「百済寺の家」

PLANET Cewations 関谷昌人建築設計アトリエ / 関谷昌人
第 13 回環境・設備デザイン賞
Environmental and Equipment Design Award 2014
雨を集める木製デッキの屋根を持つ農家住宅 「百済寺の家」
House in Kudaraji
建築地:奈良県北葛城郡
敷地面積: 462.53 ㎡
構造規模:木造 平屋建
建築面積: 202.68 ㎡
延床面積: 190.75 ㎡
「百済寺の家」∼雨を集める木製デッキの屋根 兼業農家の農家住宅∼
この住宅は、奈良県北部の田園地帯に南北に 50mを超える細長い敷地で、北側が道路東側が水田、という元々ビニールハウスで野菜を作ってい
<雨水利用>
<周辺環境との調和>
た畑の跡地に計画した。施主は会社員をしながら週末や休日に米作りをしている兼業農家でれまでは近くのアパートで妻と2人の娘と暮らしてい
建物は平屋として両サイドにそり上がった湾曲する屋根とし、それは完全に壁か
この場所柄を考えると、東側の水田越しにこの敷地の向こうに垂直にそび
た。道を挟んで斜め向かいに、実家があり、高齢の母親が一人で住んでいる。その建物も含め、周囲は古い小さな集落で、その中心に鎌倉時代の
ら柱だけで浮かせているが、雨水は中央の中庭に開けられた円形の穴のまわりの
え建つ百済寺の塔とのコントラストをデザインに生かせないかと考え、低
中期に建てられた重要文化財である百済寺の塔がそびえている。敷地の東側と北側は水田に隣接し、遠く離れた集落までずっと広がっており、夏
樋で集められ、一旦中庭の地中に埋めたタンクに溜め、再びポンプで屋根に戻す
く水平なラインの建物の上に古式建築のように両端がそり上がった屋根を
は水田を渡る風が特に涼しく心地よい。この設計ポイントは、極端に細長い敷地に対して、農家住宅であることから南側のバックヤードに表の道
仕掛けとなっている。この水は、ジャラ材で仕上げられたデッキを再利用された
完全に浮かして乗せ、古代の建築とこの住宅のデザイン的な融合を試みた。
から必ず軽トラックがアクセスできることが条件であり、幅の狭い敷地と道路の関係が重要なポイントとなった。また雨水を集めて屋根に戻し、
雨水が流れ落ち、夏には屋根を冷却し、温度上昇を防ぎ、冷房コストをおさえて
また構造材や内装材などの多くに県内産の木材を採用し、地産地消の木造
夏は屋根を冷却するシステムも施主の希望であったため、屋根の形について、それらを考慮し、同時に、水田に囲まれた古い集落に、どのように
いる。またウレタン防水の上にジャラ材貼とした屋根は、中央のハシゴ階段から
ならではのシステムを取り入れている。特に吉野杉の柱、梁、枠材などが
景観的に配慮するかも課題となった。そこで、東側の水田に面するところに軽トラックのアクセス通路を建物の玄関を貫く形で取り、室内の廊下
メンテも兼ねて上がれるが、ジャラ材が適度な遮熱材として機能していると共に、 内部にあたたかく柔らかい印象を与えている。外壁や湾曲した天井や破風
を南北に取って、更にそれに沿って収納を取り、リビングダイニング、中庭、子供室、水周り、寝室をそれら南北に貫く 2 つの異なった通路に
涼しい風が水田から吹き渡り、屋上は気持ちの良いスペースとなっている。
はモルタルかき落としや漆喰塗とし、伝統工法の継承を図ると同時に、こ
の古い歴史ある町並みとの調和を目指した。
はさむように配置した。東側の軽トラ用通路は、玄関の大型引戸を引き込むと車が通れるようになっており、玄関を抜けるとポリカーボネイト越
しに光の入る半戸外空間となって中庭に続き、家族がバーベキューをしたり、子供たちがローラースケートをしたりして遊んでいる。
Concept:
The owner inherited the farm from his parents, and continues to cultivate rice. The piece of land is long and thin 9m×50m. The design reeded to
accommodate a farm vehicle, so the access from roadway to backgarden along the side of the house is roofed over -- a type of design long used in Japanese
homes. Storage areas are all gathered on the west side, optimally designed for efficiency. This house's floating roof design is worth nothing, framing the spire of
the temple behind it. Practically, it is to gather rainwater for economical and environmentally --- friendly usage.
雨水を集める
空気の流れ
屋根の冷却
曲率R100000
円弧基準点
大梁105×360
大梁105×300
57
50
350
300
200
100
300
300
散水
□評価項目
カウンター固定
600
防湿シート ア0.1以上
捨コンクリート 厚30
割栗石
ポンプ
東側境界線地盤ライン
▼GL-400
雨水タンク
優れて
いる
卓越し
ている
0
+1
+2
湾曲した屋根は柱によって完全に持ち上げられジャラ材で仕上げ、対比的に水平のフォルムの軽トラック用
の通路は杉材とし、主に自然素材でまとめ周囲によく調和し、美しい。
近くの百済寺がひときわ目を引く建物だが、その古建築と対比的にデザインされ、地域のランドマークと
なっている。
小計
○
2
○
2
01審美感
☆
☆
☆
04象徴性
☆
近くの百済寺がひときわ目を引く建物だが、建物は平屋にして高さを押さえ田んぼの区割り
に沿って細長いプランで水田に影を落とさずよく村の景色に溶け込んでいる。
○
2
05完成度
☆
湾曲した屋根と水平の通路の屋根が水豊かな田園地帯の環境に映え、且つ、国の重要文化財の百済寺の
塔との対比的フォルムで完成度の高い建物となっている。
○
2
06機能性
☆
細長いプランにも関らず奥に向かって走る軽トラック用の通路は多機能に働き農家住宅として機能的に
使える。
○
2
逆向に湾曲している屋根が極端に細長いフォルムとあいまって独創的なデザインとなった。
B.機能軸(技術)
08利便性
Technology
○
☆
10先導性
☆
11環境負荷
☆
12資源消費
雨水タンク
除外
09安全性
C.社会軸(環境)
13地域環境性
Environment
1
○
07効率性
断面
←
□自己評価欄
普通
02調和性
N
寝室
(従前のデザインに比較し、優れている部分、卓越している部分に関して具体的に記述
してください。)
A.感性軸(造形)
03独創性
Form
散水
▼GL-400
断面
□特に重
視したデ
ザインの
視点
▼GL±0
100
600
300
□評価項目に対する設計者のデザイン意図
杉板貼
2,860
ガレージ
玄関
2,960
収納スペース 冷蔵庫スペース
ランバーコア
2,000
ピアノスペース
2,000
収納
ランバーコア
1,300
(布団用)
2,000
収納
600
950
WC
900
950
収納
900
1,400
収納化粧柱
1,400
洗濯機
棚板×3段
ランバーコア
▼1FL
▼GL±0
赤松集成材
50
12
12
1.5
30
30
550
950
洗濯機スペース
1,250
ランバーコア
900
2,100
2,500
収納
900
1,600
屋根
ガルバリウム鋼板タテハゼ葺き
12
12
ハンガーパイプ
720
400
283
36135112
空気の流れ
24
ハンガーパイプ
60
収納スペース
20
45
PB下地 クロス貼
▼1FL桁高サ
木製カマチ戸
90
保護モルタル 厚 30
ウレタン防水
野地板 厚12mm
ウレタンフォーム吹付 厚 45
PB 厚12.5 :EP塗
円弧基準点
1,300
屋根の冷却
3,000
▼最高桁高サ
2,500
デッキ材
大引90×90
鋼製束
ウレタン防水
構造用合板 厚24mm
ウレタンフォーム吹付 厚45
ロックウール 厚100
軽量鉄鋼下地天井
曲合板EP塗装
☆
新しい農家住宅としてそのプラン、フォルム、デザインを提案した。
オール電化で電力消費を押さえ雨水の再利用で屋根を冷却し、冷房の負荷を低減している。また持ち上げ
られた屋根と壁の間から光を取り入れ、また風を取り入れ空気の流れを作っている。
雨水の再利用で庭の散水や掃除に利用している。
○
2
○
2
○
○
☆
15先進性
☆
2
2
0
除外
14ユニバーサル性
2
0
小さな子供が 2 人いるが土間の通路やリビングダイニングキッチンから見通しの良い部屋で遊び
安全に生活している。
平屋と引戸で構成されたプランは、収納、移動、居住がシンプルに配され、子供、老人すべてが
スムーズに使える。
1
○
伝統的な町並に農家住宅としての機能と新しい環境共生手法との融合を目指している。
○
2
16イニシャルコスト
子供室
浴室
デッキ
デッキ
リビング
・ダイニング
キッチン
ガレージ
D.経済軸(LCC)
Life Cycle Cost
17ランニングコスト
☆
18維持管理
☆
←
19耐久性
20LCC
←
←
土間 外部通路
平面図 軽トラック
水 田
水田を渡る風の流れ
☆
オール電化でエネルギーコストを抑えている。
1
○
塗り直しのきく塗壁、漆喰、木材を多用し長期維持管理が出来る。
外部にジャラ材、ガルバリウム鋼板、左官壁、杉板、内部は添乗を漆喰塗にするなど、
耐久性のある素材で構成している。
○
○
2
○
2
1