2.5


肝臓は1200~1400gの大きな臓器。
画面には収まらないので、区域ごとに分けて観
察しなければならない。
 死角も多いので多方向から観察する。

初歩から始める超音波検査室から引用
肝臓の端にプローブを置いて「あおり」「扇」「水
平」走査をおこなう。
 プローブ1個分をずらして繰り返す。
 肋間走査は「扇」走査をおこなう。

初歩から始める超音波検査室から引用
1 びまん性肝疾患
脂肪肝、急性・慢性肝炎、肝硬変...
2 腫瘤性病変
血管腫、腺腫、限局性結節性過形成、
肝細胞癌、転移性肝癌...
 肝の大きさ
 肝の輪郭
 内部エコーの変化
 肝内脈管の変化
 腫瘤性病変の有無
視野深度15㎝で肝がはみ出てしまう時
尾状葉がIVCを圧迫している時
表面
肝縁
裏面
高周波プローブで脾と比べる
強く押す
やさしくあてる
同じ患者の肝臓でも、押し方ひとつで
こんなに見た目が変わる







肝腫大がみられることがある。
肝実質エコーレベルが低下することがある。
胆嚢内腔の虚脱および胆嚢壁の肥厚がみられるこ
とがある。
肝門部リンパ節の腫大を伴うこともある。
脾腫を伴うことが多い。
腹水がみられることもある。
伝染性単核症(主にEBウイルスやサイトメガロウイルスの初
感染が原因でおこる感染症)は肝機能障害が高率に認めら
れ、急性肝炎を併発することがある。超音波検査では肝腫
大、脾腫、肝門部リンパ節の腫大を認めることが多い。胆嚢
内腔の虚脱や壁肥厚はみられないことが多い。
エコーレベル低下?
リンパ節腫大
胆嚢内腔狭小化
 肝実質エコーレベルの上昇
 肝腎コントラストの上昇
 深部減衰
 肝内脈管の不明瞭化
 fatty bandless sign(masking sign)
(肝と胆嚢と、肝と右腎との境界が不明瞭になること)
脂肪沈着が高度になるにつれ全ての所見を満たす
実質エコーレベルの上昇(+)
 肝腎コントラストの上昇(±)
 深部減衰(±)
 肝内脈管の不明瞭化(-)
 fatty bandless sign(-)

5項目中、該当2
実質エコーレベルの上昇(+)
 肝腎コントラストの上昇(+)
 深部減衰(+)
 肝内脈管の不明瞭化(±)
 fatty bandless sign(±)

5項目中、該当4
1 びまん性肝疾患
脂肪肝、急性・慢性肝炎、肝硬変...
2 腫瘤性病変
血管腫、腺腫、限局性結節性過形成、
肝細胞癌、転移性肝癌...
肝血管腫
肝細胞癌
限局性結節性過形成
転移性肝腫瘍
肝膿瘍
肝内胆管癌
部位
 形状(サイズ) 円形・類円形・不整形・・・
 境界(境界部) 低エコー帯・高エコー帯
 内部エコー 均一・不均一
 血流 分布・波形(動脈性・静脈性・RI) 境界部または輪郭
辺縁
 側方陰影・後方エコー
境界

周辺
腫瘤
69歳男性、CTにて肝S5にLDAを指摘。精査目的
にUSが依頼された。(CTでは血管腫の診断)
 肝炎ウイルス陰性、肝機能正常。

A5から腫瘤辺縁と腫瘤中心に向かう血流信号
+
腫瘤内から肝静脈に合流する血流信号
間違いなく動脈波形
・肝S5に形状やや不整形、23×23×25㎜の充実性腫瘤。
・境界明瞭でやや不整、辺縁高エコー帯を認める。
・腫瘤の内部は不均一でやや高エコー。
・側方陰影(-)、後方エコー不変。
・腫瘤の辺縁に流入する動脈血流を認める。また一方
の動脈血流は、腫瘤の中心から辺縁へ放射状に伸び
る分布を呈する。
・背景肝に肝硬変をはじめびまん性肝疾患を疑う所見
は指摘できない。
考えられる疾患:AVシャントを伴った血管腫、限局性結
節性過形成(FNH)、肝細胞癌(HCC)
動脈相
辺縁部を中心に早期濃染
肝細胞造影相
肝実質より明瞭な低信号
肝細胞特異性Gd(ガドリニウム)造影剤
経静脈的な投与後、当初は血管内腔から細胞外液腔に分布するが、数分後から肝細胞に
特異的に集積し、胆汁内に排泄される。このため肝細胞造影相では肝実質の信号が強く上
昇し、胆汁排泄能のない腫瘤性病変は低信号に描出される。
9MHzの高周波コンベックスプローブ使用
サイズ・性状・血流分布ともに変化なし

①海綿状血管腫 ②毛細血管腫 ③動静脈型血管
腫 ④静脈型血管腫があり、多くは①である。
組織学的には内皮細胞に囲まれた血管腔から
形成され、大小様々な腔に血液を貯蔵している。
各血管腔の周囲には線維性隔壁がみられ、特徴
的な海綿状の形態を示す。
 肝内血管短絡路には、APシャント、AVシャントお
よびVPシャントがある。APシャントは血管腫を含
む良性腫瘍で20%に認められる。

血管腫に特徴的な糸ミミズサイン:内部にモゾモゾ動く部位を認める
無エコー、充実性と様々である
混濁があれば出血か膿瘍を疑う
巨大嚢胞はアーチファクトに注意

総胆管とは上部胆管(総
肝管)と胆嚢管と合流し
て総胆管となる。

細かく言えば、胆管の拡
張基準は総肝管が4㎜
以下、下部胆管が7㎜以
下とされている。
胆嚢は西洋梨のような形。
 胆嚢の1/3は胆嚢窩に結合織によって付着してい
て、残りの2/3は漿膜で覆われている。
 胆嚢の大きさは長径60~80㎜、短径20~30㎜。

胆嚢壁は粘膜層、粘膜下層、筋層からなり、厚み
は3㎜以下。
 通常、エコーでは層構造として
描出できない。

一般的に頸部は肋間走査で底部は肋弓下走査
で描出能が良いとされている。
 短軸断面での丁寧な走査が見逃しをなくす。

結石か腫瘤かを区別できること。
 体位変換をして移動性を確認。
 隆起性腫瘤の形状評価。
 壁肥厚の評価。


近医より紹介の50歳代女性。
数年前から胆嚢ポリープをフォローしていたが、
最近サイズが大きくなったので精査依頼。
 CT、MRI等での精査を希望。
 情報提供書にエコー画像の添付なし。
 まずはエコーで状況把握。

音響陰影(-) ポリープ???
PDI
ADF
SMI
70歳代の女性。
 9月中旬頃から心窩部痛が持続。

近医でCT施行し胆嚢腫大の所見あり、当院消
化器内科紹介。(胆石は指摘できず)
 まずはエコーで状況把握。
 ただし朝食は抜いてこなかった。

少し形が変わったような?
35秒後・・・底部にベタっと張り付く
底部側にゆっくり移動
これで胆石確定!
肝外胆管結石:食後の腹痛精査
左側臥位で膵内にゆっくり移動
一般的に頸部は肋間走査で底部は肋弓下走査
で描出能が良いとされている。
 短軸断面での丁寧な走査が見逃しをなくす。

結石か腫瘤かを区別できること。
 体位変換をして移動性を確認。
 隆起性腫瘤の形状評価。
 壁肥厚の評価。

形状
有茎性隆起型・広基性隆起型・壁肥厚型。
 エコーレベル
高エコー・点状高エコー集合・等~低エコー。
 付着の仕方
遊離型・遊離~接触・有茎型・広基型。

※サイズ 10㎜を超えると約3割に癌がみつかる。
2ヶ月後に胆摘:底部型腺筋腫症(ADM)と診断された
大きなRASを伴った限局型胆嚢腺筋腫症(底部型)
胆嚢癌
胆嚢腺筋腫症(ADM)
表面平滑で層構造明瞭
表面やや不整、内部不均一エコー、外層高エコー帯不明瞭
癌ができると収縮能が低下
↓
結果的に結石やdebrisができやすくなる
壁の3層構造とRASあり
胆嚢腫大と結石+debris⇒急性胆嚢炎
内腔は狭小化⇒急性肝炎
肝内胆管は1㎜以下
で門脈と並走。
 左右肝管は3㎜以下。
 左右肝管が合流して総肝管となる。

総肝管は門脈の右腹側を走行しているが、総
胆管においては徐々に門脈から右外側かつ背
側に離れ、膵頭部の背側を走行するようになる。
「逆くの字」をイメージして走査する。
 肝外胆管は7㎜以下とされるが、加齢や胆摘で
径が増す傾向がある。

初歩から始める超音波検査室から引用
治療困難な患者さんに減黄目的に留置
ステント内部には充実部分が充満
高齢者で痩せ形、腰が曲がっている
 入院10日目(入院翌日から絶食)
 急激な胆道系酵素の上昇
 原因疾患ありますか?
 ポータブルでお願いします
 なるべく午前中にお願いします

入院が長引くとガスエコーで
描出不良なことが多い
結石キター!
通常呼吸時
息止め時

後腹膜に存在し、長さ15㎝くらいで重量が75g。
膵の発生は、腹側膵と背側膵から生じて、その発育
途中で融合がみられ、最終的に腹側背側膵、そして
背側に腹側膵(鉤部)が位置する。
 膵の区分は頭部、体部、尾部に3区分される。
 頭部30㎜未満、体部20㎜未満、尾部15㎜未満。

膵管2.5㎜以下
初歩から始める超音波検査室から引用
腹側膵:低エコーに描出されることがある
胎生5週の早い時期に腹側膵が腸管となる原基を軸にして180°回転して
背側膵と癒合し、生まれる時には一つの膵臓として認識される。
長軸面で「へ」の字様に描出され、短軸面では
扁平状を呈するが、尾部はやや丸みを帯びる。
 膵の腫大は、頭部30㎜以上、体部20㎜以上、
尾部15㎜以上。(個人差大)
全体腫大、限局性腫大、萎縮に分類。
 エコーレベルは高、低、無エコーに分類。


膵実質のエコーパターンは正常では比較的均
一な構造を呈している。エコーパターンの変化
は点状エコー(微細な高エコー)、斑状エコー
(高低混在のまだら状)、限局低エコーに分類。

主膵管と副膵管があるが、対象は主膵管。

比較的描出が容易な膵体部の膵管を描出し、
膵管径と膵管形態を評価する。膵管に対して超
音波を垂直に当てて内腔を計測する。正常値
は2.5㎜未満。

拡張膵管の形態は平滑拡張、不整拡張、数珠
状拡張に分類。
平滑
膵管がちょっと目立つと思ったら計測してみる
不整
数珠状
急性膵炎
 慢性膵炎
 膵嚢胞

日本超音波医学会 膵癌超音波診断基準より抜粋
1.直接所見
①膵のびまん性および限局性腫大
②膵輪郭の不明瞭化
③膵実質のエコーレベル低下(軽症例)
④膵実質エコーの混合パターン(重症例)
⑤主膵管は正常あるいは軽度の拡張に留まる
2.間接所見
①膵周囲の低エコー域または液体貯留
②膵仮性嚢胞
③胸水、腹水
④胃や腸管の麻痺性変化(十二指腸の浮腫性肥厚)
⑤門脈の圧排や血栓
体尾部の実質が不均一
尾部は腫大?
液体貯留
確診所見
①膵石:音響陰影を伴う高エコー
準確診所見
①膵の腫大と萎縮:腫大するが、線維化が進むと
萎縮する
②膵管の不整な拡張:膵体部の内腔径で3㎜以上
③輪郭の不規則な凹凸
④仮性嚢胞
膵実質の萎縮とエコーレベル上昇
拡張した膵管内に結石
表面凹凸不整
膵実質の萎縮と点状高エコー
境界部に反射エコー(+) 内部無エコー 後方エコー増強
脾門部からのみ描出可能
境界部に反射エコー(-)
5月29日
11月27日
血流信号は検出できず?
Metastasis of renal cell carcinoma to pancreas
1.直接所見
①低エコーを呈する腫瘤
②膵実質との境界部(輪郭)が不明瞭
③腫瘤の辺縁は不整
④腫瘤の内部は不均一
⑤後方エコーの減衰
2.間接所見
①腫瘤の尾側膵管の拡張
②拡張した膵管は数珠状あるいは平滑拡張
③胆管の拡張
④随伴性膵炎による腫瘤より尾側の膵萎縮
⑤周囲の血管への浸潤
境界部やや不明瞭で不整
脾動脈と接し、上腸間膜静脈の血流を遮断
尾側膵管の拡張
胃浸潤とリンパ節転移
十二指腸水平部に浸潤を疑う
脾動静脈に接している
①小さな腫瘍では境界明瞭で辺縁平滑
②小さな腫瘍では内部均一で低エコー
③非機能性腫瘍では大きな場合が多いので、出
血、壊死などにより内部不均一エコー
④大きな腫瘍では、内部に石灰化や嚢状変化を伴う
⑤腫瘍血管に富むことが多いため、血流が豊富に
検出されることが多い
⑥尾側膵管の拡張はみられないか、軽度の平滑
拡張に留まる
⑦膵管は圧排性の変化を受ける
①膵のびまん性あるいは限局性腫大
②病変部のエコーレベル低下
③膵表面の凹凸
④病変部の点状エコー
⑤膵管の狭細像
⑥膵周囲の脂肪織の変化
USをはじめ画像診断では膵管癌との鑑別は困難
IPMN:男性の膵頭部に好発
 MCN:女性の体尾部に好発
 SCN:中年女性の頭体部に好発 悪性は稀

それぞれ特徴的な画像を呈するので、画像のパターンを覚える
単房性か多房性か
 壁肥厚の有無
 充実部分の有無
 膵管拡張の有無および膵管の形態
 血流信号
 経過観察であれば増大の有無

角度を変えて形状を確認
多房性嚢胞
嚢胞内部に充実部分(-)
長軸面
短軸面
ブドウの房状の多房性嚢胞
嚢胞内部に充実部分
動脈性血流
単房性嚢胞内部に充実部分
血流信号(-)
膵管平滑拡張
大小さまざまな嚢胞成分
膵管は平滑拡張
豊富な動脈性血流
どこを描出しているか意識しながら検査する。
特に肝臓は大きな臓器なので門脈や肝静脈の
目印を利用して見逃しのないように。
 体位変換(側臥位・立位)を面倒がらない。
 呼吸調整。

病変の診断は、まずは画像パターンを覚えて、
それが描出できるよう訓練する。
 エコーはセンスが必要か?
