内側枠付きアルミブレース工法により補強した鉄筋コンクリート造骨組の静的破壊実験 (その1)静的加力実験 Static Test of Reinforced Concrete Frame Model with Aluminum Framed... (Part1) Static Test

内側枠付きアルミブレース工法により補強した鉄筋コンクリート造骨組の静的破壊実験
(その1)静的加力実験
Static Test of Reinforced Concrete Frame Model with Aluminum Framed Brace
藤井研究室
(Part1) Static Test
0724049
0724099
岩渕 拓也
川口 貴大
1.はじめに
1995 年の兵庫県南部地震をきっかけとして,1981
年以前に建てられた既存鉄筋コンクリート造(以下 RC
造)建築物の耐震補強が実施されている.従来の耐震補
強では,RC 造の耐震壁や枠付き鉄骨ブレースの増設
による強度の上昇を意図した補強工法が広く採用され
ている.一方,アルミニウム合金は鋼材に比べて軽く
耐食性に優れるという利点があるものの,高価である
事の他,鋼材と比べて柔らかいため,耐震補強への利
用は少ない.そこで本研究では,内側枠付きアルミブ
図-1
レース工法により補強した RC 造骨組の静的破壊実験
No.1 試験体( RC 骨組+アルミ枠)
を行い,破壊性状を検討する.
2.試験体と実験方法
2.1
試験体概要
本研究で検討対象とする試験体は,実物の 1/2 の 1
層 1 スパンの試験体 3 体である.図-1 から図-3 に本実
験の試験体を示す.図-1 の No.1 試験体は,RC 骨組に
アルミ枠を設置した試験体,No.2 試験体と No.3 試験
体は No.1 試験体にそれぞれチャンネルブレース
(A6N01-T5)とパイプブレース(A7003-T5)を設置した試
験体である.柱スパンは 3000mm,柱内法高さは
1500mm,柱断面は 300mm×300mm,梁断面は
図-2
No.2 試験体( RC 骨組+チャンネルブレース)
400mm×500mm である.使用鉄筋は主筋では異形鉄筋
(D10),帯筋では丸鋼(φ6),使用コンクリートの強度は
Fc=15MPa である.枠材に使用したアルミニウム合金
は A6N01-T5 を使用し,2 つのチャンネル組立て断面
とガセットハイテンションボルト(F10T)で接合する.
接合部は,せん断負担アンカー(1-D13 接着系,柱側
120mm ピッチ,梁側 160 mm ピッチ,SD345)とアルミ
スタッド(2-呼び径 φ12,柱側 120mm ピッチ,梁側
160mm ピッチ,A6061-T6)で間接接合する.
2.2
加力計画・計測計画
加力方法ならびに加力装置は図-4 に示す.本実験
図-3
No.3 試験体( RC 骨組+パイプブレース)
では,枠付きアルミブレースを設置した RC 骨組の基
本的な性状の把握を目的としているため,柱に軸力を
作用させず,水平方向に加力する事とした.ここで,
上梁の材軸での水平変位を上梁と基礎梁の材軸間距離
(=2000 mm)で除したものを層間変形角 R と定義して,
変位制御による加力を行った.
3.実験結果
3.1
実験経過
図-5 に各試験体の加力サイクルを示す.まず No.1
試験体については,R=1/800 で正負 1 サイクル加力し
図-4
加力装置
た後,R=1/400,1/250,1/150,1/100 まで正負 2 サ
0.04
イクルずつ加力した後,1/30 まで正側 1 方向に加力
で正負 1 サイクル加力した後,R=1/500,1/250,1/150,
1/100 まで正負 2 サイクル加力して終了した.
なお,No.2 試験体では R=1/150 の 2 サイクル目(正
加力)の途中で RC 躯体と下枠の間のずれを計測して
いた変位計が外れて計測不能となった.同様に No.3
No.1試験体
0.03
層間変形角R(rad)
した.一方,No.2 試験体と No.3 試験体は R=1/800
No.2試験体
0.02
No.3試験体
0.01
0
-0.01
試験体においても R=1/100 の 1 サイクル目(負加力)
の時に,No.2 試験体と同様に下枠のずれを計測して
-0.02
0
100
いた変位計が外れて計測不能となった.
3.2
200
図-5
300
計測ステップ
400
500
載荷履歴
破壊性状
図-6 から図-8 に各試験体のひび割れ図を示す.図
-6 より,No.1 試験体では柱脚部に大きな斜めひび割
れが見られる他,柱と縦枠の接合部のモルタルにも
ひび割れが見られた.一方,ブレースを設置してい
る No.2 試験体と No.3 試験体(図-7,図-8)では柱脚部
に大きな斜めひび割れが見られる他,下枠と基礎梁
の接合部のモルタルで大きな剥離が生じた.これは,
R=1/100 での加力時に下枠ですべり破壊が生じたた
めである.なお,No.2 試験体についてはブレースの
降伏および座屈は生じなかったが,No.3 試験体につ
いては溶接部に降伏が生じた.加えて,両試験体に
おいて下枠で大きな浮きが生じた.
表-1 に実験結果の要約を示す.No.1 試験体では,
図-6
No.1 試験体のひび割れ図
柱主筋降伏後も急激な耐力低下が生じる事はなく
R=30×10-3rad で荷重が最大となった.次いで,No.2
試験体では R=6×10-3rad で荷重が最大となり,その
後 耐 力 低 下 が 生 じ た . 加 え て , No.3 試 験 体 で は
R=10×10-3rad で荷重が最大となるものの,その後の
サイクルで耐力低下が生じた.
4.まとめ
本研究では,内側枠付きアルミブレース工法によ
り補強した RC 造骨組の静的破壊実験を行った.そ
の結果,本実験でのアルミブレース付試験体では,
下枠の浮きが顕著となり,最終的には下枠と基礎梁
との接合部ですべり破壊が生じた.
謝辞
図-7
No.2 試験体のひび割れ図
図-8
No.3 試験体のひび割れ図
本研究の実施にあたり,千葉工業大学教授の石橋
一彦先生,株式会社 NIPPO 様,株式会社住軽日軽エ
ンジニアリング様より,ご指導を頂きました.ここ
に謝意を示す.
表-1
実験結果の要約
最大荷重
(kN)
No.1
正加力
最大荷重時変形
最大変位
(×10⁻³rad)
(×10⁻³rad)
負加力 正加力 負加力
296.6
-290.0
30.08
-9.99
34.29
No.2
745.8
-792.7
6.48
-6.68
10.13
No.3
724.4
-785.3
10.01
-6.70
10.04
600