監修のことば 文部科学省は、平成24年!月"日に「いじめ、学校安全等に関する総合的 な取組方針〜子どもの「命」を守る〜」を策定したことを発表した。いじめ に対する定義が変更された平成18年以降の通知だけでも15の文書が教育委員 会等に向けて発出されている。文部科学省の所轄研究所である国立教育政策 研究所においても、いじめ問題に関する取り組み事例集をはじめ、校内研修 用ツールなどさまざまな学校向けの支援資料を作成している。近年、いじめ 問題についての学校の対応が世上を賑わしているが、学校において参照すべ き取り組みや踏まえるべき事柄については出尽くしている感がある。 体罰においても然りである。平成25年に入ってからは、「体罰禁止の徹底 及び体罰に係る実態把握について」と題する依頼文書が各都道府県教育委員 会を通じて報告方が求められている。この中で、「教員等は部活動の指導に 当たり、いわゆる勝利至上主義に偏り、体罰を厳しい指導として正当化する ことは誤りであるという認識」を持たねばならないとしている。 それでもなおいじめは学校において対応しなければならない喫緊の課題で あり続け、学校での体罰は根絶の難しい課題であり続けている。たとえ、マ スコミ等での扱いが終息を見せても、風化させることが許される課題ではな い。学校管理職者として学校における児童生徒の安心と安全を守ることが、 これまで以上に大切な課題となっていることを改めて認識すべきである。 本年版では、論文問題、最近の教育課題の基本問題の充実に力点を置いた 改訂が行われている。いじめの未然防止と早期発見をはじめとして、体罰容 認の体質を排除するためにどうしたらよいかといった問題を設定している。 これらの他、児童虐待や教員の年代アンバランスと若手教員の育成などにつ いても取り上げている。本書の答案例はその名の通り「例」であり、地域や 学校の置かれた状況や実態によって問いへの答えは学校の数だけある。参照 すべき対応例として少しでも参考になれば幸いである。 平成25年#月 監修者 窪田 眞二 iii もくじ/索引(xvii〜) !部 傾向と対策編 1 本書の活用方法 2 第!章 第"章 第#章 第$章 第%章 ! 本書の構成・内容………2 " 選考試験の準備と本書の活用………3 平成24年度試験の概要 ! 筆答試験の内容………5 " 択一、正誤(〇×式)、穴埋め問題………5 # 記述式の問題………6 $ 論文問題………6 % 職務論文(提出論文)………7 5 平成25年度試験への対策 ! 論文問題………9 " 事例問題………15 # 択一、正誤(〇×式)、穴埋め問題………17 9 合格論文の書き方 ! 問題を読んで考える………18 " 答案の書き方、形式など………19 # 筆答試験の評価基準とその基準………21 18 面接試験の受け方 ! 面接試験に求められるもの………22 " 面接資料の作成………23 # 面接試験の方法………23 $ 面接の日に備える………28 22 目 次㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀v "部 問題編 第!章 ! 31 論文問題 32 最近の教育課題………32 基本問題 問題! いじめの未然防止と早期発見………32 問題" 児童虐待への学校の対応………34 問題# 教員の年代アンバランスと若手教員の育成………36 問題$ 教員の多忙化と学校経営………38 問題% ネット社会の進展と学校教育の役割………40 問題& 安全教育、安全管理と組織活動………42 問題' 今日の教育課題とこれからの教育委員会のあり方………44 問題( 学校におけるキャリア教育の充実………46 問題) 言語活動の充実………48 問題10 学力調査結果を活用した学校改善………50 問題11 学校と家庭との円滑な連携の実現と教員の保護者対応 ………52 問題12 自立、協働、創造の理念に基づく教育………54 問題13 学級崩壊………56 問題14 LD(学習障害)・ADHD(注意欠陥/多動性障害)・高機能自閉 症の指導・教育………59 " 学校経営・運営………61 基本問題 問題! 学校経営ビジョン………61 問題" 組織マネジメントによる学校経営………63 問題# 学校の組織運営と意思決定………65 関連問題 vi 問題! 自主的・自律的な学校運営………67 問題" 地域とともにある学校づくり………68 問題# 小中連携・一貫教育の推進………69 問題$ 特色ある学校づくり………70 問題% コミュニティ・スクールと学校経営………71 問題& 学校評議員………72 問題' 保護者の会と学校経営………73 # 問題( 校長・副校長に求められる能力………74 問題) 教職員の組織力による学校経営………75 問題10 小!プロブレム・中!ギャップ………76 問題11 小中学校における特別支援教育の取組み………77 問題12 学校の個人情報管理………78 問題13 学校の事務・施設・会計管理………79 問題14 学校徴収金(私費)会計の適正な管理………80 教職員の人事管理………81 基本問題 問題! 地域独自の教育と教員人事行政………81 問題" メンタルヘルス対応………83 問題# 学校での体罰容認の体質排除………85 問題$ 校長の職務………87 関連問題 $ 問題! 副校長及び教頭の役割………89 問題" 主幹教諭の活用………90 問題# 指導教諭の役割………91 問題$ 教職員の勤務条件………92 問題% 教員にとっての給与等の収入………93 問題& 教育職員の勤務時間の特例………94 問題' 服務の根本基準………95 問題( 職務命令………96 問題) 信用失墜行為の禁止………97 問題10 秘密を守る義務………98 問題11 教育公務員における政治的行為の制限………99 問題12 技能労務職員の労働基本権………100 問題13 教職員の営利企業等の従事制限………101 問題14 教育公務員の研修………102 児童・生徒の指導………103 基本問題 問題! 「生きる力」と学習指導要領改訂………103 問題" 生徒指導提要の改定………105 問題# 学力・体力低下への対策………107 目 次㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ vii 関連問題 問題! 基本的生活習慣の確立………109 問題" 総合的な学習の時間の指導………110 問題# 個に応じた指導………111 問題$ 道徳教育の充実・改善………112 問題% 読書活動の推進………113 問題& 高度情報通信ネットワーク社会における情報教育………114 問題' 食に関する指導………115 問題( 懲戒の範囲と体罰………116 問題) 問題行為を引き起こす児童に対する指導………117 問題10 規範意識の育成………118 問題11 学校における情報モラル教育の推進………119 問題12 不登校………120 問題13 「ネット上のいじめ」への学校の取組み対応………121 % 識 問題14 体験活動の充実………122 問題15 グローバル人材の育成………123 見………124 基本問題 問題! 教育の理念………124 問題" 学校教育の目的………126 問題# 新しい課題に対応できる学校………128 関連問題 & 問題! 教育の役割………130 問題" 学校の役割………131 問題# 家庭・地域の役割………132 問題$ 教員の役割………133 問題% 学校評議員………134 問題& 学校運営協議会………135 問題' 総実勤務時間の縮減………136 問題( 教職員の精神疾患………137 問題) 乳幼児期からの教育支援………138 教育法規………139 基本問題 問題! viii 我が国の教育に関する法規の仕組み………139 問題" 教育改革と教育法規………141 関連問題 ' 問題! 日本国憲法………143 問題" 教育基本法………144 問題# 学校教育法………145 問題$ 学校教育法施行令・施行規則………146 問題% 地方教育行政の組織及び運営に関する法律………147 問題& 学校管理規則………148 問題' 地方公務員法………149 問題( 教育公務員特例法………150 問題) 教育職員免許法………151 問題10 地方自治法………152 問題11 教育委員会の在り方………153 職務論文(提出論文)問題………154 問題! 読書活動を活用した学力向上の取組み………154 問題" 学校評価………157 問題# 部下には気心が知れた教職員が必要だと考える管理職 ………160 第"章 問題$ 子どもの体力向上………163 問題% 教育管理職としてのあり方………166 問題& 働きやすい環境づくり………169 問題' 学校におけるコンプライアンスの徹底………170 事例問題 173 問題! 若手教員の育成………173 問題" 人材イノベーションの推進………175 問題# 学校外に発出する文書………176 問題$ いじめのない学校………177 問題% 女生徒の訴えへの対応………179 問題& 教員と地方公務員法………180 問題' 東日本大震災時から学ぶ危機管理………181 問題( 教職員の退校時刻等………182 問題) 「総合的な学習の時間」の取組み………183 問題10 管理職の資質能力向上策………184 目 次㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ix 第#章 ! 短答記述問題 最近の教育課題………185 問題! 教育基本法………185 問題" 教育振興基本計画………185 問題# 伝統と文化を尊重し、国と郷土を愛する態度………186 問題$ 教育行政………187 問題% 全国学力・学習状況調査と授業改善………187 問題& キャリア教育………188 問題' 義務教育費の国庫負担………189 問題( 特別支援教育………189 問題) 特別支援学校………190 問題10 学校支援地域本部………190 問題11 児童虐待………191 問題12 食 問題13 " 育………191 高等学校の授業料無償化………192 問題14 情報モラル・リテラシー教育………192 問題15 防災教育………193 学校経営・運営………194 問題! 学校マネジメント(学校経営)………194 問題" 学校評価(自己評価、外部評価)………194 問題# 学校評議員………195 問題$ 地域運営学校(コミュニティ・スクール)………195 問題% 教員の超過勤務と多忙感………196 問題& 幼小連携・小中連携………196 問題' 個人情報の保護………197 問題( 学校の危機管理………197 問題) 学校開放・開かれた学校づくり………198 問題10 家庭、地域との連携………198 問題11 保護者等からの苦情の対応………199 問題12 中高一貫教育………199 問題13 特別支援学校のセンター的機能………200 問題14 PDCA サイクル………200 問題15 x 防災体制の確立………201 185 # $ 教職員の人事管理………201 問題! 教員免許更新制………201 問題" 副校長………202 問題# 主任制度と主幹教諭制度………202 問題$ 指導教諭………203 問題% 教員の大量退職と大量採用………203 問題& 栄養教諭………204 問題' 司書教諭………204 問題( 教員の超過勤務………205 問題) 服務の根本基準………205 問題10 初任者研修・十年経験者研修………205 問題11 教職員の精神疾患………206 問題12 学級担任交替要求への対応………206 問題13 県費負担教職員制度………207 問題14 分限処分と懲戒処分………208 問題15 教研集会への参加………208 問題16 休憩時間………208 問題17 産休と育児休業………209 問題18 教職大学院(教員養成専門職大学院)………209 問題19 職員団体………210 児童・生徒の指導………210 問題! 全国学力・学習状況調査………210 問題" 国際学力調査………211 問題# 教育委員会の指導権限………212 問題$ 教育課程の編成………212 問題% 児童・生徒の懲戒………213 問題& 児童・生徒の出席停止………214 問題' 問題行動と生徒指導のあり方………214 問題( 総合的な学習の時間………215 問題) 読書活動………216 問題10 子どもの生活習慣………216 問題11 宗教教育………217 問題12 発達障害………217 問題13 人権教育………218 問題14 児童の権利条約………219 目 次㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ xi 問題15 小学校学習指導要領………219 問題16 中学校学習指導要領………220 問題17 高等学校新学習指導要領………221 問題18 小!プロブレムと中!ギャップ………221 問題19 いじめの定義………222 問題20 懲戒と体罰………222 % & 第$章 xii 識 見………223 問題! 教育の目的………223 問題" 学校教育の役割………224 問題# 管理職のリーダーシップ………225 問題$ 学校評価の意義………225 問題% 地域に信頼される学校づくり………225 問題& 奉仕体験活動………226 教育法規………226 問題! 学習指導要領………226 問題" 指導要録………227 問題# 児童・生徒の就学義務………227 問題$ 就学校の指定と変更………228 問題% 教科書の使用義務………228 問題& 就学奨励………229 問題' 感染症に対する対応………229 問題( 校長の職務………230 問題) 教頭の職務………230 問題10 職員会議………230 問題11 教育公務員に関する規定………231 問題12 職務命令………231 問題13 学校事故………232 問題14 学校施設の目的外使用………233 問題15 教育委員会制度………233 〇×式・穴埋め問題 問題! 教育基本法………234 問題" 教育関係法令⑴………235 問題# 教育関係法令⑵………236 234 問題$ 児童・生徒の入学、進級、卒業等………237 問題% 義務教育の目標………238 問題& 特別支援教育………239 問題' 学校の管理………240 問題( 学校評議員と学校運営協議会………241 問題) 学校職員………242 問題10 教育委員会………243 問題11 県費負担教職員制度………244 問題12 研 問題13 職員の身分………246 修………245 問題14 教員の服務………247 問題15 教員免許………248 問題16 就学奨励………249 問題17 感染症の予防………250 問題18 食育と学校給食………251 問題19 学校・家庭・地域の連携………252 問題20 子ども関係法と学校教育………253 問題21 国際数学・理科教育動向調査(TIMSS2011)………254 問題22 いじめ問題緊急調査………255 問題23 人事行政状況調査………256 問題24 学校基本調査………257 問題25 教員の資質能力の総合的な向上方策について………258 #部 基礎知識編 ! 259 教育、児童・生徒をめぐる情勢と環境………260 ! 教育再生実行会議………260 " 平成25年度文部科学省「予算重要政策」………260 # 35人学級拡大見送り………261 $ 平成24年度政府補正予算………261 % 全国学力・学習状況調査………262 & 平成23年度体力・運動能力調査結果………262 ' 子ども安全対策支援室の設置等………263 ( 平成23年度『文部科学白書』………263 ) 文部科学省「学校安全の推進に関する計画」………263 目 次㌀ ㌀ ㌀ ㌀xiii " 中央教育審議会関連………264 ! 第"期教育振興基本計画(審議経過報告)………264 " 今後の青少年の体験活動の推進について(答申)………264 # 教職生活の全体を通じた教員の資質能力の総合的な向上方策につい て(答申)………265 $ 共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための 特別支援教育の推進(報告)………265 % 予測困難な時代において生涯学び続け、主体的に考える力を育成す る大学へ(審議まとめ)………266 & 第'期中央教育審議会総会………267 # 教育関係トピックス………267 ! 子ども・子育て関連三法可決・成立………267 " 「スポーツ基本計画」策定………267 # 東日本大震災により被災した幼児児童生徒の学校における受入れ状 況について(平成24年%月!日現在)………268 $ 『学校防災マニュアル(地震・津波災害)作成の手引き』………268 % 国際科学オリンピック参加生徒の成績………269 & 教育費負担の実態調査結果(平成24年度国の教育ローン利用勤務者 世帯)………269 ' IEA 国際数学・理科教育動向調査の2011年調査(TIMSS2011)の 結果………269 ( 文部科学省「国際バカロレア」実施校200校に拡大方針………270 ) 平成24年版科学技術白書「強くたくましい社会の構築に向けて〜東 日本大震災の教訓を踏まえて〜」………270 10 平成24年版『食育白書』………270 11 「日 本人の 海 外 留 学 者 数」及 び「外 国 人 留 学 生 在 籍 状 況 調 査」 ………271 12 国際セーフスクール………271 13 「今後の健康診断の在り方等に関する検討会」………272 14 小中一貫教育、小中高一貫教育………272 15 「中等教育学校並びに併設型中学校及び併設型高等学校の教育課 程 の基準の特例」「連携型中学校及び連携型高等学校の教育課 程の基 準の特例」の拡充………273 xiv 16 教育の情報化ビジョン………273 17 スーパーサイエンスハイスクール………274 18 $ % & ' 「国民の読書推進に関する協力者会議」報告書………274 教育関係法規………274 ⑴ 日本国憲法………274 ⑵ 教育基本法………275 ⑶ 学校教育法………275 ⑷ 地方教育行政の組織及び運営に関する法律………276 ⑸ 人事関係の法律(地方公務員法等)………277 教育行政の仕組み………280 ! 教育行政における国、都道府県、市町村の関係と役割………280 " 教育委員会の組織と職務権限………281 # 職務権限の特例………282 $ 教育委員会制度の意義………283 % 教育委員会制度の特性………283 教科指導・学習指導要領………284 ! 教育課程………284 " 教育課程の基準………285 # 教育課程の編成………286 $ 学習指導要領………286 % 小学校%・&年外国語活動必修化………287 & 外国語活動新教材作成………287 生徒指導………291 ! 生徒指導………291 " 生徒指導の基本的性格………291 # 生徒指導提要………292 $ 平成23年度児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査 ………293 % 平成24年度版『子ども・若者白書』(旧青少年白書)………294 & 小!プロブレム………294 ' 中!ギャップ………295 ( 児童・生徒の自殺予防………295 ) 文部科学省通知「犯罪行為として取り扱われるべきと認められるい じめ事案に関する警察への相談・通報について」………296 目 次㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ xv 10 体罰禁止の徹底に関する文部科学省通知………296 11 平成24年度青少年のインターネット利用環境実態調査結果 ………296 12 「いじめ、学校安全等に関する総合的な取組方針」………297 13 大津いじめ第三者調査委が最終報告書………297 ( 進路指導………298 ! 進路指導………298 " キャリア教育………299 # 平成24年度大学等卒業予定者の就職内定状況調査(平成24年12月! 日現在)………300 ) 教職員と人事管理………300 ! 平成23年度公立学校教職員の人事行政状況調査………300 " セクハラ、パワハラ、モラハラ………301 # 教職員のメンタルヘルス対応………302 $ 「教職員のメンタルヘルス対策について」 (中間まとめ)………302 % 平成24年度公立学校教員採用選考試験の実施状況………303 & 国立の教員養成大学・学部卒業者の教員就職率………303 ' 定年退職予定教職員の退職に関する調査の結果………303 10 学校経営………306 ! 学校経営………306 " 学校組織の特性………306 # 学校の組織構造………307 $ 学校組織マネジメントの意味………308 % SWOT 分析(スウォット分析):swot analysis………309 & PDCA サイクルによる教育活動の展開………310 ' 学校組織マネジメント導入の背景………311 資 xvi 料………315 問題 ! 学校におけるキャリア教育の充実 若年者の雇用状況の悪化や雇用環境の変容などの社会状況を背景とし て、小学校時代からの体系的・系統的なキャリア教育の充実を求める声 が高まっています。望ましい勤労観、職業観を形成するキャリア教育を どのようにすすめていくか、あなたの学校の児童・生徒の状況、地域の 特性をふまえて、具体的に論じなさい。 (1,200字程度) 「職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養う 出題の意図 こと」が教育基本法第!条第!号に規定されている。また、若年者の雇用状況の 悪化や雇用環境の変容などを背景として、キャリア教育や職業教育への期待が学 校教育に寄せられている。これを受け、中央教育審議会答申「今後の学校におけ るキャリア教育・職業教育の在り方について」(平成23年"月31日)が、また、 キャリア教育における外部人材活用等に関する調査研究協力者会議報告「学校が 社会と協働して一日も早くすべての児童生徒に充実したキャリア教育を行うため に」 (同年12月#日)が出されている。答申は、生涯学習の観点に立ったキャリ ア形成支援にもふれているが、出題は学校教育での取組みを問うているので、そ の趣旨に正対して論ずること。 序論では、学校種別、発達段階に応じたキャリア教育が必要で 答案の構成 あること、ここではどの学校段階における議論なのかを明確にする(答案例は中 学校である)。 本論では、現任校の現状と課題を整理したうえで、具体的取組みの方策を提示 する。総合的な学習の時間、特別活動、道徳、キャリア教育の視点を取り入れた 各教科の授業などの活用が考えられる。また、外部の組織、人材との連携が重要 であり、地域特性に応じた具体策を展開する。 最後に、生涯を通じたキャリア形成のうち、その重要な基礎を形成するのが学 校教育におけるキャリア教育であるとの大きな視点でまとめる。 答案例 ! 社会の変化とキャリア教育 厳しさの続く経済・雇用状況を背景に、体系的・系統的な キャリア教育の充実は私の勤務する中学校でも大きな課題である。教育基本 法で示された望ましい勤労観、職業観を形成するキャリア教育を、中学生と 46 いう発達段階と地域の特徴をふまえて、以下のように推進していく。 " 本校におけるキャリア教育の改革 現任校は専門学科高校へ進学する生徒が約!割、その他はほぼ普通科高校 への進学である。地域は典型的なベッドタウンであり、保護者は都心部へ通 勤するサラリーマン家庭が多い。駅周辺には古くからの商店街もあり、ま た、校区には若干の農家が残っており、小規模な工業団地もある。 本校のキャリア教育の中心的な取組みである!学年での職場体験の実施は "年目になる。昨年度からは、諸行事の精選により#日間に拡大することが でき、一定の成果があった。しかし、更なる充実に向けて、本校における課 題を$点に集約して、キャリア教育の改革に取り組む。まず、課題は、 第一に、職場体験週間は地域社会の一部にしか認知されておらず、保護者 も体験の趣旨について理解は浅く、一過性のイベントに止まっている。 第二に、生徒への事前、事後の指導が不徹底で、教員にも実施の意義が理 解不十分で、職場体験を生かしきれていない。 第三に、職場体験を単発的な特別活動としてとらえる傾向があり、進路指 導と有機的に関連付けようとする教育実践が弱い。 以上の課題解決に向けて、以下の三点の取組みを強化していく。 第一に、受入れ先の方々には、現代の中学生の意識や課題を説明する機会 を設け、日常的にも学校通信の配布や学校公開日への招待など積極的に声を かける。保護者には体験の意義を丁寧に説明し、中学生の時期に進路選択に つながる勤労観・職業観を形成することの重要性など共通理解を形成する。 第二に、事前指導、事後指導の改善である。生徒には入学時から職場体験 活動の意義を説明し、%学年では総合的な学習の時間に、地域や現代社会の 様々な職業について調べ考える授業を取り入れる。体験後には必ず振り返り の時間を設け、生徒間で議論を行わせるなどして、自覚を深めさせる。 第三に、進路指導と接続した指導計画の作成と実施である。進学先の高校 や専門学校等、また、OB の大学生や社会人を招き、職場体験とその後の進 路選択、職業生活との関わりを語ってもらう。 # 子供と社会の未来を左右するキャリア教育の実現 キャリア教育は、子供たちが社会の一員としての役割を果たすとともに、 個性、持ち味を最大限発揮しながら、自立して生きぬいて行くことができる ように、必要な能力や態度を育てることである。私は、社会と子供自身の未 来を左右するキャリア教育の改革と充実に全力を尽くす覚悟である。 !部 第"章 論文問題㌀ ㌀ ㌀ ㌀ ㌀ 47 論 文 故(不審者の侵入、通学路での犯罪被害など)などさまざまなものがある。 危機管理は、児童・生徒の安全を守ること、保護者や地域住民からの信頼を 確保すること、などを目的とする。そのために、事前の予測と対応方針の準 備、組織的な体制の整備が必要であり、学校安全計画と危機管理マニュアル を作成し、教職員への徹底を行う。 解説 危機管理には、危機の予測・予知、危機の防止・回避、危機の再発防 止、などの諸段階があり、それぞれの対応が必要である。学校保健安全法では学 校安全計画の作成が義務づけられている。 問題 ! 学校開放・開かれた学校づくり 学校施設の開放や公開講座の実施など、学校の持つ教育力を活用した 開かれた学校づくりが進展しています。この課題にどのように取り組む べきか、述べなさい。 解答 開かれた学校づくりは、地域・保護者から信頼される学校を 実現するために不可欠である。このため、学校開放事業は単な る開放の実績回数を増やすだけではなく、学校をとりまく地域の実情、ニー ズに適応した形態の施設開放や公開講座の実施を学校経営計画の中に明確に 位置づけ、地域の人材との連携を図りながら実施することが重要である。 解説 何をねらいとして学校開放事業を実施するか、経営計画上の位置づけ を明確にし、戦略的視点を持って取り組むことが必要である。 問題 " 家庭、地域との連携 これからの学校経営にますます必要とされる、学校、家庭、地域の連 携について、法令に基づき説明しなさい。 解答 学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力は、教育の目的 を実現する上で極めて重要であることから、教員基本法に新た に条文が盛り込まれ、この三者は、教育におけるそれぞれの役割と責任を自 198 覚し、相互の連携及び協力に努めるべきこと、が規定された。これは努力義 務であるが、教育基本法における根拠がはじめて明確になったことの意義は 大きい。学校は、単に家庭・地域を自校の教育活動の協力者として見るので はなく、三者の持つ教育力が十分に発揮されるよう連携を組織していかねば ならない。 解説 教育基本法第13条。また、これを受けて、学校教育法第43条で、学校 の教育活動などに関する積極的な情報提供が義務づけられた。 問題 # 保護者等からの苦情の対応 保護者等からのさまざまな苦情が学校に寄せられます。管理職とし て、どのような姿勢で対応すべきか、述べなさい。 解答 ①保護者には誠実に対応し、相手の主張を十分に聞く。②回 答は、事実関係の正確な調査に基づいて、確認できたことだけ を説明する。③学校運営の改善や児童・生徒に対する具体的措置が必要な場 合は、早急に実施する。④教育委員会へ的確な時点で報告を行い、法律的な 対応が必要な場合は、専門家のアドバイスを受ける。⑤改善、再発防止の方 策を樹立し、教職員に徹底する。 解説 学校運営、教育活動の改善のために、苦情を前向きにとらえて活用す るという積極的姿勢での記述が必要である。理不尽な苦情・要望についての対応 体制を整備している教育委員会も多い。 問題 $ 中高一貫教育 各地で公立学校の中高一貫教育が推進されていますが、その!つのタ イプについて説明しなさい。 解答 中高一貫校には、①中等教育学校、②高等学校と付属中学校 の併設型、③既設の都道府県立高等学校と市町村立中学校の連 携型、の!種類がある。連携型の場合も、入学者選抜においては簡便な方法 !部 第"章 短答記述問題㌀ ㌀ ㌀199 短 答 記 述 教員の服務 問題 ! 次の文は、教員の服務に関する記述である。正しいものに○、誤りに ×をつけなさい。 ! ( )公立学校の教育公務員は、当該職員の属する地方公共団体 の区域外では選挙の投票の勧誘ができる。 " ( )公立学校の教育公務員は、任命権者が認める場合には、兼 職ができるが、給与を受けてはならない。 # ( )公務員は、地方公務員法第32条により、法令及び上司の職 務上の命令に従う義務があるが、教員の場合は校長が上司となる。 $ ( )職員が、職務上知りえた秘密を漏らした場合には、懲戒処 分の対象となるだけでなく、懲役又は罰金刑の刑事罰も科せられ る。 % ( )争議行為に違反したとしても、法令や条例・規則に規定し ている職員の権利は守られる。 & ( )勤務時間中に、職員団体が主張する運動を記載したプレー トの着用は、職務専念義務違反となる。 解答 !―× 解説 "―× #―○ $―○ %―× &―○ 服務は、地方公務員法第30条から第38条に規定されているほ か、教育公務員特例法にも規定されている。 !は、誤り。教育職員の政治的行為の制限は、地方公務員法第36条第"項 の例外として、教育公務員特例法第18条第!項が適用され、区域外も禁止で ある。"は、誤り。教特法第17条により、給与を受けることができる。# は、正しい。校長は職務上の上司である、という行政実例がある(初中局長 回答昭31・!・%・委初二)。$は、正しい。地公法第60条第"項及び第62 条により、守秘義務違反は罰則が適用される。%は、誤り。地公法第37条第 "項により争議行為違反は、任命上又は雇用上の権利で対抗できない。& は、正しい。プレート着用行為は、精神的活動の面において注意力のすべて が職務の遂行に向けられなかったものと解されるから職務専念義務に違反す る、という最高裁判例がある(昭52.12.13最高裁)。 !部 第"章 〇×式・穴埋め問題㌀ ㌀ ㌀247 〇 × 式 ・ 穴 埋 め りまとめている。 ! 文部科学省通知「犯罪行為として取り扱われるべきと認め られるいじめ事案に関する警察への相談・通報について」 文部科学省は、平成24年11月!日付けで、各都道府県教育委員会などに対 し、問題行動を起こす児童生徒への指導で、問題行動中に校内での傷害事件 をはじめ犯罪行為の可能性がある場合には、学校で抱え込むことなく、直ち に警察に通報し、その協力を得て対応するよう通知した。指導にもかかわら ず、効果があげられず、犯罪性が認められるときは学校においてはためらう ことなく早期に警察に相談し、警察と連携した対応を取ることが重要である と指摘している。こうした点を保護者に周知し、理解を得ておくことも重要 であるとしている。 10 体罰禁止の徹底に関する文部科学省通知 文部科学省は、部活動中の体罰によると考えられる高校生の自殺に関連し て、平成25年"月23日付けで都道府県教育委員会などに「体罰禁止の徹底及 び体罰に係る実態把握について(依頼)」を通知した。それによると、体罰 は、学校教育法で禁止された決して許されない行為とした上で、いかなる場 合も、身体に対する侵害(殴る・蹴る等)、肉体的苦痛を与える懲戒(正 座・直立等特定の姿勢を長時間保持させる等)である体罰を行ってはならな い、としている。また、部活動指導で勝利至上主義に偏り、体罰を厳しい指 導として正当化してはならないとしている。 11 平成24年度青少年のインターネット利用環境実態調査結果 平成25年"月、内閣府が公表した調査は、平成21年度施行の「青少年イン ターネット環境整備法」の施行状況の確認のため、平成24年11月に満10歳か ら満17歳までの青少年3,000人と同居の保護者を対象に行い、それぞれ#割 余りから回答を得たもので$回目。 青少年の携帯電話でスマートフォンの割合は、小では"割弱、中では!割 半ば、高では%割半ばで増えている。携帯を持つ青少年のうち、小の約& 割、中の'割半ば、高のほとんどがインターネットを利用。内容は、小では メール、ゲーム、中高ではメール、調べものが上位。携帯のフィルタリング 利用率は、小で'割半ば、中では約'割、高では%割半ばでやや伸び悩み。 296
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