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有機反応化学
教養学部
統合自然科学科
本講義の教科書・参考書
•
ジョーンズ 有機化学第3版,東京化学同人
•
ピメンテル 化学結合-その量子論的理解-,東京化学同人.
•
白井光雲, 現代の熱力学,共立出版.
•
村田 滋, 光化学-基礎と応用-,東京化学同人.
•
アトキンス 物理化学,東京化学同人.
(もっとも詳しい物理化学の大学教科書の一つ。化学系を志望
しているのであれば購入してじっくり読み込むことを薦めます)
有機反応化学
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統合自然科学科
例: フェノールフタレイン
OH
HO
-
O
O
塩基
O
O
InH2
-
O
O
無色
1
序章 自然現象を分子で考える
赤色
In2-
有機反応化学
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フェノールフタレインとは
2
フェノール
O
dO
HO
OH
COOH
d-
H
d-
COOH
H+
HO
OH
C
C
H
OH
OH
COOH
フタル酸
-H2O
OH
HO
OH
HO
HO
OH
OH
O
O
フェノールフタレイン
-H2O
C
OH
COOH
COOH
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フェノールフタレインは酸である
OH
HO
-
O
O
O
O
InH2
-
O
O
無色
3
赤色
In2-
+ 2H+
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フェノールフタレイン分子の“気分”になる
4
E > Ea
E < Ea
反応して
エネルギーは
エネルギーが低くなる 低いまま
安定したまま 反応して安定化
反応できるエネルギーの分子はわずかで特定のタイミングのみ。
反応しないで運動している方が圧倒的に多く、エネルギーは低いまま。
有機反応化学
第1章 ルシャトリエ原理を考える
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反応しなくとも、分子どうしは混ざるだけで全エネルギーが
安定化する
混合前
混合直後
不安定
自発的に進行する現象
高エネルギー
状態
よく混ざった状態(平衡状態)
安定
低エネルギー
状態
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全て分子が反応すると、分子の空間的なバラツキによる
全エネルギー利得がない
混合前
混合直後
不安定
高エネルギー
状態
全分子が反応しきってしまった状態
やや不安定
は
に連結し続けるという“束縛”がある
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化学反応が平衡に達する = 全エネルギーが極小になる
混合前
混合直後
エネルギー
不安定
一部が反応
のこりはそのまま
安定
極小
全分子が反応
しきってしまった
状態
やや不安定
反応経路
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無秩序(バラツキ)と温度の関係
分子の熱運動
気体の入った容器を熱すると、壁から熱を受けとった分子が無秩序
な熱運動を行って周囲の分子にエネルギーを渡す。その結果、外部
から投入されたエネルギーは不可逆的に拡散する。この過程は、エ
ネルギーが無秩序に散逸する自然の傾向を示している。
Thigh
Tlow
エネルギーの散逸
バラツキに伴うエネルギーは温度に依存する
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エントロピー
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定義
無秩序
有機反応化学
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配置の数Wとは?
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粒子の運動エネルギーを高い順にながめる
E1, E2, E3, ・・・・
En のエネルギーを持っている粒子(同じ状態である粒子)がそれぞれ
何個あるかを考えてみる=ある粒子がエネルギーEnとなる確率を考える
E1
E2
運動エネルギーは衝突によって
粒子間でやりとりされる!
⇒やりとりのエネルギー単位をeとする
E1-ΔE
ΔE= m×e
E2+ΔE
全エネルギー ΣEn = 一定 =Me
粒子の全部の数はN個とする
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配置の数
粒子のエネルギー
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証明
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M個の飴玉(エネルギーの単位)をN人の人(粒子)に分配(配置)するとき、
ある人がx個もらうことのできる確率P(x)を考えてみる。
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無秩序で
秩序がより無くなるから
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物質のエントロピー変化
気体
液体
物質のエントロピー変
化
固体
融
点
沸
点
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反応の進行に伴うエントロピー変化
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α : 反応進行度
(0 ≦ α ≦ 1)
α= 0
α= 1
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分子1個ずつの化学反応による
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エネルギー安定化
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活性化障壁
α= 0
α= 1
Ea
エンタルピー
ポ
テ
ン
シ 反応物
ャ
ル
エ
ネ
ル
ギ
ー
発熱反応
ΔH
生成物
反応の方向
(反応座標)
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ギッブス自由エネルギー G
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定義
自然現象は
全エネルギーが
小さくなるように
進行する
温度一定で、圧力一定の場合(例:大気圧下)
Sが大きくなるほど、Gは小さくなる
Hが小さくなるほど、Gは小さくなる
圧力一定の場合(例:大気圧下)
T
 温度 が高くなるほど、
Gは小さくなる
平衡に達した状態
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反応のギッブス自由エネルギーの減少
とエントロピー増大の法則
活性化障壁
Ea
ポ
テ
ン
シ
ャ
ル
エ
ネ
ル
ギ
ー
反応物
発熱反応
ΔH
反応の方向
(反応座標)
反応容器の外界の空気が
その熱を受けて、空気の分子の
空間的バラツキが大きくなる
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吸熱反応
吸熱反応
空気の分子の空間的バラツキが小さくなる
(水蒸気の凝縮による水滴の付着など)
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外界の分子(例:空気)の空間的バラツキも変化する
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反応容器
内部
外界
・系から外界へ同じ熱量拡散しても、温度によって外界
のエントロピーの変化量は異なる。
系
熱拡散(同量)
(定義)系:境界で囲まれた内部、外界:系の外側
エ
ン
ト
ロ
ピ
ー
の
変
化
・外界の温度が高いときには、外界は既にかなり無秩序
である。系からの熱拡散は、外界をより無秩序にするため
にあまり貢献しない
→ 外界のエントロピーの増加量は少
・外界の温度が低いときには、外界は秩序的である。
系からの熱拡散は、外界をより無秩序にするために大きく
貢献する。
→ 外界のエントロピーの増加量は大
系
正負の符号に注意!
発熱反応は ΔH < 0
吸熱反応は ΔH > 0 であることを思い出そう
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大気圧下で一定の温度のもとでは
ギッブス自由エネルギーの変化量ΔG
ΔG = ΔH -T ΔS
= (-T)(-ΔH/T +ΔS)
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大気圧下で一定の温度のもとでの
自然変化のあるべき姿(タイプ1)
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系の
エントロピー 全体の
エントロピー
外界の
エントロピー
熱量
反応することによって
系の乱雑さ(無秩序)が増し、
かつ発熱過程であれば、
その反応は自発変化の
方向である。
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大気圧下で一定の温度のもとでの
自然変化のあるべき姿(タイプ2)
系の
エントロピー
全体の
エントロピー
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反応することによって
系の乱雑さ(無秩序)が減少しても、
発熱過程によってそれ以上の外界の
乱雑さ引き起こされれば、
その反応は自発変化の方向である。
外界の
エントロピー
熱量
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大気圧下で一定の温度のもとでの
自然変化のあるべき姿(タイプ3)
系の
エントロピー
全体の
エントロピー
外界の
エントロピー
熱量
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反応することによって増加する
系の乱雑さ(無秩序)が、吸熱過程
によって起こる外界の乱雑さ(無秩序)
の減少を補って余りあれば、
その反応は自発変化の方向である。
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大気圧下で一定の温度のもとでは
ΔG = ΔH -T ΔS
= (-T)(-ΔH/T +ΔS)
温度T > 0
自然(宇宙)現象は、ビッグバンが始まって以来、
ギッブスの自由エネルギーは小さくなるように進行している。(ΔG < 0)
⇔ 容器内(系)+外界=宇宙とすれば、宇宙のエントロピーは増大し続けている
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本日の講義のまとめ
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