ反応性試験の適合性に関する研究
第2章
北陸地方で産出する骨材の岩石・鉱物学的特徴とアルカリシリカ反応性
試験の適合性に関する研究
2.1 概 説
北陸地方では,ASR による損傷が構造物に顕在化しており,過大な膨張が発生した橋脚のはりや
フーチングではせん断補強筋が曲げ加工部で破断している事例や主筋が圧接部や曲げ下げ部で破
断している事例など,構造物の耐荷性能に影響を及ぼすような重大な損傷も発生している
1)
.ま
た,当該地域では,平成 3 年 3 月のスパイクタイヤの使用禁止以後に,道路に散布する凍結防止
剤(塩化ナトリウム(NaCl)が主体である)が年々増えてきており,凍結防止剤による影響を受
けた道路構造物では ASR,凍害,塩害による鋼材腐食が促進されるとともに,これらの劣化現象が
組み合わさった複合的な損傷事例も発生している
2)
.さらに北陸地方は,日本有数の山岳地帯が
日本海の背面すぐに迫っており,複雑な地層・岩石構造および急峻な河川構造を有するのが特徴
である.同地域の ASR 損傷構造物は広い範囲に存在している.その骨材の起源は,第三紀中新世
前期~中期の海底で噴出し,熱水変質を受けて緑色(ないし雑色)を呈する火山岩を主とするグ
リータフからのものである 3).
北陸地方の代表的な反応性骨材としては,能登半島北部で産出する安山岩(両輝石安山岩)が
知られているが,長野県,新潟県,富山県,福井県などで一般に使用されてきた,河川流域で産
出する砂や砂利にも火山系岩石の反応性骨材(安山岩,流紋岩,溶結凝灰岩など)が混入してお
り,ASR による構造物の損傷は北陸地方の広い地域で実際に確認されている 4).河川産の骨材が反
応性骨材である場合には,多種多様な岩種のものが骨材中に混在するので,河川水系の上流部,
中流部,下流部で反応性骨材の種類やその含有量が大きく相違しているのが特徴であり,安山岩
砕石,チャート砕石のような,均一な岩石組織をもつ反応性骨材と比較して,骨材のアルカリシ
リカ反応性の判定や ASR の抑制対策を困難なものにしている.一方,ASR 損傷構造物の岩石・鉱
物学的調査では,河川砂利中の火山系岩石の反応性骨材の中でも安山岩粒子がもっとも反応して
おり,河川砂利中の安山岩粒子の含有率とその反応性が構造物の損傷度と関係していることが報
告されている
4)
.一方,安山岩中の主要な反応性鉱物は火山ガラス,クリストバライトおよびト
リジマイトであるが,安山岩中のガラス相の量およびその存在形態は地域ごとに大きく相違して
おり,火山ガラスや長石の風化・変質過程で生成したモンモリロナイト,バーミキュライトなど
の粘土鉱物を含有するものも多く存在する
5)
.したがって,反応性骨材の実態調査および構造物
の ASR 損傷度調査では,反応性骨材中の主要な反応性鉱物の量とその存在形態を把握することが
重要であり,それらに関しての地域ごとのデータを蓄積していくことがコンクリートの品質管理
および維持管理において不可欠なものとなる 6).
本来,骨材のアルカリシリカ反応性試験は,反応性骨材の岩石・鉱物学的特徴および構造物で
の ASR 発生の有無を把握したうえで,それぞれの骨材に適した試験法および判定の規準値を選択
するべきである.しかし,わが国では骨材のアルカリシリカ反応性試験は化学法(JIS A 1145-2001)
およびモルタルバー法(JIS A 1146-2001)が規定されており,両試験法の一律の規準では適切に
判定できない骨材があることも指摘されている
7),8),9)
.一方,現行試験法の問題点に関連して,
川砂,川砂利の中に高い反応性をもつ安山岩が少量混入し,それが顕著なペシマム混合率をもつ
- 35 -
第 2 章 北陸地方で産出する骨材の岩石・鉱物学的特徴とアリカリシリカ反応性試験の適合性に関する研究
場合には化学法(JIS A 1145-2001)では「無害」と判定されることがあることが明らかになって
いる
5)
.また,前述したように,粘土鉱物(モンモリロナイト,バーミキュライトなど)を含有
する骨材の場合には,モルタルバー法(JIS A 1146-2001)にて添加されたアルカリが粘土鉱物に
吸着されるために,全体にモルタルバーの膨張率が小さくなり,同様に「無害」と判定されるこ
とも明らかになっている 5).さらに,コンクリートの ASR 判定のためのコンクリートバー法(JCI
‐AAR3(1987))は,試験がかなり煩雑であり,判定までに長期間が必要であることから,実際のコ
ンクリートの品質管理に適用されていないのも問題である.今後,わが国では,骨材資源の活用
と産業副産物の有効利用の観点から,フライアッシュセメント,高炉スラグセメントなどの混合
セメントを ASR 抑制対策として使用する機会が増えていくことが予想される.この際には,セメ
ントと骨材とを種々に組合せた実際の配合にて,コンクリートのアルカリシリカ反応性を短期間
に評価できる手法の開発が望まれている.
本章では,北陸地方の反応性骨材の岩石・鉱物的特徴とその分布状況を明らかにし,この地方
の骨材に適した ASR 抑制対策を提案することとする.このため,まず,北陸地方の ASR が発生し
ている構造物に使用された代表的な反応性骨材を採取し,偏光顕微鏡観察,走査型電子顕微鏡観
察および粉末 X 線回折により,反応性骨材の岩石・鉱物学的特徴および ASR ゲルの生成状況を明
らかにするとともに,北陸地方全域より収集した約 80 種の骨材を対象として,化学法(JIS A
1145-2001),モルタルバー法(JIS A 1146-2001)
,促進モルタルバー法(ASTM C 1260-1994)お
よび促進モルタルバー法(デンマーク法)により骨材のアルカリシリカ反応性の有無を調べるこ
とにより,これらの試験法の北陸地方の骨材に対しての適合性を検討した 10),11).
- 36 -
第 2 章 北陸地方で産出する骨材の岩石・鉱物学的特徴とアリカリシリカ反応性試験の適合性に関する研究
2.2 研究の概要 10)
(1) 研究の対象地域および骨材の特徴
本研究の対象は北陸地方とその周辺地域(新潟県,富山県,石川県および福井県の 4 県と河川
水系,骨材の流通の関係で長野県(信越地方)
,岐阜県(中部地方)
,滋賀県(関西地方)の一部
を含む)の細骨材 37 種(川砂 26 種 ,山砂 9 種,砕砂 2 種)および粗骨材 48 種(川砂利 37 種,
砕石 11 種)である.北陸地方では砕砂,砕石の使用が比較的少ないが,石灰石砕砂(新潟県)
,
硬質砂岩砕砂(福井県)
,石灰岩砕石(新潟県)
,安山岩砕石(石川県)
,チャート砕石(福井県)
,
などが調査対象に含まれている.一方,北陸地方では川砂,川砂利がコンクリート用骨材として
もっとも多く使用されている.川砂,川砂利および山砂,山砂利は,それぞれ各県の河川流域お
よび地域を代表するものを選定し,試験用骨材はコンクリート工場の骨材瓶から直接に採取する
ことを原則とした.河川産の骨材は,後背地となる山岳地帯の尾根からの岩石の供給,また上流
から下流にかけての骨材の堆積状況により,河川流域および採取場所により骨材の岩種構成が大
きく変化し,火山系岩石(安山岩,流紋岩,溶結凝灰岩など)以外にも,深成岩(花崗岩,閃緑
岩,斑れい岩など)
,堆積岩(砂岩,頁岩,チャートなど)などの多種多様な岩種が骨材中に混在
している.このため,川砂,川砂利に含有される岩種の判定はかなり困難なものとなる.本調査
では,反応性がもっとも高いと思われる安山岩粒子(安山岩,石英安山岩)の含有量に着目して,
専門家による目視判定と岩石標本による比較検査とにより岩種構成を決定した.調査の対象とし
た骨材の表乾密度と吸水率の関係を図-2.1 に示す.密度および吸水率以外の骨材の物理的性質に
関しても,ほとんどの骨材がコンクリート用骨材としての規準を満たしていた.
(2) 骨材の岩石・鉱物学的試験
代表的な反応性骨材であるチャート砕石,安山岩砕石および川砂利・安山岩粒子の研磨薄片(厚
さ:20μm)を作製し,第 1 章 表-1.4 に示す偏光顕微鏡観察,X 線回折装置(XRD, Cukα-Ni フ
ィルター,40kV-20mA)および示差走査熱量分析(DSC, 温度 20~1000℃)により骨材に含まれる
構成鉱物(シリカ鉱物(クリストバライト,トリディマイト)
,ガラス相(火山ガラス))および
3.0
川砂利
川砂
砕石
砕砂
山砂
3
表乾密度(g/cm )
2.9
2.8
2.7
2.6
2.5
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
吸水率(%)
3.0
3.5
図-2.1 骨材の表乾密度と吸水率の関係 10)
- 37 -
4.0
第 2 章 北陸地方で産出する骨材の岩石・鉱物学的特徴とアリカリシリカ反応性試験の適合性に関する研究
粘土鉱物(モンモリロナイト,バーミキュライトなど))を同定した.また,骨材粒子の鏡面研摩
試料(粒子径:1~2mm)の走査型電子顕微鏡とエネルギー分散型 X 線回折との組合せによる分析
(SEM-EDX)を二次電子画像および反射電子画像にて実施し,安山岩の化学組成および斜長石,輝
石などの含有形態を調べた.
(3) 骨材のアルカリシリカ反応性試験
a) 化学法(JIS A 1145-2001)
化学法(JIS A 1145-2001)は,第 1 章 表-1.5 に従い実施し,判定した.
b) モルタルバー法(JIS A 1146-2001)
モルタルバー法(JIS A 1146-2001)は,第 1 章 表-1.5 に従い実施し,判定した.
c) 促進モルタルバー法(ASTM C 1260-1994)
促進モルタルバー法(ASTM C 1260-1994)は,第 1 章 表-1.5 に従い実施し,判定した.
d) 促進モルタルバー法(デンマーク法)
促進モルタルバー法(デンマーク法)は,第 1 章 表-1.5 に従い実施し,判定した.
(4) 採取コアの岩石・鉱物学的試験および力学的試験
ASR 損傷構造物から採取したコアから取り出した骨材(5%の塩酸に浸せきした後に十分に洗
浄したもの)のアルカリシリカ反応性を化学法(JIS A 1145-2001)により調べるとともに,コ
ア試験体(直径 55 ㎜,長さ 110 ㎜)を使用して一連の力学試験(圧縮強度,静弾性係数試験,
第 1 章表-1.6 参照)を実施した.
- 38 -
第 2 章 北陸地方で産出する骨材の岩石・鉱物学的特徴とアリカリシリカ反応性試験の適合性に関する研究
2.3 わが国の反応性骨材
(1) 骨材の反応性鉱物の種類と特徴
ASR を発生させる鉱物は,微晶石英,クリストバライト,トリジマイト,玉髄,オパールなら
びにガラスがある.国内で確認されたアルカリシリカ反応によりコンクリート劣化の原因となっ
た骨材は,上記の鉱物のうち,ガラス,微晶石英,クリストバライトおよびトリジマイトが多い.
ASR に関係する反応性鉱物と鉱物的特徴を表-2.1 に示す
12),13)
.岩石中の鉱物で水酸化アルカリ
(NaOH および KOH)からなる,高いアルカリ性の水溶液と反応性し,ASR を発生させるのは,無
定形または不安定なシリカ鉱物(オパール,クリストバライト,トリジマイトなど)
,結晶性の石
英であっても微細な結晶粒や歪んだ結晶格子をもつもの(隠微晶質石英,玉髄など)であり,こ
れら以外にシリケート鉱物(雲母,バーミキュライトなど)
,火山ガラス(非晶質ガラス)などが
ある.片山 14),15)は,ASR が発生した構造物に使用された岩種のコンクリート研磨薄片を鉱物顕微
鏡により詳細に検討している.反応を有する岩種として以下ものが挙げられる(写真-2.1 参照)
.
a)オパールを含有する岩石
日本におけるオパール質の頁岩とオパール質の火山岩は,中新世の後半から鮮新世にかけての
グリーンタフ地域に存在する.オパールは続成作用や熱水変質作用を受けて生成され,もっとも
アルカリシリカ反応性が高い鉱物であり,5~10%の置換率でペシマム混合率を有する.
表-2.1 アルカリシリカ反応に関わる反応性鉱物の種類 12),13)
鉱物
〈シリカ鉱物〉
石英
化学組成
安定な鉱物
反応性鉱物
〈特殊な石英〉
隠微晶質石英
SiO2
玉髄質石英
玉髄
歪んだ石英
クリストバライト
トリジマイト
オパール
SiO2
SiO2
SiO2・nH2O
β型(高温)
β型(高温)
α型クリストバライト
α型トリジマイト
オパール
結晶相を伴うオパール
(反応性鉱物の補足説明)
微細な石英(例えば 5μm 以下)の集
合体
繊維状,針状,網目状などの石英
の集合体
繊維状石英と非晶質シリカの集合
体
結晶格子の歪んだ石英粒子(波動
消光を示す)
低温で生成したクリストバライト
低温で生成したトリジマイト
非晶質シリカ(鉱物粒子間を充填
する)
オパールの一部が結晶化(クリス
トバライト,トリジマイトなどに
変化している)
〈シリケート鉱物〉
雲母
粘土鉱物
Si, O の他
に種々の元
素を含む
雲母
粘土鉱物
加水雲母
特殊な粘土鉱物
他に結晶格子のゆがんだ雲母など
ある種のバーミキュライトなど
〈ガラス〉
火山ガラス
骨材に含有するガラ
ス相
ガラス
(非晶質)
塩基性の
ガラス
酸性または中性の
ガラス
ガラス(非晶質)は結晶性の鉱物で
はないが便宜的に鉱物として分類
されることが多い.マグマが急冷
してできた岩石のガラスである.
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第 2 章 北陸地方で産出する骨材の岩石・鉱物学的特徴とアリカリシリカ反応性試験の適合性に関する研究
a
b
c
d
e
f
g
h
写真-2.1 主な反応性骨材(川砂利)
(a) オパール(石川県 小松市
赤瀬産)
(b) 安山岩(富山県 神通川産)
(c) 安山岩(福井県 九頭竜川産)
(d) 石英安山岩(福井県 九頭竜川産)
(e) 流紋岩(富山県 庄川産)
(f) 流紋岩(長野県 千曲川産)
(g) チャート(長野県 千曲川産)
(h) チャート(新潟県 胎内川産)
- 40 -
第 2 章 北陸地方で産出する骨材の岩石・鉱物学的特徴とアリカリシリカ反応性試験の適合性に関する研究
b) 安山岩および石英安山岩
結晶質の火山岩は,石英の含有率により,玄武岩(5%<石英),安山岩(石英 5-20%),石英
安山岩(石英 20-35%)および流紋岩(35% >石英)に分類され,それらの岩石には,反応性鉱物
として,クリストバライト,トリジマイトが存在する.急冷した火山岩は,過剰なシリカ鉱物が,
ガラスに入り込み,火山ガラス(SiO2>65%)では ASR が顕著である.また,反応性の流紋岩質ガ
ラス(SiO2>70%)は,玄武岩,安山岩,石英安山岩および流紋岩に存在する.
オパール,クリストバライトおよびトリジマイトは,反応性が高く,モルタルバーによる試験
でペシマム混合率が存在し,化学法(ASTM C 289)では,「潜在的有害」に属する.クリストバ
ライトやトリジマイトを含有する明るい色の結晶化した火山岩は,20%未満の含有率でペシマム
混合率が存在し,暗い色を呈するガラス質の岩石や流紋岩質ガラスを部分的に含有する岩石は,
ペシマム混合率が明確でない.化学法(ASTM C 289)の結果,「潜在的有害」と判定された骨材
は,非反応性の骨材と混合し,ペシマム混合率にてASRを確認する必要がある.
c) 流紋岩
流紋岩には,安山岩と同様にクリストバライト,トリジマイトおよび火山ガラスが含まれる.
一方,隠微晶質石英を含有する流紋岩は,現行の化学法(JIS A 1145-2001)およびモルタルバー法
(JIS A 1146-2001)では「無害」と判定される.また,微晶質石英を含有する流紋岩は,遅延型
膨張のASRを発生させ,この骨材を評価する試験法が必要である.
d) チャート
チャートは,堆積岩の一種で,大洋で浮遊生活をしていた放散虫(原生動物の一種)が 1000
年に数 mm という非常にゆったりと海底に堆積して固まってできた岩石である.チャートの大部分
は,古生代から中世代によるものであり,隠微晶質および微晶質石英が混合して形成され 16),モ
ルタルバー法(JIS A 1146-2001)により,非反応性の骨材に対するチャートの混入率が 40~80%
でペシマム混合率が存在する 17).
(2) 北陸地方における岩石の分布
北陸地方では,コンクリート用骨材として川砂,川砂利が長年の間使用されてきたが,近年,
河川産の骨材のほかに,砕石,砕砂,山砂なども使用するようになってきている.また,コンク
リート用骨材は天然資源であるため,河川流域・採取産地および採取時期の違いによって,岩種
構成が異なる可能性が考えられる.北陸地方の岩石の分布を図-2.2 に示す 18).以下に地区ごとに
岩石の分布の特徴について述べる 19).
a) 福井県南部
福井県南部は,中・古生層(美濃丹波帯に相当し,中生代に付加帯を形成した)堆積岩が分布
している.南条産のチャート砕石のアルカリシリカ反応性については不明である.
b) 福井県東部~石川県~富山県中部
福井県(九頭竜川・手取川流域)から金沢市東部を経て富山県西部にかけては,第三紀中新世
のグリーンタフに属する流紋岩類(医王山流紋岩類)と安山岩類が広く分布しており,これらは
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第 2 章 北陸地方で産出する骨材の岩石・鉱物学的特徴とアリカリシリカ反応性試験の適合性に関する研究
(1)深成岩類の分布
(2)火山岩類および火砕岩類の分布
(3)変成岩類の分布
(4)堆積岩類の分布
(5)岩石の分布と反応性の区分
図-2.2 岩石の分布 18)
- 42 -
第 2 章 北陸地方で産出する骨材の岩石・鉱物学的特徴とアリカリシリカ反応性試験の適合性に関する研究
反応性骨材の供給源と考えられる.また,この地域にはグリーンタフの下位(第三紀漸新世)に
も流紋岩質溶結凝灰岩の厚層が存在し,種々の流紋岩類を河川砂利に供給している.富山県西部
地域・福光町には流紋岩質溶結凝灰岩を主体とする中紀中新世・医王山火山岩類が分布し,ASR
が懸念される.
c) 富山県東部
富山県東部の早月川・片貝川・黒部川・小川は立山連峰から急勾配で富山湾に至り,その河川
砂利中には,
立山連峰に分布する花崗岩類が多く含まれている.分水嶺までの狭い後背地内には,
第三紀以降の火山岩の流紋岩(前期中新世・岩稲火山岩類)や安山岩(中紀中新世・黒瀬谷層の安
山岩類)の分布地域もあることから,砂利中にはこれらの反応性岩種も多少混入する.しかしな
がら,古第三紀~新第三紀・中新世前期の比較的古い火山岩類の分布が多く,富山県西部に分布す
る医王山火山岩類は連続しない.しかも幅の狭い帯状の分布に過ぎず,上流域の立山連峰が花崗
岩類に富むために,どの河川水系の粗骨材(砂利)も反応性骨材の構成比は比較的低く保たれて
いる.
d) 新潟県南西部
糸魚川を境に,富山県側と新潟県側では地質が一変する.これは糸魚川・静岡構造線を境とし
て,新潟県側と富山県側で中・古生代の基盤岩の分布深度が異なるためである.構造線を境に西
側の黒部・立山地域には基盤岩の花崗岩類が地表にそのまま現われ,一方東側・姫川より西の地域
には中新世~鮮新世堆積物が分布する.したがって,構成岩種としては新潟側では堆積岩(砂岩・
泥岩)の比率が上昇する.
e) 新潟県中部
新潟県中部地方では,信濃川水系の中流域の長岡地域南部から長野地域北部にかけて分布する
新世代の安山岩類や,
グリーンタフ層から供給される火山岩系の安山岩類・流紋岩類が分布する.
これらは ASR を生じる可能性が考えられる.
(3) 能登産の安山岩 20)
能登半島の北部には安山岩の岩体が帯状に分布しており,岩体は安山岩質溶岩・火砕岩と石英
安山岩質溶結火砕岩とに区別される.能登地方の砕石原料としての岩体の分布状況を図-2.3 に示
す.本分布図には ASR 劣化構造物が建設された当時(昭和 40 年代から 50 年代前半)の採石場の
位置を図中に記載している.安山岩砕石には反応性鉱物としてクリストバライトと火山ガラスが
含まれている.なお,門前町産と輪島市産の安山砕石では火山ガラスの残存量に大きな相違があ
り,門前町産は火山ガラスが多く残存しているのに対して,輪島市産は火山ガラスが変質してお
り,スメクタイト化(モンモリロナイト)が進行している.輪島市産の安山岩砕石はモルタルバ
ー法(JIS A 1146-2001)で「無害」と判定される.これは安山岩砕石中にモンモリロナイトを含
有していることが関係している.構造物の調査では,輪島市産の安山岩砕石は門前町産の安山岩
砕石より ASR が発生した場合の骨材の割れやコンクリートのひび割れが顕著であることから判断
すると,輪島市産のものには乾燥湿潤や凍結融解の繰り返しによる劣化作用の影響がさらに加わ
っているものと推測される.
- 43 -
第 2 章 北陸地方で産出する骨材の岩石・鉱物学的特徴とアリカリシリカ反応性試験の適合性に関する研究
安山岩質熔岩・火砕岩
石英安山岩質熔結火砕岩
□
採石場
図-2.3 能登地方における岩体の分布 20)
(4) 続成作用による反応性鉱物の変化
火山岩は,同一の岩種(たとえば安山岩)であっても,あるものはアルカリシリカ反応性鉱物
を含み有害であるが,あるものはこれを含まず無害である.このような実態があるために種々の
火山岩を含む砂・砂利の ASR の評価と解釈は,通常,複雑なものとなっている.このような現象
を生じる理由は表-2.2 に示すように以下のことが挙げられる 21)
1)マグマの噴出時における結晶化作用の程度(急冷されてガラス質になるか,徐冷されて結晶
質になるか)
2)噴出後,地層中に埋没して長期(地質時代)にわたって蒙る各種再結晶化作用の程度(続成
作用・熱水変質作用・変成作用)の組み合わせにより,反応性鉱物(火山ガラス,クリスト
バライト,トリジマイト・隠微晶質石英)が種々に変化する
北陸地方は,
第三紀中新世から鮮新世にかけてのグリーンタフの分布地域であり,
火山活動は,
さらに現在の第四紀火山まで連続している.このため,種々の冷却程度(結晶化の程度)の火山
岩が後背地に存在し,これが河川によって運ばれて混合するために,北陸地方の砂・砂利の ASR
は複雑である.
- 44 -
第 2 章 北陸地方で産出する骨材の岩石・鉱物学的特徴とアリカリシリカ反応性試験の適合性に関する研究
表-2.2 グリーンタフ地域の火山岩中の反応性鉱物の地質学的変化 3),14),21)
変質作用
噴出後の再結晶化作用(続成作用,熱水変質作用)
新← 地質年代 →旧
第四紀
第三紀
← 火山 →
← グリーンタフ →
完新世
岩種
更新世
微変質帯
未変質帯
流
中新世中期
中新世前期
および後期
およびそれ以前
スメクタイト帯
緑泥石帯
鮮新世
急冷
ガラス
→隠微晶質石英
→隠微晶質石英
→微晶質石英
ガラス
紋
↑
ガラス質
ガラス
岩
クリストバライト
流紋岩
隠微晶質
ガラス
パッチ
クリストバライト
→石英
トリジマイト
トリジマイト
ガラス
→隠微晶質石英
クリストバライト
パッチ
→微晶質石英
クリストバライト
→石英
トリジマイト
トリジマイト
噴
クリストバライト
クリストバライト
クリストバライト
出
トリジマイト
トリジマイト
トリジマイト
クリストバライト
クリストバライト
クリストバライト
トリジマイト
トリジマイト
トリジマイト
→石英
時
↓
完晶質
結 徐冷
→石英
安 晶 急冷
→スメクタイト
→緑泥石
→ゼオライト
→長石
ガラス
山 化
↑
ガラス質
ガラス
岩 作
クリストバライト
流紋岩
パッチ
トリジマイト
用
クリストバライト
→石英
トリジマイト
→スメクタイト
→緑泥石
→ゼオライト
→長石
ガラス
ガラス
クリストバライト
一部
パッチ
クリストバライト
→石英
トリジマイト
トリジマイト
クリストバライト
クリストバライト
クリストバライト
トリジマイト
トリジマイト
トリジマイト
クリストバライト
クリストバライト
クリストバライト
トリジマイト
トリジマイト
トリジマイト
ガラス質
→石英
↓
完晶質
徐冷
アルカリシリカ反応性
→石英
大
中
小~ほとんどなし
ペシマム現象
クリストバライト・トリジマイト:ペシマム混合率 小(顕著)
隠微晶質石英
:ペシマム混合率 大
火山ガラス
:ペシマム混合率 大(ペシマム混合率なし)
- 45 -
第 2 章 北陸地方で産出する骨材の岩石・鉱物学的特徴とアリカリシリカ反応性試験の適合性に関する研究
(5) 北陸地方の反応性骨材の岩石・鉱物学的特徴 10)
代表的な反応性骨材の偏光顕微鏡観察の結果を写真-2.2 に示す.チャート砕石(写真-2.2a)
には,比較的大きな石英粒の組織中に隠微晶質石英やカルセドニー(玉髄)が存在するのが観察さ
れた.しかし,チャート砕石(福井産)はモルタルバー法(JIS A 1146-2001)で「無害」と判定
され,構造物での ASR の損傷は不明である.一方,安山岩砕石(写真-2.2b,c,d,e)には,斜長
石,輝石,角閃石,磁鉄鉱などの構成鉱物とともに,ガラス相(石基)が存在しているのが観察さ
れた.安山岩のガラス相の量は地域ごとに相違し,比較的新鮮なガラス相(ガラスは光学的に等方
体であるので,直交ニコル下では黒色を呈する)が残存する安山岩砕石(写真-2.2c)に比べて,
安山岩砕石(写真-2.2d,e,f)はガラス相が風化・変質しており,モンモリロナイト(直交ニコ
ル下では黄色を呈する)が空隙中に存在する.また,川砂利(富山産)の中の安山岩粒子(写真-2.2f)
は,安山岩砕石で観察されたと同様な構成鉱物を含有するとともに,モンモリロナイトやバーミキ
ュライトが生成しているものもあった.安山岩粒子中のモンモリロナイトの存在およびそれに伴う
組織の変化(空隙の形成)は骨材のアルカリシリカ反応性に影響を及ぼすと予想された.
代表的な反応性骨材の粉末 X 線回折分析の結果を図-2.4 に示す.チャート砕石にはシャープ
な石英のピークのみが存在した.一方,安山岩砕石や川砂利の安山岩粒子の反応性のシリカ鉱物
としては,クリストバライトの顕著なピークが存在するが,トリジマイトのピークは確認されな
かった.主要な反応性鉱物としてクリストバライトを含有する骨材はペシマム混合率をもつこと
が報告されている
22)
.ちなみに,モルタルバー法(JIS A 1146-2001)における安山岩砕石およ
び川砂利のペシマム混合率はそれぞれ 50~60 %および 30~40 %であった.クリストバライトおよ
び火山ガラス以外には,モンモリロナイト,バーミキュライト,緑泥石などの粘土鉱物が二次的
な鉱物として存在した.全体的に,瀬戸内地域で産出するサヌカイト質安山岩 (ガラス相が 40~
60%,阪神地域での ASR 損傷構造物に使用された 23))と比較して,北陸地域の安山岩はガラス相よ
りも結晶性鉱物が多く存在し,風化・変質の影響を受けているものが多いのが特徴であった.
骨材中のモンモリロナイトがコンクリートの諸性質に及ぼす影響に関して,火山岩(安山岩)
は堆積岩(砂岩)と比較して骨材組織が緻密で,結合力が強いので,モンモリロナイト含有の影
響が小さくなることが報告されている
24)
.しかし,ASR が発生したコンクリートでは,ASR によ
り安山岩骨材中にもひび割れが発生するので,モンモリロナイトの吸水が生じやすくなり,骨材
の体積変化により骨材自身およびコンクリートの劣化がさらに進行することが予想された.
安山岩骨材の化学組成分析の結果を表-2.3 に示す.5 種類の安山岩骨材(安山岩砕石 3 種,川
砂利・安山岩粒子 2 種)はいずれも反応性が高く,構造物での大きな ASR 損傷が確認されている
ものである.安山岩粒子(石基部分)の化学組成は骨材粒子の鏡面研摩試料の SEM-EDX(反射電子
画像,倍率:800 倍)による点分析の平均値(5 箇所以上の測定値)を用いた 22).この際,安山岩
中の石基(ガラス相)
,斑晶鉱物(輝石,斜長石)
,粘土鉱物や石英,磁鉄鉱は,反射電子画像の
,アルミナ(Al2O3)
濃淡と EDX により識別した.安山岩骨材の主要な化学成分であるシリカ(SiO2)
の合計は 75~85 %になるが,安山岩砕石は川砂利中の安山岩粒子と比べてシリカ分(SiO2)が少
なく,アルミナ分(Al2O3)が多い化学組成となっていた.また,安山岩のアルカリ分はナトリウ
ム(Na20)が 7.8~12.2 %,カリウム(K20)が 0.5~3.0 %であり,とくに多くのナトリウム(Na20)を
含有しているのが特徴であった.骨材中のガラス相および長石のアルカリ分は ASR の進行にとも
ないガラス相および長石が侵食される過程で骨材中から溶出し,新たなアルカリシリカゲルの生
成に寄与するものと推察された.したがって,安山岩骨材のようにガラス相および長石を含む反
- 46 -
第 2 章 北陸地方で産出する骨材の岩石・鉱物学的特徴とアリカリシリカ反応性試験の適合性に関する研究
a
500μm
b
500μm
石英粒
斜長石
隠微晶質石英
角閃石
c
500μm
d
500μm
角閃石
粘土鉱物
の充填
火山ガラス
e
500μm
f
火山ガラス
モンモリロナイト
斜長石
モンモリロナイト
500μm
写真-2.2 反応性骨材の偏光顕微鏡観察の結果(直交ニコル)10),25)
(b)安山岩砕石
(a)チャート砕石
(隠微晶質石英,福井県 N 地区産)
(c)安山岩砕石
(角閃石の斑晶および斜長石,
石川県 M 地区産)
(d)安山岩砕石
(角閃石および火山ガラス,石川県 M 地区産) (粘土鉱物,石川県 W 地区産)
(e)安山岩砕石
(モンモリロナイトおよび斜長石,
(f)川砂利
(火山ガラスおよびモンモリロナイト,
富山県 JY 川産)
石川県 W 地区産)
- 47 -
第 2 章 北陸地方で産出する骨材の岩石・鉱物学的特徴とアリカリシリカ反応性試験の適合性に関する研究
図-2.4 反応性骨材の粉末X線回折分析の結果 10)
- 48 -
第 2 章 北陸地方で産出する骨材の岩石・鉱物学的特徴とアリカリシリカ反応性試験の適合性に関する研究
応性骨材では,骨材のアルカリシリカ反応性と骨材中のガラス相,長石の化学組成およびその量
との関係にも着目する必要があった.
表-2.3 安山岩砕石および川砂利中の安山岩粒子の化学成分分析の結果(%)10)
産地
採取地
石川県
M地区
石川県
W地区
石川県
T地区
骨材種類 安山岩砕石 安山岩砕石 安山岩砕石
SiO 2
Al 2O 3
TiO 2
Fe 2O 3
MgO
MnO
CaO
N a 2O
K 2O
51.49
21.66
0.01
0.78
5.39
0.00
3.87
11.71
2.12
58.13
18.56
0.05
0.51
1.08
0.00
3.70
12.25
1.89
52.53
24.56
0.09
0.83
0.91
0.05
6.19
11.58
0.48
total
97.02
96.17
97.22
- 49 -
-
富山県
富山県
平均
JY川
JY川
川砂利・ 川砂利・
安山岩値
安山岩粒子 安山岩粒子
63.27
61.71
59.59
13.81
17.21
17.31
0.20
0.43
0.77
1.09
1.70
3.33
0.77
0.49
2.75
0.19
0.05
0.18
1.51
4.60
5.8
10.75
7.83
3.58
2.74
2.98
2.04
94.33
97.00
95.35
第 2 章 北陸地方で産出する骨材の岩石・鉱物学的特徴とアリカリシリカ反応性試験の適合性に関する研究
2.4 北陸地方の反応性骨材のアルカリシリカ反応性とその評価 10),11)
(1) 化学法(JIS A 1145-2001)およびモルタルバー法(JIS A 1146-2001)の適合性
骨材のアルカリシリカ反応性の判定結果を図-2.5 および図-2.6 に示す.わが国では,化学法
(JIS A1145-2001)で「無害でない」と判定された骨材についてのみ,モルタルバー法(JIS
A1146-2001)でさらに試験することに規定されているので,化学法(JIS A 1145-2001)およびモ
ルタルバー法(JIS A 1146-2001)の両試験の結果が揃っているものは少ない
26)
.ここでは,細
骨材(川砂,山砂)と粗骨材(川砂利,砕石)について,化学法(JIS A1145-2001)の結果があ
るもの(図-2.5 参照)と化学法(JIS A1145-2001)とモルタルバー法(JIS A 1146-2001)の両
800
川砂利
砕石
川砂
山砂
砕砂
アルカリ濃度減少量(Rc ㎜ol/l)
700
600
500
無害
400
無害で
ない
300
200
100
0
1
10
100
溶解シリカ量(Sc mmol/l)
1000
図-2.5 骨材のアルカリシリカ反応性の判定結果(化学法(JIS A 1145-2001))10)
800
川砂利 △□◇:JIS A 1146(モルタルバー法)
砕石
で判定が一致しないもの
川砂
山砂
アルカリ濃度減少量(Rc mmol/l)
700
600
500
400
無害
無害で
ない
300
200
100
0
1
10
100
溶解シリカ量(Sc mmol/l)
1000
図-2.6 骨材のアルカリシリカ反応性の判定結果 10)
(化学法(JIS A 1145-2001)とモルタルバー法(JIS A 1146-2001)との整合性)
- 50 -
第 2 章 北陸地方で産出する骨材の岩石・鉱物学的特徴とアリカリシリカ反応性試験の適合性に関する研究
結果が揃っているもの(図-2.6 参照)に分けている.細骨材については,
「無害」と「無害でな
い」の境界線付近にプロットされるものが多くあるとともに,化学法(JIS A1145-2001)で「無
害」と判定されたものの中で,モルタルバー法(JIS A 1146-2001)で「無害でない」と判定され
たものが 2 例,その反対のものが 3 例あった.化学法(JIS A1145-2001)では,1mol/l・NaOH 溶
液と反応する,シリカ鉱物以外のもの(粘土鉱物,炭酸カルシウム,酸化鉄など)を骨材中に含
む場合には本試験法は基本的に適用できず,また溶解シリカ量(Sc)およびアルカリ濃度減少量
(Rc)ともに小さく,境界線付近にあるものは化学法(JIS A1145-2001)のみによる判定は困難
であるとの認識が必要であった.一方,粗骨材については,化学法(JIS A1145-2001)で「無害」
と判定されたものの中で,モルタルバー法(JIS A 1146-2001)で「無害でない」と判定されたも
のはないが,化学法(JIS A1145-2001)にて「無害でない」と判定されたものの中で,モルタル
バー法(JIS A 1146-2001)で「無害」と判定されたものが砕石の場合で 3 例あった.
化学法(JIS A1145-2001)の溶解シリカ量 (Sc), 溶解シリカ量とアルカリ濃度減少量の比
(Sc/Rc) とモルタルバー法(JIS A 1146-2001)の膨張(試験日数 6 ヵ月)との関係を図-2.7 お
よび図-2.8 に示す.能登産の安山岩砕石 3 種,福井県 N 地区産および岐阜県 Y 地区産のチャート
0.5
川砂利
砕石
川砂
山砂
JY川
モルタルバーの膨張率(%)
0.4
0.3
JY川
0.2
M地区
Y地区
T地区
0.1
SI川
TE川
HI川
0
TE川
0
K地区
100
KU川
W地区
N地区
200
300
400
500
溶解シリカ量(Sc mmol/l)
600
700
図-2.7 化学法の溶解シリカ量(Sc)とモルタルバー法の膨張率との関係 10)
0.5
JY川
モルタルバーの膨張率(%)
0.4
0.3
川砂利
砕石
川砂
山砂
JY川
0.2
M地区
Y地区
T地区
0.1
W地区
KU川
SI川
TE川
N地区
HI川
TE川
0
0
K地区
1
2
3
4
5
6
7
溶解シリカ量/アルカリ濃度減少量 (Sc/Rc)
8
図-2.8 化学法の溶解シリカ量とアルカリ濃度減少量との比(Sc/Rc)とモルタルバー法の膨張
率との関係 10)
- 51 -
第 2 章 北陸地方で産出する骨材の岩石・鉱物学的特徴とアリカリシリカ反応性試験の適合性に関する研究
砕石 2 種を除くと,化学法(JIS A1145-2001)の結果(Sc および Sc/ Rc 比)とモルタルバー法
(JIS A 1146-2001)の膨張率には相関性があり,溶解シリカ量(Sc)および溶解シリカ量とアル
カリ濃度減少量との比(Sc/Rc)が大きい骨材ほどモルタルバーの膨張率が増加する傾向が認めら
れた.
(2) モルタルバー法(JIS A 1146-2001)および促進モルタルバー法(ASTM C 1260-1994,デン
マーク法)による評価
代表的な 17 種類の骨材について,構造物での ASR の発生の有無や含有鉱物を把握したうえで,
化学法(JIS A1145-2001)
,モルタルバー法(JIS A 1146-2001)および促進モルタルバー法(ASTM
C1260-1994,デンマーク法)での ASR 試験結果の適合性について検討した.構造物で ASR を発生
させる要因としては,コンクリート中のアルカリ量,水分の供給程度,凍結防止剤の影響などが
ある.このため,骨材中にアルカリシリカ反応性を有する鉱物が存在しても,構造物に ASR が発
生しないこともある.骨材に対して実施した含有鉱物の同定結果,構造物での ASR 発生の有無お
よび化学法(JIS A1145-2001)の結果を表-2.4 に示す.骨材の採取場所により,岩種や反応性鉱
物の種類が異なり,構造物での ASR 発生の有無と化学法(JIS A1145-2001)およびモルタルバー
法(JIS A 1146-2001)の結果は,必ずしも一致していなかった.また,同一河川水系の川砂や川
砂利の化学法(JIS A1145-2001)の結果にも大きな差があり,手取川産の川砂では化学法(JIS
A1145-2001)の判定結果が相違した.
モルタルバー法(JIS A 1146-2001)および促進モルタルバー法(ASTM C 1260-1994,デンマ
ーク法)の膨張挙動を図-2.9,図-2.10 および図-2.11 に示す.モルタルバー法(JIS A 1146-2001)
では,
いずれの骨材も試験日数 91 日以後の膨張率の増加が全体に小さくなる傾向があった.
また,
表-2.4 反応性鉱物の同定および化学法(JIS A 1145-2001)の結果 11)
県名
骨材種類
採取地
岩種
福井県
砕石
N地区
チャート
岐阜県
砕石
Y地区
チャート
反応性鉱物の同定結果
化学法の結果
構造物でのASR
発生の有無
Sc
Rc
判定結果
***
(mmol/l) (mmol/l)
反応性鉱物
粘土鉱物
隠微晶質石英
-
無
235
32
無害でない
隠微晶質石英
-
有
391
88
無害でない
-
有
289
109
無害でない
モンモリロナイト
有
603
223
無害でない
モンモリロナイト
有
492
192
無害でない
無
53
117
無害
無
52
173
無害
クリストバライト,
火山ガラス
クリストバライト,
火山ガラス
クリストバライト,
火山ガラス
石川県
砕石
M地区
輝石安山岩
石川県
砕石
W地区
輝石安山岩
石川県
砕石
T地区
輝石安山岩
石川県
砕石
K地区
石英安山岩
クリストバライト
石川県
砕石
K地区
角閃石凝灰岩
クリストバライト
緑泥岩,
バーミキュライト
緑泥岩,
バーミキュライト
クリストバライト*,
緑泥石
有
22
92
無害
新潟県
川砂利
SI川
-
火山ガラス*
クリストバライト*,
富山県
川砂利
JY川
-
-
有
252
99
無害でない
火山ガラス*
クリストバライト*,
富山県
川砂利
JY川
-
-
有
353
68
無害でない
火山ガラス*
クリストバライト*,
石川県
川砂利
TE川
-
緑泥石
無
60
124
無害
火山ガラス*
クリストバライト**,
新潟県
川砂
HI川
-
緑泥石
有
153
123
無害でない
火山ガラス**
クリストバライト**,
緑泥石,
富山県
川砂
JY川
-
有
230
129
無害でない
火山ガラス**
モンモリロナイト
クリストバライト**,
緑泥石,
有
312
75
無害でない
富山県
川砂
JY川
-
火山ガラス**
モンモリロナイト
クリストバライト**,
緑泥石,
無
121
120
無害でない
石川県
川砂
TE川
-
火山ガラス**
モンモリロナイト
クリストバライト**,
緑泥石,
無
105
116
無害
石川県
川砂
TE川
-
火山ガラス**
モンモリロナイト
クリストバライト**,
緑泥石,
有
88
150
無害
福井県
川砂
KU川
-
火山ガラス**
モンモリロナイト
*反応性がある岩種(安山岩・流紋岩)にのみ試験を行った
**骨材選別は行っておらず、黒色と茶色の砂粒子のみに試験を行った
***その骨材を用いられている地域でASRが発生しているもの
- 52 -
第 2 章 北陸地方で産出する骨材の岩石・鉱物学的特徴とアリカリシリカ反応性試験の適合性に関する研究
0.50
川砂利(JY川)
0.40
川砂(JY川)
膨張率(%)
0.30
川砂利(JY川)
川砂(JY川)
砕石(M地区)
砕石(Y地区)
砕石(T地区)
0.20
0.10
0.00
-0.10
0.10
砕石(W地区)
川砂利(SI川)
膨張率(%)
0.05
川砂(HI川)
川砂利(TE川)
川砂利(KU川)
川砂(TE川),砕石(N地区)
砕石(K地区)
川砂(TE川)
0.00
-0.05
0
14 28 42 56 70 84 98 112 126 140 154 168 182
試験日数(日)
図-2.9 代表的な骨材のモルタルバー法(JIS A 1146-2001)の膨張挙動
(上段:
「無害でない」,下段:
「無害」)
1.00
川砂(JY川)
膨張率(%)
0.80
川砂利(JY川)
川砂利(JY川)
川砂(JY川)
砕石(M地区)
砕石(W地区)
0.60
0.40
川砂利(SI川),川砂(TE川)
川砂(HI川,KU川,TE川)
砕石(T地区)
0.20
0.00
0.20
0.15
膨張率(%)
川砂利(TE川)
0.10
砕石(Y地区)
砕石(N地区)
0.05
砕石(K地区)
0.00
-0.05
0
7
試験日数(日)
14
図-2.10 代表的な骨材の促進モルタルバー法(ASTM C 1260-1994)の膨張挙動
(上段:
「有害」
,下段:
「不明確または無害」
)
- 53 -
第 2 章 北陸地方で産出する骨材の岩石・鉱物学的特徴とアリカリシリカ反応性試験の適合性に関する研究
図-2.11 代表的な骨材の促進モルタルバー法(デンマーク法)の膨張挙動
(上段:
「有害または不明確」,下段:「無害」
)
輝石安山岩砕石(石川県 W 地区産)は膨張率が判定基準値以下(試験日数 6 ヵ月:0.1%以上)
,と
なり,輝石安山岩砕石(石川県 T 地区産)は判定基準値をわずかに上回った.モルタルバー法(JIS
A 1146-2001)は,養生中に試験体から比較的多くのアルカリが漏出することや,反応に携わるア
ルカリが添加時のアルカリに限られていること,が問題であるとされている.とくに,石川県 W
地区産および石川県 T 地区産の輝石安山岩砕石のように,モンモリロナイトなどの粘土鉱物を含
有する骨材では,アルカリが粘土鉱物に吸着されるので,ASR の進行がアルカリの減少により抑
制されたことにより,判定結果が相違するものとなった.一方,外部からアルカリが水酸化ナト
リウム(NaOH)溶液および塩化ナトリウム(NaCl)溶液として常時供給される促進モルタルバー
法(ASTM C 1260-1994,デンマーク法)は,試験日数とともにモルタルの膨張率が直線的に増大
しており,最終的な膨張もモルタルバー法(JIS A 1146-2001)と比べてかなり大きくなった.両
試験法ではモルタルバー法(JIS A 1146-2001)にて「無害」であると判定された輝石安山岩砕石
(石川県 W 地区産)を含めて,安山岩および川砂利は,すべての骨材が「有害」または「不明確」
と判定された.富山県 JY 川産川砂利は石川県 M 地区産,W 地区産および T 地区産の輝石安山岩砕
石よりも大きな膨張率を示すことから判断すると,外部からアルカリが供給される場合には安山
岩のペシマム混合率を有するものほど膨張率が大きくなるものと推察された.また,石川県 M 地
区産,石川県 W 地区産および石川県 T 地区産の輝石安山岩砕石は促進モルタルバー法(ASTM C
1260-1994,デンマーク法)にて膨張率が相違した.これは安山岩砕石の鉱物組成(モンモリロナ
イト,火山ガラスおよびクリストバライト)に起因するものと推察された.
一方,チャート砕石は促進モルタルバー法(ASTM C 1260-1994)での膨張率は小さいが,非反
応性骨材の混入量を増やすと膨張率が急激に増大することが報告されている 27).したがって,チ
ャート砕石に促進モルタルバー法(ASTM C 1260-1994)を適用する場合にはチャート砕石と非反
- 54 -
第 2 章 北陸地方で産出する骨材の岩石・鉱物学的特徴とアリカリシリカ反応性試験の適合性に関する研究
0.5
川砂利
(JY川)
JIS A 1146
川砂
(JY川)
膨張率(%)
0.4
0.3
川砂利
(JY川)
川砂
(JY川)
0.2
0.1
川砂利(SI川)
川砂利(TE川)
0.0
0
輝石安山岩砕石
(M地区)
チャート砕石
(Y地区)
輝石安山岩砕石
(T地区)
輝石安山岩砕石
(W地区)
川砂(KU川)
チャート砕石
川砂(HI川)
(N地区)
川砂(TE川)
角閃石安山岩砕石 石英安山岩砕石
(K地区)
(K地区)
1
川砂(TE川)
10
Sc/Rc(化学法)
1.0
ASTM C1260
0.9
川砂(JY川)
川砂利
(JY川)
0.8
川砂利
(JY川)
0.7
膨張率(%)
川砂(JY川)
0.6
輝石安山岩砕石
(M地区)
0.5
輝石安山岩砕石
(W地区)
川砂(TE川)
川砂利(SI川)
0.4
川砂(HI川)
0.3
川砂
(KU川)
輝石安山岩砕石
(T地区)
川砂
(TE川)
0.2
チャート砕石
(Y地区)
川砂利(TE川)
0.1
角閃石安山岩砕石
(K地区)
0.0
チャート砕石
(N地区)
石英安山岩砕石
(K地区)
0
1
10
Sc/Rc(化学法)
1.4
川砂(JY川)
デンマーク法
川砂利
(JY川)
1.2
川砂(JY川)
1.0
膨張率(%)
川砂利
(JY川)
0.8
輝石安山岩砕石
(W地区)
0.6
0.4
川砂利(SI川)
0.2
輝石安山岩砕石
(T地区) チャート砕石
(Y地区)
輝石安山岩砕石
(M地区)
川砂(TE川)
川砂(HI川)
川砂(KU川)
石英安山岩砕石
(K地区) 川砂利(TE川)
角閃石安山岩砕石
川砂(TE川)
(K地区)
0.0
0
チャート砕石
(N地区)
1
Sc/Rc(化学法)
10
(■,●,◆ は構造物の ASR 発生有)
図-2.12 構造物の ASR,モルタルバー法(JIS A 1146-2001)
・促進モルタルバー法
(ASTM C 1260-1994, デンマーク法)および化学法(JIS A 1145-2001)の関係 11)
- 55 -
第 2 章 北陸地方で産出する骨材の岩石・鉱物学的特徴とアリカリシリカ反応性試験の適合性に関する研究
応性骨材との混合率に注意して試験する必要があった.
構造物での ASR の発生の有無,モルタルバー法(JIS A 1146)および促進モルタルバー法(ASTM
C 1260-1994,デンマーク法)と化学法(JIS A1145-2001)の関係を図-2.12 に示す.モルタルバ
ー法(JIS A 1146-2001)では,化学法(JIS A1145-2001)で「無害」と判定されたもので,モル
タルバー法(JIS A 1146-2001)で「無害でない」と判定されたものはなかった.しかし,構造物
で ASR が発生している新潟県 SI 川産川砂利と新潟県 HI 川産川砂,石川県 W 地区輝石安山岩砕石
および福井県 KU 川産川砂は「無害」と判定された.促進モルタルバー法(ASTM C1260-1994)で
は,化学法(JIS A1145-2001)で「無害」と判定されたもので「無害でない」と判定されたもの
が 3 つ(新潟県 SI 川産川砂利,石川県 TE 川産川砂および福井県 KU 川産川砂)あり,構造物での
ASR の発生していないものまで「有害」と判断されたものが 2 つ(石川県 TE 川産川砂)あった.ま
た岐阜県 Y 地区産チャート砕石は膨張が発生せず,
「無害」と判定され,構造物での ASR 発生の有
無と一致しなかった.チャート砕石を使用する場合の判定では,促進モルタルバー法(ASTM C
1260-1994)は適さないものと考えられた.促進モルタルバー法(デンマーク法)では,化学法(JIS
A1145-2001)で「無害」と判定されたもので「無害でない」と判定されたものが 1 つ(九頭竜川
産川砂)あった.これは,促進モルタルバー法(デンマーク法)の判定結果の方が構造物での ASR
発生の有無と一致した.
外部からアルカリや塩分を供給される促進モルタルバー法(ASTM C 1260-1994,デンマーク法)
は,モルタルバー法(JIS A 1146-2001)に比較して膨張率が全体に大きくなった.これはモルタ
ルバー法(JIS A 1146-2001)では,添加されるアルカリが限られ,試験中にアルカリが漏出する
ことやモンモリロナイトなどの粘土鉱物にアルカリが吸着され,ASR の進行が抑制されるためと
考えられた.また,モルタルバー法(JIS A 1146-2001)や促進モルタルバー法(ASTM C 1260-1994)
では,同様な膨張率でも構造物での ASR 発生の有無が混在しているのに対し,促進モルタルバー
法(デンマーク法)では構造物での ASR 発生の有無の閾値が 0.3%程度にあると推察された.今後,
地域のデータを蓄積することにより両者の判定基準値がより明確になるものと考えられた.
- 56 -
第 2 章 北陸地方で産出する骨材の岩石・鉱物学的特徴とアリカリシリカ反応性試験の適合性に関する研究
2.5 構造物から採取したコアの ASR 損傷度と力学的性質 10)
石川県能登地域および富山県の構造物から採取した骨材(安山岩砕石および川砂,川砂利)の
化学法(JIS A1145-2001)の結果を図-2.13 に示す.コアまたははつり片から骨材を取り出して,
骨材のアルカリシリカ反応性を調べることは,構造物の損傷が ASR によるものであるかどうかを
確認する目的で実施されている.両地域の骨材の化学法(JIS A1145-2001)による結果は1試料
を除いてすべて「無害でない」と判定されており,これらの構造物に使用された骨材は反応性の
ものであることが示されていた.しかし,コンクリートから骨材を取りだす際には,希塩酸によ
りセメントペーストを溶解する方法を取っているが,この処理により骨材の溶解シリカ量(Sc)
およびアルカリ濃度減少量(Rc)がともに増大しており,境界線付近に存在する骨材の判定は一
般に困難である 28).とくに,細骨材の場合はセメントペースト分が残存することによる影響が大
きく現われており,化学法(JIS A 1145-2001)では正確な判定ができないことにも留意する必要
があった.
コアの圧縮強度と静弾性係数との関係を図-2.14 に示す.ここでは,両地域の橋脚および橋台
(約 80 箇所)
から採取したコアを対象としており,
測定値はコア 3 本の平均値を原則としている.
小林 29),30)らが提案する健全なコンクリートを示す曲線から外れて,コアの測定値が原点に近づ
くにつれて ASR による損傷度が大きいものと判断できた.橋脚および橋台のコンクリートの設計
基準強度(21 または 24 N/mm2 程度)と比較して,コアの圧縮強度がその値を下回るものも存在し
た.通常,健全なコンクリートのコアの強度は 30 N/mm2 を大きく上回ることが多いので,ASR が
発生したコアの圧縮強度はかなり低下していることが明らかであった.一方,能登地域の安山岩
砕石は富山地域の川砂利と比べて骨材にひび割れが発生しているものが多いことがコアの外観観
察より確認されている.全体として,能登地域の安山岩砕石を使用したものは,水分やアルカリ
分が十分に存在する場合には富山地域の川砂利よりも長期にわたって ASR が継続しており,その
結果,コアの力学的性質(圧縮強度および静弾性係数)の低下がより大きくなることが確認でき
た.
800
川砂利(富山産)
川砂(富山産)
川砂利(富山産)
安山岩砕石(能登産)
1200
安山岩砕石(能登産)
600
静弾性係数/圧縮強度
アルカリ濃度減少量(Rc mmol/l)
700
500
400
無害
300
無害で
ない
川砂
200
1000
800
600
400
200
100
0
0
0
1
10
100
溶解シリカ量(Sc mmol/l)
1000
図-2.13 コンクリートから採取した骨材の化
学法(JIS A 1145-2001)の結果 10)
- 57 -
5
10
15
20
25
30
35
40
45
50
55
60
圧縮強度(N/mm2)
図-2.14 構造物からのコアの圧縮強度
と静弾性係数との関係 10)
第 2 章 北陸地方で産出する骨材の岩石・鉱物学的特徴とアリカリシリカ反応性試験の適合性に関する研究
2.6 結
論
北陸地方の構造物の ASR 損傷度調査では,主要な反応性骨材である安山岩の反応性鉱物の種類
とその存在形態を把握することが重要であると考えられた.このため,同地方にて ASR が発生し
ている構造物に使用された代表的な反応性骨材の岩石・鉱物学的特徴および骨材のアルカリシリ
カ反応性における判定結果を整理した.
本章で得られた主要な結果をまとめると,次のとおりである.
(1) 北陸地方の反応性骨材は,第三紀中新世前期~中期の海底で噴出し,熱水変質を受けて緑色
(ないし雑色)を呈する火山岩を主とする地層(グリーンタフ)からのものであり,これら
の続成作用により,同じ岩種でもアルカリシリカ反応性をもつものや非反応性の骨材が複雑
に混入していた.
(2) 北陸地方の代表的な反応性骨材である安山岩(川砂利,砕石)は,反応性鉱物である火山ガラ
スやクリストバライトとともに風化・変質の過程で生成した粘土鉱物(モンモリロナイト,
バーミキュライト)を含有しているものがあった.
(3) 安山岩中の長石および火山ガラス相は多くのアルカリ(ナトリウム分)を含有しており,骨
材からのアルカリの溶出が長期にわたりコンクリートのアルカリシリカ反応の進行を助長し
ている可能性があった.
(4) 北陸地方の骨材は,化学法(JIS A 1145-2001)の判定で「無害」と「無害でない」との境界
線付近にあるものが多くあり,化学法(JIS A1145-2001)で「無害」と判定された骨材でも
モルタルバー法(JIS A 1146-2001)で「無害でない」と判定されたものがあった.
(5) 構造物から採取したコアからの骨材は,塩酸処理およびセメントペーストの付着が溶解シリ
カ量(Sc)およびアルカリ濃度減少量(Rc)の両者に影響するので,化学法(JIS A 1145-2001)
による適切な判定は困難であった.
(6) モルタルバー法(JIS A 1146-2001)の判定結果は,必ずしも構造物の ASR 発生の有無と一致
しなかった.それに対して,促進モルタルバー法(デンマーク法)の判定結果は構造物の ASR
発生の有無と良く一致していた.
(7) 構造物から採取したコアの圧縮強度と弾性係数を調べることにより構造物の ASR 損傷度を推
定することができた.また,同一の経過年数でも安山岩砕石(能登産)を使用したコンクリ
ートは川砂利(富山産)を使用したのものよりも圧縮強度に対する静弾性係数の低下が顕著
であった.
- 58 -
第 2 章 北陸地方で産出する骨材の岩石・鉱物学的特徴とアリカリシリカ反応性試験の適合性に関する研究
参考文献
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15) Katayama, T. , St John, D.A., Futagawa, T., :The Petrographic Comparison of Some Volcanic
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- 59 -
第 2 章 北陸地方で産出する骨材の岩石・鉱物学的特徴とアリカリシリカ反応性試験の適合性に関する研究
Conference on Alkali-Aggregate Reaction in Concrete, pp.501-506, 1989.
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究所資料, No.2840, pp.145-149, 1990.
19) 日本公団北陸支社:平成 11 年度北陸支社管内コンクリート構造物追跡調査報告書,
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20) 鳥居和之,樽井敏三,大代武志, 平野貴宣: 能登半島の ASR 劣化構造物に関する一考察, コ
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21) Katayama,T., Kaneshige,Y. : Diagenetic Changes Potential Alkali-Aggregate Reactivity
of Volcanic Rocks in Japan-A Geological Interpretation,Proc.of the 7th International
Conference on Alkali-Aggregate Reaction in Concrete, pp.703-710, 1986.
22) 白木亮司, 丸
章夫,小林一輔:火山岩中のガラスの定量と組成分析,日本コンクリート
工学協会・コンクリート構造物の耐久性診断に関するシンポジウム論文集,pp.25-30,1988.
23)例えば中野錦一:コンクリート構造物のアルカリ骨材反応による変状とその要因に関する研
究,京都大学学位請求論文,pp.191-230,1985.
24) 迫田恵三,丸 章夫,伊藤利治:粗骨材中のモンモリロナイトがコンクリートの諸性質に及
ぼす影響,土木学会論文集,No.426/V-14,pp.81-90,1991.
25) 石川県生コンクリート工業組合:石川県の骨材の岩石学的調査,p.47,1994.
26) 斉藤広志,田村 博,福島礼規,松浪良夫:河川産骨材のアルカリシリカ反応性の評価方法,
コンクリート工学年次論文報告集,Vol.12,No.1,pp.757-760,1990.
27) 岩月栄治,森野奎二:ASTM C 1260 および JIS A 5308 による ASR モルタルバーの膨張挙動と
微細構造,コンクリート工学年次論文集,Vol.24, No.1,pp.687-692,2002.
28) 片脇 清, 脇坂安彦,守屋 進,西崎 至:アルカリ骨材反応によって損傷を受けた構造物
の診断技術-コンクリートコアによる原因調査技術の検討-,日本コンクリート工学協会・
コンクリート構造物の耐久性診断に関するシンポジウム論文集,pp.1-6,1988.
29) 小林一輔,白木亮司,森 弥広:ASR を生じたコンクリートの圧縮強度性状に関する 2,3 の
考察,土木学会論文集,No.426/V-14,pp.91-100,1991.
30) 小林一輔,森 弥広, 野村謙二:圧縮載荷試験によるアルカリ骨材反応の診断方法,土木学
会論文集,No.460/V-18,pp.151-154,1993.
- 60 -
第 3 章 北陸地方で産出する骨材からのアルカリ溶出性状とアルカリシリカ反応性に及ぼす影響に関する研究
第3章
3.1
北陸地方で産出する骨材からのアルカリ溶出性状とアルカリシリカ反応性
に及ぼす影響に関する研究
概 説
近年,環境に対する配慮や良質な河川産骨材の枯渇に伴い,コンクリート用骨材として,人工
軽量骨材,砕石・砕砂が規格化され,副産物系のスラグ骨材も規格化されている.構造用に用い
る人工軽量骨材の品質は,JIS A 5002 に規定されているが,アルカリシリカ反応性の確認は骨材
のアルカリシリカ反応性試験に準じて,化学法(JIS A 1145-2001)およびモルタルバー法(JIS A
1146-2001)で実施されるものの,化学法(JIS A 1145-2001)では人工軽量骨材のほぼすべてが
「無害でない」と判定され,モルタルバー法(JIS A 1146-2001)では,「無害」と判定されてい
る
1)
.しかし,人工軽量骨材を用いた一部の構造物において,ASR による劣化の疑いが判明し,
ASR ゲルが実際に生成していることが報告されている 2).また,人工軽量骨材は ASR を発生させ
るだけでなく,材料自身からアルカリを溶出し,ASR を促進することも指摘されている 3,4).
また,家庭から大量に廃棄されている空き瓶やガラス製品をコンクリート用骨材として使用す
ることが重要な課題となっている.ガラスの主な成分はシリカ(SiO2)
,アルミナ(Al2O3)
,カル
シウム(Ca0)およびナトリウム(Na2O)であり,中には高濃度のナトリム(Na2O)を含有するも
のから,コンクリートの細孔溶液中にアルカリが溶出することも指摘されている 5).
ASR は,シリカ鉱物,アルカリおよび水分がともに存在する時に発生する劣化現象であり,こ
れらの中で,アルカリはセメント(硫酸ナトリウム(Na2SO4)および硫酸カリウム(K2SO4)の形
態で含有)が主たる供給源であるが,その起源は粘土原料中の長石,雲母および粘土鉱物などに
含まれているものである
6,7)
.北陸地方の特徴として,外部から飛来塩分や凍結防止剤として供
給される塩化ナトリウム(NaCl)が ASR を促進させていること 8)や比較的アルカリ含有量の高い
岩種が多く存在し,外部からのアルカリだけではなくコンクリート内部においても骨材自身から
アルカリが溶出され,ASR を促進する可能性も考えられている
9)
.骨材からのアルカリの溶出量
は,骨材の比表面積にほぼ比例すると考えられるので,粗骨材よりも細骨材の及ぼす影響がより
顕著であると予想される.わが国では ASR 抑制対策としてコンクリートのアルカリ総量規制
(3kg/m3)を基本に据えてきた経緯があるが,骨材からのアルカリ溶出の影響を考慮すると,現
行の基準値を見直す必要が生じる可能性が考えられる 9).
一方,諸外国でのアルカリ総量は,わが国と同じ 3kg/m3 としているのは,ベルギー,英国およ
びスロバキアである.日本と同じ火山国であるニュージーランドでは 2.5kg/m3 としている.また,
条件によりアルカリ総量に幅を持たしているのは,フランス(3.0~3.5kg/m3:セメントの種別に
よる)
,アイルランド(4.0kg/m3,4.5kg/m3:反応性骨材が石炭紀のチャートの場合),デンマー
ク(<1.8 kg/m3,1.8~3 kg/m3,≧3 kg/m3 :反応性骨材の種別による),南アフリカ(2~4.5 kg/m3:
骨材の種類による)となっている 10).とくにアルカリシリカ反応性の高いフリントやオパールが
反応性骨材となっているデンマークでは,アルカリ総量の基準値を厳しくしているのが特徴であ
る.
本章では,北陸地方の代表的な川砂の岩石・鉱物学的特徴とアルカリシリカ反応性を調べると
ともに,北陸地方とその周辺地域でコンクリート用骨材として使用さている川砂,陸砂,浜砂,
- 61 -
第 3 章 北陸地方で産出する骨材からのアルカリ溶出性状とアルカリシリカ反応性に及ぼす影響に関する研究
砕砂におけるアルカリ溶出性状を比較検討した.また,川砂の岩石・鉱物学的特徴,アルカリシ
リカ反応性およびアルカリ溶出量との関係について考察を行った 11).さらに,北陸地方の道路構
造物から多数のコンクリート試料を採取し,コンクリートのアルカリ量(Na2O+0.658K2O)の現状
を調査した.また,アルカリの起源をセメントと骨材とに分類し,構造物の ASR 劣化度や岩種含
有率との関係を示すとともにアルカリ溶出の状況を EPMA による面分析にて検証した.これにより,
ASR 予防のためのコンクリートのアルカリ総量について提案を行った 9).
- 62 -
第 3 章 北陸地方で産出する骨材からのアルカリ溶出性状とアルカリシリカ反応性に及ぼす影響に関する研究
3.2 骨材のアルカリ溶出性状試験
コンクリートは,セメントペースト中に種々の骨材が分散した状態で存在する一種の複合材料
である.その骨材は種々の鉱物から構成され,以前から長石の一部からアルカリが溶出すること
が報告されている.1982 年,Van Aardt ら
12)
は,温度 40℃の水酸化カルシウム(Ca(OH)2)スラ
リー中に種々の岩石(粒子の大きさ:4.75~2.36 ㎜)を浸せきし,時間の経過とスラリー中に溶
出されるアルカリ量(Na2Oeq.=(Na2O+0.658K2O)
)との関係を調べた.その結果を図-3.1 に示す.
いずれの岩石からも多量のアルカリが溶出されることが示されている.しかし,実際のコンクリ
ートにおいて,骨材岩石中のアルカリが細孔溶液中に溶出するか否かは不明としている.既往の
Na2Oeq.(岩石または鉱物の質量に対する百分率)
0.140
玄武岩
0.120
硬質砂岩
0.100
ホルン
フェルス
0.080
安山岩
花崗岩
0.060
0.040
0.020
0.000
0
400
800
1200
時間(日)
1600
2000
図-3.1 40℃の Ca(OH)2 スラリーにおける鉱物および岩石からのアルカリ溶出性状 13)
(粒子の大きさ:4.75~2.36 ㎜,岩石 100g+Ca(OH)2 20g+水 500ml)
表-3.1 既往の骨材からのアルカリ溶出試験の条件 12),14),15)
溶媒
溶媒量
(ml)
骨材量
(g)
粒度
養生温度
(℃)
浸せき
日数(日)
Deer
et. al
・飽和 Ca(OH)2
溶液
Van Aardt
et.al
・飽和 Ca(OH)2
溶液
500
25
100
0.5
2.36-4.75 ㎜
パウダー状
40
39
1400
250
Satrk
et. al
1)
飽
和
Ca(OH)2 溶液
2)蒸留水
1)25
2)500
1)5
2)675
1)<80μm
2)0.15-5 ㎜
1)38
2)80
1)90
2)180
Kawamura
et. al
・飽和 Ca(OH)2
溶液
・飽和 Ca(OH)2
溶液
200
300
・飽和 Ca(OH)2
溶液
・蒸留水
・0.7N NaOH
・0.7N KOH
40
100
500
40
200
0.15-5 ㎜
<20 ㎜
1-5 ㎜
40
100
38
コンクリートに使用
されるもの
60
180
7
578
-
- 63 -
LCPC
Berube et. al
・1N NaOH
・1N KOH
800
第 3 章 北陸地方で産出する骨材からのアルカリ溶出性状とアルカリシリカ反応性に及ぼす影響に関する研究
骨材からのアルカリ溶出性状試験の条件を表-3.1 に示す 12),14),15).溶媒,養生温度,骨材と溶媒
との比率,浸せき日数,粒度に相違がある.
わが国の骨材からのアルカリ量(Na2O)は,海砂を使用した場合を想定し,その量は 0.9×塩
化物イオン(Cl-)としているのに対し,イギリス,アイルランドおよびニュージーランドでは
0.76×塩化物イオン(Cl-)としている.また,フランスでは試験的に 100℃の水酸化カルシウム
(Ca(OH)2)中に骨材から溶出するアルカリ量を,デンマークでは骨材のアルカリ量を公表し,そ
の値を考慮することとしているが,この値がどのように決定されたものかは明確ではない 10).こ
のように,諸外国では骨材自身から供給されるアルカリの影響がすでに検討されており,現在,
RIREM TC 191-ARP では骨材のアルカリ溶出性状試験(AAR-8)の規格化が進められている 16).
- 64 -
第 3 章 北陸地方で産出する骨材からのアルカリ溶出性状とアルカリシリカ反応性に及ぼす影響に関する研究
3.3 実験概要
(1) 調査の対象
骨材のアルカリ溶出性状試験の対象骨材は,北陸地方とその周辺地域(新潟県,富山県,石川
県および福井県の 4 県,骨材の流通の関係で長野県(信越地方)
,滋賀県(関西地方)
,三重県(中
部地方)の一部を含む)の 27 種の細骨材(川砂 15 種,浜砂 3 種,陸砂 3 種,砕石 6 種)である.
砂の種別と採取地を表-3.2 に示す。
構造物におけるアルカリ溶出の検証は,北陸地方の 1972~1985 年に建設された道路構造物(福
井県,石川県,富山県,新潟県)の橋台 23 基,橋脚 4 基,C-Box 1 基の合計 28 基を対象とした.
これらの構造物では実際に ASR よる損傷が発生しているものが 22 基,発生していないものが 6
基である.
(2) 骨材からのアルカリ溶出性状試験 11)
a) 骨材のアルカリシリカ反応性
骨材のアルカリシリカ反応性は,第 1 章 表-1.5 に示す化学法(JIS A1145-2001)により実施
し,判定した.
b) 川砂の岩種含有率の算出
川砂の岩種含有率の算出は,第 1 章 表-1.4 に示す方法で実施した.
表-3.2 砂の採取地と種別
県名
新潟県
長野県
富山県
石川県
福井県
滋賀県
三重県
河川水系・地区
SA川
AR川
TA川
A川
SI川
U川
M地区
O地区
NI川
CH川
HA川
JY川
JI川
SYO川
TE川
U地区
O地区
KU川
HA地区
A川
N地区
K地区
H地区
O地区
R地区
I地区
- 65 -
砂の種別
川砂
川砂
川砂
川砂
川砂
川砂
浜砂
石灰岩砕砂
川砂
川砂
川砂
川砂
川砂
川砂
川砂
浜砂
浜砂
川砂
硬質砂岩砕砂
川砂
陸砂
陸砂
硬質石灰岩砕砂
チャート砕砂
砂岩・花崗岩砕砂
硬質砂岩砕砂
第 3 章 北陸地方で産出する骨材からのアルカリ溶出性状とアルカリシリカ反応性に及ぼす影響に関する研究
c) 骨材からのアルカリ溶出性状試験
骨材からのアルカリ溶出性状試験は,第 1 章 表-1.4 および 1.6(2) b)「砂からのアルカリ溶
出の検証」に示す方法で実施した.
(3) 構造物におけるアルカリ溶出の検証 9)
a) コンクリートの水溶性アルカリ量
コンクリートの水溶性アルカリ量は,コンクリート表面からハンマードリル(φ20 ㎜)によ
り 2cm ごとに深さ 10cm までの試料を採取し,第 1 章 表-1.6 に示す方法で(Na2O+0.658K2O)を
算出した.表面からの深さごとに分析したアルカリ量は,凍結防止剤や飛来塩分による外部から
のナトリウム(Na2O)の浸透がないことを確認した値により,その構造物のコンクリートのアル
カリ量とした.
b) セメントのアルカリ量
セメントのアルカリ量は,第 1 章 表-1.6 および 1.6(2) a) 「硬化コンクリート中のセメント
のアルカリ分析」に示す方法で分析した.
c) 川砂利の岩種含有率の算出
川砂利の岩種含有率の算出は,コア(φ100mm,L=150~250mm)を採取し,第 1 章 表-1.4 に
示す方法で実施した.
d) 偏光顕微鏡観察
偏光顕微鏡観察は,コンクリートコアより作製した研磨薄片(厚さ 20μm)より,川砂の岩種
また鉱物を第 1 章 表-1.4 に示す方法で同定するとともに,鉱物の変質状況も確認した.
(4) EPMA によるアルカリ分布状況の確認
構造物から採取したコアや骨材のアルカリ溶出試験前後に低粘度のエポキシ樹脂中に川砂を
埋め込んだ試料から,研磨薄片(厚さ 20μm)を作製した.この研磨薄片で偏光顕微鏡にて岩種
を特定した.その後,研磨薄片に炭素蒸着を施し,EPMA(日本電子社,JXA-8200)により,特定
の岩種のナトリウム(Na)およびカリウム(K)等の分布状況を面分析によって調べた.
- 66 -
第 3 章 北陸地方で産出する骨材からのアルカリ溶出性状とアルカリシリカ反応性に及ぼす影響に関する研究
3.4 骨材からのアルカリ溶出性状 11)
(1) 骨材の岩種と反応性鉱物の種類
川砂(8 種類)の岩種含有率を図-3.2 に示す.川砂には岩石だけでなく,岩石の造岩鉱物も含
有されているのが特徴であった.川砂中の主要な反応性の岩石は安山岩,流紋岩などの火山岩で
あった.また,造岩鉱物は長石類,雲母類および粘土鉱物であった.長石類や粘土鉱物にはアル
カリが多く含有されているとともに,一部のものはアルカリシリカ反応性を有することが報告さ
れている 17).
北陸地方での道路構造物での調査より 18),
ASR による劣化との関連性が実証された,
火山系岩石(安山岩,流紋岩,凝灰岩)と堆積岩(チャート)の構成比率は河川水系ごとで大き
く相違していることが認められた.また,試験を実施した 8 種類の川砂の中で,新潟県 TA 川,長
野県 NI 川および長野県 CH 川以外の,5 種類の河川水系の骨材を使用した構造物にて実際に ASR
による損傷が確認されている.
(2) 骨材からのアルカリ溶出性状
骨材からアルカリ溶出性状試験の結果を図-3.3 に示す.ナトリウム(Na2O)とカリウム(K2O)
のそれぞれの溶出について,川砂の岩種構成の相違により,浸せき日数 91 日までに溶出が収束す
るものとそれ以後も増加するものとに分類できた.また,ナトリウム(Na2O)とカリウム(K2O)
では浸せき日数にともなう溶出性状が大きく相違した.すなわち,カリウム(K2O)は比較的初期
から溶出するが,ナトリウム(Na2O)は浸せき日数とともに次第に溶出量が増加した.これは,
水酸化カルシウム(Ca(OH)2)溶液との反応過程で,カリウム(K2O)が濃集しているガラス相がま
ず反応し,その後,斜長石などの鉱物との反応によりナトリウム(Na2O)が溶出してくることによ
るものであると推察された.アルカリ溶出量(Na2O+0.658K2O)については,砂の岩種構成の相違
により,新潟県や石川県の川砂は,浸せき日数 91 日までに溶出が収束するものが多いのに対し,
富山県や長野県の川砂では浸せき日数 91 日以後も増加するものが多かった.また,陸砂よりも浜
安山岩
流紋岩
火成岩
花崗岩
他の火成岩
変成岩
凝灰岩
堆積岩
頁岩
チャート
他の堆積岩
石英
斜長石
造岩
鉱物
カリ長石
粘土鉱物
その他の造岩鉱物
KU川(福井県)
SYO川(富山県)
JI川(富山県)
HA川(富山県)
CH川(長野県)
NI川(長野県)
A川(新潟県)
TA川(新潟県)
0%
20%
40%
60%
80%
100%
含有率(%)
図-3.2 川砂の岩種含有率
- 67 -
第 3 章 北陸地方で産出する骨材からのアルカリ溶出性状とアルカリシリカ反応性に及ぼす影響に関する研究
0.4
Na 2O(mg/g)
0.4
K 2O(mg/g)
0.4
0.3
0.3
Na 2O+0.658K 2O(mg/g)
川砂(新潟県SA川)
川砂(新潟県AR川)
0.3
川砂(新潟県TA川)
0.2
0.2
0.2
0.1
0.1
0.1
川砂(新潟県A川)
川砂(新潟県SI川)
0.0
0.4
0.0
0
200
0.4
100
0.0
200
0.4
100
0
0.3
0.3
0.3
0.2
0.2
0.2
0.1
0.1
0.1
0.0
0.4
0.0
200
0.0
川砂(新潟県U川)
0
200
100
川砂(長野県NI川)
川砂(長野県CH川)
川砂(富山県HA川)
川砂(富山県JY川)
川砂(富山県JI川)
川砂(富山県SYO川)
0
50
100
150
0.4
0
50
100
150
200
0.4
50
100
150
200
川砂(石川県TE川)
0.3
0.3
0.3
0.2
0.2
0.2
0.1
0.1
0.1
0.0
0.4
0
0.0
0
50
100
150
200
0.4
0
50
100
150
0.0200
0.4
川砂(福井県KU川)
川砂(滋賀県A川)
0
50
100
150
200
浜砂(石川県U地区)
0.3
0.3
0.3
0.2
0.2
0.2
0.1
0.1
0.1
浜砂(新潟県M地区)
浜砂(石川県O地区)
陸砂(滋賀県N地区)
陸砂(滋賀県K地区)
0.0
0.4
0
50
100
150
0.0
200
0.4
0
50
100
150
0.0
200
0.4
0.3
0.3
0.3
0.2
0.2
0.2
0.1
0.1
0.1
0.0
0.0
0
100
200 0
100
0
0.0
200 0
50
100
100
150
200
200
浸せき日数(日)
図-3.4 骨材からのアルカリ溶出性状試験の結果
- 68 -
石灰岩砕石
(新潟県O地区)
硬質砂岩砕石
(福井県HA地区)
硬質石灰岩砕石
(滋賀県H地区)
硬質砂岩砕石
(三重県I地区)
チャート砕石
(滋賀県O地区)
砂岩・花崗岩砕石
(滋賀県R地区)
第 3 章 北陸地方で産出する骨材からのアルカリ溶出性状とアルカリシリカ反応性に及ぼす影響に関する研究
砂の方が比較的多くのアルカリ(Na2O+0.658K2O)が溶出し,滋賀県や三重県の砂岩砕砂や花崗岩
砕砂からも比較的多くのアルカリ溶出が確認された.一方,新潟県 O 地区の石灰岩砕砂からアル
カリ溶出がなかったのに対し,滋賀県 H 地区の石灰岩砕砂はアルカリ溶出が多少見られた.これ
は石灰岩中の不純物量の違いであると推察された.
川砂からのアルカリ溶出量(Na2O+0.658K2O)は浸せき日数 6 ヶ月において 0.1~0.4 mg/g の範
囲 に あ っ た . 最 大 の ア ル カ リ 溶 出 量 を 示 し た 富 山 県 SYO 川 の も の は ア ル カ リ 溶 出 量
(Na2O+0.658K2O)が 0.4 mg/g であり,これは一般的なコンクリートの配合(細骨材量を 800kg/m3
として計算)で換算すると,0.32 kg/m3 の等価アルカリ量に相当した.また,これは浸せき日数
6 ヶ月までの結果であり,アルカリ溶出量が収束する傾向にないものもあることから判断すると,
川砂からのアルカリ溶出量(Na2O+0.658K2O)は最大 0.5 kg/m3 程度を想定するのが妥当であると
考えられた.この値はセメントからのアルカリ総量規制値(2.5 kg/m3)の 20%にも相当するもの
であり,海砂や海砂利に含有される塩化ナトリウム(NaCl)からのアルカリの影響と同様に,骨
材からのアルカリ溶出量(Na2O+0.658K2O)の影響を現行の規制値に取り込むことが必要であると
考えられた.すなわち,火山岩系の反応性岩石が多い,わが国では,当面,骨材からのアルカリ
溶出の影響を考慮して,アルカリ総量規制値を 2~2.5kg/m3 と運用することが妥当であると判断
された.
(3) 骨材の岩種および造岩鉱物とアルカリ溶出量との関係
アルカリ溶出量(Na2O+0.658K2O)と岩種含有率の関係を図-3.4 に示す.岩種含有率に関して
は,流紋岩や深成岩(花崗岩)を多く含む川砂ほどアルカリ溶出量(Na2O+0.658K2O)が増大して
いる傾向が認められた.ガラス相を多く含む流紋岩はアルカリシリカ反応性を有するとともに,
ガラスの反応過程でカリウム(K2O)を溶出することが確認された.また,花崗岩は流紋岩とほぼ
同じ化学組成をもっており,シリカ(SiO2)
,アルカリ(Na2O,K2O)を多く含む化学成分であるこ
とから,常温における水酸化カルシウム(Ca(OH)2)溶液との反応でもアルカリを溶出する可能性
があると考えられた.一方,川砂には長石,雲母などの造岩鉱物や粘土鉱物も含有されていた.
とくに,長石類を多く含有する川砂は長期にわたってアルカリ(Na2O)を溶出することが確認さ
れた.北陸地方の川砂には,火山岩(安山岩,流紋岩など)とともに長石類(曹長石,カリ長石)
が通常含有されており,火山岩の風化・変質の程度と造岩鉱物の種類を把握することが重要であ
ると考えられた.
0.5
安山岩
流紋岩
花崗岩
長石類
Na 2 O+0.658K 2O(mg/g)
0.4
0.3
0.2
0.1
0
0
10
20
30
40
50
60
岩種含有率(%)
図-3.4 アルカリ溶出量(Na2O+0.658K2O)と岩種含有率の関係 11)
- 69 -
第 3 章 北陸地方で産出する骨材からのアルカリ溶出性状とアルカリシリカ反応性に及ぼす影響に関する研究
(4) アルカリ溶出量と化学法(JIS A 1145-2001)における溶解シリカ量(Sc)およびアルカリ濃度
減少量(Rc)との関係
アルカリ溶出量(Na2O+0.658K2O)と化学法(JIS A 1145-2001)の結果との関係を図-3.5 およ
び図-3.6 に示す.図-3.5 に示すように,化学法(JIS A 1145-2001)における溶解シリカ量(Sc)
とアルカリ溶出量(Na2O+0.658K2O)との間には明確な相関性は得られなかった.これは両試験で
は,アルカリ雰囲気(温度 80℃の 1N・NaOH 溶液)と飽和水酸化カルシウム(Ca(OH)2)溶液(温
度 38℃))および試験日数(24 時間と 180 日)が相違していることが考えられた.また,シリカ
鉱物の溶解には,水酸基イオン濃度が高いことが必要であり,飽和水酸化カルシウム(Ca(OH)2)
溶液中(pH=12.4)では,シリカ鉱物の溶解は発生しにくいと考えられた.一方,図-3.7 のよう
にアルカリ溶出量(Na2O+0.658K2O)とアルカリ濃度減少量(Rc)との間には負の相関性があり,
川砂中のアルカリが化学法(JIS A 1145-2001)の試験中にも一部,溶出していることが確認され
た 19).
溶解シリカ量(Sc mmol/l)
400
350
300
250
200
150
100
50
0
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
Na 2O+0.658K 2O(mg/g)
図-3.6 溶解シリカ量(Sc)とアルカリ溶出量(Na2O+0.658K2O)との関係 11)
アルカリ濃度減少量(Rc mmol/l)
250
200
150
100
50
0
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
Na 2O+0.658K 2O(mg/g)
図-3.7 アルカリ濃度減少量(Rc)とアルカリ溶出量(Na2O+0.658K2O)との関係 11)
- 70 -
第 3 章 北陸地方で産出する骨材からのアルカリ溶出性状とアルカリシリカ反応性に及ぼす影響に関する研究
3.5 構造物における骨材からのアルカリ溶出の検証 9)
(1) コンクリートのアルカリ量の推定
a) セメントのアルカリ量
構造物から採取したコアから作製した研磨薄片の反射画像より,未水和のセメント粒子を検出
し,EPMA による半定量分析を行った.なお,調査を行った構造物のセメントは,すべて普通ポル
トランドセメントである.セメントのアルカリ量(Na2O+0.658K2O)の分析結果は,0.50%から高
いもので 1.04%であった
20)
.これらの結果と普通ポルトランドセメントの平均アルカリ量
(Na2O+0.658K2O)を年代別に整理した結果を図-3.7 に示す
21)
.セメントのアルカリ量は湿式分
析によるのが一般的である.しかし,EPMA による今回の分析結果は,年代および製造会社に大き
なバラツキはなく,妥当な分析結果であると考えられた.
b) アルカリ起源の区分と計算手順
コンクリートの水溶性アルカリ量(Na2O+0.658K2O)の分析と推定結果を表-3.3 に示す.経過
年数は,構造物の建設から調査を行った時点までの期間である.コンクリートおよびセメントの
単位容積質量は,コンクリートの示方配合から計算したものであり,推定値は次のような仮定に
基づいている.
1)セメントのアルカリ量(Na2O+0.658K2O)は,図-3.8 に示すメーカーごとの分析値の平均(MY:
0.93%,DE:0.68%,O:0.51%,SU:0.79%)を用いた.
2)コンクリートの全アルカリ量(Na2O+0.658K2O)は,コンクリートの水溶性アルカリ量
(Na2O,K2O)を分析することにより,水溶性ナトリウム(Na2O)と非水溶性ナトリウム(Na2O)
の比を 0.6:0.4,水溶性カリウム(K2O)と非水溶性カリウム(K2O)の比を 0.8:0.2 として,
全アルカリ量(Na2O+0.658K2O)を推定した 22).
3)セメントの全アルカリ量(Na2O+0.658K2O)は,注水直後に溶解する硫酸アルカリ等(硫酸
ナトリウム(Na2SO4)
,硫酸カリウム(K2SO4)
)の比率を EPMA により分析したセメントのアル
カリ量(Na2O+0.658K2O)の 20%と仮定し,加算した 20).
4)骨材の全アルカリ量(Na2O+0.658K2O)は,コンクリートの全アルカリ量(Na2O+0.658K2O)
からセメントの全アルカリ量(Na2O+0.658K2O)を差し引いたものとした.
Na2O+0.658K2O(%)
1.2
MY
1.0
MY
SU
SU
0.8
SU
MY
DE
0.6
O
O
0.4
0.2
DE
SU
DE
セメントの平均アルカリ量
0.0
1955
1965
1975
1985
1995
2005
年度
図-3.7 セメントのアルカリ量(Na2O+0.658K2O)の推定結果 9)
- 71 -
橋台
橋台
KITAO橋
HI橋
TSUKA高架橋
富山県
富山県
富山県
- 72 HA川
HA川
HA川
HA川
HA川
Ⅲ
Ⅱ
Ⅱ
18
19
17
1979
1979
KU川
KU川
Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
16
16
1981
A川
A川
Ⅱ
Ⅱ
Ⅱ
16
13
20
22
21
21
1985
1980
1978
1975
1976
橋台
橋台
OKA橋
KATAH高架橋
TORI橋
新潟県
新潟県
新潟県
HI川
SI川
Ⅲ
Ⅰ
SI川
O川
Ⅱ
151
39
80
60
28
44
3.3
0.9
2.2
2.4
2,339
2,398
O㈱
DE㈱
2,365
0.52
―
290
290
―
0.68
2.22
2.64
2.34
1.8
2.4
4.6
2.3
2.3
3.9
4.1
―
0.66
290
SU㈱
SI川
3.3
―
0.68
1.87
290
2,394
DE㈱
SI川
3.16
―
300
2,170
DE㈱
HI川
0.61
5.5
50
2.3
2.68
―
2,322
DE㈱
280
4.6
37
0.68
33
1.0
1.7
2.2
2.1
1.8
48
54
94
115
101
60
51
95
1.2
2.7
0.51
49
2.4
3.6
0.68
O川
2,361
1.57
―
280
2.06
―
290
2,393
O㈱
SI川
34
1.8
2.4
3.4
2.5
5.2
4.9
―
2.81
―
2.97
1.01
0.74
2,353
280
280
2,331
MY㈱
DE㈱
A川,SI川
52
54
3.0
2.6
5.6
―
3.20
58
116
37
1.8
3.1
4.9
SU㈱
KU川
81
45
2.0
2.4
111
4.4
0.77
KU川
62
38
1.6
0.93
0.68
53
3.1
2.7
2.8
4.3
5.9
58
85
46
1.5
1.7
77
37
35
44
25
99
76
43
50
88
47
80
47
25
2.1
2.5
17
163
3.6
3.2
0.9
2.7
2.7
2.6
2.1
2.7
2.4
2.7
45
33
20
(%)
130
2.80
2.51
―
0.79
3.2
5.7
―
―
5.7
3.5
5.4
4.8
5.1
0.93
―
0.79
0.79
0.79
2.2
1.3
0.8
14
62
0.4
56
(%)
Ag/Co * Ag/Ce **
骨材の
全アルカリの
占める割合
4.8
4.2
Ag(kg/m 3 )
骨材の全
アルカリ
量
2.7
2.7
4.0
4.9
3.2
4.0
280
*:コンクリートの全アルカリ量に対する骨材の全アルカリ量の占める割合 **:セメントの全アルカリ量に対する骨材の全アルカリ量の占める割合
橋台
橋台
新潟県
橋脚
OYA高架橋
NISHI高架橋
新潟県
橋台
KU川
1983
KITAH高架橋
富山県
Ⅰ
17
1983
17
1983
橋台
富山県
橋台
KATAK橋
ICHI高架橋
富山県
1983
橋台
富山県
橋台
ASO橋
ROKU高架橋
富山県
KU川
2,334
A㈱
17
1983
橋台
ISHI橋
富山県
―
280
2,331
MY㈱
HA川
1983
橋台
IWA橋
富山県
―
300
2.51
2,370
DE㈱
HA川
HA川
橋脚
TERA高架橋
3.31
―
0.74
300
300
1.85
3.30
3.25
0.50
1.04
―
2.01
3.09
―
0.74
2.78
―
290
290
290
290
290
2.93
0.79
2.77
―
―
―
0.79
2.26
2.4
2.8
―
2.9
7.4
0.93
7.7
3.2
Co(kg/m 3 )
(%)
―
Ce(kg/m 3 )
コンクリートの
全アルカリ量
セメントの
アルカリ量
推定値
セメントの
全アルカリ
量
2.27
0.91
―
4.44
1.64
4.25
(kg/m 3 )
コンクリートの
水溶性アルカリ
量
分析値
0.84
0.68
―
(%)
セメントの
アルカリ量
2,370
DE㈱
2,355
SU㈱
JI川
2,353
2,358
2,352
2,350
2,358
290
290
2,350
2,350
290
290
290
290
290
290
2,350
HA川
JI川
富山県
Ⅲ
OO橋
TERA高架橋
富山県
橋台
O㈱
MY㈱
MY㈱
MY㈱
SU㈱
SU㈱
2,351
2,361
HA川
HA川,KA川
JI川,HA川
HA川
JI川,HA川
富山県
Ⅲ
21
1980
橋台
Ⅰ
18
1976
橋台
JYOU橋
Ⅲ
富山県
1974
23
橋台
JI川,HA川
KUMA橋
JI川,HA川
富山県
1973
橋台
HAGI橋
JI川
JY川
JY川
SU㈱
SU㈱
JY川
JY川
SU㈱
JY川
SYO川
富山県
Ⅲ
JY川
Ⅲ
26
JY川
Ⅲ
JI川
JY川
Ⅱ
Ⅲ
JY川
Ⅱ
JY川
Ⅲ
23
26
25
26
27
SYO川
Ⅱ
SU㈱
2,358
2,351
DE㈱
SU㈱
SYO川
JI川
JI川
SYO川
JIN橋
1974
1975
1975
1975
1975
Ⅱ
Ⅲ
2,351
MY㈱
(kg/m 3 )
(kg/m 3 )
KU川
の単位
容積質量
の単位
セメント
容積質量
KU川
メーカー
川砂
セメント
コンクリート
川砂利
水系
基本データ
富山県
橋台
橋台
橋台
KAJI橋
富山県
26
25
橋脚
1973
C-Box 1973
No.4
GE橋
富山県
25
25
1972
1973
Ⅲ
年数
24
ASR
劣化度
経過
橋脚
1974
建設
橋台
橋台
種別
富山県
SYO橋
IMA高架橋
富山県
GEN橋
福井県
富山県
構造物
県名
表-3.2 アルカリ量(Na2O+0.658K2O)の分析と推定結果 9)
第 3 章 北陸地方で産出する骨材からのアルカリ溶出性状とアルカリシリカ反応性に及ぼす影響に関する研究
第 3 章 北陸地方で産出する骨材からのアルカリ溶出性状とアルカリシリカ反応性に及ぼす影響に関する研究
なお,本検討では化学混和剤からのアルカリは微量であり,その量は無視できるものとした.
推定の結果,骨材の全アルカリ量(Na2O+0.658K2O)の推定値は 0.4~4.8kg/m3 となった.この値
は,コンクリートのアルカリ総量と比較して無視できない値となっている.現行の ASR 抑制対策
ではコンクリートのアルカリ総量値(Na2O+0.658K2O)を 3kg/m3 以下として,骨材のアルカリに関
しては海砂または海砂利の塩分を NaCl 換算値として考慮することになっている.また,同対策で
は,セメントからのアルカリ量(Na2O+0.658K2O)の上限値を 2.5 kg/m3 としている.本調査結果
から得られた骨材の全アルカリ量(Na2O+0.658K2O)を考慮すると,コンクリートのアルカリ総量
規制値を超えることが明らかになった.したがって,セメントからのアルカリのみならず,骨材
からのアルカリ溶出量の影響を考慮して,アルカリ総量規制値を見直す必要性が考えられた.
(2) 構造物の ASR 劣化度とセメント,骨材およびコンクリートのアルカリ量
アルカリ量(Na2O+0.658K2O)と ASR 劣化度との関係を図-3.8 に示す.なお,構造物の ASR 劣化
度は写真-3.1 に示すように分類した.この結果,構造物の ASR 劣化度が大きなものほどアルカリ
量(Na2O+0.658K2O)が増加する傾向があった.また,ASR 対策として低アルカリ形セメント
(
(Na2O+0.658K2O)が 0.6%以下)を使用した場合では,ASR 劣化度Ⅱの ASR の発生する可能性が
あるが,ASR 劣化度Ⅲには至らない結果となった.さらに,コンクリートの水溶性アルカリ量
(Na2O+0.658K2O)が 2kg/m3 の場合でも ASR 劣化度Ⅲに至るケースが確認された.骨材の全アルカ
リ量(Na2O+0.658K2O)は ASR 劣化度が大きなものほど,構造部の ASR 劣化度のバラツキが大きく
なる傾向があった.
5.0
コンクリートの
水溶性アルカリ量
セメントのアルカリ量(Na
2O+0.658K 2 O(%))
セメントの
アルカリ量
4.0
5.0
骨材の
全アルカリ量
4.0
最大値
平均値
最小値
3.0
3.0
←2.5
2.0
2.0
1.0
1.0
0.6→
0.0
0.0
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
ASR劣化度
図-3.8 セメント,骨材およびコンクリートのアルカリ量(Na2O+0.658K2O)と ASR
劣化度との関係 9)
- 73 -
第 3 章 北陸地方で産出する骨材からのアルカリ溶出性状とアルカリシリカ反応性に及ぼす影響に関する研究
ASR
劣化度
状況写真
Ⅰ
状況
ASR のひび割れが発生し
ていないもの
Ⅱ
構造物の隅角部などに
ASR のひび割れがごく一
部に発生しているもの
Ⅲ
ASR のひび割れが構造物
の約1/3 以上の面積で発
生しているもの
写真-3.1 ASR 劣化度の凡例
- 74 -
第 3 章 北陸地方で産出する骨材からのアルカリ溶出性状とアルカリシリカ反応性に及ぼす影響に関する研究
(3) コアの偏光顕微鏡観察
構造物から採取したコアから研磨薄片を作製し,偏光顕微鏡観察を行った.この結果,火成岩
において変質した長石が多く確認された.変質した長石の画像を写真-3.2 および写真-3.3 に示す.
写真‐3.2 a および b は,福井県 KU 川および富山県 JI 川における安山岩中の長石の変質状況で
ある.写真-3.2 c および写真-3.3 d は,富山県 SYO 川および富山県 HA 川における花崗岩中の長
石の変質状況である.写真-3.3 e および写真 3.3 f は,富山県 O 川および新潟県 HI 川における
安山岩中の長石の変質状況である.これらの変質はコンクリート中で生じたかどうかは不明であ
る.変質した長石はスメクタイト化により,アルカリが溶出しやすくなる可能性が考えられた.
(4) 構造物の経過年数と骨材の全アルカリ量
安山岩中のガラス相は,風化・変質することにより,モンモリロナイトやバーミキュライトに
変化し,スメクタイト化した安山岩よりアルカリが放出されることが知られている
23),24)
.コア
より ASR を生じていた火山系岩石の粗骨材を選別し,粉末 X 線回折や偏光顕微鏡観察を行った結
果,長石や火山ガラスの含有が確認された.骨材の全アルカリ量(Na2O+0.658K2O)と経過年数と
の関係を図-3.9 に示す.ASR 劣化度がⅠおよびⅡのものでは,年数の経過に関係なく,骨材の全
アルカリ量(Na2O+0.658K2O)がほぼ横ばいであるのに対して,ASR 劣化度Ⅲのものでは年数の経
過とともに骨材の全アルカリ量(Na2O+0.658K2O)が大きく変動している.この現象は含有鉱物の
風化・変質過程や ASR の進行過程が構造物の環境や骨材の岩種構成により相違したためと推察さ
れた.
5
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
F
N
3
Na 2 O+0.658K 2O(kg/m )
4
T
T
T
3
N
T
N
T
2
T
T
1
T
T
T
T
T
T
T
N
T
T
T
T
T
N
T
0
0
5
10
15
20
25
30
経過年数(年)
図-3.10 骨材の全アルカリ量(Na2O+0.658K2O)と経過年数との関係 11)
(F:福井, T:富山, N:新潟 Ⅰ,Ⅱ,Ⅲは ASR 劣化度)
- 75 -
第 3 章 北陸地方で産出する骨材からのアルカリ溶出性状とアルカリシリカ反応性に及ぼす影響に関する研究
a
b
c
1mm
1mm
1mm
1mm
1mm
1mm
:変質箇所
写真-3.2 長石の変質状況(その 1)
(左側:単ニコル,右側:直交ニコル)
(a) 安山岩中の長石の変質 (GEN 橋,福井県,九頭竜川水系),
(b) 安山岩中の長石の変質(SYO 橋,富山県,神通川水系)
,
(c) 花崗岩中の長石の変質(IMA 高架橋,富山県,庄川水系)
- 76 -
第 3 章 北陸地方で産出する骨材からのアルカリ溶出性状とアルカリシリカ反応性に及ぼす影響に関する研究
d
e
f
1mm
1mm
1mm
1mm
1mm
1mm
1㎜
1㎜
:変質箇所
写真-3.3 長石の変質状況(その 2)
(左側:単ニコル,右側:直交ニコル)
(d) 花崗岩中の長石の変質(TERA 高架橋,富山県,早月川水系)
(e) 安山岩中の長石の変質(KITAH 高架橋,富山県,小川水系)
(f) 安山岩中の長石の変質(OYA 高架橋,新潟県,姫川水系)
- 77 -
第 3 章 北陸地方で産出する骨材からのアルカリ溶出性状とアルカリシリカ反応性に及ぼす影響に関する研究
(5) 骨材岩種と骨材の全アルカリ量
骨材の全アルカリ量(Na2O+0.658K2O)とコアより分析した粗骨材の岩種含有率との関係を図
-3.10 に示す.骨材の全アルカリ量(Na2O+0.658K2O)は,直線回帰により火成岩(火山岩,深成
岩)および変成岩の構成率が増加するほど多くなる傾向が認められた.火成岩における全アルカ
リ量(Na2O+0.658K2O)の増加傾向は,糸魚川・静岡構造線を境として,おおむね富山県と新潟県
のグループに分けられた.火成岩では,写真-3.2 および写真-3.3 に示すように安山岩や花崗岩中
の長石が変質し,アルカリが溶出しやすくなっているものと推察された.変成岩は,変成作用を
受けた温度の影響により,生成鉱物が異なり,そのことがアルカリ量を大きく左右する.一般に
変成温度が低い場合,沸石や緑泥石などのアルカリ含有量が多い鉱物ができやすい傾向があり 25),
これらの鉱物が由来でアルカリ量が多くなるものと推察された.一方,骨材の全アリカリ量
(Na2O+0.658K2O)と火山系岩石および堆積岩の構成率との間には,明確な関係は認められなかっ
た.
図-3.10 骨材の全アルカリ量(Na2O+0.658K2O)と岩種含有率との関係 11)
F:福井,T:富山,N:新潟, Ⅰ,Ⅱ,Ⅲは ASR 劣化度 ―・・―:直線回帰
火成岩:火山岩(流紋岩,安山岩,玄武岩)および深成岩(花崗岩,閃緑岩,斑れい岩)
火山系岩石(安山岩,流紋岩,凝灰岩)
変成岩:ホルフェンス,蛇紋岩
堆積岩:凝灰岩,礫岩,砂岩,チャート,頁岩
- 78 -
第 3 章 北陸地方で産出する骨材からのアルカリ溶出性状とアルカリシリカ反応性に及ぼす影響に関する研究
3.6 EPMA による骨材中のアルカリ分布状況の確認
アルカリ溶出試験前後に砂粒子を低粘度のエポキシ樹脂で固め,研磨薄片を作製した.この薄
片を用い,EPMA によりナトリウム(Na)とカリウム(K)の面分析を行った.また,構造物から
採取したコアから作製した研磨薄片で,同様に EPMA による面分析を行った.結果を写真-3.4~写
真-3.14 に示す.ここで火山岩類とは玄武岩,安山岩および流紋岩を示す.
アルカリ溶出試験前における EPMA による砂の面分析では,砂の界面の影響(エッジ効果)は
なく,斑晶および石基中のナトリウム(Na)およびカリウム(K)の濃度はほぼ一定であった.な
お,火山岩類や凝灰岩では,直交ニコル下において黒色を呈するものは,火山ガラスであると推
察された.火山ガラスは,他の鉱物の間を充填しており,他の鉱物に比較してその量が少ない傾
向があった.また,部分的に黄色から茶褐色を呈するものは長石が変質したものと思われた.な
お,チャートにはほとんどナトリウム(Na)とカリウム(K)が含有していなかった.砂粒子から
のアルカリ溶出はないものと推察された.これは,砂粒子では火山ガラスの風化・変質や侵食が
より顕著であることを示すものであった.
アルカリ溶出試験後および構造物からのコア試料における EPMA の面分析の結果では,砂粒子
の表面と内部とでアルカリ濃度が大きく相違することから,ナトリウム(Na)およびカリウム(K)
は骨材表面から外部に溶出していると推察した.また長石が変質したと推察される部分でのナト
リウム(Na)の濃度が低かった.本来,長石類はアルカリ(Na,K)に富むことから,砂粒子中の
ナトリウム(Na)の濃度が低下し,その分,コンクリートの細孔溶液中のナトリウム(Na)の濃
度が増加することが考えられた.
水酸化カルシウム水溶液に浸せきした砂粒子からのアルカリ溶出性状は,カリウムがナトリウ
ムよりも早期に溶出する傾向があり,
カリウムの浸せき日数 28 日以後で一定となる傾向があった.
これは,火山ガラスから早期にカリウムが溶出したものであった.また,砂粒子中の火山ガラス
は,
他の鉱物に比較してその含有量が少ないことから,
限定された量となったものと考えられた.
一方,ナトリウムについては,91 日でほぼ一定の値となるものやその後も増加し続けるものとが
あった.初期に溶出するナトリウムは,砂粒子の表面部の変質した長石からのものであり,その
後,
砂粒子中への溶液の浸透過程で内部の長石からのアルカリの溶出が始まるものと考えられた.
また,アルカリ溶出試験の 182 日経過した時点でもナトリウムの溶出量が収束することがないこ
と,EPMA による面分析により比較的多くのナトリウムが砂粒子中に残存していたことから判断す
ると,ナトリウムは長期にわたり溶出する傾向があり,ASR を長期にわたり助長する原因となる
ものと推察された.
写真-3.14 に示すように KUMA 橋 橋台より採取したコアで作製した研磨薄片で偏光顕微鏡にて
斜長石を特定し,セメントペーストと骨材の境界にて EPMA により,ナトリウム(Na)
,カリウム
(K)
,ケイ素(Si)の面分析を行った.ナトリウム(Na)やケイ素(Si)ではセメントペースト
の境界付近に薄い接触層が形成されており,ナトリウム(Na)およびケイ素(Si)の濃度が斜長
石の内部から外部に向かうにつれて減少していることが確認された.セメントに水溶性アルカリ
が存在する場合には,骨材の一部が間隙水と反応して,骨材中のシリカ(SiO2)を溶出させること
が報告されている 26).この現象により,同時にナトリウム(Na2O)が溶出し,コンクリートの細
孔溶液中のアルカリ濃度が増加するものと推察された.
- 79 -
第 3 章 北陸地方で産出する骨材からのアルカリ溶出性状とアルカリシリカ反応性に及ぼす影響に関する研究
500μm
溶結凝灰岩
500μm
安山岩
流紋岩
写真-3.4 アルカリ溶出性状試験前における川砂の偏光顕微鏡画像(福井県 KU 川水系)
(上段 左側:単ニコル,右側:直交ニコルと下段 EPMA による面分析)
砂岩
500μm
500μm
流紋岩
玄武岩
流紋岩
流紋岩
花崗岩
写真-3.5 アルカリ溶出性状試験前における川砂の偏光顕微鏡画像(富山県,SYO 川水系)
(上段 左側:単ニコル,右側:直交ニコルと下段 EPMA による面分析)
- 80 -
第 3 章 北陸地方で産出する骨材からのアルカリ溶出性状とアルカリシリカ反応性に及ぼす影響に関する研究
流紋岩
500μm
500μm
玄武岩
安山岩
写真-3.6 アルカリ溶出性状試験前における川砂の偏光顕微鏡画像(長野県,CH 川水系)
(上段 左側:単ニコル,右側:直交ニコルと下段 EPMA による面分析)
500μm
砂岩
チャート
500μm
写真-3.7 アルカリ溶出性状試験前における川砂の偏光顕微鏡画像(新潟県,TA 川水系)
(上段 左側:単ニコル,右側:直交ニコルと下段 EPMA による面分析)
- 81 -
第 3 章 北陸地方で産出する骨材からのアルカリ溶出性状とアルカリシリカ反応性に及ぼす影響に関する研究
凝灰岩
泥岩
火山岩類
チャート
ホルフェンス
500μm
泥岩
500μm
写真-3.8 アルカリ溶出性状試験後における川砂の偏光顕微鏡画像(福井県 KU 川水系)
(上段 左側:単ニコル,右側:直交ニコルと下段 EPMA による面分析)
500μm
凝灰岩
火山岩類
500μm
写真-3.9 アルカリ溶出性状試験後における川砂の偏光顕微鏡画像(富山県,SYO 川水系)11)
(上段 左側:単ニコル,右側:直交ニコルと下段 EPMA による面分析)
- 82 -
第 3 章 北陸地方で産出する骨材からのアルカリ溶出性状とアルカリシリカ反応性に及ぼす影響に関する研究
火山岩類
火山岩類
凝灰岩
500μm
500μm
写真-3.10 アルカリ溶出性状試験後における川砂の偏光顕微鏡画像(長野県,CH 川水系)
(上段 左側:単ニコル,右側:直交ニコルと下段 EPMA による面分析)
チャートフォルフェンス
石英
凝灰岩
500μm
500μm
写真-3.11 アルカリ溶出性状試験後における川砂の偏光顕微鏡画像(新潟県,TA 川水系)
(上段 左側:単ニコル,右側:直交ニコルと下段 EPMA による面分析)
- 83 -
第 3 章 北陸地方で産出する骨材からのアルカリ溶出性状とアルカリシリカ反応性に及ぼす影響に関する研究
1mm
1mm
安山岩
写真-3.12 構造物における川砂(安山岩)の偏光顕微鏡画像(写真-3.3e に同じ)
(KITAH 高架橋,富山県,O 川水系)
(左側:単ニコル,右側:直交ニコル)と EPMA による面分析
1mm
1mm
安山岩
写真-3.13 構造物における川砂(安山岩)の偏光顕微鏡画像(写真-3.3f に同じ)
(OYA 高架橋,新潟県,HI 水系)
(左側:単ニコル,右側:直交ニコル)と EPMA による面分析
- 84 -
第 3 章 北陸地方で産出する骨材からのアルカリ溶出性状とアルカリシリカ反応性に及ぼす影響に関する研究
直交ニコル
EPMA
斜長石
500μm
写真‐3.14 構造物における川砂の偏光顕微鏡画像
(KUMA 橋,富山県,JI 川あるいは HA 川水系)
(左側:単ニコル,右側:直交ニコル)と EPMA による面分析
- 85 -
500μm
第 3 章 北陸地方で産出する骨材からのアルカリ溶出性状とアルカリシリカ反応性に及ぼす影響に関する研究
3.7 結 論
本研究では,北陸地方とその周辺地域における川砂,陸砂,浜砂,砕砂からのアルカリ溶出性
状を調査するとともに,構造物におけるアルカリ起源をセメントと骨材とに分類し,岩種やアル
カリシリカ反応性との関係を検討した.また,偏光顕微鏡と EPMA の面分析結果の組み合わせを行
い,骨材からのアルカリ溶出について検証を行った.
本章で得られた主要な結果をまとめると,次のようである.
骨材からのアルカリ溶出性状に関して,
(1) 川砂にはアルカリシリカ反応性がある火山系岩石(安山岩,流紋岩,凝灰岩)が含有されて
おり,河川水系ごとにそれらの含有率が大きく相違していた.また,偏光顕微鏡観察より,
コンクリート中の火成岩の川砂には変質した長石が確認された.
(2) 川砂中の岩石および造岩鉱物の含有率により,ナトリウム(Na2O)およびカリウム(K2O)の溶
出性状に相違があった.また,ナトリウム(Na2O)は長期にわたり水酸化カルシウム(Ca(OH)2)
溶液に溶出するのに対して,カリウム(K2O)は早期に溶出が収束する傾向があり,ナトリウム
(Na2O)の溶出性状がアルカリ溶出量に大きな影響を与えるものと考えられた.
(3) 岩種構成の相違により,新潟県や石川県の川砂からのアルカリ溶出量(Na2O+0.658K2O)は,浸
せき日数 91 日までに溶出が収束するものが多いのに対し,富山県や長野県の川砂では浸せき
日数 91 日以後も増加するものが多かった.また,陸砂より浜砂の方で比較的多くのアルカリ
量(Na2O+0.658K2O)が溶出し,滋賀県や三重県の砂岩砕石や花崗岩砕石からもアルカリ溶出
が確認された.
(4) 火山岩(安山岩および流紋岩)や長石類を多く含む川砂ほどアルカリの溶出量が増大し,川
砂からのアルカリ溶出量(Na2O+0.658K2O)は,コンクリート 1m3 に換算すると,最大 0.5 kg/m3
に相当した.
(5) 化学法
(JIS A 1145-2001)
におけるアルカリ濃度減少量
(Rc)
とアルカリ溶出量(Na2O+0.658K2O)
との間には負の相関性があり,川砂中のアルカリが化学法(JIS A 1145-2001)の試験中にも
一部,溶出していることが確認された.
構造物における骨材からのアルカリ溶出の検証に関して,
(6) コンクリートのアルカリの起源をセメントと骨材とに区別した結果,骨材の全アルカリ量
(Na2O+0.658K2O)の推定値は,0.4~4.8kg/m3 となった.したがって,セメントのアルカリだけ
でなく骨材のアルカリをも考慮し,アルカリの総量規制値を見直す必要性があった.
(7) コンクリートのアルカリ量(Na2O+0.658K2O)が多いものほど構造物の ASR 劣化度が増大した.
また,コンクリートの水溶性アルカリ量(Na2O+0.658K2O)が 2kg/m3 程度でも ASR の発生が実際
に確認された.また,低アルカリ形セメント((Na2O+0.658K2O)が 0.6%以下)を使用した場
合にも,骨材のアルカリにより,ASR が発生する可能性があった.
(8) 骨材中の火成岩および変成岩の構成率が増加するほど骨材の全アルカリ量(Na2O+0.658K2O)が
増大した.これには,偏光顕微鏡により確認された風化した長石が影響しているものと考え
られた.
- 86 -
第 3 章 北陸地方で産出する骨材からのアルカリ溶出性状とアルカリシリカ反応性に及ぼす影響に関する研究
EPMA による骨材中のアルカリ分布状況の確認に関して,
(9) 長石の変質部分ではアルカリ濃度(Na,K)が低く,早期にアルカリが溶出する傾向が考えられ
た.
(10) アルカリ溶出性状試験の傾向から,早期のカリウム(K2O)の溶出は火山ガラスからものであ
り,溶液の浸透に伴い,ナトリウム(Na2O)が長期にわたり溶出することが考えられた.ま
た,アリカリ溶出性状試験後において実施した EPMA の面分析により,ナトリウム(Na)が残
存していたことから,長期にわたり,ナトリウム(Na)の溶出が継続し,コンクリート中の
アルカリ濃度(Na2O+0.658K2O)を上昇させることが考えられた.
- 87 -
第 3 章 北陸地方で産出する骨材からのアルカリ溶出性状とアルカリシリカ反応性に及ぼす影響に関する研究
参考文献
1) 日本コンクリート工学協会:セメント系材料・骨材研究委員会報告書,pp.35-41,2005.
2) 松田芳載,津吉 毅,石橋忠良:軽量骨材コンクリートを用いた実構造物の調査報告,コン
クリート構造物の補修,補強,アップグレード論文報告集,No.4,pp.183-188,2004.
3) 杉山彰徳,鳥居和之,本田貴子,石川雄康:人工軽量骨材のアルカリシリカ反応性,コンク
リート工学年次論文集,Vol.27,No.1,pp.1381-1386,2005.
4) 酒井賢太,杉山彰徳,石川雄康,鳥居和之:軽量骨材のアルカリシリカ反応性とその試験法
に関する提案,コンクリート工学年次論文集,Vol.28,No.1,pp.1499-1504,2006.
5) 山戸博晃,鳥居和之,岸田年弘,吉田遼二:ガラス破砕砂の化学組成とアルカリシリカ反応
性,コンクリート工学年次論文集,Vol.27,No.1,pp.1429-1434,2005.
6) Stark, S., Wicht, B.:コンクリートの耐久性,セメント協会,pp.225-260,2003.
7) 荒井康夫:セメント材料化学,大日本図書,pp.244-249,2002.
8) 鳥居和之,笹谷輝彦,久保善司,杉谷真司:凍結防止剤の影響を受けた橋梁の ASR 損傷度の
調査,コンクリート工学年次論文集,Vol.24,No.1,pp.579-584,2002
9) 野村昌弘,西谷直人,清水隆司,鳥居和之:実構造物における骨材からのアルカリ溶出の検
証,コンクリート工学年次論文集,Vol.28,No.1,pp.791-796,2006.
10) Nixon, P.J., Sims, I.: RILEM TC106 Alkali Aggregate Reaction-Accelerated Tests Interim
Report and Summary of Survey of National Specifications: Proc. of the 9th International
Conference on Alkali-Aggregate Reaction in Concrete,pp.731-738,1992.
11) 鳥居和之,野村昌弘,南 善導:北陸地方の川砂のアルカリシリカ反応性とアルカリ溶出性
状, セメント・コンクリート論文集,No.60, pp.390-395, 2006.
12) Van Aardt, J.H.P., Visser, S.: Reaction between Rocks and The Hydroxides of Calcium,
Sodium and Potassium, Progress Report, No.1, p.14, 1982.
13) 川村満紀:アルカリ骨材反応に関する歴史と世界の動向,コンクリート工学,Vol.24, No.11,
pp.5-11.1986.
14) Berube, M.A., Duchesne, J., Dorion, J. F., Rivest, M.: Laboratory Assessment of Alkali
Contribution by Aggregates to Concrete and Application to Concrete Structures Affected
by Alkali-Silica Reactivity,Cement and Research, Vol.32, pp.1215-1227,2002.
15) Berube,M.A., Fournier, B.: Alkalis Releasable by Aggregates in Concrete-Significance
and Test Methods, Proc. of the 12th International Conference on Alkali-Aggregate
Reaction in Concrete, pp.17-30, 2004.
16) Sims, I., Nixon, P.J.: Assessment of Aggregate for Alkali-Aggregate Reactivity
Potential: RILEM International Recommendations , Marc-Andre Berube Symposium on
Alkalai-Aggregate Reactivity in Concrete, pp.71-91, 2006.
17) Shayan, A.: Alkali-Aggregate Reaction and Basalt Aggregate, Proc. of the 12th
International Conference on Alkali-Aggregate Reaction in Concrete,Vol.2,pp.1130-1135,
2004.
18) 野村昌弘,青山實伸,平 俊勝,鳥居和之:北陸地方における道路構造物の ASR による損傷
事例とその評価方法,コンクリート工学論文集,Vol.13,No.3,pp.105-114,2002.
- 88 -
第 3 章 北陸地方で産出する骨材からのアルカリ溶出性状とアルカリシリカ反応性に及ぼす影響に関する研究
19) 千野裕之,喜田大三,守屋 進,片脇清士:アルカリ液中での骨材によるアルカリ濃度減少
に関する実験検討,コンクリート工学年次講演会論文集,Vol.8,pp.69-72,1986.
20) Katayama, T., Tagami, M., Sarai, Y., Izumi,S., Hira, T. : Alkali-Aggregate Reaction
under The Influence of Deicing Salts in The Hokuriku District, Japan, Materials
Characterization, Vol.53, pp.105-122, 2004.
21) 日本コンクリート工学協会:セメント系材料・骨材研究委員会報告書,p.8,2005.
22) 土木研究センター:建設省総合技術開発プロジェクトコンクリートの耐久性向上技術の開発,
p.130,1989.
23) Andrews, J.E., Brimblecombe, P., Jickells, T.D., Liss, P.S.: 球環境化学入門,シュ
プリンガー・フェアラーク東京,pp.84-86,2003.
24) 鳥居和之,野村昌弘,本田貴子:北陸地方の反応性骨材の岩石学的特徴と骨材のアルカリシ
リカ反応性試験の適合性,土木学会論文集, No.767/V-64,pp.185-197,2004.
25) 都城秋穂,久城育夫:岩石学Ⅱ,共立全書,p.112,2003.
26) 飯山敏道:鉱物化学的見地からみたアルカリ骨材反応,アルカリ骨材反応のメカニズムに関
する研究討論会報告,日本コンクリート工学協会,pp.35-36,1989.
- 89 -
第 3 章 北陸地方で産出する骨材からのアルカリ溶出性状とアルカリシリカ反応性に及ぼす影響に関する研究
- 90 -
第 4 章 コンクリートのアルカリシリカ反応性の評価に関する研究
第4章
コンクリートのアルカリシリカ反応性の評価に関する研究
4.1 概 説
北陸地方では,長年にわたりコンクリート用骨材として川砂,川砂利が使用されてきていたが,
ASR による損傷が構造物に発生しており,早急な ASR の抑制対策の確立が必要とされている 1).一
般に,川砂,川砂利が反応性骨材である場合には,多種多様な岩種のものが混在し,反応性鉱物
の種類およびその含有量も骨材ごとに相違するのが特徴であり,このことが ASR 抑制対策をより
困難なものにしている.現在,骨材のアルカリシリカ反応性は,化学法(JIS A 1145-2001)およ
びモルタルバー法(JIS A 1146-2001)により判定することとされているが,最近の調査により川
砂,川砂利のように反応性骨材の含有量が少なく,また顕著なペシマム混合率を有するものは現
行のアルカリシリカ反応性試験法により適切に判定できないことが明らかになってきた
2,3,4)
.一
方,コンクリートの ASR 膨張性の評価は,コンクリートバー法(JCI‐AAR3(1987))によるものと
規定されているが,本試験法は試験手順が煩雑で,かつ判定までに長期間が必要であることから
実際に適用されることは少ないようである.また,コンクリートの練混ぜ時に一定量のアルカリ
を添加する方法では,反応性骨材に対して適切なアルカリ量を設定することが難しく,アルカリ
の添加によりセメントの水和反応性状やコンクリートの力学的性質が大きく変化することが問題
であると指摘されている
5)
.さらに,北陸地方では,2 種類以上の骨材が混合使用される場合や
ASR 抑制対策として混合セメント(高炉セメント B 種またはフライアッシュセメント B 種)が使
用される機会が増えてきており,セメントと反応性骨材を組み合わせた実際のコンクリートの配
合にて,コンクリート自身のアルカリシリカ反応性が評価できる手法の開発が望まれている.
近年,北陸地方では,ASR による膨張圧により内部鉄筋が破断する事象も発生している 6).現
在,ASR の対策としては,表面塗装が採用されているが,ASR 損傷度に応じて PC 鋼材巻立て工法
や鋼板巻立て工法による補強も実施されている 7).補修・補強工法の選定では,コンクリートが
どの程度膨張していたか,今後どのような速度でどの程度膨張するか(残存膨張率)の評価が重
要となる.この評価手法として,コアの促進養生試験法が提案されているが,構造物での膨張履
歴,促進養生環境および鉄筋拘束との対応関係が不明であることから,実際の構造物への適用性
が明確ではなく,定量的な評価が困難とされている 8).
本章では,北陸地方の河川流域を代表する生コンクリートプラント工場 8 箇所から川砂,川砂
利を採取し,岩石・鉱物学的特徴を調べた.また,これらの川砂,川砂利を用いて普通セメント
および高炉セメント B 種にて作製したブロックから 2 種の直径(φ55 ㎜,φ100 ㎜)にてコアを
採取してコアの促進養生試験(ASTM 法,デンマーク法)を適用し,膨張率と鉱物・岩種との関係
を検討した 10),12).さらに,コアの促進養生試験による残存膨張性の検証を行うため,ASR を促進
させた RC 試験体を 7 年間屋外に暴露し,ASR による長期の膨張挙動を把握した 9).その後,RC 試
験体の水平および鉛直方向から採取したコアを用いて 3 種類のコアの促進養生試験(JCI-DD2 法,
ASTM 法,デンマーク法)を実施し,促進養生試験結果から得られるデータの意味について検討し
た 11),13),14).また,同様なコアを使用して,コアの促進養生試験(ASTM 法)の水酸化ナトリウム
(NaOH)溶液浸せきにおいて,水酸化ナトリウム(NaOH)溶液の濃度と養生温度を種々に変化さ
せた場合のコアの膨張性状を比較した
11),13),14)
.これらの結果を踏まえて,試行的に構造物から
- 91 -
第 4 章 コンクリートのアルカリシリカ反応性の評価に関する研究
採取したコアの残存膨張性の水酸化ナトリム(NaOH)溶液浸せきによる評価の妥当性について検
証するとともに,コアの促進養生試験(ASTM 法,デンマーク法)を用いたコンクリート自身のア
ルカリシリカ反応性を評価する方法について,提案した 11),13),14).
- 92 -
第 4 章 コンクリートのアルカリシリカ反応性の評価に関する研究
4.2 実験概要
(1) 河川 産骨材を用い たブロッ クより採取し たコアの 促進養生試験 による残 存膨張性
の評価 10),12),15)
a) 試験概要
北陸地方(新潟県,長野県,富山県,福井県)を代表する河川流域から 27 種類の川砂,川砂
利を採取した.河川産骨材は多種多様な岩種(堆積岩,深成岩,火山岩,変成岩など)から構成
されているので,川砂,川砂利に含有される岩種の含有率を岩石判定の経験をもつ専門家による
目視判定に基づいて決定した.この際に,アルカリシリカ反応性の可能性がある岩種(北陸地方
の河川産骨材は火山系岩石(安山岩,流紋岩,凝灰岩など)が主要な反応性骨材であることが知
られている)については,研磨薄片の偏光顕微鏡観察,走査型電子顕微鏡観察(SEM)
,粉末 X 線
回折分析(XRD)
,示差走査熱量分析(DSC)などの鉱物・岩石学的試験を併せて実施し,骨材中の
反応性鉱物(シリカ鉱物および火山ガラス)の種類や粘土鉱物の含有の有無を調べた.また,骨
材のアルカリシリカ反応性の判定は,化学法(JIS A 1145-2001)およびモルタルバー法(JIS A
1146-2001)により実施した.一方,河川産骨材を使用したコンクリートのアルカリシリカ反応性
は,等価アルカリ量(Na2Oeq.=Na2O+0.658K2O)0.58%の普通ポルトランドセメントおよび高炉セ
メント B 種を使用したブロック(30×45×15cm)を製造し,材齡 7 日まで湿潤養生し,その後 53
日間気乾養生した後に,各ブロックからφ100mm およびφ55mm のコアを 3 本ずつ採取した.コン
クリートの配合は水セメント比を 55% ,細骨材率を 42%と一定としている.コアの促進養生試験
は ASTM 法(温度 80℃の 1N・NaOH 溶液浸せき)およびデンマーク法(温度 50℃の飽和 NaCl 溶液
浸せき)の 2 種類とし,コアに取付けたステンレスバンドの基点間の膨張量(基準長:100mm)を
コンタクトミクロンゲージにて一定期間測定し,プラントおよび配合ごとに 3 本のコアの平均値
を算出した.
b) 研究の対象
本研究の対象は,北陸地方(新潟県,長野県,富山県,福井県)を代表する河川流域から 27
種類の川砂(略号 S)
,川砂利(骨材寸法:25 mm (略号 G25)または 40 mm(略号 G40))とした(写
真-4.1 参照).川砂,川砂利は地域を代表する 8 箇所の生コンクリートプラント工場に出向いて,
工場の骨材瓶から任意に採取した.
(1) 新潟県 TU 地区産陸砂
(2)新潟県 TA 川産川砂利
写真-4.1 河川産骨材
- 93 -
第 4 章 コンクリートのアルカリシリカ反応性の評価に関する研究
c) 川砂の岩種含有率の算出
川砂の岩種含有率の算出は,第 1 章 表-1.4 に示す方法で実施した.
d) 川砂利の岩種含有率の算出
川砂利の岩種含有率の算出は,第 1 章 表-1.4 に示す方法で実施した.
e) 鉱物の同定
鉱物の同定は,アルカリシリカ反応性の可能性がある岩種(北陸地方の河川産骨材は火山岩(安
山岩,流紋岩,凝灰岩など)が主要な反応性骨材であることが知られている
1)
)について,第 1
章 表-1.4 に示す粉末 X 線回折にて実施した.
f) 骨材のアルカリシリカ反応性の判定
骨材のアルカリシリカ反応性は,第 1 章 表-1.5 に示す化学法(JIS A 1145-2001)およびモルタ
ルバー法(JIS A 1146-2001)により実施し,判定した.
g) ブロックの製造
コンクリートのアルカリシリカ反応性は,普通ポルトランドセメント(Na2Oeq.=0.58%,住友大
阪セメント社)および高炉セメント B 種(住友大阪セメント社)を使用したブロック(30×45×
15cm)を製造し,材齡 7 日まで湿潤養生し,その後 53 日間気乾養生した後に,各ブロックから直
径φ100mm およびφ55mm のコアを 3 本ずつ採取した(写真-4.2,図-4.1 参照).コンクリートの配
合を表-4.1 に示す.コンクリートの配合は水セメント比を 55% ,細骨材率を 42%と一定にした.
コンテナ RBボックス 3902A RB-23
295
コアφ100
450
コアφ55
d=151
vol=0.020m3
写真-4.2 ブロック
図-4.1 ブロックからのコア採取
表-4.1 ブロックの配合 10),12),15)
Gmax
呼び名
(mm)
セメントの
種類 *
T25
25
N,BB
T40
40
N,BB
W/C
s/a
水
セメント
(%)
(%)
(kg/m )
(kg/m )
55
42
155
280
3
3
川砂
川砂利
3
(kg/m )
S1
S2
554
221
(kg/m )
G40
G25
―
1089
363
726
* N:普通ポルトランドセメント(住友大阪セメント),BB:高炉セメントB種(住友大阪セメント)
** 化学混和剤:高性能AE減水材(ポゾリス物産)
- 94 -
化学混和剤 **
3
(kg/m 3)
0.7
第 4 章 コンクリートのアルカリシリカ反応性の評価に関する研究
h) コアの促進養生試験
コアの促進養生試験は,ブロックより採取したコアで,第 1 章 表-1.6 に示すコアの促進養生
試験(ASTM 法,デンマーク法)を行った. 3 本のコアの膨張率の平均値を算出し,プラントおよ
び配合ごとに整理した.
(2) 大型 RC 試験体より採取したコアの促進養生試験による残存膨張性の評価 11),13),14)
a) 試験概要
ASR を促進させた RC 試験体を 7 年間屋外に暴露し,ASR による長期の膨張挙動を調査した.RC
試験体はφ800×1500mm の円柱体であり,既存のコンクリート橋脚柱部を参考に配筋を決定した.
一方,鋼板巻き立て試験体(SP 略記)は,RC 試験体の一つを ASR によるひび割れ幅が 0.5mm に達
した屋外暴露 1 年で鋼板(厚さ:9mm)により巻き立てた.試験体は,金沢大学工学部内に暴露し,
残存膨張性の異方性を確認するために,コア(φ55 ㎜)を試験体の水平方向および鉛直方向に貫
通した状態で採取するとともに 3 種類のコアの促進養生試験(JCI DD2 法,ASTM 法,デンマーク
法,
)を行い,膨張率を比較検討した.
b) RC 試験体の概要
RC 試験体(φ800×1500 ㎜の円柱供試体)は,既存のコンクリート橋脚柱部を参考に軸方向鉄筋
比および帯鉄筋比をそれぞれ 0.81%および 0.50%とし,軸方向鉄筋に D22 ㎜(SD295A)および帯鉄
筋に D16 ㎜(SR295A)を使用して作製した.試験体の概要を図-4.2 に示す.コンクリートは,普
通ポルトランドセメント(等価アルカリ量:Na2Oeq.=0.68%),骨材は細骨材として非反応性の川
砂(富山県早月川産)を,粗骨材として非反応性の川砂利(富山県早月川産)と反応性の安山岩
砕石(石川県能登産,化学法(JIS A 1145-2001)の結果「無害でない」
, Sc:603mmol/l,Rc:
223mmol/l)を,ペシマム混合率の影響を考慮して 1:1 の割合で使用した.コンクリートの配合
を表-4.2 に示す.この安山岩砕石には,クリストバライトや火山ガラスとともにモンモリロナイ
写真-4.3 暴露状況
図-4.2 RC 試験体の概要 11)
表-4.2 RC 試験体のコンクリートの配合 11),14)
スランプ 空気量
(cm)
8±2
(%)
2±1
W/C
s/a
(%)
(%)
53
42
単位量(kg/m3)
水
164
セメント
308
- 95 -
川砂
784
非反応性
反応性
川砂利
安山岩砕石
562
563
NaOH
7.54
第 4 章 コンクリートのアルカリシリカ反応性の評価に関する研究
トが含有されており,構造物にて顕著な ASR 損傷が確認されている.RC 試験体は,ASR を促進す
るために材齢 1 ヶ月まで蒸気養生(最高温度:60℃)した後に,屋外暴露を実施し,作製から約
1 年後に1つの試験体は鋼板巻立て(SP 略記)を実施した.鋼板試験体は,試験体周方向に 4 分
割した鋼板(SS400,t=9 ㎜)を事前に溶接により閉合し,コンクリートアンカーを使用して試験
体に設置した.試験体表面と鋼板との隙間(4 ㎜)にはエポキシ樹脂を注入し,鋼板表面にはひず
みゲージを貼付け,全体を樹脂塗装した.鋼板試験体および無補強試験体(CC 略記)とともに,
コア採取までの 6 年間屋外暴露に供した(写真-4.3 参照)
.
c) 膨張挙動のモニタリング
RC 試験体の膨張挙動は,試験体の中心部に埋設したカールソン型ひずみ計(軸方向および半
径方向)および補強鋼板,鉄筋の表面に貼り付けたひずみゲージ(ゲージ長:5mm)により,ASR
膨張によって発生するひずみの経時変化を 7 年間にわたり計測した.また,RC 試験体の表面部(円
周方向)のひずみをコンタクトミクロンゲージ(基長:100mm)にて測定した.
d) コアの残存膨張性の評価
RC 試験体は,図-4.2 に示すように上部より 50cm および 100cm 位置で水平方向に切断し,その
中央部の試験体で水平方向と鉛直方向から貫通コア(φ55 ㎜)を採取した(写真-4.4 参照)
.コ
アの試験項目は,コアの促進養生試験(JCI-DD2 法,ASTM 法,デンマーク法)
,走査型電子顕微鏡
とエネルギー分散型 X 線分析(SEM-EDX)による ASR ゲルの化学組成分析である(第 1 章,表-1.7
参照)
.なお,コアの促進養生試験(JCI-DD2 法,ASTM 法,デンマーク法)は,第 1 章 表-1.6 に
示す方法で実施し,判定した.
(3) コアの促進養生試験(ASTM 法)における測定条件とコアの膨張率との関係 11),13),14)
a) 試験概要
前項の RC 試験体より鉛直方向から採取したコアに対し,コアの促進養生試験(ASTM 法)の養
生温度ならびに水酸化ナトリウム(NaOH)溶液の濃度を変化させ,膨張率の関係について検討し
た.また,上記の検討結果を踏まえて,構造物から採取したコアに温度 80℃の 1N・NaOH 溶液浸
せき法と温度 40℃の 0.5N・NaOH 溶液浸せき法を適用し,コンクリートの残存膨張性を評価する
際の有効性を検証した.
鉛直方向
水平方向
写真-4.4 RC 試験体からのコア採取 9)
- 96 -
第 4 章 コンクリートのアルカリシリカ反応性の評価に関する研究
b) コアの促進養生試験(ASTM 法)の膨張特性
コアの促進養生試験(ASTM 法)の膨張特性を調べるため,RC 試験体の鉛直方向から採取したコ
アに対し,養生温度を 20℃,40℃および 80℃の 3 条件,水酸化ナトリウム(NaOH)溶液の濃度を
0.25N,0.5N および1N の 3 条件を組み合わせ,合計 9 条件でコアの膨張率を比較検討した.
c) ASTM 改良法による構造物からのコアによる残存膨張性の評価
北陸地方の道路構造物(建設から 17~31 年経過した橋台または橋脚(写真-4.5 および写真
-4.6)
,川砂利中の安山岩および流紋岩が反応性骨材であり,それらの含有率は約 15~30%で河
川水系に相違する)からコア(φ55 ㎜)を採取し,温度 80℃の1N・NaOH 溶液浸せき法および温
度 40℃の 0.5N・NaOH 溶液浸せき法の 2 種類の養生条件で残存膨張性を比較検討した.調査構造
物の種類と骨材の岩種構成を表-4.3 に示す.岩種構成はコア表面の粗骨材を目視にて識別したも
のである.
写真-4.5 橋台のひび割れ状況 11),14)
写真-4.6 橋台のひび割れ状況 11),14)
(ASR 劣化度Ⅲ)
(ASR 劣化度Ⅳ)
表-4.3 対象構造物 11),13),14)
粗骨材の岩種構成順位
NO.1
NO.2
NO.3
橋名
粗骨材の水系
橋台/橋脚
供用
SYO高架橋
SHIM橋
KA高架橋
TSU高架橋
SIB橋
SAS橋
KAT橋
UK橋
IBA橋
YOS橋
KET橋
福井県HIN川
福井県KU川
福井県TE川
富山県SYO川
富山県JY川
富山県KU川
新潟県HI川
新潟県U川
新潟県SI川
新潟県SI川
新潟県U川
橋台
橋台
橋台
橋台
橋台
橋脚
橋脚
橋脚
橋脚
橋台
橋台
1977
1975
1978
1974
1974
1988
1988
1982
1982
1981
1985
砂岩
花崗岩
砂岩
流紋岩
流紋岩
花崗岩類
砂岩
流紋岩質凝灰岩
流紋岩質凝灰岩
流紋岩質凝灰岩
花崗岩類
損傷ランク
Ⅰ:ASRのひび割れなし
Ⅱ:ASRのひび割れが構造物のごく一部に発生(1㎡以下)
Ⅲ:ASRひび割れが認められ、その範囲が1㎡を超えている
Ⅳ:Ⅲの状況でコアが折れ、コア採取に苦慮したもの
- 97 -
粘版岩
砂岩
花崗岩
花崗岩
花崗岩
蛇紋岩類
蛇紋岩類
流紋岩
安山岩
砂岩
砂岩
流紋岩
安山岩
流紋岩
安山岩
砂岩
石灰岩
安山岩
安山岩
流紋岩
流紋岩
安山岩
ASR損傷
ランク
Ⅱ
Ⅲ
Ⅱ
Ⅰ
Ⅳ
Ⅲ
Ⅱ
Ⅳ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅰ
第 4 章 コンクリートのアルカリシリカ反応性の評価に関する研究
4.3 河川産骨材を用いたブロックより採取したコアの促進養生試験による残存膨張性
の評価 10),12),15)
(1) 岩種の含有率
河川産骨材(川砂,川砂利)のアルカリシリカ反応性および岩種の含有率を表-4.4 に示す.
岩種の判定では,川砂を 38 種類のもの,粗骨材を 28 種類のものにそれぞれ区別した.岩種の中
では,北陸地方での ASR 損傷との関連 1)が指摘されている,火山系岩石(安山岩,流紋岩,凝灰
岩)と堆積岩(頁岩,チャート)に着目した.これらの岩種の造岩鉱物は斜長石が主要なもので
あり,表-4.4 に示す新潟県 A 川,富山県 SYO 川,富山県 JI 川,福井県 KU 川の水系の川砂,川砂
利を使用した構造物では実際に ASR による劣化が報告されている(写真-4.7 参照).このように,
北陸地方では,骨材のアルカリシリカ反応性が「無害」と「無害でない」と判定される骨材が地
域ごとに混合している現状があった.なお,調査したプラントの 8 箇所の中で「無害」と判定さ
れた骨材のみを使用しているものは,プラント AYA(新潟)および SA(富山)の 2 箇所であった.
ブロックごとに使用した河川産骨材の岩種含有率を図-4.3 に示す.北陸地方の代表的な反応
性骨材である安山岩の含有率に着目すると,その値は 0.1~9.2%であり,前述した反応性をもつ
岩種全体の含有率は 8.6~64.6%となった.河川水系ごとに反応性をもつ岩種の含有率が大きく
異なっており,調査したプラントの 8 箇所の中で長野県 NAGA,長野県 JYO,富山県 NAKA,福井県 KYO
の 4 箇所は反応性の岩種の占める比率が 50%以上になった.
写真-4.7 橋台に発生した ASR(神通川水系)10),12)
100%
10000%
90%
80%
8000%
含有率(%)
70%
60%
6000%
50%
40%
4000%
30%
20%
2000%
10%
0%
0%
新
新
潟
T2
反応性骨材計
変成岩
潟
県
KU
RI
(
新
新
潟
県
AY
A(
県
5)
T2
長
長
潟
県
野
県
長
野
県
富
野
県
富
山
県
富
山
県
福
富
山
県
山
県
井
県
JY
JY
NA
NA
KY
YA
NA
YA
SA
SA
O(
O(
KA
KA
O(
SU
GA
SU
(
(
(
(
(
(
(
T2
T4
T2
T4
T2
T
T
T
T
T
5
0
25
40
5)
5)
0)
5)
40
25
25
)
)
)
)
)
)
)
安山岩*
頁岩*
流紋岩*
チャート*
凝灰岩*
その他の堆積岩
図-4.3 ブロックごとの岩種含有率
- 98 -
その他の火山岩
造岩鉱物
10),12)
G25
S1
S2
G25
S1
S2
G40
G25
S1
S2
G25
S
G40
G25
S1
G40
G25
S1
S2
G40
G25-1
G25-2
S1
S2
G25
S1
S2
KURI
(新潟県)
- 99 -
*:反応性岩種
KYO
(福井県)
SA
(富山県)
NAKA
(富山県)
NAGA
(長野県)
JYO
(長野県)
YASU
(新潟県)
AYA
(新潟県)
骨材
種別
プラント名
(県名)
A川
A川
TU
TA川
TA川
TU
A川
A川
A川
TU
CH川
CH川
NI川
NI川
NI川
SYO川
SYO川
SYO川
SYO川
JI川
JI川
HA川
JI川
HA川
KU川
KU川
KU川
河川水系
化学法の判定結果 モルタルバー法の
判定結果
JIS A 1145-2001
*
JIS A 1146-2001 安山岩
2.5%
無害でない
無害でない
1.5%
無害でない
無害でない
0.8%
無害
無害
0.0%
無害
無害
0.0%
無害
無害
0.8%
無害
無害
1.0%
無害でない
無害でない
0.3%
無害でない
無害でない
1.5%
無害
無害でない
0.4%
無害
無害
0.5%
無害でない
無害でない
13.6%
無害
無害でない
11.0%
無害でない
無害でない
3.5%
無害でない
無害でない
13.8%
無害でない
無害でない
2.2%
無害
無害
4.8%
無害
無害
2.3%
無害でない
無害でない
1.8%
無害
無害
7.1%
無害
無害
4.4%
無害
無害
0.0%
無害
無害
2.0%
無害
無害
0.3%
無害
無害
10.3%
無害でない
無害でない
11.1%
無害
無害でない
0.2%
無害
無害
流紋岩 *
4.8%
14.0%
2.4%
0.8%
0.4%
2.4%
4.6%
13.3%
14.0%
3.9%
6.9%
55.6%
3.3%
7.9%
5.1%
14.1%
26.1%
21.2%
38.4%
6.8%
9.7%
5.4%
18.1%
0.8%
32.2%
33.5%
22.0%
0.2%
5.5%
3.7%
7.7%
25.8%
3.7%
0.5%
2.9%
5.5%
4.6%
0.0%
0.8%
0.0%
0.3%
5.5%
1.3%
0.0%
5.1%
0.8%
16.7%
17.6%
2.2%
2.9%
2.8%
1.1%
2.6%
2.9%
変成岩
堆積岩
造岩鉱物
頁岩 * チャート * その他
10.8%
5.2%
38.5%
―
2.2%
0.2%
5.8%
40.1%
0.0%
0.0%
4.9%
70.3%
2.4%
9.3%
74.1%
―
0.0%
0.0%
18.9%
21.6%
0.0%
0.0%
4.9%
70.3%
5.6%
2.2%
53.2%
―
4.9%
3.9%
48.7%
―
2.2%
0.2%
5.8%
40.1%
0.1%
0.0%
4.0%
67.2%
3.7%
7.9%
57.9%
―
0.0%
0.0%
0.0%
10.2%
5.4%
9.6%
25.2%
―
9.8%
10.2%
43.8%
―
9.8%
8.3%
2.7%
21.9%
0.0%
0.0%
4.1%
―
0.0%
0.0%
6.3%
―
0.0%
0.0%
0.5%
20.7%
0.0%
0.0%
1.0%
35.9%
0.0%
0.0%
21.5%
―
0.0%
0.9%
22.0%
―
0.0%
0.0%
6.5%
―
1.0%
0.8%
1.8%
42.9%
0.0%
0.0%
0.0%
61.0%
0.0%
0.6%
20.7%
―
0.0%
0.1%
5.9%
21.8%
0.2%
0.0%
0.6%
59.7%
岩種含有率
凝灰岩 * その他
14.5%
23.5%
4.5%
26.1%
1.8%
16.1%
0.4%
5.3%
1.1%
32.2%
1.8%
16.1%
14.3%
18.7%
8.4%
17.5%
4.5%
26.1%
0.7%
19.0%
16.2%
6.9%
1.0%
18.7%
39.7%
5.8%
14.9%
9.5%
10.7%
22.2%
61.9%
16.5%
52.2%
10.6%
9.2%
41.0%
13.0%
9.1%
35.7%
12.2%
14.1%
31.3%
0.5%
85.4%
4.7%
25.7%
0.2%
34.9%
12.1%
23.0%
7.3%
17.5%
3.6%
10.8%
火山系岩石
表-4.4 河川産骨材のアルカリシリカ反応性および岩種の含有率 10),12)
第 4 章 コンクリートのアルカリシリカ反応性の評価に関する研究
第 4 章 コンクリートのアルカリシリカ反応性の評価に関する研究
(2) 反応性鉱物の特徴
粉末 X 線回折による反応性骨材中の結晶性鉱物の同定結果を表-4.5 に示す.安山岩にはクリ
ストバライト,トリジマイトなどのシリカ鉱物と火山ガラスが主要な反応性鉱物として含有され
ているが,火山ガラスの粉末 X 線回折による判定は困難であるので,表-4.5 では火山ガラスの有
無については言及していない.川砂では濁川水系の安山岩にのみトリジマイトが存在し,川砂利
では濁川水系の凝灰岩とすべての安山岩にクリストバライトが存在した.反応性鉱物としてクリ
ストバライトやトリジマイトを含有する安山岩は顕著なペシマム混合率をもつことが知られてい
る 16).また,全岩種に石英が同定された.隠微晶質または歪んだ結晶格子をもつ石英はアルカリ
シリカ反応性を有することが知られているが,北陸地方ではこれまで石英質の骨材(チャート,
硬質砂岩)による ASR の事例は確認されていない.このように,北陸地方の河川産骨材には多種
多様の岩種のものが混在し,かつ反応性鉱物の種類およびその含有率も大きく相違していた.こ
れらのことが,北陸地方における河川産骨材のアルカリシリカ反応性の正確な判定ならびに ASR
の抑制対策の確立をより困難なものにしていると考えられた.
(3) コアの促進養生試験の結果
北陸地方の道路構造物(橋脚,橋台,カルバートボックスなど)を対象とした調査では,ASR
損傷の有無を判定する際の基準値として,コアの促進養生試験(ASTM 法)の場合には試験日数 21
日にて膨張率が 0.1%以上,コアの促進養生試験(デンマーク法)の場合には試験日数 91 日にて
膨張率が 0.1%以上,を採用してきた経緯がある 1).ブロックから採取したコアに対し実施した,
表-4.5 主な反応性岩種の鉱物の同定結果 10),12)
種別
水系
岩種
凝灰岩
流紋岩
安山岩
新潟県TA川 チャート
流紋岩
長野県CH川
安山岩
流紋岩
長野県NI川 凝灰岩
川砂利
安山岩
流紋岩
富山県SYO川
安山岩
流紋岩
富山県JI川
安山岩
流紋岩
富山県HA川
安山岩
福井県KU川 安山岩
新潟県A川
流紋岩
新潟県TA川 泥岩
泥岩
新潟県TU地区
流紋岩
長野県CH川 流紋岩
川砂
長野県NI川 安山岩
富山県SYO川 流紋岩
富山県JI川 流紋岩
富山県HA川 花崗岩
福井県KU川 流紋岩
新潟県A川
含有鉱物
長石 石英 クリストバライト トリジマイト 雲母類 緑泥石 角閃石 輝石
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
- 100 -
第 4 章 コンクリートのアルカリシリカ反応性の評価に関する研究
0.30
NAKA(T25)
1N NaOH 浸せき
1N NaOH 浸せき
0.25
NAGA(T25)
0.25
0.20
JYO(T25), KYO(T40)
SA(T25), JYO(T40)
NAKA(T40)
0.20
0.15
KURI(T25)
KYO(T25), YASU(T40)
YASU(T25)
AYA(T25)
0.10
膨張率(%)
膨張率 (%)
0.30
0.15
0.05
0.05
0.00
0.00
0
7
14
21
0
28
試験日数(日)
21
14
7
試験日数(日)
NAGA(T25)
JYO(T40)
NAKA(T40)
NAKA(T25), KYO(T25)
AYA(T25), KURI(T25)
YASU(T25), KYO(T40)
28 SA(T25), YASU(T40)
図-4.5 ASTM 法(φ100 ㎜)10),12)
飽和NaCl浸せき
膨張率(%)
膨張率(%)
図-4.4 ASTM 法(φ55 ㎜)10),12)
1.2
1.1
1.0
0.9
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0.0
JYO(T25)
0.10
JYO(T40)
JYO(T25)
YASU(T40), YASU(T25)
NAKA(T40), NAKA(T25)
SA(T40), SA(T25)
1.2
1.1
1.0
0.9
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0.0
0 7 14 21 28 35 42 49 56 63 70 77 84 91
飽和NaCl浸せき
JYO(T40)
JYO(T25)
YASU(T25)
YASU(T40)
SA(T40), NAKA(T25)
NAKA(T40), SA(T25)
0 7 14 21 28 35 42 49 56 63 70 77 84 91
試験日数(日)
試験日数(日)
図-4.6 デンマーク法(φ55 ㎜)10),12)
図-4.7 デンマーク法(φ100 ㎜)10),12)
コアの促進養生試験(ASTM 法,デンマーク法)による結果を図-4.4~4.7 に示す.コアの促進養
生試験(ASTM 法)は試験日数とともにコアの膨脹率が直線的に増加しており,早期に判定できる
ことが有利であった.それに対して,コアの促進養生試験(デンマーク法)では,塩化ナトリウ
ム(NaCl)溶液の浸透とその後のコンクリートの水和生成物(アルミネート水和物および水酸化
カルシウム)との反応で ASR が進行する雰囲気が形成されるのに期間を要するので,試験日数 28
日以後にコアの膨張が開始されたが,その後の膨張の増加量はコアの促進養生試験(ASTM 法)の
ものを上回るものもあった.また,同一の配合でコア径を太くすることによりコアの促進養生試
験(ASTM 法)では膨張率が小さくなるのに対し,コアの促進養生試験(デンマーク法)では大き
くなる傾向を示すものがあった.
(4) 骨材の岩種含有率とコンクリートの膨張率との関係
前述したように,川砂,川砂利の岩種の中ではとくに安山岩が重要であるので,その含有率と
促進養生試験におけるコアの膨張率との関係を検討した.コアの判定基準値の目安となるコアの
促進養生試験(ASTM 法(試験日数 21 日)
)およびコアの促進養生試験(デンマーク法(試験日数
91 日)
)におけるコアの膨張率と安山岩の含有率の関係を図-4.8 および図-4.9 に示す.コアの促
進養生試験(ASTM 法)では,膨脹率が最大になる安山岩の含有率(ペシマム混合率)が存在し,
その値は粗骨材の寸法とコア径により多少相違した.それに対して,コアの促進養生試験(デン
マーク法)では,粗骨材の寸法とコア径には関係なく,安山岩の含有率が 3%以上になるとコア
- 101 -
第 4 章 コンクリートのアルカリシリカ反応性の評価に関する研究
1.80
φ55-T25
φ100-T25
φ55-T40
φ100-T40
膨張率 (%)
0.25
0.20
φ55-T25
φ55-T25
φ100-T25
φ55-T40
φ100-T40
1.60
1.40
1.20
膨張率(%)
0.30
φ55-T40
0.15
0.10
φ100-T25
φ100-T25
1.00
0.80
0.60
φ55-T25
0.40
0.05
φ55-T40
0.20
φ100-T40
φ100-T40
0.00
0.00
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
0
1
2
図-4.8 ASTM 法における膨張率(試験日数 21 日)
と安山岩含有率との関係
3
4
5
6
7
8
9
10
安山岩の含有率(%)
安山岩の含有率(%)
10),12)
図-4.9
デンマーク法における膨張率
(試験日数 91 日)と安山岩含有
率との関係 10),12)
表-4.6 コアの膨張率と川砂,川砂利中の反応性岩種の含有率との関係 10),15)
(相関係数 70%以上のもの)
最大
コア径
粗骨材寸法
(㎜)
25
40
(
ASTM 法
デンマーク法
55
反応性岩種の合計(71%)
安山岩(88%),頁岩(98%),チャート(99%)
100
チャート(82%)
安山岩(77%),頁岩(99%),チャート(99%)
55
安山岩(73%)
安山岩(87%),頁岩(99%),チャート(97%)
安山岩(91%),チャート(77%),
安山岩(85%),頁岩(98%),チャート(99%)
100
反応性岩種の合計(77%)
)内は相関係数
の膨張率が安山岩の含有率に比例して増加し,安山岩の含有率が 10%以下の範囲ではペシマム混
合率は存在しなかった.両試験法の膨張挙動の相違は,溶液の浸透状況,コアの内部での化学反
応過程,生成したゲルの化学組成などによるものと推察された 17).これまでの調査では,北陸地
方の川砂,川砂利による ASR は安山岩の含有率が大きくなるほど損傷の程度が顕著になることが
確認されており,コアの促進養生試験(ASTM 法)よりもコアの促進養生試験(デンマーク法)で
の結果と一致していた 1).川砂,川砂利中のすべての岩種の含有率(質量)とコアの促進養生試
験(ASTM 法(試験日数日数 21 日)
)
,コアの促進養生試験(デンマーク法(試験日数 91 日)
)に
よるコアの膨張率との相関係数を直線回帰分析により検討した.岩種の含有率の中でコアの膨張
率の増加に寄与しており,その相関係数が 70%以上となる岩種のものを表-4.6 に列挙した.コア
の促進養生試験(ASTM 法)とコアの促進養生試験(デンマーク法)とでは相関性がある岩種が大
きく相違した.また,コアの促進養生試験(ASTM 法)では安山岩の含有率にペシマム混合率が存
在することから,コアの促進養生試験(デンマーク法)と比較して安山岩の相関性が相対的に小
さくなった.しかし,コアの促進養生試験(ASTM 法)に関しても,川砂,川砂利中の反応性岩種
の含有率(安山岩,流紋岩,凝灰岩,頁岩およびチャートの合計量)との間には,骨材の最大寸
法 25 ㎜の場合はコア径がφ55 ㎜にて,骨材の最大寸法 40 ㎜の場合はコア径がφ100 ㎜にて相関
性が認められた.したがって,コンクリートに使用される骨材の最大寸法に基づきコア径(φ55
- 102 -
第 4 章 コンクリートのアルカリシリカ反応性の評価に関する研究
㎜または 100 ㎜)を決めることで,コアの促進養生試験(ASTM 法)によるコンクリートのアルカ
リシリカ反応性の早期判定(試験日数 21 日)が可能であると考えられた.一方,コアの促進養生
試験(デンマーク法)によるコンクリートのアルカリシリカ反応性の判定は,コアの促進養生試
験(ASTM 法)よりも期間(試験日数 91 日)を要することが不利であるが,コアの膨張率と安山
岩,
頁岩およびチャートの含有率との間には高い相関性が認められた.このことより判断すると,
安山岩が主要な反応性骨材である北陸地方の川砂,川砂利についてはコアの促進養生試験(デン
マーク法)によりコンクリートのアルカリシリカ反応性をより正確に判定できるものと考えられ
た.コアの促進養生試験(ASTM 法)における試験日数 21 日での水酸化ナトリウム(NaOH)溶液
の浸透状況は不明であるが,コアの促進養生試験(デンマーク法)の試験日数 91 日ではコア径や
骨材の最大寸法に関わらずコアの中心部まで塩化ナトリウム(NaCl)溶液が完全に浸透している
のが 0.1N の硝酸銀溶液の噴霧試験により確認されている.このことから,コアの促進養生試験
(ASTM 法)とコアの促進養生試験(デンマーク法)の両試験法の特徴を理解して ASR を判定する
ことにより,川砂,川砂利のように ASR の判定が困難な骨材を使用したコンクリートの ASR の可
能性をより正確に評価できるものと考えられた.
(5) 高炉セメント B 種を用いたコンクリートの ASR 抑制効果 15)
普通ポルトランドセメントと高炉セメント B 種を使用したコンクリートの膨張率の比較を図
-4.10 に示す.普通ポルトランドセメントを用いたコンクリートの膨張率はコアの促進養生試験
(ASTM 法(試験日数 21 日)
)で最大 0.25 %,コアの促進養生試験(デンマーク法(試験日数 91
日)
)で最大 1.05 %となった.それに対して,高炉セメント B 種を使用したコンクリートの膨張
率は川砂および川砂利の組合せに関係なくすべて 0.1%以下になった.このことは,普通ポルト
ランドセメントを用いたコンクリートでは外部から十分なアルカリが供給される環境下で ASR が
高炉セメントB種の膨張率(%)
0.20
ASTM法
デンマーク法
0.15
0.10
0.05
0.00
-0.05
0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0 1.1 1.2
普通ポルトランドセメントの膨張率(%)
図-4.10 高炉セメント B 種と普通ポルトランドセメントを使用したコンクリートの膨張率の
比較 15)
- 103 -
第 4 章 コンクリートのアルカリシリカ反応性の評価に関する研究
発生する可能性が大きいが,同一の配合でもセメントの種別を高炉セメント B 種に変更すること
により,ASR を効果的に抑制できることを示していた.コアの促進養生試験(ASTM 法,デンマー
ク法)により,コンクリートにおける混合セメントの ASR 抑制効果も評価できるものと考えられ
た 18).
- 104 -
第 4 章 コンクリートのアルカリシリカ反応性の評価に関する研究
4.4 大型 RC 試験体より採取したコアの促進養生試験による残存膨張性の評価 11),13),14)
(1) 屋外暴露における RC 試験体の膨張挙動
RC 試験体の内部と表面部での膨張率の経時変化を図-4.11 に示す.無補強試験体(CC)では,
表面(円周方向)と内部(水平方向)の膨張挙動は良く一致しており,いずれも暴露期間 7 年で
0.8%程度の大きな膨張率になった.また,RC 試験体の軸方向および帯鉄筋の鉄筋比の相違により,
水平方向の膨張率は鉛直方向のものの 2~3 倍になり,暴露期間 7 年では膨張がほぼ収束する傾向
にあった.一方,鋼板巻立て試験体(SP)では,鋼板による 3 次元的な拘束効果により,水平お
よび鉛直方向の膨張率に相違が認められず,いずれも 0.3%程度の小さな膨張率になった 7),9).こ
のような膨張履歴を反映し,鋼板巻立て試験体(SP)では鋼板による拘束解放と同時に 0.12%の膨
張が新たに発生した.これらの結果より,無補強試験体(CC)では ASR 膨張がほぼ収束しているの
に対して,鋼板巻立て試験体(SP)では膨張余力が十分にあると判断された.
1.0
CC
切段
0.9
暴露
0.8
コア採取
水平方向(試験体内部中央)
0.6
水平方向(試験体表面)
0.5
0.4
0.3
鉛直方向(試験体内部中央)
0.2
0.1
0.0
00
1
365
2
730
3
4
5
6
7
8
9 3650
1095
1460
1825
2190
2555
2920
3285
暴露期間(年)
1.0
SP
0.9
切段
0.8
暴露
0.7
膨張率(%)
膨張率(%)
0.7
コア採取
鋼板巻立
0.6
0.5
鉛直方向(試験体内部中央)
0.4
水平方向(試験体内部中央)
0.3
0.2
0.1
水平方向(試験体表面)
0.0
0
365
1
730
2
1095
1460
1825
2190
2555
2920
3285
3
4
5
6
7
8
9 3650
暴露期間(年)
図-4.11 試験体の膨張挙動 11),14)
- 105 -
第 4 章 コンクリートのアルカリシリカ反応性の評価に関する研究
(2) RC 試験体から採取したコアの残存膨張性の評価
a) コアの促進養生試験(JCI-DD2 法)によるコンクリートの膨張率の評価
RC 試験体から鉛直方向および水平方向から採取したコアにて実施した,コアの促進養生試験
(JCI‐DD2 法)の結果を図-4.12 に示す.無補強試験体(CC)では,鉛直方向から採取したコア
に比較して,水平方向のコアは試験期間中の膨張率がほぼゼロであり,試験体の膨張履歴より推
測された,ASR 膨張が収束しているという結果と一致した.一方,鉛直方向からのコアの試験日
数 91 日での膨張率は 0.04%であり,
「残存膨張性なし」と判定された.
鋼板巻立て試験体(SP)では,水平方向から採取したコアは試験日数とともに膨張率が直線的
に増大しており,試験日数 91 日での膨張率は 0.2%となった.また,鉛直方向のコアの最終膨張
率は無補強試験体(CC)と同じ 0.04%になり,
「残存膨張性なし」と判断された.鋼板巻立て試験体
(SP)では,鋼板による水平方向の拘束があったことから,鉛直方向に比較して水平方向における
残存膨張性が大きい結果となった.これらの結果は,コアの促進養生試験(JCI-DD2 法)が試験
体の膨張履歴の傾向を反映しているものと判断された.
0.40
0.40
水平方向
0.30
0.30
0.25
0.25
0.20
0.15
0.10
鉛直方向
0.20
0.15
0.10
0.05
0.05
0.00
0.00
-0.05
-0.05
0
0
7 14 21 28 35 42 49 56 63 70 77 84 91
7
14 21 28 35 42 49 56 63 70 77 84 91
試験日数(日)
試験日数(日)
図-4.12 コアの促進養生試験(JCI-DD2 法)の結果
11),13),14)
0.20
0.20
ASTM法(鉛直)
デンマーク法(鉛直)
デンマーク法(水平)
0.15
ASTM法(鉛直)
デンマーク法(鉛直)
デンマーク法(水平)
CC
0.15
0.10
膨張率(%)
膨張率(%)
SP
水平方向
0.35
鉛直方向
膨張率(%)
膨張率(%)
0.35
CC
0.05
SP
0.10
0.05
0.00
0.00
-0.05
-0.05
0
7
14 21 28 35 42 49 56 63 70 77 84 91
試験日数(日)
0
7
14 21 28 35 42 49 56 63 70 77 84 91
試験日数(日)
図-4.13 コアの促進養生試験(ASTM 法,デンマーク法)の結果
- 106 -
第 4 章 コンクリートのアルカリシリカ反応性の評価に関する研究
b) コアの促進養生試験(ASTM 法,デンマーク法)によるコンクリートの膨張率の評価
コアの促進養生試験(ASTM 法,デンマーク法)に試験結果を図 4.13 に示す.試験体内部には
ひび割れが多数発生しており,水平方向のコアは鉛直方向に比べ採取することが難しかったため,
水平方向におけるコアの促進養生試験(ASTM 法)のコアは採取できなかった.無補強試験体(CC)
のコアの促進養生試験(デンマーク法)は,鉛直方向から採取したコアと比較して,水平方向の
コアは試験期間中の膨張率がほぼゼロであり,RC 試験体の膨張履歴より推測された,ASR 膨張の
収束とコアの促進養生試験(JCI-DD2 法)の結果と一致した.一方,鉛直方向からのコアの促進
養生試験(デンマーク法)の試験日数 91 日での膨張率は 0.07%,コアの促進養生試験(ASTM 法)
のコアの試験日数 21 日での膨張率は 0.08%と「残存膨張性なし」と判定された.
鋼板巻立て試験体(SP)のコアの促進養生試験(デンマーク法)は,水平および鉛直方向から
採取したコアは試験日数の経過とともに膨張率が増大し,鉛直方向の膨張率は水平方向の膨張率
を上回り,コアの促進養生試験(JCI-DD2 法)と同様な傾向を示すものの試験日数 91 日での膨張
率は 0.1%を超え,
「残存膨張性あり」と判断された.一方,コアの促進養生試験(ASTM 法)は,
膨張率が直線的に増加するものの試験日数 21 日での膨張率は 0.07%と「残存膨張性なし」と判定
された.これらの結果から,コアの促進養生試験(デンマーク法)およびコアの促進養生試験(ASTM
法)ともに試験体の膨張履歴の傾向を反映しているものの判定基準値については,今後データを
蓄積し,検討することが必要と考えられた.また「建設省総合技術開発プロジェクト・コンクリ
ートの耐久性向上技術の開発(平成元年 5 月)」
によると,
構造物から採取したコアは応力解放後,
ただちに基調を測定し,解放膨張量および促進膨張量を計測することとされているが,解放膨張
量のもつ意味合いは不明確である.このため,本試験では,作業の単純化からもコアを乾燥しな
いように採取直後にビニールで密封し,温度 20℃の恒温室内にて初期値を測った後,直ちに促進
養生に供することでコアの残存膨張性の傾向を把握できた 8).
- 107 -
第 4 章 コンクリートのアルカリシリカ反応性の評価に関する研究
4.5 コアの促進養生試験(ASTM 法)における測定条件とコアの膨張率との関係 11),13),14)
(1) コアの促進養生試験(ASTM 法)によるコアの膨張特性
RC 試験体より採取したコアにて,養生条件を変化させたコアの促進養生試験(ASTM 法)の結
果を図-4.14 に示す.促進モルタルバー法(ASTM C 1260-1994)に準拠した本試験方法は,コア
の膨張が促進され,残存膨張性の評価が短期間で可能という利点がある.その一方で,温度 80℃
の1N・NaOH 溶液を使用することによる測定時の安全性の確保とともに,実環境ではありえない
温度や強アルカリ環境下での結果であることが問題とされる.このため,オーストラリア 19)やカ
ナダ 20)では温度 40~38℃の1N・NaOH 溶液にコアを浸せきする方法が提案されている.図-4.14
に示すように,温度 80℃の1N・NaOH 溶液の条件では,無補強試験体(CC)および鋼板巻立て試
験体(SP)ともに試験日数とともにコアの膨張率が増大しており,試験日数 91 日ではコアの促進
養生試験(JCI-DD2 法)と比較してかなり大きな膨張率となった.
コアの試験日数 21 日および 91 日における膨張率と水酸化ナトリウム(NaOH)溶液の温度およ
び濃度との関係を図-4.15 に示す.コアの膨張率は水酸化ナトリウム(NaOH)溶液の温度の上昇
ともに増大しており,ASR が養生温度により促進されることを考慮すると,両者の関係はアウレ
ニウス式に依存するものと考えられた.また,コアの膨張率に及ぼす水酸化ナトリウム(NaOH)
溶液の濃度の影響に関しては,ASR が進行する濃度のしきい値が存在するようである.すなわち,
水酸化ナトリウム(NaOH)溶液の濃度が 1N および 0.5N では養生温度とともにコアの膨張率は増
加しているが,水酸化ナトリウム(NaOH)溶液の濃度が 0.25N では養生温度に伴うコアの膨張率
の増加が小さくなっていた.安山岩系骨材にて ASR が発生するアルカリ濃度の限界値に関して,
鍵本らは細孔溶液の搾り出し試験の結果から 0.25N を提案している 21).本試験の結果は鍵本らが
提案している限界値とも矛盾していない.
0.40
膨張率 (%)
0.30
80-1N
40-1N
20-1N
CC
80-0.5N
40-0.5N
20-0.5N
CC
CC
80-0.25N
40-0.25N
20-0.25N
0.20
0.10
0.00
0.40
膨張率(%)
0.30
80-1N
40-1N
20-1N
SP
80-0.5N
40-0.5N
20-0.5N
SP
80-0.25N
40-0.25N
20-0.25N
SP
0.20
0.10
0.00
0 7 14 21 28 35 42 49 56 63 70 77 84 91 0 7 14 21 28 35 42 49 56 63 70 77 84 91 0 7 14 21 28 35 42 49 56 63 70 77 84 91
試験日数(日)
試験日数(日)
試験日数(日)
図-4.14 コアの促進養生試験(ASTM 法)の試験結果(試験日数 91 日まで)11),12),14)
- 108 -
第 4 章 コンクリートのアルカリシリカ反応性の評価に関する研究
0.30
0.25
1N・NaOH 浸せき
0.5N・NaOH 浸せき
□21日
■91日
□21日
■91日
0.25N・NaOH 浸せき
□21日
■91日
膨張率(%)
0.20
0.15
0.10
0.05
0.00
40℃
20℃
80℃
20℃
40℃
80℃
20℃
40℃
80℃
温度
図-4.15 試験日数 21 日および 91 日における膨張率と NaOH 溶液の温度および濃度
との関係 11),12),14)
以上の結果より,養生温度が 80℃ではコアの膨張率は水酸化ナトリウム(NaOH)溶液の濃度
とともに増大するが,養生温度が 20℃および 40℃では水酸化ナトリウム(NaOH)溶液の濃度の影
響が小さくなることが判明した.とくに,養生温度 40℃の水酸化ナトリウム(NaOH)溶液濃度 0.5N
の条件でもコアの膨張傾向が明確に確認できることから,養生条件を実環境にて想定される温度
および濃度の条件に緩和することが妥当であると判断された.
(2) アルカリシリカゲルの化学組成の特徴
コアの促進養生試験後に,安山岩粒子の周囲に生成した ASR ゲルを SEM-EDX により分析した結
果を写真-4.8 に示す.コアの促進養生試験(JCI-DD2 法)の試料からは骨材の周囲に生成した ASR
ゲルを比較的容易に発見できた.それに対して,コアの促進養生試験(ASTM 法)終了後の試料で
は,ASR ゲルの識別が困難であり,ASR ゲルの分解および流動化が生じているものと推察された.
また,この現象は,酢酸ウラニル蛍光法においても同様でありコアの促進養生試験(JCI-DD2 法)
ではコアの促進養生試験(ASTM 法)に比較して明瞭な発光が確認された.
化学組成
SiO 2:56 ~ 62 % CaO:4 ~ 6 %
Na 2O:29 ~ 35 % K 2O:0 ~ 1 %
JCI-DD2法 (CC)
化学組成
SiO 2:52 ~ 65 % CaO:0 ~ 1 %
Na 2O:30 ~ 40 % K 2O:0 ~ 1 %
化学組成
SiO 2:43 ~ 57 % CaO:5 ~ 18 %
Na 2O:20 ~ 41 % K 2O:0 ~ 1 %
JCI-DD2法 (SP)
ASTM法 (CC)
写真-4.8 SEM-EDX による ASR ゲルの形態と化学組成 11)
- 109 -
第 4 章 コンクリートのアルカリシリカ反応性の評価に関する研究
SiO2
△JCI-DD2(CC)
○JCI-DD2(SP)
図-4.16 ASR ゲルの SEM-EDX
■ASTMの結果
C1260(CC)
0.75
0.25
0.00
1.00
0.50
0.50
0.25
0.75
1.00
0.00
CaO
図-4.16
0.25
0.50
0.75
0.00
1.00
Na2O+K2O
ASR ゲルの化学組成の比較 11),14)
ASR ゲルの化学組成(カルシウム(CaO)
,シリカ(SiO2)
,ナトリウム(Na2O)
,カリウム(K2O)
)
の分析結果を図-4.16 に示す.試験体作製時,水酸化ナトリウム(NaOH)が添加されていること
から,カルシウム(CaO)に対するアルカリ(Na2O+K2O)比は全体的に小さくなっていた.また,
コアの促進養生試験(ASTM 法)はコアの促進養生試験(JCI-DD2 法)に比較して,カルシウム(CaO)
が多く,シリカ(SiO2)が少ない ASR ゲルの化学組成であった.コアの促進養生試験(JCI-DD2
法)では通常の ASR ゲルの化学組成であるのに対して,コアの促進養生試験(ASTM 法)では ASR
ゲルの流動化によりセメント水和物中のカルシウム(CaO)が ASR ゲルに取り込まれたものと推察
された 22).このことより,コアの促進養生試験(ASTM 法)の養生条件が厳しすぎるため,構造物
の環境条件と対応するように養生条件を緩和する必要性が認められた.
(3) 構造物から採取したコアの残存膨張性の評価
構造物から採取したコアの促進養生試験(ASTM 法(温度 80℃の 1N・NaOH 溶液浸せき,温度
40℃の 0.5N・NaOH 溶液浸せき)
)の結果を図-4.17 および図-4.18 に示す.両者の比較より,温度
80℃の 1N・NaOH 溶液浸せきの条件では早期に大きな膨張が発生するのに対して,温度 40℃の
0.5N・NaOH 溶液浸せきの条件では膨張が全体に小さくなるが,試験日数とともに膨張が増大する
ことが分かった.一方,骨材の種類に関しては,膨張率の大小だけでなく,両者の間に対応関係
が全く認められないものがあることに注意が必要であった.例えば,富山県 SIB 橋 橋台は,温度
80℃の 1N・NaOH 溶液浸せきの条件では膨張が発生しないが,温度 40℃の 0.5N・NaOH 溶液浸せき
では試験日数とともに膨張率が増大していた.同じ河川水系の砂利を使用した構造物では,実際
に残存膨張性が確認されており,温度 40℃の 0.5N・NaOH 溶液浸せきでの測定結果の方が,対応
関係が良好であった.同様に新潟県 KET 橋 橋台では 20 年経過した現在でも ASR の兆候が認めら
れないにも係わらず,温度 80℃の 1N・NaOH 溶液浸せきの条件では試験日数ともに大きな膨張が
発生していた.この場合も温度 40℃の 0.5N・NaOH 溶液浸せきでの測定結果の方で対応関係が良
好であった.北陸地方の河川砂利には火山系岩石(安山岩,流紋岩,溶結凝灰岩)や堆積岩(チ
ャート,硬質砂岩)が種々の混合率で含有されており,それらに含有される反応性鉱物(クリス
トバライト,火山ガラス,隠微晶質石英など)の反応性状が水酸化ナトリウム(NaOH)溶液の温
度および濃度条件により大きく相違するために,このような結果が生じたものと推察された.
- 110 -
第 4 章 コンクリートのアルカリシリカ反応性の評価に関する研究
0.7
0.5
UK橋
KET橋
IBA橋
0.4
KAT橋
0.3
YOS橋
0.2
SHIM橋
0.1
KA高架橋, SAS橋
TSU高架橋, SIB橋
SYO高架橋
膨張率 (%)
0.6
0
0
7 14 21 28 35 42 49 56 63 70 77 84 91
試験日数 (日)
膨張率(%)
図-4.17 コアの促進養生試験(ASTM 法,温度 80℃の 1N・NaOH 溶液浸せき)11),13),14)
0.11
0.10
0.09
0.08
0.07
0.06
0.05
0.04
0.03
0.02
0.01
0.00
-0.01
UK橋
SHI橋
SAS橋
YOS橋
SIB橋
KA高架橋
KAT橋, SYO高架橋, IBA橋
TSU高架橋, KET橋
0
7 14 21 28 35 42 49 56 63 70 77 84 91
試験日数(日)
図-4.18 コアの促進養生試験(ASTM 法,温度 40℃の 0.5N・NaOH 溶液浸せき)11),13),14)
0.70
21日
91日
0.60
膨張率(%)
膨張率(%)
0.50
0.40
0.30
0.20
0.10
0.00
0
Ⅰ 1
Ⅱ 2
Ⅲ 3
Ⅳ
4
損傷ランク
5
温度 80℃の 1N ・NaOH 溶液浸せき
0.11
0.10
0.09
0.08
0.07
0.06
0.05
0.04
0.03
0.02
0.01
0.00
56日
0
91日
Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ
2
3
4
1
損傷ランク
5
温度 40℃の 0.5N ・NaOH 溶液浸せき
図-4.19 コアの促進養生試験(ASTM 法)による膨張率と ASR 劣化度との関係 11),13),14)
- 111 -
第 4 章 コンクリートのアルカリシリカ反応性の評価に関する研究
コアの膨張率と道路構造物の ASR 損傷度との関係を図-4.19 に示す.両者の関係に関して,温
度 80℃の1N・NaOH 溶液浸せきの条件のものはばらつきが大きく,ASR 損傷度との間に明確な関
係が認められないのに対して,温度 40℃の 0.5N・NaOH 溶液浸せきのものは ASR 損傷度が大きな
ものほどコアの膨張率が長期試験日数にて増加しており,構造物の ASR 損傷状況の観察結果と良
く適合していた.今後,他の反応性骨材(安山岩砕石やチャート砕石)でのデータを蓄積するこ
とにより,構造物の ASR 劣化状況と対応させ,コアによる残存膨張性の判定試験法が提案できる
ものと期待された.
- 112 -
第 4 章 コンクリートのアルカリシリカ反応性の評価に関する研究
4.6 コアを使用したコンクリートのアルカリシリカ反応性の評価法の提案 12),15)
平成 15 年 12 月に JIS A 5308「レディーミクストコンクリート」が改定され,付属書 2「アル
カリ骨材反応対策の方法」が見直された.従来の附属書 6「セメントの選定によるアルカリ骨材
反応抑制対策の方法」が基本的には無害骨材の使用を優先させていたのに対し,新付属書では記
述の順番を「アルカリ総量規制」
「抑制効果のある混合セメントの使用」「安全と認められる骨材
の使用」としている 23).
アルカリ総量規制については,材料の性質から算出が可能であるが,混合セメントの効果や骨
材の安全性については,骨材を用いる方法,モルタルを用いる方法,コンクリートを用いる方法
に区分される.コンクリートで ASR を判定する手法としてはコンクリート法(JCI AAR-3(1987))
およびコンクリート迅速法(ZKT 206(1997))がある.いずれも一定のアルカリを加えたものであ
り,判定基準値も実際の ASR の発生の有無を検証しているものではない.前項の試験結果ではコ
アの促進養生試験(ASTM 法)やコアの促進養生試験(デンマーク法)の膨張率が反応性骨材の含
有率に相関があることが示された.両試験法の特徴を理解して膨張率の低い配合を見出すことに
より,川砂,川砂利のように ASR の判定が困難な骨材を使用したコンクリートの ASR の可能性を
より正確に評価できるものと考えられた.これらの結果より,図-4.20 に示すように現行の骨材
によるアルカリシリカ反応性の評価から使用するコンクリートに対しての品質管理手法が提案で
きるものと考えた.
骨材
ASRの発生する
可能性あり
JIS A 1145-2001 化学法
Yes
「無害」か
No
JIS A 1146-2001
モルタルバー法
No
Yes
「無害」か
No
ASR抑制対策
構造物の配合での
コンクリート供試体
コアの促進養生試験
ASTM法・デンマーク法の適用
Yes
「無害」か
No
提案方法
現行方法
場合により実施
JCI-AAR3(1987)
コンクリート法
END
図-4.20 コアを使用したコンクリートのアルカリシリカ反応性の評価手順 12),15)
- 113 -
第 4 章 コンクリートのアルカリシリカ反応性の評価に関する研究
4.7 結
論
生コンクリートプラントから採取した川砂,川砂利で鉱物・岩石的試験を行ったうえで作製し
たブロックと ASR を促進させ 7 年間の膨張挙動をモニタリングした大型試験体で各種コアの促進
養生試験を実施した.
本章で得られた主要な結果をまとめると,次のとおりである.
河川産骨材を用いたブロックより採取したコアの促進養生試験による残存膨張性の評価に関
して,
(1) 北陸地方の生コンクリートプラントで使用されている川砂,川砂利は,反応性骨材の含有量
が河川水系ごとで大きく異なっており,アルカリシリカ反応性の試験結果に「無害」と「無
害でない」ものが混在していた.
(2) 北陸地方の川砂,川砂利の主要な反応性骨材である安山岩には,反応性鉱物としてクリスト
バライト,トリジマイトが含有されていた.
(3) コンクリート中の安山岩の含有率が 10%以下の場合には,コアの促進養生試験(ASTM 法)で
は骨材の寸法やコア径により膨張率が最大となるペシマム混合率が存在した.それに対して,
コアの促進養生試験(デンマーク法)ではペシマム混合率は存在せず,安山岩の含有率に比
例して膨張率が大きくなった.
(4) コアの促進養生試験(ASTM 法)による膨張率は,反応性岩種の含有率(安山岩,流紋岩,凝
灰岩,頁岩およびチャートの合計)との間に正の相関が認められた.コアの促進養生試験(ASTM
法)では,骨材の最大寸法 25mm の場合にはコア径φ55mm を,骨材の最大寸法 40mm の場合に
はコア径φ100mm を選択することが適当であった.
(5) コアの促進養生試験(デンマーク法)による膨張率は,コア径や骨材の最大寸法に関係なく,
安山岩,頁岩およびチャートの含有率と高い相関が認められた.安山岩が主要な反応性骨材
である北陸地方では,コアの促進養生試験(デンマーク法)によりコンクリートのアルカリ
シリカ反応性を正確に評価できることが示された.
(6) ブロックから採取したコアの膨張率を促進養生条件下(温度 80℃の 1N・NaOH 溶液,温度 50℃
の飽和 NaCl 溶液)で測定することにより,セメントと骨材の各種組合せや混合セメントの使
用を考慮したコンクリートのアルカリシリカ反応性を迅速に評価することができた.
大型 RC 試験体より採取したコアの促進養生試験による残存膨張性の評価に関して,
(7) 無補強試験体(CC)では,ASR による内部膨張により,水平方向で約 0.8%の膨張率に達した
のに対し,鋼板巻立て試験体(SP)の水平方向および鉛直方向の膨張率は約 0.3%に収まって
いた.無補強試験体(CC)では 7 年間で ASR による膨張が収束しているのに対し,鋼板巻立
て試験体(SP)では ASR 膨張余力が残存していた.
(8) コアの促進養生試験(JCI-DD2 法(試験日数 91 日)
)とコアの促進養生試験(ASTM 法(試験
日数 21 日)
)における残存膨張性に対する判定での整合性が確認された.
コアの促進養生試験(ASTM 法)におけるアルカリ濃度および養生温度がコアの膨張性に及ぼ
す影響に関して,
- 114 -
第 4 章 コンクリートのアルカリシリカ反応性の評価に関する研究
(9) 水酸化ナトリウム(NaOH)溶液の濃度および養生温度が大きくなるほどコアの膨張率が増加
する傾向があった.しかし,養生温度が 40℃以下の場合には,水酸化ナトリウム(NaOH)溶
液の濃度によるコアの膨張率の相違は小さくなった.
(10) ASR ゲルの SEM-EDX より,温度 80℃の1N・NaOH 溶液浸せきの条件では,試験日数が長期に
なると ASR ゲルの流動化および分解による ASR ゲルの化学組成の変化が認められた.
(11) 構造物から採取したコアの評価に関して,コアの促進養生試験(ASTM 法)の新しい養生条件
として,温度 40℃の 0.5N・NaOH 溶液浸せき法を提案し実用化した.この結果,コアの膨張性
状が温度 80℃の1N・NaOH 溶液浸せき法に比較して,温度 40℃の 0.5N・NaOH 溶液への浸せき
法の方で構造物の ASR 損傷状況の観察結果とよく適合した.今後,他の反応性骨材でのデー
タを蓄積することにより,コンクリートの残存膨張性の評価が明確になるものと考えられた.
コアを使用したコンクリートのアルカリシリカ反応性の評価法の提案に関して,
(12)コアを使用したコンクリートのアルカリシリカ反応性における品質管理の手順を提案した.
- 115 -
第 4 章 コンクリートのアルカリシリカ反応性の評価に関する研究
参考文献
1) 野村昌弘,青山實伸,平 俊勝,鳥居和之:北陸地方における道路構造物の ASR による損傷
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コンクリート工学, Vol.32, No.5, pp.68-75, 1994.
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5) 鈴木宏信,宮永憲一,中山公彦,高木宣章,児島孝之;材料,Vol.52, No.9, pp.1061-1066,
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11) 野村昌弘,鳥居和之:促進養生試験によるコアの ASR 残存膨張性の評価,セメント・コンク
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14) Nomura, M., Torii, K. : Evaluation of Expansion Capacity of Concrete Cores from
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15) 鳥居和之,野村昌弘,本田貴子:北陸地方の反応性骨材の岩石学的特徴と骨材のアルカリシ
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16) 白木亮司, 丸
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17) 鳥居和之,友竹博一:アルカリシリカ反応によるモルタルの膨張挙動に及ぼすセメントと反
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19) Ross, I., Shayan, A.: Alkali Aggregate Reaction in Western Australia, Investigations
- 116 -
第 4 章 コンクリートのアルカリシリカ反応性の評価に関する研究
on The Causeway Bridge and Some Aggregate Sources, Proc. of the 10th International
Conference on Alkali-Aggregate Reaction in Concrete, pp.257-264, 1996.
20) CSA International: A864-00 Guide to the Evaluation and Management of Concrete
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21) 鍵本広之,佐藤道生,川村満紀:2,3 の異なる反応性骨材を用いたモルタルの細孔溶液の限
界 OH-イオン濃度,コンクリート工学年次論文集,Vol.23,No.2,pp.589-594, 2001.
22) 川村満紀,Chatterji, S.:コンクリートの材料化学,森北出版,pp.176-193, 2002.
23) 土木学会・アルカリ骨材反応対策小委員会報告書:鉄筋破断と新たなる対応,コンクリート
ライブラリー, No.124,pp.Ⅰ-9-10,2005.
- 117 -
第 4 章 コンクリートのアルカリシリカ反応性の評価に関する研究
- 118 -
第 5 章 道路構造物の ASR 損傷度とコンクリートの残存膨張性の評価に関する研究
第5章
5.1 概
道路構造物の ASR 損傷度とコンクリートの残存膨張性の評価に関する研究
説
近年,ASR によるコンクリートの膨張によって,構造物中の鉄筋が曲げ加工部や圧接継手箇所
の一部で鋼材が破断している事例が複数確認された.従来,鉄筋の健全性が確保されていれば,
ASR が多少生じても構造安全性の著しい低下をもたらすような危険な状態には至らないとの認識
もあったが,鉄筋の破断に至っている事例が確認されたことにより,損傷の進行によっては,設
計における前提が必ずしも担保されなくなる場合があることが明らかとなった.鉄筋破断は,関
西と北陸の一部の構造物で確認されている 1).北陸地方のコンクリート用骨材として川砂,川砂
利が長年使用されてきたが,コンクリート用骨材として多く使用されてきた川砂,川砂利の中に
もアルカリシリカ反応性を示すものが比較的多くあることが,最近の調査で判明した 2).当該地
方の ASR は,主に昭和 40 年代後半~50 年代に建設された構造物に多くみられ,この原因として,
省エネルギーおよび環境保全を目的としたセメントの製造方法の変化によって,セメント中のア
ルカリ量が増加する傾向にあったこと,新しいコンクリート技術の開発によってセメント量の増
加および水セメント比の低下に伴い,コンクリート中の間隙溶液にアルカリイオン濃度が上昇し
たこと,良質の骨材の枯渇によって,使用実績のない骨材の使用が余儀なくされる状態になって
も,反応性骨材を排除するための確実な試験法が確立されていなかったことが考えられる 3).ま
た,当該地方では,路面の安全性確保のために凍結防止剤の散布量が増えてきている 2).この地
方で使用さる凍結防止剤は,塩化ナトリウム(NaCl)が中心であるが,塩化ナトリウム(NaCl)によ
って道路構造物の ASR の損傷が顕在化してきている
4),5),6)
.北陸地方のように,川砂,川砂利が
反応性骨材の場合,骨材中に多種多様の岩種のものが混在し,反応性鉱物の種類およびその含有
量も大きく相違することから,
現行の骨材のアルカリシリカ反応性試験
(化学法
(JIS A 1145-2001)
およびモルタルバー法(JIS A 1146-2001)
)では適切に判定できない場合もあるようである 7).
また,平成元年の建設省総合技術開発プロジェクト・コンクリートの耐久性向上技術の開発 8)を
契機に,コアの促進養生試験(温度 40℃,RH95%以上に保存)により,
「残存膨張性なし」と判断
され,ひび割れ注入や表面塗装による ASR 抑制対策工事を行ってきたが,ASR の膨張は終結して
おらず表面塗装の再損傷が発生した 2).北陸地方のように川砂,川砂利の中の一部が反応性岩種
であり,それが顕著なペシマム混合率となっている場合は 9),湿気養生によるコアの促進養生試
験では評価できないことがわかってきた
2)
.このように北陸地方では,反応性骨材と試験法との
適合性の問題が重要な課題として残されており,ASR 損傷構造物の評価法の確立が急務になって
いる.
本章では,北陸地方の道路構造物から採取したコアにより実施した,川砂利の岩種含有率とそ
の特徴,凍結防止剤の散布量と ASR との関係,塩分とアルカリの浸透の現状,凍結防止剤から由
来するアルカリ量を推定した.また,北陸地方の特色として外部からアルカリが浸透する環境を
想定したコアの促進養生試験(ASTM 法(温度 80℃の1N・NaOH 浸せき)およびにデンマーク法(温
度 50℃の飽和 NaCl 浸せき)
)を行い,北陸地方での判定基準値を検討するとともに,コアの促進
養生試験後,構造物の表面膨張量を数年にわたり計測した結果より,その判定基準値の妥当性に
ついて検証した 7),10),11).
- 119 -
第 5 章 道路構造物の ASR 損傷度とコンクリートの残存膨張性の評価に関する研究
5.2 調査および試験方法 10),11)
(1) 調査の対象および概要
本調査の対象は北陸地方(新潟県,富山県,石川県および福井県の 4 県)の道路構造物(橋台
25 基,橋脚 8 基,フーチング 2 基,上部工 2 基,C-Box 6 基,トンネル 1 基)である.これらの
構造物は,1972~1992 年に供用開始したものであり,海岸付近に位置するものから丘陵部ならび
に山間部に位置するものまである.構造物は,建設時に使用したコンクリートの川砂利を河川水
系別に区分し,
ASR による劣化度を第 3 章 写真-3.1 に基づき分類するとともに,コアを採取して,
川砂利の岩種ごとの含有率,コンクリートのアルカリ量(Na2O+0.658K2O)および塩化物イオン濃
度(Cl-)を調べた.また,ASR の発生の有無およびコアの残存膨張性を確認するために,2 種類
のコアの促進養生試験(ASTM 法,デンマーク法)の適用性を検討した.さらに,構造物のひび割
れ箇所にコンタクトゲージプラグを取付け(各面に計 10 箇所程度),コンタクトゲージプラグ間
の距離を定期的に 3~6 年にわたり測定した.
(2) 試験方法
a) 川砂利の岩種含有率の算出
川砂利の岩種含有率の算出は,構造物から採取したコンクリートコア(φ100mm,長さ 150~
250mm)により,第 1 章 表-1.4 に示す方法で実施した.
b) 偏光顕微鏡観察
偏光顕微鏡観察は,ASR の状況を確認するために骨材周囲の発生した反応リムやゲルを偏光顕
微鏡により,第 1 章 表-1.7 に示す方法で実施した.
b) コンクリートの水溶性アルカリ量
コンクリートの水溶性アルカリ量(Na2O+0.658K2O)は,コンクリート表面からハンマードリル
(φ20 ㎜)により 2cm ごとに深さ 10cm までの試料を採取し,第 1 章 表-1.6 に示す方法で分析し
た.
c) セメントのアルカリ量
セメントのアルカリ量(Na2O+0.658K2O)は,第 1 章 表-1.6 および 1.6(2)a) 「硬化コンクリ
ート中のセメントのアルカリ分析」に示す方法で分析した.
d) コンクリートの全塩化物イオン濃度
コンクリートの全塩化物イオン濃度(Cl-)は,コンクリート表面からハンマードリル(φ20
㎜)により 2cm ごとに深さ 10cm までの試料を採取し,第 1 章 表-1.6 に示す方法で分析した.
e) コアの促進養生試験(ASTM 法)
コアの促進養生試験(ASTM 法)は,第 1 章 表-1.6 に示す方法で実施した.
- 120 -
第 5 章 道路構造物の ASR 損傷度とコンクリートの残存膨張性の評価に関する研究
f) コアの促進養生試験(デンマーク法)
コアの促進養生試験(デンマーク法)は,第 1 章 表-1.6 に示す方法で実施した.
g) 構造物の表面膨張量測定
構造物の表面に発生したひび割れ部にコンタクトゲージプラグを貼付け,コンタクトゲージプ
ラグ間の距離(基長約 100mm)をコンタクトミクロンゲージにより一定期間測定した(写真-5.1
参照)
.
コンタクトゲージプラグの貼り付け
コンタクトミクロンゲージによるコンタク
トゲージプラグ間の測定
写真-5.1 構造物の表面膨張量の測定
- 121 -
第 5 章 道路構造物の ASR 損傷度とコンクリートの残存膨張性の評価に関する研究
5.3 構造物の ASR の発生状況と骨材の岩種との関係 10)
(1) 川砂利の岩種含有率
道路構造物から採取したコアによる川砂利の岩種含有率と ASR による劣化度の分類結果を図
-5.1 に示す.道路構造物で ASR 損傷が確認された反応性骨材としては,火山系岩石(安山岩,流
セメント種別
N:普通セメント
BB:高炉セメント
S:早強セメント
0%
20%
安山岩*
チャート*
閃緑岩
変成岩
40%
60%
含有率(%)
流紋岩・石英安山岩*
花崗岩
変輝緑岩
砂岩
図-5.1 構造物における川砂利の岩種含有率と ASR 劣化度
- 122 -
80%
*反応性骨材
凝灰岩*
玄武岩
花崗班岩
泥岩
100%
第 5 章 道路構造物の ASR 損傷度とコンクリートの残存膨張性の評価に関する研究
80%
2.0
60%
1.5
40%
1.0
20%
0.5
比率
2.5
含有率(%)
100%
0%
0.0
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
ASR劣化度
安山岩
流紋岩・石英安山岩
凝灰岩
チャート
花崗岩
玄武岩
閃緑岩
変輝緑岩
花崗班岩
変成岩
砂岩
泥岩
安山岩/花崗岩
流紋岩・石英安山岩/花崗岩
凝灰岩/花崗岩
チャート/花崗岩
図-5.2 岩種含有率と ASR 劣化度との関係
安山岩の含有率(%)
20
18
最大値
16
平均値
14
最小値
12
10.7
10
8
6
4.1
4
(n=13)
3.2
2
(n=10)
(n=12)
0
Ⅰ
Ⅱ
ASR劣化度
Ⅲ
図-5.3 安山岩の含有率と ASR 劣化度との関係
紋岩,凝灰岩)および堆積岩(チャート)のものがあった.反応性骨材の含有率は,最大で石川
県 TE 川水系(YAM 橋)の 86%,最小で富山県 HA 川水系(C-Box NO.19)の 27%,平均で約 57%
であった.反応性骨材の含有率が最大であった YAM 橋は,ASR 劣化度がⅠであり ASR によるひび
割れが発生していなかった.また,富山県 SYO 川,JI 川および HA 川水系の構造物は,ASR 劣化度
Ⅰ~Ⅲに分散していた.反応性岩種の含有率と ASR 劣化度は必ずしも一致しておらず,同一の河
川水系の川砂利を使用しても ASR 劣化度が分散していた.ASR による劣化度と岩種ごとの含有率
- 123 -
第 5 章 道路構造物の ASR 損傷度とコンクリートの残存膨張性の評価に関する研究
の平均値との関係を図-5.2,安山岩の含有率と ASR 劣化度との関係を図-5.3 に示す.ASR による
劣化度が大きくなるにつれて,安山岩,火山系岩石(安山岩,流紋岩・石英安山岩,凝灰岩)お
よび安山岩と非反応性の花崗岩との比が増加する傾向が確認できた.安山岩の含有率が平均で約
4%をこえると,実際に ASR による損傷が発生した.また,安山岩の含有率が 10%あっても ASR 劣
化度がⅠである場合もあった.これらの現象は,構造物におけるコンクリート中のアルカリ量
(Na2O+0.658K2O)
,水分の供給程度,凍結防止剤の影響などの環境が異なり ASR の有無が発生し
たものと推察された.また,第 2 章 2.3(4)で述べたように同じ岩種でもできた年代が異なり,含
有鉱物が異なったことや,冷却過程や変質程度の違う火山岩が後背地に存在し,これが河川によ
って運ばれて堆積する過程が上流・中流・下流で異なったためと考えられた.このため,北陸地
方の ASR はかなり複雑であることが推察された.北陸地方の安山岩には,火山ガラスとともにク
リストバライトが多く含有されており,クリストバライトを含む安山岩は 10%の含有率でペシマ
ム混合率を有することが知られている 12).北陸地方の川砂利での安山岩の含有率はペシマム混合
率の近くにあり,このことが ASR による劣化が顕著になった一因であると考えられた.
(2) コアの偏光顕微鏡観察
コアからセメントペーストと骨材を含む形で研磨薄片を作製し,偏光顕微鏡により,ASR の状
況を確認した.反応の状況を写真-5.2 および写真-5.3 に示す.写真-5.2a は,富山県 JY 川水系
の角閃石安山岩周囲に発生した ASR ゲルがセメントペースト中に発達している状況である.写真
-5.2b は,富山県 JI 川水系あるいは HA 川水系の(流紋岩質溶結)凝灰岩の周囲には比較的大き
な 1mm 以上に発達した反応リムが生じていることを表している.このリムの中にはひび割れが認
められ,ASR ゲルが充填されている.これらの構造物の外観目視による ASR 劣化度はⅢとなって
いる.写真-5.2c は,変質した安山岩の周囲に発生した薄い反応リムである.この構造物では外
観上 ASR が発生していない.写真-5.3d は,新潟県 HI 川水系の(流紋岩質溶結)凝灰岩の周囲に
発生した反応リムと骨材内部から表面に向かって発生したひび割れ内には ASR ゲルが充填されて
いることを示すものである.この構造物での外観目視による ASR 劣化度はⅢである.写真-5.3e
は,新潟県 SI 川水系の(流紋岩質溶結)凝灰岩に発生した反応リムである.この構造物での ASR
劣化度はⅡとなっている.写真-5.3f,g は,新潟県 A 川水系の(流紋岩質溶結)凝灰岩の周囲に
反応リムやセメントペースト中に向かって発達した放射状のひび割れが発生し,ASR ゲルが充填
されていることを示すものである.
この構造物の外観目視による ASR 劣化度はⅡである.しかし,
薄片の状況から ASR がかなり進行していることが推察されることから,本構造物における ASR 進
行を注意深く,点検する必要が考えられた.このように偏光顕微鏡観察により,反応リムの形成,
ひび割れの発生状況およびゲルの状況など ASR の進行を詳細に確認することができた.偏光顕微
鏡観察による ASR の劣化度判定は有効な手法であった.
- 124 -
第 5 章 道路構造物の ASR 損傷度とコンクリートの残存膨張性の評価に関する研究
a
1mm
1mm
角閃石安山岩
b
1mm
1mm
凝灰岩
c
1mm
1mm
変質した安山岩
写真‐5.2 偏光顕微鏡観察(その 1)
(左側:単ニコル,右側:直交ニコル)
(a) 角閃石安山岩周囲に発生した ASR ゲル(IMA 高架橋,富山県,JY 川水系)
(b) 凝灰岩に発生した反応リム(KUMA 橋,富山県,JI 川あるいは HA 川水系)
(c) 変質した安山岩に発生した反応リム(ASO 橋,富山県,HA 川水系)
- 125 -
第 5 章 道路構造物の ASR 損傷度とコンクリートの残存膨張性の評価に関する研究
d
1mm
1mm
1mm
1mm
1mm
1mm
1mm
1mm
凝灰岩
e
凝灰岩
f
凝灰岩
g
凝灰岩
写真-5.3 偏光顕微鏡観察(その 2)
(左側:単ニコル,右側:直交ニコル)
(d) 凝灰岩に生じた反応リムとひび割れを充填する ASR ゲル(OYA 高架橋,新潟県,HI 川水系)
(e) 凝灰岩に生じた反応リム(SEKI 高架橋,新潟県,SI 川水系)
(f) 凝灰岩に生じた反応リムと発達した放射状の ASR ゲル(TORI 橋,新潟県,A 川水系)
(g) 凝灰岩に生じた反応リム(TORI 橋,新潟県,A 川水系)
- 126 -
第 5 章 道路構造物の ASR 損傷度とコンクリートの残存膨張性の評価に関する研究
5.4 凍結防止剤の影響 2)
富山県 JY 川水系,JI 川水系および HA 川水系の構造物は,1982 年頃より橋梁の下部工にひび
割れが発生し,1988 年にひび割れの注入と表面塗装を実施した.しかし,その後,比較的早期に
ひび割れの発生や表面塗装の再損傷が発生した.橋台および橋脚のひび割れ密度(ひび割れ延長
/調査対象面積)と凍結防止剤の散布量(年)や気象値との関係を回帰分析した結果を図-5.4 に
示す.凍結防止剤散布量が多くなると,橋台および橋脚のひび割れ密度が増加し,この傾向は橋
台よりも橋脚でより顕著であった 13).また,橋台では外気の湿度が高くなるとひび割れ密度が増
大した.とくに,橋台の北側でこの傾向が顕著であり,南側のひび割れ密度は冬期の最低気温が
下がるほど,降水量および日照時間が増加するほど増大した.このことより,凍結防止剤が ASR
を促進させること,コンクリート内部の水が凍結し,凍結融解の繰返しの過程でひび割れ密度が
さらに増加すること,が確認された.
1.0
0.8
0.6
0.5
寄与率
0.4
0.2
0.0
全体
南側
北側
全体
橋台
凍結防止剤の散布量
南側
北側
橋脚
最低気温
湿度
降水量
日照時間
南側:主として南側に部材の多くが位置する橋台・橋脚
北側:主として北側に部材の多くが位置する橋台・橋脚
図-5.4 ひび割れ密度の変化量と気象値(12~3 月平均)との関係 2)
- 127 -
第 5 章 道路構造物の ASR 損傷度とコンクリートの残存膨張性の評価に関する研究
5.5 コンクリートのアルカリおよび塩化物イオンの浸透状況 7),10)
(1) コンクリートのアルカリおよび塩化物イオンの含有量
コンクリートのアルカリ量(Na2O+0.658K2O)および塩化物イオン濃度(Cl-)の分析結果(表面
部(0~2cm)と内部(8~10cm)と値の差)を図-5.5 に示す.すべての測定値が図中の A,C ゾー
ンに位置し,外部から塩化物イオン(Cl-)が浸透していたことが確認できた.図中に示した 4 点
以外は,海岸から 2km 以上離れた内陸部に位置することから,これらの塩化物イオン(Cl-)は冬
期に散布された凍結防止剤によるものであった.また,同時にアルカリ(Na2O)も浸透したと判断
される A ゾーンに位置するものは,35 のうち 20 の構造物で確認された.とくに,新潟県 OYA 高
架橋上部工および橋脚では,海岸に位置することから塩化物イオン(Cl-)の浸透とともに多量の
ナトリウムイオン(Na+)がコンクリートに浸透していることが確認された.また,高炉セメント B
種を使用した新潟県 OYA 高架橋フーチングは,多量の塩化物イオン(Cl-)が浸透していたが,水
和生成物の中にナトリウムイオン(Na+)が取り込まれ固定化されるため,コンクリート内部への
水溶性アルカリの浸透は,ほとんど確認されなかった.
図-5.5 コンクリートのアルカリ(Na2O+0.658K2O)と塩化物イオン(Cl-)の浸透状況 10)
- 128 -
第 5 章 道路構造物の ASR 損傷度とコンクリートの残存膨張性の評価に関する研究
(2) コンクリート中のアルカリ起源の分析 2)
コンクリートのアルカリ量(Na2O+0.658K2O)の測定結果(セメントのアルカリ量は EPMA によ
り半定量分析したものである)を表-5.1 に示す.この分析結果より,海岸付近に位置する新潟県
OYA 橋橋脚以外は,供用年時の古い構造物ほど外部から供給されたアルカリ量(Na2O+0.658K2O)
の占める割合が多くなった.この値は,最大のものでコンクリートのアルカリ量(Na2O+0.658K2O)
の 31%になった.また,EPMA 分析により求めた,未水和セメント粒子のアルカリ量(Na2O+0.658K2O)
は,0.50~1.04%(セメントの質量パーセンテージ)であった 9).現在のセメントのアルカリ量
(Na2O+0.658K2O)の平均値である 0.65%と比較して,建設当時は高いアルカリ含有量のセメント
が使用されていた可能性があった.
表-5.1 コンクリートの各材料におけるアルカリ量(Na2O+0.658K2O)の分析 2)
アルカリ量(kg/m3)
供 用
構造物
(年) コンクリート①
④/①×100
(%)
内訳
セメント②
砂利③
混和剤+外部からのもの④
富山県 SYO 橋・橋脚
1973
2.45
1.37
0.32
0.76
31
富山県 IMA 高架橋・橋台
1973
2.49
1.27
0.74
0.48
19
富山県 KUMA 橋・橋台
1975
2.90
1.57
0.76
0.57
20
富山県 JYOU 橋・橋台
1980
1.70
0.76
0.70
0.24
14
富山県 TERA 高架橋・橋台
1980
1.88
1.27
0.53
0.08
4
新潟県 OYA 高架橋・橋脚
1988
7.20
1.10
0.61※
5.49
76
※各構造物での平均値での推定
- 129 -
第 5 章 道路構造物の ASR 損傷度とコンクリートの残存膨張性の評価に関する研究
5.6 コンクリートのアルカリ量,骨材の岩種含有率と構造物の ASR 劣化度
(1) コンクリートのアルカリ量の影響
コンクリートのアルカリ量(Na2O+0.658K2O)と ASR の劣化度との関係を図-5.6 に示す.建設時
のアルカリ量(Na2O+0.658K2O)とは,凍結防止剤の影響を受けていない深さの水溶性アルカリ量
(Na2O+0.658K2O)である.また,外部からのアルカリ量(Na2O+0.658K2O)とは図-5.5 に示す A,C
ゾーンのプロットされた値である.建設時のアルカリ量(Na2O+0.658K2O)が増加するに従い,ASR
劣化度も増加する傾向があった.この水溶性アルカリ量(Na2O+0.658K2O)が 2kg/m3 でも ASR 劣化
度Ⅲが生じる可能性が確認された.これに対して,外部からのアルカリ量(Na2O+0.658K2O)と ASR
劣化度には明確な関係は確認できなかった.一方,1988 年に供用した海岸付近に位置する新潟県
OYA 高架橋橋脚のコンクリートの川砂利は,建設当時化学法(ACTM C 289)で「有害」と判定さ
れたので,モルタルバー法(ASTM C 227)で再度判定した経緯があった.モルタルバー法(ASTM C
227)では,アルカリ量が 0.84%のセメントを用いて試験を実施し,その結果,3 ヶ月での膨張率
が 0.042%,6 ヶ月での膨張率 0.087%となり,モルタルバー法の判定基準値(6ヶ月で 0.1%)
を下回った.この構造物では,安全を見込んで,アルカリ量(Na2O+0.658K2O)を 0.6%以下に抑
制したセメントを使用した.しかし,建設から約5年経過後から,海水の影響を直接に受ける構
造物の一部に ASR によるひび割れが発生した.これは,低アルカリ形セメント(
(Na2O+0.658K2O)
が 0.6%以下)を使用したにもかかわらず,海水から供給されたアルカリの影響でコンクリート
に ASR が発生した事例であった.
5
建設時のアルカリ
4
3
2.2
(n=12)
2
1
(n=13)
3.0
2.5
(n=13)
0
最大値
平均値
最小値
10
外部からのアルカリ
8
6
4
2
0
1.2
(n=13)
1.8
0.5
(n=13)
(n=12)
-2
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
図-5.6 コンクリートのアルカリ量(Na2O+0.658K2O)と ASR の劣化度との関係
- 130 -
第 5 章 道路構造物の ASR 損傷度とコンクリートの残存膨張性の評価に関する研究
(2) コンクリートのアルカリ量,骨材の岩種含有率の影響
アルカリ量(Na2O+0.658K2O)
,岩種含有率および ASR 劣化度との関係を図-5.7 に示す.建設時
のコンクリートの水溶性アルカリ量が 2kg/m3 以上で安山岩の含有率が 6%を超えると ASR 劣化度Ⅲ
が生じる可能性が多くなった.また,反応性の火山系岩石(安山岩,流紋岩,凝灰岩)の増加と
ASR 劣化度との明確な傾向はないもののセメントのアルカリ量(Na2O+0.658K2O),安山岩および反
応性の火山系岩石が増加するに従い,ASR 劣化度が増加する傾向があった.
5
建設時のアリカリ量(kg/m
3
)
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
4
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
3
2
1
0
1.2
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
セメントのアルカリ量(%)
1.0
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
0
5
10
15
安山岩の含有率(%)
20 0
20
40
60
火山系岩石の含有率(%)
80
図-5.7 アルカリ量(Na2O+0.658K2O)
,岩種含有率および ASR 劣化度との関係
- 131 -
100
第 5 章 道路構造物の ASR 損傷度とコンクリートの残存膨張性の評価に関する研究
5.7 コアによるコンクリートの残存膨張性の評価 10)
(1) 外部からアルカリを供給するコアの促進養生試験の適用
ASR が生じた構造物の補修・補強を行うには,すでにコンクリートがどの程度膨張していたか,
また今後,どの程度膨張するかを把握することが重要である.後者のためには,コアによる残存
膨張性を評価する方法として規格化されたものはないが,わが国ではモルタルバー法(JIS A
1146-2001)に準拠した湿気槽養生法(JCI-DD2 法,温度 40℃の RH95%以上に保存)が用いられて
きた経緯がある.しかし,本試験法では,年数が経過した構造物からのコアは採取時や養生期間
中のアルカリ溶出の影響で膨張率が小さくなり,誤った判定をする可能性も指摘されている 7).
したがって,
湿気槽養生法ではアルカリ溶出の影響を少なくするためにできるだけ大きなコア(直
径 75mm または 100mm)で測定するのが望ましいとされている.一方,北陸地方の特色として,飛
来塩分,凍結防止剤による外部からのアルカリの供給や骨材からのアルカリ溶出により,コンク
リート中のアルカリ量(Na2O+0.658K2O)が増加する環境にあった.コアの促進養生試験法として
は,温度と湿度による ASR 促進のほかに北陸地方の特色を考慮した外部からアルカリを供給する
促進モルタルバー法(ASTM C1260-1994)に準拠した,コアの促進養生試験(ASTM 法(温度 80℃
の1N・NaOH 溶液浸せき)
)やデンマークの促進モルタルバー法に準拠した,コアの促進養生試験
(デンマーク法(温度 50℃の飽和 NaCl 溶液浸せき)
)の適用を試行した.
(2) コアの促進養生試験(ASTM 法)によるコアの膨張率と構造物の ASR 発生の有無
コアの促進養生試験(ASTM 法)によるコアの膨張率の結果を ASR 劣化度別に図-5.8 に示す.コ
アの促進養生試験(ASTM 法)は試験日数とともに膨張率が直線的に増加した.また,ASR 劣化度
Ⅰの場合,膨張率は小さいのに対し,ASR 劣化度が増加するに従い,膨張率が増加しばらつきも
大きくなり,ASR 劣化度と残存膨張量に明確な相違が確認された.判定基準値を決めるにおいて,
米国の促進モルタルバー法における判定基準(ASTM C1260-1994,14 日で 0.1%未満の膨張が「無
害」
,0.1-0.2%の膨張が「不明確」
,0.2%以上が「有害」
)14),カナダの促進モルタルバー法にお
ける判定基準(CSA 1994,14 日で 0.15%以上の膨張が「有害」,0.15%未満の膨張が「無害」)15)
およびオーストラリアの促進モルタルバー法における判定基準(21 日で 0.10%以上の膨張が「有
害」
,0.10%未満の膨張が「無害」
)16)と比較検討した.その結果,図-5.9 および表-5.2 に示すよ
うに,北陸地方における道路構造物での ASR の発生の有無および残存膨張性の評価基準として,
オーストラリアの判定基準(21 日で 0.10%以上の膨張が「有害」
)を適用できることが解った.
(3) コアの促進養生試験(デンマーク法)によるコアの膨張率と構造物の ASR 発生の有無
コアの促進養生試験(デンマーク法)によるコアの膨張率の結果を ASR 劣化度別に図-5.10 に
示す.コアの促進養生試験(デンマーク法)も試験日数とともに膨張率が直線的に増加する傾向
があった.コアの促進養生試験(ASTM 法)と同様に,ASR 劣化度Ⅰの場合,膨張率は小さいのに
対し,ASR 劣化度が増加するに従い,膨張率が増加しばらつきも大きくなり,ASR 劣化度と残存膨
張量に明確な相違が確認された.判定基準値を決めるにおいて,デンマークの促進モルタルバー
法における判定基準(91 日で 0.1%未満の膨張が「無害」
, 0.1-0.4%が「不明」,0.4%以上「有害」
)
17)
と比較検討した.この結果を図-5.11 に示すように,北陸地方における道路構造物での ASR の
- 132 -
第 5 章 道路構造物の ASR 損傷度とコンクリートの残存膨張性の評価に関する研究
1.2
【ASR劣化度Ⅰ】
1.0
0.8
0.6
0.4
⑥⑩
①②③④
⑤⑦⑧⑨
⑪⑫⑬⑭
0.2
0.0
No.
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
⑨
⑩
⑪
⑫
⑬
⑭
川砂利の水系
石川県TE川
富山県SYO川
富山県JI川
富山県HA川
富山県HA川
富山県KU川
富山県HA川
富山県KU川
富山県KU川
富山県KU川
富山県O川
富山県SA川
新潟県NI川
新潟県SI川
ASR劣化度Ⅰ
構造物名
石川県 YAM橋
富山県 TA橋
富山県 DO橋
富山県 JYOU橋
富山県 No.19
富山県 HIGA橋
富山県 ASO高架橋
富山県 KATAK橋
富山県 ROKU高架橋
富山県 ICHI高架橋
新潟県 OYA高架橋
新潟県 OYA高架橋
新潟県 SAN高架橋
新潟県 NISHI高架橋
構造物種別
橋台
橋台
橋台
橋台
C-Box
橋台
橋台
橋台
橋台
橋台
上部工
橋脚フーチング
橋台
橋台
No.
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
⑨
⑩
⑪
⑫
⑬
⑭
川砂利の水系
富山県JI川
富山県SYO川
富山県JI川
富山県HA川
富山県HA川
富山県O川
新潟県SI川
新潟県SI川
新潟県SI川
新潟県SI川
新潟県A川
新潟県A川
新潟県A川
新潟県A川
ASR劣化度Ⅱ
構造物名
富山県 SYO橋
富山県 No.4
富山県 No.42
富山県 IWA橋
富山県 ISHI橋
富山県 KITAH高架橋
新潟県 SEKI高架橋
新潟県 ARA橋
新潟県 No.26
新潟県 OKA橋
新潟県 KATAH高架橋
新潟県 KIBA橋
新潟県 No.24
新潟県 TORI橋
構造物種別
橋脚
C-Box
C-Box
橋台
橋台
橋台
橋台
橋脚
C-Box
橋台
橋台
橋脚
C-Box
橋台
1.2
【ASR劣化度Ⅱ】
膨張率(%)
1.0
0.8
②⑤
0.6
⑧
④
0.4
⑩⑪
①⑦⑫⑭
⑨⑬
③⑥
0.2
0.0
1.2
【ASR劣化度Ⅲ】
1.0
⑥
0.8
⑧⑨⑩
⑰④
⑪⑬
0.6
⑭⑯⑤
⑱⑦⑫
③
②
①
⑮
0.4
0.2
0.0
0
7
14
21
試験日数(日)
No.
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
⑨
⑩
⑪
⑫
⑬
⑭
⑮
⑯
⑰
⑱
川砂利の水系
福井県KU川
富山県JY川・JI川
富山県JI川
富山県JY川
富山県SY川
富山県JI川
富山県JI川
富山県JI川
富山県JI川
富山県JI川・HA川
富山県JI川・HA川
富山県JI川・HA川
富山県JI川・HA川
富山県HA川
富山県HA川
富山県HA川
富山県HA川
新潟県HI川
ASR劣化度Ⅲ
構造物名
構造物種別
福井県 GEN橋
橋台
富山県 No.62
C-Box
富山県 SYO橋
橋台
富山県 HI橋
橋台
富山県 IMA高架橋
橋台
富山県 GE橋
橋脚
石川県 No.1トンネル
トンネル
富山県 JIN橋
橋脚
富山県 JIN橋
橋台
富山県 JIN橋
上部工
富山県 KUMA橋
橋台
富山県 KUMA橋
橋脚
富山県 No.8
側壁
富山県 TERA高架橋
橋脚
富山県 TERA高架橋 橋脚フーチング
富山県 TERA高架橋
橋台
富山県 No.20
側壁
新潟県 OYA高架橋
橋脚
28
図-5.8 コアの促進養生試験(ASTM 法)の試験結果
- 133 -
第 5 章 道路構造物の ASR 損傷度とコンクリートの残存膨張性の評価に関する研究
発生の有無および残存膨張性の評価基準として,デンマークの判定基準をもとに試験日数 91 日で
0.10%以上の膨張が「残存膨張性あり」と判断することが妥当であると判断された.
同一構造物から採取したコアについて,コアの促進養生試験(ASTM 法(21 日)
)とコアの促進
養生試験(デンマーク法(91 日)
)との残存膨張量の関係を検討した.図-5.12 に示すように,コ
アの促進養生試験(ASTM 法)とコアの促進養生試験(デンマーク法)の残存膨張量との間には,
ほぼ 1:1 の対応関係があった.
1.2
試験日数21日
試験日数14日
1.1
1.0
膨張率(%)
0.9
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0.0
0.5
Ⅰ
1.5 Ⅱ~Ⅲ 2.5
Ⅰ
3.5 Ⅱ~Ⅲ 4.5
ASR劣化度
ASTM C1260およびオーストラリアの判定基準
カナダの判定基準
ASTM C1260の判定基準
図-5.9 コアの促進養生試験(ASTM 法)における各判定基準値との照合
表-5.2 各判定基準値における照合率の算出結果
膨張率
試験日数
14 日
21 日
0.10%
85%
89%
0.15%
76%
87%
0.20%
72%
77%
- 134 -
第 5 章 道路構造物の ASR 損傷度とコンクリートの残存膨張性の評価に関する研究
1.2
【ASR劣化度Ⅰ】
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
【ASR劣化度Ⅱ】
⑥
1.0
③
0.8
膨張率(%)
ASR劣化度Ⅰ
構造物名
富山県 TA橋
富山県 DO橋
富山県 JYOU橋
富山県 HIGA橋
富山県 ASO高架橋
富山県 KATAK橋
富山県 ICHI高架橋
新潟県 OYA高架橋
新潟県 OYA高架橋
新潟県 SAN高架橋
構造物種別
橋台
橋台
橋台
橋台
橋台
橋台
橋台
上部工
橋脚フーチング
橋台
No.
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
⑨
⑩
⑪
⑫
川砂利の水系
富山県JI川
富山県HA川
富山県HA川
富山県O川
新潟県SI川
新潟県SI川
新潟県SI川
新潟県SI川
新潟県A川
新潟県A川
新潟県A川
新潟県A川
ASR劣化度Ⅱ
構造物名
富山県 SYO橋
富山県 IWA橋
富山県 ISHI橋
富山県 KITAH高架橋
新潟県 SEKI高架橋
新潟県 ARA橋
新潟県 No.26
新潟県 OKA橋
新潟県 KATAH高架橋
新潟県 KIBA橋
新潟県 No.24
新潟県 TORI橋
構造物種別
橋脚
橋台
橋台
橋台
橋台
橋脚
C-Box
橋台
橋台
橋脚
C-Box
橋台
No.
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
⑨
⑩
⑪
⑫
⑬
⑭
川砂利の水系
福井県KU川
富山県JI川
富山県JY川
富山県SYO川
富山県JY川
富山県JI川
富山県JI川
富山県JI川
富山県JI川・HA川
富山県JI川・HA川
富山県JI川・HA川
富山県HA川
富山県HA川
新潟県HI川
①②③④
⑤⑥⑦
⑧⑨⑩
0.0
1.2
川砂利の水系
富山県SYO川
富山県JI川
富山県HA川
富山県KU川
富山県HA川
富山県KU川
富山県KU川
富山県O川
富山県SA川
新潟県NI川
No.
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
⑨
⑩
⑪②⑫
0.6
⑨
⑦
①⑧
④⑤
⑩
0.4
0.2
0.0
1.2
【ASR劣化度Ⅲ】
1.0
⑤
0.8
⑩⑥
⑨
0.6
0.4
0.2
0.0
③④⑭
⑪⑫⑬
②⑦⑧
①
ASR劣化度Ⅲ
構造物名
構造物種別
福井県 GEN橋
橋台
富山県 SYO橋
橋台
富山県 HI橋
橋台
富山県 IMA高架橋
橋台
富山県 GE橋
橋脚
石川県 No.1トンネル
トンネル
富山県 JIN橋
橋脚
富山県 JIN橋
橋台
富山県 JIN橋
上部工
富山県 KUMA橋
橋台
富山県 KUMA橋
橋脚
富山県 TERA高架橋
橋脚
富山県 TERA高架橋
橋台
新潟県 OYA高架橋
橋脚
0 7 14 21 28 35 42 49 56 63 70 77 84 91
試験日数(日)
図-5.10 コアの促進養生試験(デンマーク法)の試験結果
- 135 -
第 5 章 道路構造物の ASR 損傷度とコンクリートの残存膨張性の評価に関する研究
1.2
1.1
1.0
0.9
膨張率(%)
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0.0
0.5
Ⅰ
Ⅱ~Ⅲ
1.5
2.5
ASR劣化度
図-5.11 コアの促進養生試験(デンマーク法)における判定基準値との照合
+
0.
00
13
R
0.8
=
2
0.
60
1.0
=
0.
99
29
x
0.6
y
デンマーク法91日における膨張率(%)
1.2
0.4
0.2
0.0
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
ASTM法21日における膨張率(%)
1.2
図-5.12 コアの促進養生試験デンマーク法と ASTM 法の膨張率の関係 10)
- 136 -
第 5 章 道路構造物の ASR 損傷度とコンクリートの残存膨張性の評価に関する研究
(4) 岩種含有率との関係
第 4 章では,コアの促進養生試験の膨張率と岩種含有率との相関について述べた.この結果は,
ASR によるひび割れが発生する前に実施した結果であることに注意する必要があった.供用から
20 年程度以上経過した構造物から,採取したコアで実施した促進養生試験の膨張率(ASTM 法(試
験日数 21 日)
,デンマーク法(試験日数 91 日))と川砂利の岩種含有率との関係について分析を
行った.結果を図-5.13 および図-5.14 に示す.構造物では,ASR の進行に伴うひび割れの発達に
より,コア深部まで溶液が浸透しやすい状況となっていた.一方,ASR の進行によりクリストバ
ライトや火山ガラス等の反応性鉱物がすでに反応し消費され,残存膨張性が低くなる可能も考え
られた.分析結果では,各岩種にて膨張率が最大になるペシマム混合率が存在した.ペシマム混
合率は,安山岩の含有率がコアの促進養生試験(ASTM 法)で約 10%,コアの促進養生試験(デン
マーク法)で約 5%の位置にあるのに対し,流紋岩で約 20%,凝灰岩で約 30%,反応性全岩種(安
山岩,流紋岩,凝灰岩,チャートの合計)で約 60%の位置でコアの促進養生試験(ASTM 法,デン
マーク法)に関係なく存在した.クリストバライトを含有する場合,顕著なペシマム混合率を持
つが,火山ガラスはペシマム混合率を持たない.コアの促進養生試験ではクリストバライトと火
山ガラスによる膨張が複雑に関係しているものと推察された.
1.0
1.0
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
0.9
膨張率(%)
0.8
0.7
0.6
0.6
0.5
0.5
0.4
0.4
0.3
0.3
0.2
0.2
0.1
0.1
0.0
0
5
10
安山岩の含有率(%)
15
20
0
10
20
30
40
50
60
流紋岩の含有率(%)
1.0
1.0
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
0.9
0.8
膨張率(%)
0.8
0.7
0.0
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
0.9
Ⅰ
0.9
Ⅱ
0.8
0.7
0.7
0.6
0.6
0.5
0.5
0.4
0.4
0.3
0.3
0.2
0.2
0.1
0.1
0.0
Ⅲ
0.0
0
10
20
30
凝灰岩の含有率(%)
40
50
0
20
40
60
反応性全岩種の含有率(%)
80
図-5.13 コアの促進養生試験(ASTM 法)による膨張率と川砂利の岩種含有率との関係
- 137 -
100
第 5 章 道路構造物の ASR 損傷度とコンクリートの残存膨張性の評価に関する研究
1.2
1.2
Ⅰ
Ⅰ
Ⅱ
1.0
Ⅱ
1.0
Ⅲ
膨張率(%)
Ⅲ
0.8
0.8
0.6
0.6
0.4
0.4
0.2
0.2
0.0
0.0
0
5
10
安山岩の含有率(%)
15
10
20
30
40
流紋岩の含有率(%)
50
60
1.2
1.2
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
1.0
膨張率(%)
0
20
Ⅰ
Ⅱ
1.0
0.8
0.8
0.6
0.6
0.4
0.4
0.2
0.2
Ⅲ
0.0
0.0
0
10
20
30
40
50
凝灰岩の含有率(%)
0
20
60
40
反応性全岩種の含有率(%)
80
図-5.14 コアの促進養生試験(デンマーク法)による膨張率と川砂利の岩種含有率との関係
- 138 -
100
第 5 章 道路構造物の ASR 損傷度とコンクリートの残存膨張性の評価に関する研究
5.8 橋台内部の残存膨張性 2)
橋台前面(壁厚:1.3~1.5m)から盛土背面に向かって貫通コアを採取し,表面部(0~30cm
付近)および内部(60~90cm 付近)に対してコアの促進養生試験(ASTM 法)により残存膨張性を
比較した.図-5.15 に示すように,富山県 KUMA 橋以外は,表面部の膨張率が内部と比較してかな
り大きくなった.これは,ASR が構造物の内部で最も進行していたことを示唆していた.構造物
のひび割れは,構造物の表面部と内部での膨張率の差および鉄筋の拘束を反映した形で発生して
いると考えられた.したがって,橋台では,鉄筋の拘束力の小さい隅角部やウイング部に卓越し
たひび割れが発生し,また路面排水,雨水や凍結防止剤の影響を受けやすい箇所に ASR と凍結融
解による複合的な劣化が発生するものと推察された.
0.6
富山県HI橋
0.5
富山県
TERA高架橋
膨張率(%)
0.4
新潟県
TORI橋
0.3
富山県
KUMA橋
0.2
0.1
0.0
0
表面部
1
内部
2
3
図-5.15 橋台表面と内部におけるコアの残存膨張量の比較(ASTM 法)
- 139 -
第 5 章 道路構造物の ASR 損傷度とコンクリートの残存膨張性の評価に関する研究
5.9 コアの促進養生試験と構造物における残存膨張性の検証 11)
(1) 膨張挙動
コアの促進養生試験(ASTM 法,デンマーク法)および構造物における膨張率の調査結果を図
-5.16 に示す.構造物における膨張率は,各測点の平均値である.また,橋脚での測点は,T 型橋
脚の梁部を対象とした.コアの促進養生試験(ASTM 法,デンマーク法)および構造物の膨張率は,
試験日数とともにほぼ直線的に増加しており,コアの促進養生試験(ASTM 法,デンマーク法)と
構造物との膨張には対応関係があるようである.そこで膨張挙動の対応を式(1)に示す膨張率yと
試験日数xとした場合の直線回帰における傾きaについて検討した.
y=ax
(1)
また,ASR が発生した構造物の鉄筋には,300N/mm2 を越える引張力が発生していることが報告
されていることから 18),構造物では鉄筋拘束の影響をかなり受けるものと考えられた.構造物の
単位表面積当りの鉄筋の断面積(縦筋と横筋の合計)を算出した結果を表-5.3 に示す.この中で,
同一の構造物の橋台および橋脚のa3 の違いに注目すると,単位面積当りの鉄筋量が多い場合,a3
は小さく,鉄筋量が少ない場合,a3 は大きくなっていた.これは構造物の膨張挙動には鉄筋量が
影響を与えていることを表していた.そこで鉄筋量 As と傾き a3 の積(a3・As)とコアの促進養生
試験(ASTM 法)のa1 およびにコアの促進養生試験(デンマーク法)のa2 との関係に着目した.
結果を図-5.17 に示す.両者の間には相関性が認められた.また,それぞれ式(2),式(3)で近似
され,コアの促進養生試験(ASTM 法,デンマーク法)により,3~6 年程度の残存膨張量を予測で
きるものと考えられた.
膨張率(%)
0.6
コアの促進養生試験(ASTM 法) a1=0.0045EXP(0.089(a3・As))
(2)
コアの促進養生試験(デンマーク法) a2=0.0007EXP(0.097(a3・As))
(3)
ASTM法
⑤
0.4 ⑨
0.4
デンマーク法
0.6
構造物の挙動
0.2
0.2 ②
⑪
0.0
0.0
⑭⑧
1.2 0
7
14
1.0
1.0
1.0 ③
0.8
0.8 ③
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
0.0
-0.2
0
⑤
④
⑨0.2⑪
④⑤
②
⑧
0
⑭
-0.2
-0.2
91 0
21 0 7 14 21 28 35 42 49 56 63 70 77 84
1.2
1.2
⑬
0.6
⑥
0.4 ⑩⑫
⑦
0.2 ①
⑮
②
⑨
0.4
④
-0.2
膨張率(%)
0.6
⑭
⑧
⑪
12
24
36
48
⑬
⑥
0.6 ⑫
60
72
84
③
①
⑦
⑮
0.4
①
0.2 ⑦⑩
⑮
⑫
番号
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
⑨
⑩
⑪
⑫
⑬
⑭
⑮
橋名
富山県 SYO橋
富山県 GE橋
富山県 JIN橋
富山県 KUMA橋
富山県 JYOU橋
富山県 TERA高架橋
富山県 HIGA橋
富山県 IWA橋
富山県 ISHI橋
富山県 ASO高架橋
富山県 KITAH高架橋
橋台・橋脚
橋脚
橋台
橋脚
橋台
橋脚
橋台
橋脚
橋台
橋台
橋脚
橋台
橋台
橋台
橋台
橋台
⑩
0.0
-0.2
-0.2
7
14
21 0 7 14 21 28 35 42 49 56 63 70 77 84 91 0
試験日数(日)
試験日数(日)
12
24
36
48
60
72
84
調査月数(月)
図-5.16 コアの促進養生試験(ASTM 法,デンマーク法)および構造物における膨張率の対比
- 140 -
第 5 章 道路構造物の ASR 損傷度とコンクリートの残存膨張性の評価に関する研究
表-5.3 鉄筋量 As とaの算出結果 11)
構造物
番号
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
⑨
⑩
⑪
⑫
⑬
⑭
⑮
橋名
橋台・橋脚
鉄筋量
As(㎜ 2 /m 2 )
a3
(%/月)
1,589
2,095
2,644
2,544
1,500
1,952
1,456
2,648
1,301
3,599
2,644
3,734
1,952
1,169
1,324
0.0090
0.0063
0.0084
0.0036
0.0059
0.0065
0.0106
0.0011
0.0060
0.0026
0.0002
0.0067
0.0051
0.0026
0.0063
橋脚
橋台
橋脚
橋台
橋脚
橋台
橋脚
橋台
橋台
橋脚
橋台
橋台
橋台
橋台
橋台
富山県 SYO橋
富山県 GE橋
富山県 JIN橋
富山県 KUMA橋
富山県 JYOU橋
富山県 TERA高架橋
富山県 HIGA橋
富山県 IWA橋
富山県 ISHI橋
富山県 ASO高架橋
富山県 KITAH高架橋
a 3 ・As
2
((%・㎜ )
/(月・m 2 ))
14.3
13.2
22.2
9.2
8.8
12.7
15.4
2.9
7.8
9.4
0.5
25.0
10.0
3.0
8.3
ASTM法a 1
(%/日)
デンマーク法a 2
(%/日)
0.0093
0.0091
0.0401
0.0158
0.0237
0.0253
0.0144
0.0019
0.0183
0.0189
0.0062
0.0191
0.0307
0.0025
0.0026
0.0028
0.0008
0.0090
0.0017
0.0010
0.0074
0.0017
0.0007
0.0013
0.0016
0.0008
0.0057
0.0098
0.0007
0.0016
※a1,a2,a3 は式(1)に示す傾き a である
0.05
ASTM法a 1 およびデンマーク法a
2 (%/日)
ASTM法
デンマーク法
y = 0.0045e 0.089x
R 2 = 0.36
0.04
0.03
0.02
y = 0.0007e 0.097x
R 2 = 0.48
0.01
0
0
5
10
15
20
25
30
構造物 a 3・As((%・㎜ 2/(月・m 2))
図-5.17 コア促進養生試験(ASTM 法,デンマーク法)の a1・a2 と構造物の a3・As との関係 11)
(2) コアの促進養生試験(ASTM 法,デンマーク法)と構造物の膨張率との関係
式(2)および式(3)を用い,コアの促進養生試験(ASTM 法,デンマーク法)の膨張率と単位表面
積当りの鉄筋量を仮定した場合の 5 年後における構造物の膨張率を推定した.結果を図-5.18 に
示す.コアの促進養生試験(ASTM 法,デンマーク法)の膨張率は,コアの促進養生試験の結果が
式(1)により回帰され,試験日数がそれぞれ 21 日ならびに 91 日でのものである.この結果より,
コアの促進養生試験(ASTM 法)では試験日数 21 日での膨張率が 0.1%以下ならびにコアの促進養
- 141 -
第 5 章 道路構造物の ASR 損傷度とコンクリートの残存膨張性の評価に関する研究
生試験(デンマーク法)では試験日数 91 日での膨張率が 0.07%以下の場合は,構造物における膨
張率は 0 と推測され,北陸地方における道路構造物における判定基準 2)(膨張率 0.1%未満の場
合,
「残存膨張性なし」
)とほぼ一致する結果となった.
1.4
構造物の5年後の膨張率(%)
1.2
1.0
□ 1500㎜ 2/m 2
△ 2000㎜ 2/m 2 ASTM法
○ 2500㎜ 2/m 2
■ 1500㎜ 2/m 2
▲ 2000㎜ 2/m 2 デンマーク法
● 2500㎜ 2/m 2
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0
ASTM法21日またはデンマーク法91日の膨張率(%)
図-5.18 構造物の膨張とコア促進養生試験(ASTM 法,デンマーク法)との関係 11)
- 142 -
第 5 章 道路構造物の ASR 損傷度とコンクリートの残存膨張性の評価に関する研究
5.10 結
論
北陸地方の道路構造物にて ASR に関する現地調査およびコアによる詳細調査を実施した.調査
対象構造物では,河川砂利の中に混入した火山系岩石の骨材が反応しており,ASR による損傷の
程度はコンクリートに使用した川砂利中の反応性骨材の含有率および構造物の使用・環境条件に
大きく依存していた.
本章で得られた主要な結果をまとめると,次のとおりである.
(1) 道路構造物から採取したコアにより,反応性骨材として,火山系岩石(安山岩,流紋岩,凝
灰岩)および堆積岩(チャート)が確認され,その含有率は河川水系ごとで大きく相違した.
(2) 安山岩の含有率が増加するほど ASR 劣化度が増加する傾向があった.また,ASR 劣化度Ⅲ(ASR
のひび割れ大)における平均の安山岩の含有率は約 10%であり,反応性鉱物としてクリスト
バライトを含有する安山岩では約 10%の含有率でペシマム混合率を有することが確認された.
(3) 安山岩の含有率が約 10%でも ASR 劣化度Ⅰ(ASR のひびわれなし)の構造物が確認された.
原因として,コンクリート中のアルカリ量(Na2O+0.658K2O)
,水分の供給程度,凍結防止剤の
影響等の違いや安山岩のできた年代により,含有鉱物が異なったことが考えられた.
(4) 偏光顕微鏡観察により,反応リムの形成,ひび割れの発生状況およびゲルの状況など ASR の
進行を詳細に確認することができた.偏光顕微鏡観察による ASR の劣化度判定は有効な手法
であると考えられた.
(5) ASR による道路構造物の損傷は北陸地方特有の気象条件の影響を受けるとともに,路面に散布
された凍結防止剤(塩化ナトリウム(NaCl)
)の浸透により ASR および凍害による複合的な劣
化が進行していた.
(6) 構造物の建設時のアルカリ量(Na2O+0.658K2O)が多いものほど,ASR 劣化度が増加する傾向
があった.また,セメント粒子の EPMA により測定したセメントのアルカリ量(Na2O+0.658K2O)
は 0.5%~1%であり,高アルカリのセメントの使用が ASR の発生の一因になっていた.また,
厳しい塩分環境下に置かれた道路構造物では,低アルカリ形セメント((Na2O+0.658K2O)が
0.6%以下)を使用した場合でも,外部からの塩化ナトリウム(NaCl)の浸透で ASR による損
傷が発生した.
(7) コアの促進養生試験(ASTM 法,デンマーク法)による残存膨張性を判定は,それぞれ試験日
数 21 日および 91 日で 0.10%以上の膨張率を基準とするのが有効であり,コアの促進養生試
験(ASTM 法)による試験日数 21 日とコアの促進養生試験(デンマーク法)による試験日数
91 日の結果には良好な対応関係があった.
(8) ASR によるひび割れは,構造物の表面部と内部での膨張率の差および鉄筋の拘束を反映した形
で発生していることが推察された.このため,構造物の鉄筋量を考慮することでコアの促進
養生試験(ASTM 法,デンマーク法)から,約 5 年後の構造物の膨張率を推定することができ
た.
- 143 -
第 5 章 道路構造物の ASR 損傷度とコンクリートの残存膨張性の評価に関する研究
参考文献
1) 土木学会・アルカリ骨材反応対策小委員会報告書:鉄筋破断と新たなる対応,コンクリート
ライブラリー,NO.124,pp.Ⅰ-26-31.2005.
2) 野村昌弘, 青山實伸, 平
俊勝, 鳥居和之:北陸地方における道路構造物の ASR による損傷
事例とその評価手法,コンクリート工学論文集,Vol.13, No.3, pp.105-114, 2002.
3) 川村満紀, 枷場重正:アルカリ・シリカ反応のメカニズム, コンクリート工学, Vol.22, No.2,
pp.6-15,1984.
4) 野田幹夫, 小川 健, 小柳 洽, 川村満紀:凍結防止剤散布環境下における ASR によるコン
クリート構造物の損傷状況調査,コンクリート工学, Vol.36, No.9, pp.15-21, 1998
5) 鳥居和之:凍結防止剤によるコンクリート構造物の損傷と防止対策,セメント・コンクリー
ト, No.635, pp.40-46, 2000.
6) 三浦 尚:融雪剤による鉄筋コンクリート構造物の劣化,コンクリート工学,Vol.38, No.6,
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7) 野村昌弘,平
俊勝, 鳥居和之:コアによるコンクリート構造物のアルカリシリカ反応の判
定,コンクリート工学年次論文集, Vol.23, NO.1, pp.1147-1152, 2001.
8) 土木研究センター:建設省総合技術開発プロジェクト・コンクリートの耐久性向上技術の開
発,1989.
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under the Influence of Deicing Salts in the Hokuriku District, Japan, Materials
Characterization Vol.53, pp.105-122, 2004.
10) Nomura, M., Matsuda, T., Aoyama, M., Torii, K.: Case Study on Deterioration of Concrete
in Structures due to Alkali-Silica Reaction(ASR) in Salt Environment and its Evaluation
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11) 野村昌弘, 清水隆司:土木学会第 61 回年次学術講演会,V-071, pp.141-142, 2006.
12) Katayama, T.,Helgason, T. S, Olafson, H. : Petrography and Alkali-Reactivity of Some
Volcanic Aggregates from Iceland, Proc. of the 10th International Conference on
Alkali-Aggregate Reaction,, pp.377-384. 1996.
13) 田村忠司, 野村昌弘, 飯田是昌:アルカリ骨材反応を受けた道路橋と凍結防止剤の関係につ
いて, 第 22 回日本道路会議論文集, pp.818-819, 1997.
14) ASTM C 1260 : Standard Test Method for Potential Alkali Reactivity of Aggregates-Mortar
bar Method, Vol.04. 02, pp.654-659, 1994.
15) Fournier, B., Berube, M.A. :Alkali-aggregate Reaction in Concrete :a Review of Basic
Concepts and Engineering Implications, Canadian Journal of Civil Engineering, Vol.27,
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16) Shayan, A., Ferguson, J.A. :Reactive Quartz Gravel from Eastern Victoria, Proc. of the
10th International Conference on Alkali-Aggregate Reaction, pp.703-710, 1996.
17) Chatterji, S.: An Accelerated Method for the Detection of Alkali-Aggregate Reactivates
of Aggregate, Cement and Concrete research, Vol.8, No.5, pp.647-649, 1978.
18) 長田光司,小野聖久,丸屋 剛,池田尚冶:アルカリ骨材反応で変状を起こしたコンクリー
- 144 -
第 5 章 道路構造物の ASR 損傷度とコンクリートの残存膨張性の評価に関する研究
ト部材の耐震性能―現地調査と載荷実験による評価,コンクリート工学, Vol.44, No.3,
pp.34-42, 2006.
- 145 -
第 5 章 道路構造物の ASR 損傷度とコンクリートの残存膨張性の評価に関する研究
- 146 -
第6章 結 論
第6章
結
論
6.1 本研究のまとめ
本研究では,北陸地方の反応性骨材の岩石・鉱物的特徴とその分布状況を明らかにし,この地
方の骨材に適した ASR 評価法について検討した.岩石・鉱物学的特徴では,北陸地方のコンクリ
ート用骨材として使用されている川砂,川砂利の岩種含有率の実態を調べ,反応性骨材として火
山系岩石(安山岩,流紋岩,凝灰岩)および堆積岩(チャート)を確認した.河川産の安山岩や
流紋岩には,反応性鉱物として火山ガラスやクリストバライトを含有していることや能登産の安
山岩砕石では,火山ガラス,クリストバライトのほかに多くのモンモリロナイトなどの粘土鉱物
の含有も確認された.これらの岩石は同じ岩種であっても,できた年代により反応性鉱物の種類
が大きく変化し,これらを後背地とする山岳地帯より,河川の上流,中流,下流での堆積過程が
異なることから,北陸地方における河川産骨材の岩種含有率は複雑なものであった.また,北陸
地方の特徴としてアルカリ含有量の高い火山岩が分布しており,これらをコンクリート用骨材と
して使用した場合,長期にわたり,細孔溶液中のアルカリ濃度を高める可能性が考えられた.さ
らに,北陸地方の海岸部の構造物では,飛来塩分の影響を受けることや道路構造物では冬期に散
布される凍結防止剤(主成分 NaCl)による外来塩分の影響を受けることも考慮し,ASR による残
存膨張性の評価法として外部からアルカリを供給するコアの促進養生試験(ASTM 法,デンマーク
現状
骨材として川砂・川砂利の使用
能登の安山岩砕石
(モンモリロナイトを多く含有)
問題点
本研究
残存膨張性の評価が適
切にできない
北陸地方の岩石・鉱物
学的特徴
JISの化学法・モルタ
ルバー法で反応性骨材
を適切に評価できない
アルカリシリカ反応性
試験の適合性の検証
コンクリート中のアル
カリ濃度の上昇(混合
セメントではフライ
アッシュ)
骨材からのアルカリ溶
出の検証
アルカリ濃度の高い火山岩の存在
混合セメントのASR抑制効果検証
法の必要性
飛来塩分や凍結防止剤による塩化
物イオンの浸透
低アルカリ形セメント
やアルカリ総量規制で
ASRが抑制できない可
能性あり
コンクリートコアに
よるASR評価法の開発
図-6.1 北陸地方の ASR の課題と本研究の目的(P3 より)
- 147 -
第6章 結 論
法)を適用するとともに残存膨張性の有無の判定基準を提案し,この判定基準の妥当性について
検証した.なお,第 1 章で示した「図-1.1 北陸地方の ASR の課題と本研究の目的」のながれを図
-6.1 に示し,研究課題ごとに得られた結果の要点を表-6.1 および表-6.2 に整理した.
以下に各章の内容および得られた結果を総括する.
表-6.1 研究結果の要点(1)
研究課題
研究結果の要点
北陸地方の岩石・ 1)北陸地方の主要な反応性骨材は,第三紀中新世前期~中期の海底で噴出
鉱物学的特徴
し,熱水変質を受けて緑色(ないし雑色)を呈する火山岩を主とする地層
(グリーンタフ)からのものであり,これらの続成作用により,同じ岩種
でもアルカリシリカ反応性をもつものや非反応性の骨材が複雑に混入し
ていた.このため,川砂,川砂利には多種多様な岩種が混在し,その混入
量は河川水系ごとで大きく異なった.
2)ASR が発生した構造物では,反応性骨材として火山系岩石(安山岩,流紋
岩,凝灰岩)および堆積岩(チャート)が確認された.また,反応性鉱物
として,火山ガラス,クリストバライトおよびトリジマイトが同定された.
3)能登産の反応性骨材である安山岩砕石には,火山ガラスやクリストバラ
イトの反応性鉱物のほかに多くのモンモリロナイトなどの粘土鉱物の含
有が確認された.
アルカリシリカ反 化学法
化学法(JIS A 1145-2001)の判定結果は,「無害」
応性試験の適合性
と「無害でない」との境界線付近にプロットされる
(JIS A 1145-2001)
ものが多くあり,化学法だけによる判定では反応性
骨材を十分に評価できない可能性が考えられた.
モルタルバー法
能登産の安山岩にようにモンモリロナイトなどの粘
(JIS A 1146-2001)
土鉱物を多く含有する岩種では,粘土鉱物にアルカ
リが吸着され,モルタルバーが膨張せず,一定量の
アルカリを添加する本試験法では判定を誤る可能性
があった.
促進モルタルバー法 チャート砕石単体で本試験を実施する場合,チャー
(ASTM C 1260-1994) トが NaOH に溶解し,判定を誤る可能性があった.
促進モルタルバー法
本試験の結果は,構造物の ASR 発生の有無と良く一
(デンマーク法)
致していた.今後,データを蓄積することにより,
北陸地方に適した判定基準の設置が可能と期待され
た.
骨材からのアルカ 1)安山岩中の長石および火山ガラス相は多くのアルカリを含有していた.
リ溶出の検証
2)川砂からアルカリが溶出する現象が確認され,その溶出量はコンクリー
ト 1m3 あたり 0.5kg/m3 と推定した.
3)砂からのアルカリ溶出量を考慮し,ASR 抑制対策としてのアルカリ総量規
制値を見直す必要性が考えられた.
- 148 -
第6章 結 論
表-6.2 研究結果の要点(2)
研究課題
研究結果の要点
コンクリー ト コアの促進養生試験
1)コアの膨張率は,反応性岩種の含有率(安山岩,流紋
コ ア に よ る (ASTM 法,温度 80℃
岩,凝灰岩,頁岩およびチャートの合計)との間に正
ASR 評 価 法 の の1N・NaOH 浸せき)
の相関が認められた.この結果より,膨張率を低く管
開発
理することにより,コンクリートにおける ASR の評価
が可能と考えられた.
2)残存膨張性の有無の判定基準値として,試験日数 21
日で 0.1%以上を残存膨張性有と判定することを提案
した.
コアの促進養生試験
1)コアの膨張性状が温度 80℃の1N・NaOH 溶液浸せき法
(ASTM 法,温度 40℃
に比較して,温度 40℃の 0.5N・NaOH 溶液への浸せき
の 0.5N・NaOH 浸せき)
法の方で構造物の ASR 損傷状況の観察結果とよく適合
した.
2)今後,他の反応性骨材でのデータを蓄積することによ
り,コンクリートの残存膨張性の評価が明確になるも
のと考えられた.
コアの促進養生試験
(デンマーク法)
1)コアの膨張率は,コア径や骨材の最大寸法に関係な
く,安山岩の含有率と高い相関が認められた.安山岩
が主要な反応性骨材である北陸地方では,本試験法に
より膨張率を低く管理することによりコンクリート
における ASR の評価が可能と考えられた.
2)残存膨張性の有無の判定基準値として,試験日数 91
日で 0.1%以上を残存膨張性有と判定することを提案
した.
第 1 章「序論」では,本研究「北陸地方におけるコンクリート用骨材のアルカリシリカ反応性
の評価に関する研究」を実施するに至った背景を述べるとともに,本研究の目的を明らかにした.
さらに,ASR における既往の研究,北陸地方の構造物の主な劣化事例(塩害,ASR,複合劣化)
,ASR
試験方法の現状と課題ならびに本研究で行った分析方法について述べた.
第 2 章「北陸地方で産出する骨材の岩石・鉱物学的特徴とアルカリシリカ反応性試験の適合
性に関する研究」では,日本の反応性骨材の種類と岩石・鉱物学的特徴を述べた.また,北陸地
方のコンクリート用骨材(川砂,川砂利,砕石,山砂,砕砂)でアルカリシリカ反応性試験(化学
法(JIS A 1145-2001)およびモルタルバー法(JIS A 1146-2001))における試験結果の現状を述
べ,さらに北陸地方を代表する 17 種類の骨材を対象として, 4 種類の試験法にて実施した骨材
のアルカリシリカ反応性の判定結果
(化学法
(JIS A 1145-2001)
,モルタルバー法
(JIS A 1145-2001)
,
促進モルタルバー法(ASTM C 1260-1994,デンマーク法)
)の整合性を検討した.
また,北陸地方の主要な反応性骨材は,第三紀中新世前期~中期の海底で噴出し,熱水変質を
- 149 -
第6章 結 論
受けて緑色(ないし雑色)を呈する火山岩を主とする地層(グリーンタフ)からの安山岩,流紋
岩および凝灰岩であり,これらの続成作用により,同じ岩種でもアルカリシリカ反応性をもつも
のや非反応性の骨材が複雑に混入していた.代表的な反応性骨材である安山岩(川砂利,
砕石)は,
反応性鉱物である火山ガラスやクリストバライトを含むとともに,とくに石川県能登産の安山岩
砕石では,風化・変質の課程で生成した粘土鉱物(モンモリロナイト,バーミキュライト)も含
有しているものが多くあった.また,安山岩中の長石および火山ガラス相は多くのアルカリ(Na)
を含有しており,骨材からのアルカリの溶出が長期にわたり ASR の進行を助長している可能性が
あった.さらに,北陸地方の骨材は,化学法(JIS A 1145-2001)の判定で「無害」と「無害でない」
との境界線付近にあるものが多くあった.化学法(JIS A 1145-2001)で「無害」と判定された骨
材でもモルタルバー法(JIS A 1146-2001)で「無害でない」と判定されたものがあり,モルタル
バー法(JIS A 1146-2001)の判定結果は,必ずしも構造物の ASR 損傷状況と一致しなかった.そ
れに対して,試験的に導入した促進モルタルバー法(デンマーク法)の判定結果は構造物の ASR
損傷状況と良く一致していた.また,構造物から採取したコアの力学的性質として,圧縮強度と
静弾性係数を調べることにより構造物の ASR 損傷度を推定することができた.この結果,同一の
経過年数でも安山岩砕石(石川県能登産)を使用したコンクリートは川砂利(富山産)を使用し
たのものよりも圧縮強度に対する静弾性係数の低下が顕著であった.
第 3 章「北陸地方で産出する骨材からのアルカリ溶出性状とアルカリシリカ反応に及ぼす影
響に関する研究」では,北陸地方とその周辺地域の 27 種の細骨材(川砂 15 種,浜砂 3 種,陸砂
3 種,砕石 6 種)を温度 38℃の飽和水酸化カルシウム(Ca(OH)2)溶液に浸せきした.その後,浸
せき日数とともに水酸化カルシウム(Ca(OH)2)溶液中のナトリウムイオン(Na+)およびカリウ
ムイオン(K+)の濃度変化を分析し,骨材からのアルカリ溶出性状について検討した.また,北
陸地方の 1972~1985 年に建設された道路構造物(福井県,石川県,富山県,新潟県)の橋台 23
基,橋脚 4 基,カルバートボックス 1 基の合計 28 基から,コンクリート試料を採取し,コンク
リートのアルカリ量(Na2O+0.658K2O)の現状を調査した.また,アルカリの起源をセメントと骨
材とに分類し,構造物の ASR 劣化度や岩種含有率との関係を調べるとともに偏光顕微鏡にて砂の
岩種を特定したうえで,EPMA により骨材からのアルカリの溶出状況について分析した.
骨材からのアルカリ溶出性状に関しては,川砂にはアルカリシリカ反応性がある火山系岩石
(安山岩,流紋岩,凝灰岩)が含有されており,河川水系ごとにそれらの含有率が大きく相違し
た.とくに,火山岩(安山岩および流紋岩)や長石類を多く含む川砂ほどアルカリの溶出量が増
大し,川砂からのアルカリ溶出量(Na2O+0.658K2O)は,コンクリート 1m3 に換算すると,最大 0.5
kg/m3 に相当した.また,地域ごとの岩種構成の相違により,新潟県や石川県の川砂は,浸せき期
間 91 日までに溶出が収束するものが多いのに対し,富山県や長野県の川砂では浸せき期間 91 日
以 後 も 増 加す る も のが多 か っ た .さ ら に ,陸砂 よ り 浜 砂の 方 で 比較的 多 く の アル カ リ量
(Na2O+0.658K2O)が溶出し,滋賀県や三重県の砂岩砕石や花崗岩砕石からもアルカリ溶出が確認
された.アルカリ溶出性状として,ナトリウム(Na2O)は長期にわたり水酸化カルシウム(Ca(OH)2)
溶液に溶出するのに対して,カリウム(K2O)は早期に溶出が収束する傾向があり,ナトリウム
(Na2O)の溶出性状が長期にわたるアルカリ溶出量(Na2O+0.658K2O)に大きな影響を与えるもの
と考えられた.また,化学法(JIS A 1145-2001)におけるアルカリ濃度減少量(Rc)と骨材から
のアルカリ溶出量(Na2O+0.658K2O)との間には負の相関性があり,川砂中のアルカリが化学法(JIS
- 150 -
第6章 結 論
A 1145-2001)の試験中にも一部,溶出していることが確認された.
構造物における骨材からのアルカリ溶出の検証に関して,コンクリートのアルカリの起源をセ
メントと骨材とに区別した結果,骨材の全アルカリ量(Na2O+0.658K2O)の推定値は,0.4~4.8kg/m3
となった.セメントのアルカリだけでなく骨材のアルカリも考慮し,アルカリの総量規制値を見
直す必要性があった.また,コンクリートのアルカリ量(Na2O+0.658K2O)が多いものほど構造物
の ASR 劣化度が増大し,コンクリートの水溶性アルカリ量(Na2O+0.658K2O)が 2kg/m3 程度でも
ASR の発生が実際に確認された.さらに低アルカリ形セメント((Na2O+0.658K2O)が 0.6%以下)
を使用した場合にも,骨材のアルカリにより,ASR が発生する可能性があった.構造物で使用さ
れた骨材で,偏光顕微鏡により長石の変質が確認されるとともに,火成岩および変成岩の含有率
が増加するほど骨材の全アルカリ量(Na2O+0.658K2O)が増大した.このことは川砂におけるアル
カリ溶出性状試験の結果とも一致した.
EPMA によるアルカリ分布状況に関して,偏光顕微鏡により確認された長石の変質部分ではア
ルカリ濃度(Na,K)が低く,早期にアルカリが溶出する傾向が考えられた.また,川砂のアルカ
リ溶出性状試験の傾向から,早期のカリウム(K2O)の溶出は火山ガラスからのものであり,溶液
の浸透に伴い,ナトリウム(Na2O)が長期にわたり溶出することが推察された.また,アリカリ
溶出性状試験後において,ナトリウム(Na)が残存していたことから,長期にわたりナトリウム
(Na)の溶出が継続し,コンクリート中のアルカリ濃度(Na2O+0.658K2O)を上昇することが想定
された.
第 4 章「コンクリートのアルカリシリカ反応性の評価に関する研究」では,北陸地方を代表す
る河川流域から 27 種類の川砂,川砂利を採取し,岩種含有率を把握したうえで普通セメントおよ
び高炉セメント B 種によりブロックを作製した.このブロックより,コア(φ100 ㎜,φ55 ㎜)
を採取し,コアの促進養生試験(ASTM 法(温度 80℃の1N・NaOH 溶液浸せき)およびデンマーク
法(温度 50℃の飽和 NaCl 溶液浸せき)
)を実施した.また,ASR を促進した大型 RC 試験体(φ800
㎜,H=1500mm)を作製し,7 年間屋外暴露を行い,ASR による挙動を追跡した.この挙動を把握し
たうえで 3 種類のコアの促進養生試験(JCI-DD2 法,ASTM 法,デンマーク法)を適用し,コアの
残存膨張性試験の結果との整合性について検討した.また,コアの促進養生試験(ASTM 法)にお
いて,養生温度および水酸化ナトリウム(NaOH)溶液の濃度を変化させ,その膨張特性について
比較検討した.さらに構造物から採取したコアに対し,養生条件,温度 80℃の1N・NaOH 溶液浸
せき法と温度 40℃の 0.5N・NaOH 溶液浸せき法の比較を行い,その妥当性についても検討した.
河川産骨材を用いたブロックより採取したコアの促進養生試験(ASTM 法,デンマーク法)に
よる残存膨張性の評価では,北陸地方の生コンクリートプラントで実際に使用されている川砂,
川砂利を岩種判定した結果,反応性の火山系岩石(安山岩,流紋岩,凝灰岩)および堆積岩(頁
岩,チャート)が確認され,その含有量が河川水系ごとで大きく異なっている実態が把握される
とともに,アルカリシリカ反応性の試験結果(化学法(JIS A 1145-2001)およびモルタルバー法
(JIS A 1146-2001)
)で「無害」と「無害でない」ものが混在していた.また,主要な反応性骨
材である安山岩には,反応性鉱物としてクリストバライト,トリジマイトが含有され,コンクリ
ート中の安山岩の含有率が 10%以下の場合には,コアの促進養生試験(ASTM 法)では骨材の寸法
やコア径により膨張率が最大となるペシマム混合率が存在した.コアの促進養生試験(ASTM 法)
の膨張率は,反応性岩種の含有率(安山岩,流紋岩,凝灰岩,頁岩およびチャートの合計)との
- 151 -
第6章 結 論
間に正の相関が認められ,
骨材の最大寸法 25mm の場合にはコア径φ55mm を,
骨材の最大寸法 40mm
の場合にはコア径φ100mm を選択することが適当であった.一方,コアの促進養生試験(デンマ
ーク法)では安山岩の含有率が 10%以下ではペシマム混合率は存在せず,安山岩の含有率に比例
して膨張率が大きくなった.コアの膨張率は,コア径や骨材の最大寸法に関係なく,安山岩,頁
岩およびチャートの含有率と高い相関が認められた.安山岩が主要な反応性骨材である北陸地方
では,コアの促進養生試験(デンマーク法)によりコンクリートのアルカリシリカ反応性を正確
に評価できることが示された.これらのことより,ブロックから採取したコアの膨張率を促進養
生条件下(温度 80℃の 1N・NaOH 溶液浸せき,温度 50℃の飽和 NaCl 溶液浸せき)で測定すること
により,セメントと骨材の各種組合せや混合セメントの使用を考慮したコンクリートのアルカリ
シリカ反応性を迅速に評価することが可能であった.
大型 RC 試験体より採取したコアの促進養生試験による残存膨張性の評価に関して,無補強試
験体(CC)では,ASR による内部膨張により,水平方向で約 0.8%の膨張率に達したのに対し,鋼
板巻立て試験体(SP)の水平方向および鉛直方向の膨張率は約 0.3%に収まっていた.無補強試験
体(CC)では 7 年間で ASR による膨張が収束しているのに対し,鋼板巻立て試験体(SP)では ASR
膨張余力が残存していた.この結果を参考にコアの促進養生試験(JCI-DD2 法(試験日数 91 日)
,
ASTM 法(試験日数 21 日)
)の結果を照合したところ,大型 RC 試験体の残存膨張性に対する判定
規準値の整合性が確認された.
コアの促進養生試験(ASTM 法)における測定条件とコアの膨張率の関係について,水酸化ナ
トリウム(NaOH)溶液の濃度および養生温度が大きくなるほどコアの膨張率が増加する傾向があ
ったが,養生温度が 40℃以下の場合には,水酸化ナトリウム(NaOH)溶液の濃度に関係なくコア
の膨張率の相違は小さくなった.また,ASR ゲルの SEM-EDX より,温度 80℃の1N・NaOH 溶液浸
せき条件では,浸せきが長期になると ASR ゲルの流動化および分解による ASR ゲルの化学組成の
変化が認められた.この結果をもとに,構造物から採取したコアの評価に関して,コアの促進養
生試験(ASTM 法)の新しい養生条件として,温度 40℃の 0.5N・NaOH 溶液への浸せき法を提案し
実用化した.試験結果では,温度 40℃の 0.5N・NaOH 溶液への浸せき法は,コアの膨張性状が温
度 80℃の1N・NaOH 溶液への浸せき法に比較して,構造物の ASR 損傷状況の観察結果とよく適合
した.今後,他の反応性骨材でのデータを蓄積することにより,コンクリートの残存膨張性の評
価が明確になるものと考えられた.
以上より,コアを使用したコンクリートのアルカリシリカ反応性の評価法の提案に関して,コ
アを使用したコンクリートのアルカリシリカ反応性における品質管理の手順を提案した.
第 5 章「道路構造物の ASR 損傷度とコンクリートの残存膨張性の評価に関する研究」では,北
陸地方の道路構造物(橋台 25 基,橋脚 8 基,フーチング 2 基,上部工 2 基,カルバートボックス
6 基,トンネル 1 基)を対象に,建設時に使用したコンクリートの川砂利を河川水系別に区分し,
ASR による劣化度を分類するとともに,コアを採取して,川砂利の岩種含有率,コンクリートの
アルカリ量(Na2O+0.658K2O)および塩化物イオン濃度(Cl-)を調べた.また,ASR 発生の有無お
よびコアの残存膨張性を確認するために,2 種類のコアの促進養生試験法(ASTM 法,デンマーク
法)の適用性を検討した.さらに,構造物のひび割れ箇所にコンタクトゲージプラグを取付け(各
面に計 10 箇所程度),コンタクトゲージプラグ間の距離をコンタクトミクロンゲージにより定期
的に 3~6 年にわたり測定し,コアの促進養生試験結果との関係について検討した.
- 152 -
第6章 結 論
構造物から採取したコアにより,反応性骨材として,火山系岩石(安山岩,流紋岩,凝灰岩)
および堆積岩(チャート)が確認され,その含有率は河川水系ごとで大きく相違した.とくに安
山岩の含有率が増加するほど,ASR 劣化度が増加する傾向があった.なお,ASR 劣化度Ⅲ(ASR の
ひび割れ大)における平均の安山岩の含有率は約 10%であり,反応性鉱物としてクリストバライ
トを含有する安山岩では約 10%の含有率でペシマム混合率を有することが確認された.しかし,
安山岩の含有率が約 10%でも ASR 劣化度Ⅰ(ASR のひび割れなし)の構造物も確認された.この
原因として,コンクリート中のアルカリ量(Na2O+0.658K2O)
,水分の供給程度,凍結防止剤の影
響等の違いや安山岩のできた年代により,安山岩の含有鉱物が異なったことが考えられた.
また,コアから作成した研磨薄片を偏光顕微鏡により観察することにより,反応リムの形成,
ひび割れの発生状況およびゲルの状況など ASR の進行を詳細に確認することができた.偏光顕微
鏡観察による ASR の劣化度判定は有効な手法であった.
ASR による道路構造物の損傷は北陸地方特有の気象条件の影響を受けるとともに,路面に散布
された塩化ナトリウム(NaCl)の浸透により ASR および凍害の複合的な劣化が進行していた.ま
た,厳しい塩分環境下に置かれた道路構造物では,低アルカリ形セメント((Na2O+0.658K2O)が
0.6%以下)を使用した場合でも,外部からの塩化ナトリウム(NaCl)の浸透による影響で ASR
の損傷が発生した事例が確認された.さらに,建設時のアルカリ量((Na2O+0.658K2O)とくに高
アルカリセメントに由来)が多いものほど,ASR 劣化度が増加する傾向があった.
北陸地方の特色として外来塩分や骨材からのアルカリ溶出の現状を踏まえ,外部からアルカリ
を供給するコアの促進養生試験法(ASTM 法,デンマーク法)が有効な手法と考えられた.コアの
残存膨張性の判定は,それぞれ試験日数 21 日および 91 日で 0.10%以上の膨張率を基準とするの
が有効であり,コアの促進養生試験(ASTM 法)による試験日数 21 日とコアの促進養生試験(デ
ンマーク法)による試験日数 91 日の結果には良好な対応関係があった.
ASR によるひび割れは,構造物の表面部と内部での膨張率の差および鉄筋の拘束を反映した形
で発生していることが推察された.
このため,
構造物の鉄筋量を考慮し,
コアの促進養生試験
(ASTM
法,デンマーク法)から,5 年後の構造物の膨張率を推定することができた.
- 153 -
第6章 結 論
6.2 今後の課題と展望
本研究は,北陸地方の反応性骨材の岩石・鉱物学的特徴とその分布を明らかにし,この地方に
適した ASR 評価法を提案することを目的として,日本における ASR 関係の試験法の現状や海外の
試験法を取入れた結果について述べた.本研究により北陸地方における ASR の特徴のすべてが,
明らかとなったわけではなく,今後も継続的な研究が必要と思われる.以下に本研究で明らかに
できなったことやさらに検討が必要と思われることを挙げ,今後の課題と展望とする.
本研究では,構造物を対象とした調査をいくつか実施した.この中には建設時におけるデータ
が不足したものがあったことから,分析に多額の費用を要したものがあった.今後,増大する社
会資本を効率的に維持管理していくには,建設時のデータはもちろん,維持管理段階で実施した
調査や補修の記録等を集約するデータベースの構築が必要であろう.
構造物から採取したコアの評価に関して,コアの促進養生試験(ASTM 法)の新しい養生条件と
して,温度 40℃の 0.5N・NaOH 溶液浸せき法を提案し実用化した.この結果,コアの膨張性状が
温度 80℃の1N・NaOH 溶液浸せき法に比較して,温度 40℃の 0.5N・NaOH 溶液への浸せき法の方
で構造物の ASR 損傷状況の観察結果とよく適合した.今後,他の反応性骨材でのデータを蓄積す
ることにより,コンクリートの残存膨張性の評価が明確にできるものと思われる.
促進モルタルバー法(デンマーク法)およびコアの促進養生試験(デンマーク法)は,北陸地
方の反応性骨材を評価するうえで有効な試験法であった.しかし,本試験の判定に 3 ヶ月が必要
であった.試験期間を短縮し,評価結果を早期に得られる判定基準の設置も必要と思われる.
構造物での膨張挙動は,最長 6 年間,計測した.この結果,膨張は直線的に増加し,ASR が収
束する様子は見られなかった.さらに長期的なモニタリングを実施し,ASR の収束時期を見極め
るともに,ASR ゲルの成分との関係,骨材のひび割れや反応リムとの関係について調べ,ASR の収
束時期を予測する研究が必要と思われる.
構造物の建設前に行うアリカリシリカ反応性試験法の化学法(JIS A 1145-2001)およびモル
タルバー法(JIS A 1146-2001)は,北陸地方の反応性骨材を十分に評価できず,ASR を発生する
可能性が考えられた.また,地区ごとで岩石・鉱物学的にも特異なケースや多種多様な岩種の混
在が認められることから,全国一律の規準で反応性骨材の管理をすることは非常に困難なものが
あり,その地方独特の評価法が必要と考えられた.一つのアプローチとして,促進モルタルバー
法(ASTM C 1260-1994,デンマーク法)を取り入れ,一部の骨材で良好な試験結果が得られた.
今後,試料数を増やし,北陸地方に適した反応性骨材を評価するための判定基準を設けることが
必要と思われる.
化学法,モルタルバー法(JIS A 1146-2001)および促進モルタルバー法は,使用骨材ごとの
評価を行なうものである.しかし,ASR の発生は,骨材とセメントを組合せたコンクリートから
のものである.本研究では,予め反応性骨材の含有量を把握したうえで作成したブロックから採
取したコアに対し,促進養生試験(ASTM 法,デンマーク法)を適用した.この結果,反応性骨材
の含有率とコアの膨張率の間には相関関係が見られ,実際のコンクリートにおけるアルカリシリ
カ反応性試験法として適用できるものと考えた.また,混合セメントにおける ASR 抑制効果の検
証もできた.一方,建設から 20 年以上経過した ASR 損傷構造物で採取したコアにて検証した残存
膨張性の有無の判定基準値は,コアの促進養生試験(ASTM 法,デンマーク法)でそれぞれ試験日
数 21 および試験日数 91 日で 0.1%を提案した.これは ASR が進行し,コア内部にひび割れが発生
- 154 -
第6章 結 論
しているものが対象であり,比較的容易にコア深部まで溶液が浸透することが推察された.練上
がりから間もないコンクリートでは,ASR が発生したコアに比較してセメントと骨材のマトリッ
クスが緻密であり,溶液の浸透量が異なる可能性が考えられた.ブロックからコアを採取して行
うアルカリシリカ反応性の判定基準値は,今後,検討することが必要と考える.
骨材からのアリカリ溶出性状について,いくつかの検証をおこなった.第 3 章で述べたように
骨材のアルカリ溶出は,アルカリ濃度の高い火山岩が分布する北陸地方のみならず,関西地区や
中部地区において同様な傾向が確認された.アルカリ溶出がほとんどないものは,純粋な石灰岩
だけであった.骨材のアルカリ量が増加するに従い構造物の ASR 劣化度も増加する傾向もあった
ことら,アルカリ総量規制に骨材からのアルカリを考慮する必要性を述べた.なお,この値は,
地区ごとに相違することから,今後データ数を増やし,データベース化することによって,地区
ごとのアルカリ総量規制値を設けることが重要と考えられる.
平成 9 年より公共工事のコスト縮減が取り組まれている.一方で,第 2 次世界大戦後,急激に
増加した社会資本ストックが更新時期を迎えるものも多くある.高度化した社会では,主要な公
共構造物を取壊し,新たに建設することは社会的に大きな制限を受け,困難なものが多い.この
ため,現状の構造物を如何に長持ちさせるかが,重要な課題となる.ASR 構造物もしかりである.
また,どの時点でどのような調査を行い,どのような対策を実施すべきなのかが,明確になって
いない.とくに ASR の進行は緩やかであることから,長期にわたる監視が必要となるが,一方で
公共工事のコスト削減の面から,より経済的な調査手法,モニタリング手法および補修工法の選
定が重要であると考える.
ASR の問題解決には,セメント化学,材料科学,金属学,コンクリート工学,構造工学,維持
管理工学などのような種々の専門分野との連携が必要と思われる.この研究が,わが国の ASR の
研究の一助になることを切に希望し,本論文の結語とする.
- 155 -
第6章 結 論
謝
辞
本研究の遂行ならびに本論文の取りまとめにあたりまして,金沢大学大学院 自然科学研究科
環境科学専攻 教授 鳥居和之博士にご指導とご教示を賜りました.ここに深甚なる感謝の意を表
します.また,本研究の遂行におきましては,平成 16 年 3 月に退官された元金沢大学工学部土木
建設工学科 教授 川村満紀博士(現 株式会社クエストエンジニア社長)にご指導を賜りました.
さらに,本論文の取りまとめに際しましては,金沢大学大学院 自然科学研究科 環境科学専攻 教
授 北浦 勝博士,同 教授 梶川康男博士,同 教授 前川幸次博士,愛知工業大学 工学部 都市環
境学科 土木工学専攻 教授 森野奎二博士にご指導を賜りました.ここに,こころより感謝とお礼
を申し上げます.
金沢大学への入学の機会を与えて頂きました株式会社クエストエンジニア 前 吉田 博社長,
小林 肇副社長,本江裕之常務,青山實伸土木調査設計部部長に,こころより感謝とお礼を申し
上げます.大学のゼミの際,業務のやりくりをして頂いた清澤宗義土木調査設計課長および土木
調査設計課の方々に,こころより感謝とお礼を申し上げます.さらに,金沢大学大学院 自然科学
研究科 博士後期課程の在籍中に実施した研究に関しまして,金沢大学大学院 自然科学研究科専
攻 技官 山戸博晃,元 大学院 社会基盤工学専攻 本田貴子氏(現 東京都葛飾区役所)
,同 大橋
勇気氏(現 西松建設㈱)
,大学院 社会基盤工学専攻 南 善導氏,株式会社クエストエンジニア
試験研究室 坂井香織氏および山崎文子氏に実験において,多大なご協力を頂きました.こころよ
り感謝とお礼を申し上げます.
元日本道路公団(現 NEXCO 中日本高速道路株式会社および東日本高速道路株式会社)における
北陸地方の塩害や ASR に関する業務の多くは,
元 北陸道路エンジニア株式会社 田中徹也部長
(現
株式会社興和)が中心となり,調査や評価を行ってきた経緯がありました.約 10 年前,筆者がそ
の業務を引継ぐことになりました.終始暖かいご指導を頂きました田中徹也氏に,こころより感
謝とお礼を申し上げます.本論文は,その業務の一部と金沢大学大学院 自然科学研究科 博士後
期課程在籍中に実施した研究の成果を取りまとめたものです.本論文のきっかけとなったのは,
ある学会の講演会を聞きに行った際,
その論文の多くが室内実験の結果によるものでありました.
率直な意見として,実際の構造物との乖離が大きいように思えました.業務上,構造物から生の
データを得られ立場にあったことから,このギャップの現状を公開することが責務であると考え
ました.調査結果について,論文の投稿許可を頂きました元日本道路公団および NEXCO 中日本高
速道路株式会社の関係者の方々に,こころより感謝とお礼を申し上げます.また,ASR の試験法
や岩石・鉱物学的な面から多くのアドバイスを頂きました川崎地質株式会社 片山哲哉氏に,ここ
ろより感謝とお礼を申し上げます.ASR は,日本だけではなく,世界各国で発生しています.国
際学会での発表の際,英語の発音やアクセントについて,終始丁寧にご指導いただきました早川
芳子氏に,こころより感謝とお礼を申し上げます.また,筆者の健康管理や支えになってくれた
妻 直子,息子 恭平,両親,祖母に,こころより感謝とお礼を申し上げます.
このように,本論文の作成には多くの方々のご指導やご協力がありました.皆様から頂いた教
えを生涯こころに刻み,さらなる研鑽をするつもりであります.最後にこれまで貴重なご意見,
ご指導いただいた皆様に,あらためて感謝とお礼を申し上げます.
- 156 -
第6章 結 論
参考論文・副論文
(1) 参考論文
1) 野村昌弘,平
俊勝,鳥居和之:コアによるコンクリート構造物のアルカリシリカ反応の判
定,コンクリート工学年次論文集,Vol.23,No.1,pp.1147-1152, 2001.
2) M.Nomura, T.Matsuda, M.Aoyama, K.Torii: Case Study on Deterioration of Concrete in
Structures due to Alkali-Silica Reaction(ASR) in Salt Environment and its Evaluation
Methods, Proc. of the 11th AREAS & REAAA Conference, Cairns, CD-R 14 pages, 2003.
3) 鳥居和之,野村昌弘,本田貴子:北陸地方の反応性骨材の岩石学的特徴と骨材のアルカリシ
リカ反応性試験の適合性,土木学会論文集,No.767/V-64,pp.185-197, 2004.
4) 鳥居和之,野村昌弘,山戸博晃,本田貴子:促進養生試験による骨材のアルカリシリカ反応
性の評価,コンクリート工学年次論文集, Vol.26, No.1, pp.945-950, 2004.
5) 野村昌弘,鳥居和之,青山實伸:北陸地方の河川産骨材を使用したコンクリートのアルカリ
シリカ反応性の評価法の開発, 材料, Vol.53, No.10, pp.1065-1070, 2004.
6) M.Nomura, K.Torii:Proposal for Evaluation Method of Assessing Alkali-Silica Reactivity
of Concrete by Accelerated Curing Testing,Proc. of the ConMat’05. 3rd International
Conference on Construction Materials, Vancouver, CD-R 10 pages, 2005.
7) 野村昌弘,鳥居和之:促進養生試験によるコアの ASR 残存膨張性の評価,セメント・コンク
リート論文集,No.59, pp.139-145, 2005.
8) 野村昌弘,西谷直人,清水隆司,鳥居和之:実構造物における骨材からのアルカリ溶出の検
証,コンクリート工学年次論文集,Vol.28, No.1, pp791-796, 2006.
9) 鳥居和之,野村昌弘:コンクリートコアによる ASR 残存膨張性の評価,セメント・コンクリー
ト,No.715,pp.64-70, 2006.
10) M.Nomura, K.Torii:Evaluation of Expansion Capacity of Concrete Cores from ASR-Affected
Structures under Different Storage Conditions, Proc. of the 22nd ARRB Conference,
Canberra, CD-R 11 pages, 2006.
11) 鳥居和之,野村昌弘,南 善導:北陸地方の川砂のアルカリシリカ反応性とアルカリ溶出性
状, セメント・コンクリート論文集,No.60, pp.390-395, 2006.
- 157 -
第6章 結 論
(2) 副論文
1) 野村昌弘,前田好裕,石村勝則,平 俊勝:北陸自動車道大慶寺川橋での電気防食試験の評
価,コンクリート工学,Vol.37,No.12,pp.17-21,1999.
2) T. Hira, M. Nomura, H. Kinbara:Repair of Concrete Bridges Damaged by Corrosion of steel
Bars in Coastal, Proc. of the 10th AREAS & REAAA Conference, Tokyo, CD-R 11pages, 2000.
3) M.Aoyama, M. Nomura, K.Sakamoto, K.Torii :Countermeasures against Chloride-induced
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