直接雇用、終身雇用で正社員を育成 国内の付加価値の高い仕事に

エイベックス 株式会社
【 製造業 】/愛知県
直接雇用、終身雇用で正社員を育成
国内の付加価値の高い仕事にこだわる
工場内には30年を超える設備も現役で稼動する。
毎年6月に外部を招いた「経営指針発表会」が行われる。 「共育デー」
では社員が相互に技術を教えあう。
う。そして、営業と技術者が一緒になって新規開拓を行
の乖離が生じないよう、方針管理体系図化に基づいた社
「削る」技術は、様々な分野で需要があり、受身ではなく
い、現場では血の滲むような改善活動を日々行い、何とか
員への経営理念の浸透を徹底している。毎月行われてい
スピードと技術力で勝負することで、新規と既存顧客両
逆境を乗り越えることが出来た。技術水準の高い国内で
る
「企業変革支援プログラム」では、
経営層とグループ責任
方の数を増やしている。
生き残るには、付加価値の高い仕事をしなければならな
者が教育を実施し、
毎月の「社長報告会」にて経営理念に
技術の原理原則を理解するため、同社では、
あえて中
エイベックス株式会社は、1949年、愛知県名古屋市で
い。そのために、直接雇用、終身雇用で正社員を育成す
基づいた活動の必要性を社長から社員に伝えている。
古設備の修繕を社員達が行い、内製化を図っている。
そ
創業した。精密部品の製造からスタートし、現在では、国
ることは、同社にとって不可欠であった。
「方針策定」では経営層とグループ責任者約10名で
れは単なる設備費用の抑制に留まらず、ベテラン社員と
内外自動車メーカーの駆動系部品の精密切削・研削加
宿泊合宿を行い、
中長期経営の改新、年度グループ方針
若手社員がタッグを組むことで、設備を分解・再構築する
工などの輸送用機器の製造を行っている。同社は、国内
中小企業や製造業に対して、
良い印象を築ける活動を支援
の作成を行う。
「計画策定」では経営層・グループ責任者
過程を通じ、技術の伝承を促しているのである。
この取組
とチームリーダーまで含めた約50名で合宿を実施、次年
により、緊急の顧客注文に対しても柔軟な生産対応を行
度グループ方針に向けたチームの活動計画の策定を行
うことができている。
また、
自社での修理保全により、一般
っている。
またそれらの報告の場として、毎年6月に全社員
的な設備耐用年数が9年のところ、30年以上稼動してい
ずみを抑えることが出来ている。
多様化する人材採用の中、100%自社採用を行うため
参加の「経営指針発表会」を、外部を招いて開催してい
る設備も多数存在し、磨かれた技術力により、高付加価
自動車の自動変速機(AT)の構成部品は、世界でも
に、同社ではインターンシップで地元高校・大学生の受け
る。活動の進捗状況を各会議で確認出来る仕組みだ。
値な製品を提供している。
高いシェアを誇っているが、製造販売だけでなく、工場見
入れを毎年20名、10年以上続けている。
また、地元で採
人材育成では、
「個人目標管理シート」により、社員自ら
同社では、現場社員を「作業者」ではなく
「技能員」
と
学を有償で行い、
ビジネスの一つとして海外メーカーに積
用した60才以上の社員も20名以上在籍し、
その内、70才
目標を持ち、
自ら考えて実行する人材を増やすための育
呼ぶことにより、常に業務の効率化を図る意識を社員に
極的に売り出している。
以上が5名現役で働いている。
また障がい者や主婦の雇
成ツールとして活用している。
また研修についても、社員
持たせている。年2回「共育デー」
と称し、生産ラインをす
同社の経営理念は、
「 私たちは常に良品を生産するこ
用も積極的に行い、特に女性については、2020年までに
が自ら受講したい研修を選択して受講することができる。
べて停止し、全社一斉で技術向上に関する教育を行う。
とを追及し、社会に役に立つ企業として努力します」であ
40%の雇用目標を掲げている。
以前は会社の都合で研修を実施していたが、それを改
技能員が一人ひとり様々な業務を執り行えるよう社員同
り、社員を大切にする経営を常に心掛けている。2008年リ
こうした採用を行えるのも、同社が地域・社会との交流
め、研修テーマを社内でアンケートをとり、
どのようなテーマ
士が相互に教え、教わることで「多能工化」の推進に力
ーマンショックでは、中部地域でも例外なく景気が厳しい
を積極的に行っているからこそ実現できており、近隣の行
で研修を受けたいか、講師は誰にしたいかを含め研修を
を入れている。
また営業と現場が一体となり、顧客のニー
状況となり、同社の売上げは最も高かった頃と比べて7割
事への参加や協賛はもとより、近隣大学と連携し、工場や
企画する形にした。社員が教えて、社員が学ぶ体制が実
ズに合わせた試作を迅速に行う体制が整えられている。
も減少し、当時は毎月赤字を計上していた。そのような状
経営者との交流の場を設けている。中小企業や製造業
現されている。
ここまでくるには、長い時間がかかったが、
まじめにコツ
況から現代表取締役社長の加藤丈典氏は、当時、社長
に対して良い印象を持ってもらう支援には、同社は協力を
コツ、地道な活動が、地域に認められてきた同社は、確か
であった父にリストラを進言したところ、
「首切りは絶対に
惜しまない。
な技術力と多様な人材で、
これからも地域に愛される企
やっちゃいかん。地域で飯を食べている以上、雇用には
急成長に伴う人材採用により、社員数はここ10年で3
一切手を出すな」
と返ってきた言葉にハッと気づいたとい
倍に増加している。社員増加によって経営理念や方針と
どんなに厳しくても、雇用は守り抜く
人を大事にする経営が、そこにはあった
の自社生産にこだわっている。
ここ10年で業績は4倍に伸
びているが、持続的な成長を一番に考え、
「質を高める
経営」にシフトしたことによって業績拡大による社内のひ
中古設備のリストアで、設備を内製化
ここが若手社員への技術伝承の場となる
業を目指している。
同社の取引先は、大手自動車部品メーカーが主体だ
が、大手以外からの仕事も近年急増している。同社の
会社
概要
同社の精密切削・研削加工の技術は様々なシーンで使われる。
有償で行っている工場見学。
アジアや欧米など海外からの問い合わせや見学依頼が多い。
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・法人名:エイベックス株式会社
・代表者:加藤 丈典 代表取締役社長
・所在地:名古屋市瑞穂区内浜町26番3号
・設立年月:1953年6月
・資本金:10,000,000円
・ホームページ:http://www.avex-inc.co.jp/
・社員数:正規185名、パート・アルバイトなど175名
・事業内容:「輸送用機器製造業」国内外自動車メーカーの
駆動系部品の精密切削・研削加工
(直径2∼50mm、全長10∼100mmの金属精密加工)
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