大規模サーベイに活用できる 準解析的銀河・AGN形成モデルの開発

B12a
大規模サーベイに活用できる
準解析的銀河・AGN形成モデルの開発
榎 基宏(東京経済大学)
石山智明(筑波大学 ⇒ 千葉大学)
小林正和(愛媛大学)
真喜屋龍(東京大学)
長島雅裕、大木平(文教大学)
§ 1. Introduction
HSCをはじめとする大規模サーベイは、大量の銀河や
活動銀河核(AGN)の観測データを生み出す。
このような大量のデータを解釈し、銀河やAGNの形成
と進化についての知見を引き出すためには、理論に基づ
いて作られたモデルの結果との比較が必要になる。
今回は、我々が開発している、標準的な宇宙論的構造
形成理論である階層的構造形成論に基づく準解析的銀
河・AGN形成モデル New Numerical Galaxy Catalog
(n2GC)を紹介する。
・宇宙論的構造形成理論に基づく銀河形成のシナリオ
CDM宇宙における階層的構造形成
CLUSTERLING OF DARK HALOS
ホットガス
ダークハロー
衝撃波加熱による
ホットガスの形成 銀河 (星間ガス, 星)
ホットガスの冷却・収縮
→ 星間ガスの形成
→ 星形成
→ 超新星爆発による
星間ガスの加熱
銀河同士の衝突合体
銀河の進化
銀河団ガス
銀河団の形成
銀河形成の理論モデル
・銀河の形成に係わる物理過程
ダークマターの成長、ガスの冷却、星形成、超新星
爆発によるガスの再加熱、銀河同士の合体、
超大質量ブラックホール(SMBH)の成長などなど
⇒ 様々な物理過程が絡み合っている。
⇒ 個々の物理過程を詳しく調べるだけでなく、物理過程
同士の関係、物理過程と観測量の関係を調べる必要
がある。
⇒ このような研究のために使われるモデルとしては、
宇宙論的数値流体シミュレーションや、準解析的銀
河形成モデル(Semi-analytical galaxy formation
model: SA-model)などがある。
準解析的銀河形成モデル
銀河の形成過程を、「dark halo の成長」と、「dark halo内
での星とガスの系の成長」の2段階に分けて考える。
・dark halo の形成史の構築
*モンテカルロ法 or *宇宙論的N体計算
・dark halo 内での銀河(星とガス、SMBH)の進化
*様々な物理過程を簡単にモデル化してつなげる。
数値流体シミュレーションに比べると高速に解けるので、
サンプル数が増やせる。
個々の物理過程をモジュール化しているので、いろいろ
なモデルを試すことができる。
⇒ ・統計的観測量の解釈に使う
・物理過程と観測量との関係を統合的に解析できる
New Numerical Galaxy Catalog (n2GC)
我々は、準解析的銀河・AGN形成モデル Numerical
Galaxy Catalog (nGC)を開発し、銀河・AGN形成の問題
の解析に用いてきた。
(e.g. Nagashima et al 2005, Enoki et al. 2014)
現在は、これを改良した New Numerical Galaxy Catalog
(n2GC)を開発している。
主な改良点
*超大規模宇宙論的N体計算の導入
*AGN feedback modelを導入
*Markov-Chain Monte Carlo(MCMC)を用いた
パラメータサーチが可能に
詳しくは、X11b真喜屋のポスターをご覧下さい。
§2. n2GC
・dark haloの形成史の構築
世界最高レベルの大規模かつ高精度の宇宙論的N体計
算を使用 (Ishiyama et al., PASJ in press, arXiv:1412.2860)
様々な計算体積・精度の結果を用意
→ 研究の目的に応じて使い分けることが可能
例)AGNの統計的研究
AGNの個数密度が小さいので、計算体積を大きく取
ることが本質的に重要になる。
・超大規模宇宙論的N体計算
(Ishiyama et al., PASJ in press, arXiv:1412.2860)
ハローのデータなどは
http://www2.ccs.tsukuba.
ac.jp/Astro/Members/ishi
yama/nngc/index.html
で公開中
4D2Uの新作コンテンツ
「ダークマターハローの
形成・進化(II.大規模構
造の形成)」
としても3月より公開開始
・銀河成分間の関係
galaxy
disk
disk star
star formation
cooling
cold gas
hot gas
SNe feedback
major merger
accretion
(QSO mode)
accretion
(radio mode)
starburst
bulge
bulge star
SMBH
AGN feedback
(energyのみ)
SMBHへの物質降積
・QSO mode: major merger 時にcold gas が降積
・radio mode: hot gas が降積
§ 3. n2GCのアウトプット
・銀河の光度関数@ z =0
z = 0 での銀河の光度函数、cold HI gasの質量函数
の観測結果を再現するように、銀河のモデルのパラ
メータをMCMCで決める。
・銀河の空間分布
・Mbulge– MBH 関係 @ z =0
10
MBH [ Msun]
9
8
7
model
..
Haring & Rix
McConnell & Ma
6
10
11
Mbulge [ Msun]
12
・AGN光度函数 @ z = 2
z = 2 のB-bandの観測結果を再現するようにAGNモデル
のパラメタを決める。
X-ray (2-10keV)
B-band
dn(Lx)/dlog(Lx) [h3 Mpc-3 dex-1]
 [ h3 Mpc-3 mag-1]
10-4
10-5
10-6
10-7
Model
2SLAQ&SDSS
10-8
-26
-24
MB - 5 log(h)
-22
10-2
10-3
10-4
10-5
10-6
Model
Ueda 14
10-7
10-8
43
44
45
log(LX/ erg/s)
46
・n2GCで提供できるデータ
個々の銀河の物理量のカタログ
*redshift
*空間座標
*銀河の光度
さまざまなバンドで提供できる(約100種類)
HSCのg ,r ,i , z, Y も用意
*AGNの光度
*星形成率
*cold gas mass
*バルジ、ディスクごとの星質量
*バルジ、ディスクのサイズ
*SMBHの質量
*host dark halo の質量
などなど
§4. まとめ
新しい準解析的銀河・AGN形成モデルNew Numerical
Galaxy Catalog (n2GC) を開発した。
まだ、完全にパラメタがfixできていなかったり、問題が残っていたりするけど・・・
⇒ Subaru HSCなどの大規模サーベイ観測結果との
定量的比較が可能に。
「このような形式でデータが欲しい」、「このような研究に
使えるか?」といった、ご要望、ご提案、ご質問がございま
したら、お近くのセミアナーズの面々にご相談ください。
関連する発表・論文
B13a:「準解析的銀河・AGN形成モデルを用いたAGNの
クラスタリング解析」 (大木平:文教大)
X11b:「宇宙論的銀河形成モデルによる数値銀河カタログ
の構築」 (真喜屋龍:東大)
X29a:「ν2GC Model. VI. Cosmic Near-Infrared Background
Radiation」 (小林正和:愛媛大)
S14b:「クェーサースペクトルエネルギー分布の準解析的
モデルへの導入と解析」 (白方光:北大)
Enoki et al., ApJ, 794, 60, arXiv:1408.3726
Shirakata et al., MNRAS in press, arXiv:1412.1478
Ishiyama et al., PASJ in press, arXiv:1412.2860
Makiya et al., in preparation