【PDF】精神科病棟における身体ケア及び身体合併症ケアに関する調査結果

精神科病棟における
身体ケア及び身体合併症ケアに関する調査
報
告
書
平成27年3月31日
一般社団法人 日本精神科看護協会
はじめに
厚生労働省検討会「長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策の今後の方向
性」のとりまとめ(平成26年7月14日)において、精神科救急・急性期、回復期以外の入
院期間1年以上の患者が利用する病床は、入院医療の必要性が低いという考え方が示され
ました。
しかしながら現実的には、精神科病院の臨床では入院期間1年以上の患者の中に、身体
合併症に対する医療・看護や、身体ケアの必要性が高い患者が多く含まれています。臨
床の看護者からは、身体合併症等の看護に要する時間や労力は、年々増加しているとい
う声が多く聞かれます。
日本精神科看護協会は、上記検討会の中でそのような実態を説明し、身体合併症の治
療・看護等に必要な病床機能と人員配置の検討が欠かせないことを指摘しました。その
結果、別途検討することが報告書に明記されました。
そこで、今後の診療報酬改定等に向けた検討の基礎的資料とするために、精神科病床
における身体合併症を有する患者の実態把握を目的とした調査を実施しました。
調査対象施設となった皆様のご協力により、当初の予想を大幅に上回る回答をいただ
き、身体合併症等の全体像を把握する精度の高い貴重なデータが得られました。
この場をお借りして厚く御礼を申し上げます。
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目 次
頁
はじめに
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1
調査設計
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3
調査対象の属性
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4
まとめと考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8
本
編 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1.現在治療・看護を要している身体合併症 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2.処置やモニタリングの実施状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1)褥瘡処置の状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2)尿量測定の状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3)呼吸ケアの状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4)点滴ラインの状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5)栄養管理の状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
6)心電図モニターの状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
7)身体科医師によるその他の処置の状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3.日常の基本動作(ADL)の可否 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1)寝返りの可否 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2)起き上がりの可否 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3)座位保持の可否 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4)食事摂取の可否 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4.危険行動の有無 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
参考資料
調査票
17
18
22
22
25
29
33
37
41
44
47
47
50
53
56
59
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 62
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 73
-2-
調査設計
調査目的
精神科病棟において医療の必要性が高い身体合併症を有する患者が増加している実態を明らかにする。
調査方法
アンケート調査(郵送)
調査対象
全国の精神科病院の中から無作為に抽出した100施設を対象に3,000通の調査票を郵送。
調査票が不足の場合はコピーで対応してもらうこととしたところ、2,436票を回収し、計22,355名の
患者データを収集した。
調査項目
調査主体
調査期間
2014年12月1日~2015年3月31日
1.病棟について
1)病棟種別
2)病棟病床数
3)内科医数(院内全体)
4)看護スタッフ数(病棟)
2.患者について
1)性別・年齢
2)主たる精神疾患
3)入院期間
4)過去1年間における身体合併症の治療を目的とした転院の状況
5)現在治療・看護を要している身体合併症
6)処置やモニタリングの実施状況
7)日常の基本動作(ADL)の可否
8)危険行動の有無
一般社団法人
日本精神科看護協会
〈調査検討委員〉
吉川隆博(業務執行理事、東海大学健康科学部)、天賀谷隆(副会長、獨協医科大学看護学部)
吉浜文洋(業務執行理事、仏教大学保健医療技術学部)、畠山卓也(業務執行理事、公益財団法人井之頭病院)
尾形和恵(理事、社会医療法人智徳会未来の風せいわ病院)
奥山 修 (理事、地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府精神医療センター)
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調査対象の属性
属
1.入院患者
性
年
別
性
齢
年
-5-
別(病棟種別)
齢(病棟種別)
性
属
主たる精神疾患(病棟種別)
主たる精神疾患
入院期間
入院期間(病棟種別)
-6-
性
属
転院の状況
2.病棟
病棟種別
内科医の有無(院内全体)
-7-
性
まとめと考察
まとめと考察
1.現在治療・看護を要する身体合併症
図-2 治療・看護を要する身体合併症の内訳
図-1 治療・看護を要する身体合併症を有する患者の状況
現在治療・看護を要する身体合併症を有する患者の割合は31.5%であり、精神科病院に入院している患者のほぼ3人に1人が何らかの身体
合併症を併発している状況が窺われる。これは定床50床の病棟で考えると、ほぼ16人が何らかの身体合併症を併発していることになる。
身体合併症の内訳をみると、身体合併症を有する患者の中で糖尿病を併発している患者の割合が26.8%(入院患者全体を母数とすると
8.5%)で突出して高い。糖尿病は、Ⅰ型の患者の場合はインスリンによる血糖管理が必要であり、Ⅱ型の一部の患者でもインスリンやGLP-1
といった注射を定期的に実施しなければならない。また、糖尿病性腎症や糖尿病性網膜症をはじめとする合併症の発症に細心の注意を払う必
要があり、看護ケア量が大きい疾患の一つと言える。これに虚血性心疾患が10.2%(入院患者全体を母数とすると3.2%)、肝炎が7.6%(入
院患者全体を母数とすると2.4%)、脳血管疾患が7.3%(入院患者全体を母数とすると2.3%)と続いている。
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まとめと考察
図-4 治療・看護を要す身体合併症を有する患者の状況(精神疾患別)
図-3 治療・看護を要す身体合併症を有する患者の状況(病棟種別)
現在治療・看護を要す身体合併症を有する患者の割合を病棟種別にみると、精神科救急・合併症入院料(92.3%)を除くと認知症疾患治療
病棟入院料が44.5%で最も高く、これに精神病棟入院基本料が34.5%、精神療養病棟入院料が26.4%、精神科急性期治療病棟入院料が26.0%
で続いている。精神科病棟に入院中の身体合併症を併発している患者は、認知症疾患治療病棟入院料ではほぼ2人に1人に及んでおり、精神
病棟入院基本料では3人に1人以上、精神療養病棟入院料、精神科急性期治療病棟入院料では4人に1人以上となっている。
続いて現在治療・看護を要す身体合併症を有する患者の割合を主たる精神疾患別にみると、アルコール使用障害の患者が48.3%で最も高く、
これに認知症が45.1%、気分障害が28.6%、統合失調症が26.3%と続いている。精神科病棟に入院中の身体合併症を併発している患者は、ア
ルコール使用障害患者と認知症患者ではほぼ2人に1人に及んでおり、気分障害患者と統合失調症患者では4人に1人以上となっている。
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まとめと考察
図-5 治療・看護を要す身体合併症を有する患者の状況(内科医の有無別)
現在治療・看護を要す身体合併症を有する患者の割合を内科医の有無別にみると、内科医がいる施設で33.5%であり、内科医がいない施設
の24.6%を上回っている。
考察
精神科病院の入院患者の概ね3人に1人が、治療・看護を要する身体合併症があることが明らかになったが、合併症の内
訳で「その他」の回答が5割を超えていたことから、身体合併症の内容等を細かく把握するためには、さらなる調査が必要
であると思われる。
精神科病院では、身体合併症や高齢者(認知症)の専門病棟以外においても、身体合併症を有する患者が2~3割入院して
いることが明らかになった。元来、精神病棟入院基本料や精神療養病棟入院料には、身体合併症に対応する体制が確保され
ていないことから、病棟内では身体合併症の患者に看護ケアとマンパワーが集中することが推察される。そのような状況で
は、地域移行支援等に取り組む時間やマンパワーの減退が生じることが危惧される。
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まとめと考察
2.処置やモニタリングの実施状況
処置やモニタリングの実施状況について調査したところ、褥
瘡処置、尿量測定、呼吸ケア、点滴ライン、栄養管理、心電図
モニターの実施率はいずれも5%未満であり、これらの処置や
モニタリングを実施している患者割合は低いという結果であっ
た。
図-6 処置やモニタリングの実施状況
①褥瘡処置
褥瘡処置を実施している患者の割合は2.2%であった。ただし、
肺炎を併発している患者の18.6%、腎炎を併発している患者の
12.1%に褥瘡処置を実施しており、肺炎や腎炎の併発患者には
比較的高率に実施されている状況があった。
②尿量測定
尿量測定を実施している患者の割合は3.3%であった。ただし、
腎炎を併発している患者の30.2%、肺炎を併発している患者の
29.1%、がんを併発している患者の11.1%に尿量測定を実施し
ており、特に腎炎や肺炎の併発患者には高率に実施されている
状況があった。
③呼吸ケア
呼吸ケアを実施している患者の割合は1.4%であった。ただし、肺炎を併発している患者の33.8%に呼吸ケアを実施しており、肺炎の併発
患者には高率に実施されている状況があった。
④点滴ライン
点滴ラインを実施している患者の割合は3.5%であった。ただし、肺炎を併発している患者の56.4%、腎炎を併発している患者の17.2%、
脳血管疾患を併発している患者の12.4%、肝炎を併発している患者の9.5%、がんを併発している患者の9.2%に点滴ラインを実施しており、
特に肺炎の併発患者にはかなり高率に実施されている状況があった。
また、主たる精神疾患が認知症の患者についてみると、点滴ラインを実施している患者の割合が9.1%であり、ほぼ10人に1人が点滴ライン
を実施していた。
-12-
まとめと考察
⑤栄養管理
栄養管理を実施している患者の割合は4.7%であった。ただし、肺炎を併発している患者の48.5%、腎炎を併発している患者の17.2%、脳
血管疾患を併発している患者の16.9%、がんを併発している患者の9.4%、虚血性心疾患を併発している患者の7.9%に栄養管理を実施してお
り、特に肺炎の併発患者にはかなり高率に実施されている状況があった。
また、主たる精神疾患が認知症の患者についてみると、栄養管理を実施している患者の割合が13.6%であり、10人に1人以上が栄養管理を
実施していた。
⑥心電図モニター
心電図モニターを実施している患者の割合は0.7%であった。ただし、肺炎を併発している患者の11.1%に心電図モニターを実施しており、
肺炎の併発患者には比較的高率に実施されている状況があった。
⑦その他の処置やモニタリング
その他の処置やモニタリングを実施している患者の割合は5.8%であった。ただし、腎炎を併発している患者の26.7%、肺炎を併発してい
る患者の26.0%、がんを併発している患者の18.9%、脳血管疾患を併発している患者の17.3%、喘息を併発している患者の15.5%、虚血性心
疾患を併発している患者の14.3%にその他の処置やモニタリングを実施しており、特に腎炎や肺炎の併発患者には高率に実施されている状況
があった。
考察
処置やモニタリングは、いずれも5%未満であったが、現状の精神科病棟の機能・人員等の体制(特に夜勤帯)で実施し
ている状況を考えると、単純に少ないとは評価できない。
-13-
まとめと考察
3.日常の基本動作(ADL)の可否
表-1 日常の基本動作の可否の状況
寝返り
起き上がり
座位保持
(○:自力でできる ×:自力でできない)
食事摂取
いずれか1項目以上の動作を自力でできない
全ての動作を
自力でできない
3項目の動作を
自力でできない
2項目の動作を
自力でできない
1項目の動作を
自力でできない
患者数
比率
3103
13.9%
5.9%
×
×
×
×
1313
×
×
×
○
317
×
×
○
×
113
×
○
×
×
13
○
×
×
×
165
×
×
○
○
212
○
○
×
×
51
×
○
×
○
11
○
×
○
×
43
×
○
○
×
9
○
×
×
○
196
×
○
○
○
56
○
×
○
○
271
○
○
×
○
92
○
○
○
×
241
2.7%
2.3%
3.0%
(n=22355)
寝返り、起き上がり、座位保持、食事摂取といった日常の基本動作(ADL)の可否について調査したところ、これらの動作のいずれも
自力でできない患者の割合は5.9%、これらの動作のうち3項目が自力でできない患者の割合が2.7%、同じく2項目が自力でできない患者
の割合が2.3%、同じく1項目だけが自力でできない患者の割合が3.0%であった。
また、いずれか1項目以上の動作を自力でできない患者の割合は13.9%であり、精神科病棟の10人に1人以上が寝返り、起き上がり、座
位保持、食事摂取のいずれかが自力でできず、20人に1人以上がこれらの動作のいずれもできないという状況が推察される。
-14-
まとめと考察
①寝返り
自力で寝返りをうてない患者の割合は9.1%であり、精神科病棟に入院している患者全体のほぼ10人に1人が自力で寝返りをうてないとい
う状況が推察される。病棟種別にみると、同割合は認知症疾患治療病棟入院料で22.1%、精神病棟入院基本料で11.4%であり、自力で寝返
りをうてない患者は、認知症疾患治療病棟入院料では5人に1人以上、精神病棟入院基本料では10人に1人以上となっている。
これを身体合併症別にみると、肺炎を併発している患者の53.6%、脳血管疾患を併発している患者の28.7%、腎炎を併発している患者の
25.0%、骨折を併発している患者の20.6%が自力で寝返りをうてず、特に肺炎の併発患者ではかなり高率になっている。
また、主たる精神疾患が認知症の患者についてみると、自力で寝返りをうてない患者の割合が29.1%であり、精神科病院に入院中の認知
症患者の4人に1人以上が自力で寝返りをうてない状況であることが推察される。
②起き上がり
自力で起き上がれない患者の割合は11.8%であり、精神科病棟に入院している患者全体の10人に1人以上が自力で起き上がれない状況で
あるということができる。病棟種別にみると、同割合は認知症疾患治療病棟入院料で28.9%、精神病棟入院基本料で14.3%であり、自力で
起き上がれない患者は、認知症疾患治療病棟入院料では5人に1人以上、精神病棟入院基本料では10人に1人以上となっている。
これを身体合併症別にみると、肺炎を併発している患者の60.6%、脳血管疾患を併発している患者の36.7%、腎炎を併発している患者の
32.8%、骨折を併発している患者の28.3%が自力で起き上がれず、特に肺炎の併発患者ではかなり高率になっている。
また、主たる精神疾患が認知症の患者についてみると、自力で起き上がれない患者の割合が35.3%であり、精神科病院に入院中の認知症
患者の3人に1人以上が自力で起き上がれないとみられる。
③座位保持
座位の姿勢を自力で保てない患者の割合は9.7%であり、精神科病棟に入院している患者全体のほぼ10人に1人が座位の姿勢を自力で保て
ない状態であるとこが推察される。病棟種別にみると、同割合は認知症疾患治療病棟入院料で20.9%、精神病棟入院基本料で12.4%であり、
座位の姿勢を自力で保てない患者は、認知症疾患治療病棟入院料では5人に1人以上、精神病棟入院基本料では10人に1人以上となってい
る。
これを身体合併症別にみると、肺炎を併発している患者の56.4%、脳血管疾患を併発している患者の31.7%、腎炎を併発している患者の
31.0%が座位の姿勢を自力で保てず、特に肺炎の併発患者ではかなり高率になっている。
また、主たる精神疾患が認知症の患者についてみると、座位の姿勢を自力で保てない患者の割合が27.8%であり、精神科病院に入院中の
認知症患者の4人に1人以上が座位の姿勢を自力で保てない状態であるとこが推察される。
④食事摂取
食事を自力で摂れない患者の割合は8.7%であり、精神科病棟に入院している患者全体のほぼ10人に1人が食事を自力で摂れない状態であ
るとこが推察される。病棟種別にみると、同割合は認知症疾患治療病棟入院料で20.3%、精神病棟入院基本料で11.2%であり、食事を自力
で摂れない患者は、認知症疾患治療病棟入院料では5人に1人以上、精神病棟入院基本料では10人に1人以上となっている。
これを身体合併症別にみると、肺炎を併発している患者の60.1%、脳血管疾患を併発している患者の29.5%、腎炎を併発している患者の
27.6%が自力で食事を摂れず、特に肺炎の併発患者ではかなり高率になっている。
また、主たる精神疾患が認知症の患者についてみると、食事を自力で摂れない患者の割合が26.5%であり、精神科病院に入院中の認知症
患者の4人に1人以上が食事を自力で摂れない状態であるとこが推察される。
-15-
まとめと考察
4.危険行動の有無
図-8 危険行動の有無(病棟種別)
図-7 危険行動の有無
危険行動がある患者の割合は21.3%であり、精神科病棟に入院している患者全体の5人に1人以上に危険行動があるという状況が推察でき
る。これは定床50床の病棟で考えると、10人以上の患者に危険行動があるということを示している。病棟種別にみると、同割合は認知症疾患
治療病棟入院料で42.6%、精神病棟入院基本料で21.5%、精神科急性期治療病棟入院料で20.7%であり、危険行動がある患者は、認知症疾患
治療病棟入院料ではほぼ2人に1人、精神病棟入院基本料と精神科急性期治療病棟入院料では5人に1人以上となっている。
これを身体合併症別にみると、脳血管疾患を併発している患者の43.5%、肺炎を併発している患者の42.5%に危険行動があり、これらの疾
患を併発している患者では比較的高率になっている。
また、主たる精神疾患別にみると、危険行動がある患者の割合が認知症の患者で37.6%、統合失調症の患者で18.3%であり、精神科病院に
入院中の認知症患者の3人に1人以上、統合失調症患者のほぼ5人に1人に危険行動があるとみることができる。
考察
精神病棟入院基本料で10人に1人以上の患者が、寝返り、起き上がり、坐位保持等に援助が必要であるという状況では、
精神科の専門療法や地域移行支援等に、看護者の労力やマンパワーが集中できないということである。
また、危険行動がある患者が2割を超えるという状況は、精神障害者の特性を反映する結果であると思われる。処置やモ
ニタリングの件数は少なくても、ひとり一人の患者に対する説明や観察等に労力とマンパワーを要することが推察される。
-16-