昭 和39年11月20日 277 組 織培 養 に よる 日本 脳 炎 ウイル スの研 究 V.二 三 の哺 乳 動物 小脳 組 織 の培 養に お け る ウィル スの増殖 と細 胞 変 性 効果 (神戸大学医学部微生物学教 室) 堀 大 田 野 進,大 幹 山 人,彦 昭 秋 近 時,組 織 培 養 術 式 の進 歩 に伴 ない 各 種 ウ イル ス を増 殖 せ しめ る培 養 材料 と して多 種 類 の組 織 が 用 い られ てい る が,そ (non-nema1)の れ らは 主 と し て 非 神 経 性 もの で あ.日 脳 ウ イル ス に つ い て もそ の点 は同 様 で あ り,わ 26),37),48)篇)に れ わ れ が 前 報(第 蔵 か しなが ら,定 型 的 な 日脳 感染 が 中枢 神経 障 害 の症 状 を も の 意 味 で 日脳 ウ イ ル ス が 宏* 磋 織 の 培 養 に お け る狂 犬 病 ウ イ ル ス の 感 染 を,そ ぞ れ 観 察 し て い る に す ぎ な い.著 に か ん が み2,3の れ 者 らは 以上 の 点 哺 乳動 物 の小 脳 組織 の培 養 に 日脳 ウ イ ル ス を感 染 せ し め る 実 験 を試 み た の で そ の 成 績 を 報 告 す る こ と ゝす る. 実 験 材 料 並 び に実 験 方 法 報 告 した 成 績 も大 部分 は 非 神 経 性 組 織 に 関 す る もの で あ つ た.し つ て特 徴 づ け られ,そ 夫,武 組 織 培 養: 供 試 組 織 は 生 後1週 以 内 の イ ヌ お よ び ネ コ,並 び に 人 工 妊 娠 中 絶 に よ つ て 娩 出 さ れ た ヒ ト胎 児 の 向 神経 性 とみ な され て い る以 上,神 経 組 織 の培 養 小 脳 皮 質 で あ つ た.別 に対 す る本 ウ イル スの親 和 性 は 当 然 検 討 され な け 約1m立 方 の 大 き さ に 細 切 し,そ 0.15mmの カ バ ー ス リ ツ プ 上 に ほ ゞ4コ ず つ 載 せ, れ ば な らない 問 題 で あ る.す で に川 喜 田(193910)) は ニ ワ トリ胎 児 脳 組 織 を用 い て初 め て 日脳 ウ イル ス の培 養 に成 功 し,次 い で 島越(193919))は マウ 出 した 組 織 を メ ス を も つ て れ を12×15× ヘ パ リ ン加 ニ ワ ト リ血 漿 と ニ ワ ト リ胎 児 圧 搾 液 を も つ て 固 定 し,こ れ を15×150mmの 試 験 管 に納 め ン性 ヒ ト腹 水50%,ニ ワ ト リ胎 児 圧 ス胎 児 脳 組 織 の 培 養 に お け る本 ウ イル スの 増殖 を て 培 養 液(ガ 報告 した.し か し,そ の 際 の 病 理 組 織 学 的 所 見 に つ い て は 未 だ 詳 細 な記 載 が ない 現 状 で あ る. 一 方 ,中 枢 神 経 組 織 の培養 手 技 自体 が最 近 急 速 搾 液5%,Gey液45%,ブ に 進 展 し,培 養 神 経 組 織 を用 い た 研 究 が注 目 をひ 材 料 並 び に 術 式 に つ い て は 前 報(第2篇)6)の きつ ゝあ る(た とえ ば,綜 説,中 井(195614))参 に 従 い,ま 照 の こ と).従 つ て,か Pomerat & Okamoto (1958), 15)岡本(1959)16),武 よ うな進 歩 した見 地 か らの 神 経 組 織 培 養 を利 用 して,い わ ゆ る向 神経 ウ イル スの 感染 を老 究 す る こ とは 重要 か つ 興 味 あ る題 目 とい わ な け れ ば な らない.し か る に,こ の種 の研 究 は 今 日ま で の と ころ比 較 的 少 数 で あつ て,わ ず か にHogueら(19553),19584))が ヒ ト胎 児 脳 組 織 の 培 養 に対 す るポ リオ ウ イル ス の作 用 を,ま た Fernandes & Pomerat (19611))が イ ヌ小 脳 組 *神 戸 大学 医学 部 解 剖 学 教 室所 属 シ リ ンG1,000u/mlよ ドウ 糖300mg%,ペ り成 る)2m1を 約10回 転 の 回 転 培 養 を お こ な つ た.こ た,Lumsden Costero & 時 れ らの 培 養 Pomerat (1956), ニ 加 え,毎 記 載 (1951), 11) 18) Hild (1957), 2) 蔵(1960)13) ら の 報 告 を参 照 し た. ウ イ ル ス: 第2篇 が,そ に 記 載 し たG1株 が主 と して使 用 され た の 他 にJATH260株,K. に 根 岸 ウ イ ル ス(第4篇 用 い ら れ た.接 脳 乳 剤,時 Inoue株 参 照)が 種 ウ イ ル ス 材 料(主 並 び 比較 の た め併 せ と して マ ウ ス に ハ ム ス タ ー 腎 細 胞 培 養 液)中 に含 ま 日本 伝 染 病 学会 雑 誌 278 れ る爽 雑 物 が 培 養 細 胞 に 毒 性 を お よ ぼ す 可 能 性 を 考 慮 した 結 果,各 材 料 と も接 種 に の ぞ ん で 前 記 組 織 培 養 液 で 適 宜 に 稀 釈 さ れ た.多 剤 は10}3∼10-4,腎 の と し た.こ くの 場 合,脳 細 胞 培 養 液 は10-1の 乳 濃度 の も れ らの ウ イ ル ス 材 料 を 組 織 培 養 に接 種 した の ち前 報 記 述 の方 法 に従 つ て ウ イル ス増 殖 曲 線 を定 め た. 法 お よ びNissl法 実 験 で は 特 にBodian に よ る染 色 標 本 の 検 討 に 重 点 を置 く こ とに した.そ の 手 技 は 常 法 の そ れ と本 質 的 に 異 る と こ ろ は な い が,細 部 につ い て は組 織 培 養 標 本 の 特 殊 性 が 考 慮 さ れ た.そ の 大 略 は下 記 の 通 りで あ る. に 温 め たGey ル コ ー ル で弁 色. (5)常 法 に従 つ て ア ル コ ー ル脱 水,キ シ ロー ル ルサ ム封 入 をお こな う. 下 記 の ご と き対 照 培 養 が作 製 され た. (1)ウ イ ル ス を接 種 さ れず に培 養 され た もの. (2)ウ イル ス浮游 液 の代 りに健 常 マ ウ ス脳 乳 剤 また は 非 感 染 組 織 培養 液 を加 え た もの. (3)ウ イル ス とウ サ ギ免 疫 血 清 と を等 量 に混 じ 37℃ に1時 間,つ い で4℃ に1時 間 置 い た後,そ 以 上)継 続 して培 養 細 胞 を非特 異 的 な 変 性 に 陥 らせ た もの. 液 に て 洗 滌 す る. これ らは い ず れ も ウ イル ス感 染 培 養 と同 一 条 件 れ をFormo1 bromide(10%ホ 水 に 臭 化 ア ン モ ン を2%の い で80%ア ル マ リン 下 で 上 記 の 固 定 染 色 操 作 を施 さ れ た. 割 に溶 解 す る)で12∼ ル コ ー ル で1∼2週 実験成績 間 固定 す る. (3)水 ル コ ー ル お よび80%ア (4)培 養 を長 期 間(3週 検 カ バ ー ス リ ツ プ を37℃ 24時 間,次 (4)50%ア の混 液 を接 種 した もの. (A)Bodian法: (2)こ レジ ー ル 紫 液 対 照 試 験: ウ イ ル ス 増 殖 曲 線 実 験 と併 行 して 培 養 組 織 の 形 態 学 的 観 察 が な さ れ た.本 第8号 (ま た は0.1%ト ル イジ ン青 液)中 に て徐 々 に80 ∼90℃ まで加 温 し,そ れ を自然 冷 却. 透 徹,バ 培 養 細 胞 の 形 態 学 的 観 察3 (1)被 (3)充 分 に水 洗 した後,1%ク 第38巻 ウイ ル ス 増殖 曲 線: 各小 脳 組織 の 培 養 に お け る供 試 ウ イル ス の増 殖 洗 後,銅 er製)液 粒 加1%プ ロ タ ル ゴ ー ル(Bay- の定 型 的 な 成續 は 第1,2お 中 に 浸 し37℃ に24時 間 保 つ. (4)こ れ を水 洗 した 後,ハ マ リ ン(1%ハ マ リ ン を5容 の 割 に 加 え る)で15分 に示 され る. イ ド ロ キ ノ ン ・ホ ル イ ド ロ キ ノ ン液100容 よび3図 に局 方 ホル 間 処 理 ,次 い で 充 分 に 水 洗 す る. 液 相 中 の ウ イル ス量 は接 種 後1日 で低 下 す るの を常 とす るが,そ の後 は上 昇 して3∼7日 で最 高 に達 し,以 後 減 少 して接 種 後 約3週 間 で見 掛 け上 消 失 す るに至 る.液 相 中 の最 高 ウ イル ス力 價 は, (5)前 記(3),(4)の 操 作 を も う一 度 く りか え す. 本 実 験 条 件 下 に お け る限 り,イ ヌ小 脳 組 織 培 養 の (6)下 記 の 順 序 に よ り金 調 色 を お こ な う:(i) 方 が ネ コ のそ れ よ り も高 い 傾 向 を示 した. 1%塩 化 金 水 溶 液 に 約45秒,(ii)水 2%蔭 酸 液 に2分,(iv)水 硫 酸 ソ ー ダ液 に5分,(vi)水 (7)法 徹,バ 洗,(iii) 洗,(v)5%次 ウ イル ス の株 に よ り増 殖 の程 度 に若 干 の差 が認 亜 洗. の ご と くア ル コ ー ル 脱 水,キ シロ ー ル透 は供 試 各 小 脳 組 織 培 養 系 のい ず れ に おい て も比 較 的 良 好 に 増殖 す るに対 し,K.Inoue株 (B)Niss1法: の増 殖 は余 り良 好 で ない とい う傾 向 が 示 さ れた. と同 様 に カ バ ー ス リ ツ プ を洗 滌 す る. (2)96%ア 成 續 に も一 脈 連 関 す る も の と考 え られ た.JATH株 ル サ ム 封 入 を お こ な う. (1)Bodian法 め られた こ とは前 報(第4篇)8)の 培 養液 中 の ウ イル スは ウサ ギ 免疫 血 清 に よつ て 完全 に 中和 され,そ れ に も とず い て各 ウ イ ル ス の ル コ ー ル に て3∼7日 間 固 定. 同定 が な さ れた. 昭 和39年11月20目 第1図 279 イ ヌ 小 脳(PupPy cerebellum) 第3図 イ ヌ小 脳 皮 質 の培 養 にお け る ウイ ル ス増 殖 曲線 ヒ ト胎 児 小 脳(Human bellum) embryonic cere- ヒ ト胎 児 小 脳 皮 質 の 培 養 に お け る ウ イ ル ス 増 殖 曲線 (説 明 は第1図 タ テ 軸:液 相 中 の活 性 ウ イ ル ス 力 価 ヨ コ軸:培 (マ ウ ス 脳 内LD50/0.02ml) 養 期 間(日) ◎,◎,▲,(×):最 初 に接 種 され た ウ イ ル ス量 (こ れ ら の 説 明 は 第2,3図 第2図: ネ コ 小 脳(Kitten 片 の 内部 に の み見 出 され る.小 脳 皮 質 に認 め られ る神 経 細 胞 に はPurkinle細 細 胞(Basket を示す に つ い て も 同 じ) cerebellum) ネ コ小 脳 皮 質 の培 養 にお け る ウイ ル ス増 殖 曲線 に同 じ) の 内Purkinle細 胞,Golgi細 胞,籠 cell),皮質 小 細 胞 な どが あ る が,こ 胞(以 下P細 胞 と略記 す る)は 數 的 に最 も多 く存 在 す る の み な らず,細 胞 自身 が 他 種 神 経 細 胞 に此 して格 段 に大 型 で比 較 的 容 易 に 同 定 され,さ よ うな点 か ら観 察 上最 も便 利 で あ る ゆ え,本 研 究 で は検 討 の重 点 を これ に お くこ と ゝ した. な お本 研 究 は イ ヌ材 料 を最 も 多数 使 用 し た の で,以 下 の記 載 は主 と して イ ヌに 関 す る もの で あ る.ネ コ お よ び ヒ ト材 料 の所 見 は本 実 験 に 関 す る 限 り,イ ヌのそ れ と本 質 的 に異 る と ころ は な く, 補 足 的 に述 べ られ る. (A)対 照 非感 染 培 養 の所 見; 培 養P細 胞 に 及 ぼ す ウ イル スの作 用 を論 ず るに (説 明 は 第1図 に 同 じ) 前 報 の 記 載 と同 じ く,生 きた 細 胞 を含 まな い培 養 液 中 に37℃ に保 た れた ウ イ ル ス は48∼72時 間 後 に 見掛 け上 の 感 染 性 を完全 に喪 失 した. さ き立 り て,対 照培 養 に お け る所 見 を充分 に 観 察 す る こ とが 必 要 で あ る.以 下,前 述 の 対 照 培 養 群 のそ れぞ れ につ い て 記 載 す る. (1)培 養 が 良 好 に な され た 場 合 の 所 見: 形 態 学 的 観 察; P細 胞 は樹 状 突 起 お よび神 経 突 起 を充 分 に伸 長 培 養 開始1∼2週 す る.核 お よび核 小 体 は楕 円 形 で,核 は淡 い 微 細 間 後 に原 組 織 片 の周 囲 か ら細 胞 の遊 走 ない し増 殖 が起 る.い わ ゆ る成 長 帯 は大 貧 喰 球,グ リア細 胞 お よび線 維 芽 細 胞 か ら成 つ て い る.神 経 細 胞 は遊 走 能 力 を有 しな い た め原 組 織 顆 粒 状 を呈 し,桑 実 状 をな す こ とが多 い. 神 経 原 線 維 は核 を中心 と して クモ の 巣 様 の 細 網 構 造 を呈 し,胞 体 周 辺 部 に行 くに従 つ て や ゝ粗 大 日本 伝 染 病 学会 雑 誌 280 第8号 と な り,樹 状 突 起 の 起始 部 附 近 では連 続 的 に樹 状 た場 合),(iii)線 突 起 の 方 向 に 収 敏 して 突 起 内 部 へ 移 行 してい る. 細 胞 以 外 の エ レ メ ン トに 明 らか な変 性 の傾 向 を認 樹 状 突 起 は 充 分 に伸 長 した場 合 数 百 μ に も達 し,多 數 の小 分 枝 を出 し,お の お の末 端 は細 小 な 原 線 維 とな つ て分 散 す る. 合,な 胞 な ど神 経 初 か ら成 長 帯 の発 育 の 悪 い 場 どに おい てP細 胞 は 多少 と も形 態 的 変 化 を 呈 す る.こ れ は端 的 に い つ て 比較 的 緩徐 に進 行 す 神 経 突起 はそ れ 自体 が一 本 の太 い線 維 と して濃 染 され,培 養 組 織 片 内 を不 規 則 に蛇 行 しつ ゝ伸 長 し,そ の分 枝 數 は樹 状 突 起 の そ れ に 比 して少 数 で あ る.神 め る場 合,(iv)最 維 芽 細 胞,Glia細 第38巻 る変 性 状 態 で あ り,以 下,便 宜 上"慢 性 変 性"と 呼 ぶ こ と ゝす る.こ れ に共 通 的 に認 め ら れ る所 見 は お ゝむ ね次 の通 りで あ る. 経 突 起 の起 始 部 は 多 くの 場合 比 較 的 細 (a)胞 体 内 お よび樹 状 突 起 内 の神 経 原 線 維 は微 く,胞 体 か ら急 に 突 出 す る形 を と り,そ の 後太 く 細 な網 状 構 造 を失 い,粗 大 な針 金 細 工 様 の形 態 に な つ て 主幹 とな り,末 端 に 向 つ て 漸 次 繊 細 に なつ 変 化 す る.そ の鍍 銀 性 は高 ま り,黒 味 を帯 び た色 て 行 くも の で あ る. 調 を呈 す る. Niss1染 色 に よれ ば胞 体 内 に著 明 なNiss1物 (Tigroid substances)が 質 認 め られ る. た ゞし こ ゝで注 意 すべ き点 は,か (b)核 は円 形 化 す る傾 向 が あ り,核 内 の微 細 顆 粒 は 消失 す る.そ の 前段 階 で は ない か と思 わ れ る くの ご と く培 養 さ れ た神 経 細 胞 の分 布 が あ る程 度 不 均 一 で あ る 数 コの や ゝ大 き な顆 粒(核 小 体 の數 分 の1程 度) の散 在 を見 る こ と もあ る.核 小 体 も円形 化 す る傾 とい うこ とで あ る.す なわ ち,同 向 が み ら れ,時 にそ の表 面 が粗 とな り,金 平 糖 状 じ条 件 下 に植 込 ま れた 組 織 培 養 群 にお い て も各 培 養管,各 培養 片 に観 察 さ れ る こ と もあ る. に よ り,ま た同 一 培 養 片 に おい て も部 位 に よつ て (c)樹 状 突 起 は短 小 とな り,そ の分 枝 數 も減 少 神 経 細 胞 の分 布 が か な り異 るの で あ る.そ の理 由 し,極 端 な場 合 は あ た か も ヒ トデ の ご とき状 態 に と して は,分 化 度 の高 い 神 経 細 胞 は培 養 中 に もは な る.そ の原 線 維 構 造 は胞 体 内 の そ れ と連 続 的 で や 分 裂 増 殖 を営 む こ とが な い ゆ え,最 初 に切 り出 あ る関 係 上,同 され た組 織 片 中 の 神経 細 胞 の 分 布 は い わ ばat 端 で急 に切 断 され た ご と く終 るか,ま た は あ た か fandomの ま ゝ培 養 経 過 中 もひ きつ が れ るた め で も古 ナ ワ をほ ぐ した よ うな観 を呈 す る. あ る莞.そ れ と共 に,手 技 上 の 諸 条 件 が 鋭 敏 に影 (d)神 経 突 起 は,樹 状 突起 と異 な り,慢 性 変 性 響 す るた め,か な りの数 の 神 経 細 胞 が 培 養 開 始 後 の程 度 は比 較 的軽 度 で あ る.し か しな が ら,時 々 、 間 も な く死 滅 崩 壊 して 消 失 す る こ とに も よ る. 著 明 な腫 瘤 を形 成 す る こ とが あ る.こ れ は 一 旦 充 しか し多 數 の 組織 培 養 を作製 し,そ の 内 か ら良 好 に 培 養 され た もの を選 ん で観 察 す る と,前 記 の ご とき定 型 的 なP細 胞 を認 め る こ とは さ して 困 難 でな い. (2)対 (i)培 じ く濃 染 粗 大 とな り,そ れ らは尖 分 に再 生 した神 経 細 胞 が培 養 条 件 不 良 の た め に 成 生 した と老 え られ る もの で,神 経 突 起 主幹 部 に お い て胞 体 よ り数 百 μ の部 分 に 生 じ,同 一 培 養 片 内 に在 る神 経 細 胞 の多 数 に同 時 に 出現 す る こ とが 多 い. 照 非感 染 神 経 細 胞 の 変性 像: 養 期 間 を長 期(3週 め た場 合,(ii)培 (3)健 常 マ ウ ス脳 乳 剤 も し くは非 感 染 組 織 培 養 以上)に わた ら し 養 条 件 を不 良 に した 場合(培 養 液 交 換 をお こ なわ ない とか,培 養 温 度 が変 動 し 液 を加 えた 場 合,そ れ らが一 定 度 以 上 稀 釈 され て い る限 り,培 養 神経 細 胞 に 特 殊 な変 化 を生 じ る こ とは な か つ た.す な わ ち,上 記 の慢 性 変 性 あ るい は後 述 の ウ イル ス感 染 に よ る変 性 豫 に類 似 す る所 * そ の 意 味 で,神 経 細 胞 の"培 段 階 に お け る 限 り,細 と考 え る べ き で あ る.こ 養"は 胞 の"超 現 在 の技 術 生"(Uberleben) の点 に 関 す る詳 細 の論 議 は こ ゝ で は 省 略 す る こ と ゝす る. 見 は全 く認 め られ なか つ た. (B)ウ イ ル ス感 染 培 養 の 所見: 日脳 ウ イ ル ス に感 染 した培 養 に お け る神 経 細 胞 昭 和39年11月20日 281 第4図 第5図 第6図 第7図 第8図 第9図 日 本伝 染 病 学 会 雑 誌 282 第10図 第11図 第12図 第13図 第14図 第15図 第38卷 第8号 昭 和39年11月200 283 第16図 第18図 第20図 第17図 第19図 第21図 284 日本 伝 染 病 学 会 難 誌 第22図(a) 第22図(b) 第22図(c) 第22図(d) 第38巻 第8号 2851 昭 和39年11月20日 図 第4図2生 後3日 Bodian染 イ ヌ 小 脳,非 色,10×100. Purkinje細 感 染,培 養14日. 説 第13図:第12図 と 同 じ.Bodian染 高 度 変 性.細 胞 の 核 は 微 細 願 粒 状 で1コ の 色,10×100. 胞 は嗜 銀 性 の顆粒 状 物 質 の 集 団 と化 し て い る. 明 瞭 な 核 小 体 を 有 す る.胞 体 内 お よ び樹 状 突起 内 に は 微 細 網 状 の 神 経 原 線 維構 造 が 第14図:8ヵ 認 め ら れ る.細 胞 周 辺 の 円 形 物 は お そ ら く 月 ヒ ト胎 児 小 脳,非 Bodian染 色,10×100. 感 染,培 養14日. イ ヌお よび ネ コの それ に 比 して 胞 体 は穂 グ リ ア 細 胞 の 核 と 思 わ れ る. 小 型 で あ り樹 状 突 起 も 繊 細 で あ る,し 第5図:生 後5日 ル スG1株 の.Bodian染 第15図:8ヵ 色,10×100. 軽 度 変 性.胞 月 ヒ ト胎 児 小 脳,培 養10日 目 に 日脳 ウ イ ル スG1株 を 接 種 し3日 目に 固 定 した 体 内 の 神 経 原 線 維 構 造 は 粗雑 も の.Bodian染 と な り,一 方 核 は や ゝ膨 大 して 円 形 に 近 づ い て い る.核 か し 基 本 的 構 造 に は 差 異 は な い. イ ヌ小 脳,培 養10日 目 に 日 脳 ウ イ を 接 種 し5日 目 に 固 定 した も 色,10×100. 軽 度 変 性 に 該 当 す る も の と考 え ら れ る.核 内 物 質 は や ゝ粗 大 な 顯 粒 物 と 内 物質 は粗 大顯 粒 とな り 胞 体 の 原 線 維 構 な つ て い る. 造 は 粗 雑 化 し て い る. 第6図3第5図 と同 様 の も の. 中 等 度 変 性.胞 体 は 淡 染 し,樹 状突起は 第16図:生 後5日 Bodian染 そ の基 幹 部 を残 存 す る の み で 小 分 岐 は 全 く失 わ れ て い る.核 イ ヌ小 脳,非 色,10×100. Purkinje細 は崩壊直前の状態 と 養14日. 胞 の 神 経 突 起 主 幹 部.神 経 突, 起 は概 して直 線 的 に走 行 し 弧 状 の 屈 曲 を 考 え ら れ る. な す か,ま 第7図:第5図 感 染,培 と 同 様 の も の.高 度 変 性,細 胞 の残 た は 角 度 を 持 つ て 折 れ 曲 る. 細 か い 蛇 行 は み ら れ な い. 骸 で あ るが 胞 体 周 囲 に 樹 状 突 起 の 痕 跡 を 認 め る.核 は 不 規 則 穎 粒 物 の 集 団 と化 し 第17図:生 て い る. 後5日 ル スG1株 イ ヌ小 脳,培 養10日 目 に 日脳 ウ イ を 接 種 し5日 目 に固 定 した も の.Bodian染 第8図2第4図 と 同 じ.Niss1染 色,10×100. 状 屈 曲,断 物 質(Tigroid 異 的 に変 性 に陥 つ た 神 経 突 起 に は 観 察 さ 第9図:第6図 substances)カ れ な い 特 徴 的 な 像 で あ る. と 同 じ.Nissl染 色,10×100. は 失 なわ れ虎 斑 物質 は礪 漫 性 第18図3生 に 核 構造 に 胞体内に 後4日 Bodian染 ネ コ小 脳,非 色,10×100. Purkinje細 感 染,培 ち,群 定 し た も の.Bodian染 軽 度 変 性.核 の.数 等 度 変 性.核 は崩 壊 して 願粒 状 物 質 と化 し 樹 状 突 起 は 小 分 枝 を 失 な つ て い る. 経 箇 のPurkinje細 胞 は 程 度 の差 こ そ あ れ い ず れ も 変 性 に 陥 い っ て い る.こ れ に 比 し,周 囲 の グ リ ァ細 胞 に は 著 変 を 認 め な い. 維 線 構 造 の 粗 雑 化 が み ら れ る. 色,10×100.中 なわ 胞 は いず れ も 第19図:第18図 と 同 じ ロ ッ トの 培 養 に 免 疫 血 清 を 加 え な い ウイ ル ス の み を 接 種 し た も 内 物 質 の 顯 粒 化 と胞 体 内 原 定 し た も の.Bodian染 在 す るPurkinje細 突 起 は 比 較 的 直 線 的 に 走 行 す る. 色,10×100. 生 後5日 ネ コ小 脳,培 養10日 目 の も の に 日脳 ウ イ ル スG1株 を 接 種 し7日 目に 固 目 に 固 定, 非 感 染 培 養 の そ れ と 同 じ像 を 示 し,神 胞 特有 の微 細網 様 の原 線 維 構 造 が 胞 体 よ り 樹 状 突 起 内 に 連 続 的 に移 行 後5日 ネ コ 小 脳,培 養110日 目 の も の に 日 脳 ウ イ ル スG1株 を 接 種 し5日 目 に固 種 後7日 非 感 染 培 養 と 差 異 な き 所 見 を 示 す,す 養14日, す る 状 態 が 明 確 に 観 察 さ れ る. 後5日 イ ヌ小 脳,培 養10日 目 に 抗 日脳 ウ サ ギ 免 疫 血 清 に 混 じ た 日 脳 ウ イ ル スG1 株 を 接 種 し た も の.接 Bodian染 色,10×40. 拡 が り多 数 の 小 空 胞 が 形 成 さ れ て い る. 第12図 裂 な ど の 異 常 所 見 が 見 ら れ る. これ らは ウイ ル ス感 染 以 外 の 原 因 で 非 特 ミ認 め ら れ 中 等 度 変 性 と考 え ら れ る も の.既 第11図:生 波 2箇 のPurkinje細 胞 が あ る.そ の 内1箇 の 核 は 焦 点 面 外 に あ る.細 胞質 内 に 虎斑 る. 第10図:生 色,10×100. 神 経 突 起 主 幹 部 に 念 珠 様 腫 瘤 の 形 成,小 第20図:生 後7日 イ ヌ 小 脳,培 養i7日 目 よ り10日 間 培 養液 交 換 を お こ な わ ず に 培 養 を 継続 し た も の.Bodian染 色,10×100. 核 は円 形 化 し胞 体 内 の 原 線 維 構 造 は や ゝ 粗 大 で む し ろ 対 照 群 よ り濃 染 し て い る.環 286 日本 伝 染 病 学会 雑 誌 境 不 良 に よ る非 特 異 的 な 変 性 像 と 思わ れ る が,ウ イ ル ス感 染 の 場 合 の 変 性 像 と見 掛 け上 異 っ て い る. 第38巻 第8号 ゆ く. (3)樹 状 突 起 の 変 化 突 起 内 原 線 維 は 胞 体 内 原 線 維 と連 続 してい るの 第21図:第20図 と同 じ. 環 境 条 件 が 比 較 的 緩 徐 に 悪化 した 場 合 に しぼ しぽ 出現 す る 神 経 突起 主幹 部 の大 型 腫 瘤 が 見 られ る.内 あ る. 第22図:培 養Purkinje細 部 は 嗜 銀 性 無構 造 で で 両 者 の 変 化 は ほ"平 行 して進 展 す る.軽 度 変 性 の段 階 では樹 状 突 起 は小 分 枝 を失 つ て 短 小 と な り,主 幹 部 だ け を残 存 し,そ の尖 端 が急 に切 断 さ れ た よ うに観 察 され る.中 等 度 変性 で は この程 度 胞 の 形態 の模 式 図 (a)対 照 非 感染 像. が 一層 進 行 す る.高 度 変 性 の段 階 に な る と,少 数 の 濃染 した樹 状 突 起 幹 の残 存 物 が放 射 状 に 配 列 す (b)軽 度 変 性 像. (c)中 等 度 変 性 像. る状 態 とな る. (d)高 度 変 性 像. (4)神 経 突 起 の変 化: は 前 記 対 照 非 感 染 培 養 のそ れ に全 くみ られ なか つ 感染 培 養 内 の 神 経 突 起 の全 般 的 な状 況,た とえ れ ら の変化は ウイ ば そ の伸 長 度 や 分 枝 数 な どは対 照培 養 の そ れ に く 後 に す で に軽 度 なが ら明 らか に らべ 著 しい 差 は ない.し か し,局 所 的 に検 す る と 認 識 せ られ るが,時 間 の 経 過 と共 に次 第 に 高 度 と 下 記 の ご とき特 徴 的 所 見 が 認 め られ る.こ れ らの な り,最 後 に は 神経 細 胞 の 完全 な崩 壊 に ま で至 る 変 化 は,上 述 の胞 体,核,樹 の で あ る.以 下,便 宜 上 変 性 像 を軽 度 ,中 等 度, 高 度 の3段 階 に分 つ て論 ず る こ と ゝす る. 中等 度 な い し高 度 に な る段 階 で と りわ け著 明 とな た 特 徴 的 な変 化 を示 した.こ ル ス接 種2∼3日 (1)胞 体 内 に お け る変 化: 状 突 起 な どの変 性 が る傾 向 を示 す. (i)対 照 培 養 で は此 較 的 直 線 的 に 走 る神 経 突 神 経 原 線 維 の変 化 が最 も 目立 つ点 で あ る.軽 度 起 が感 染 培 養 で は細 かい ラセ ン状 あ るい は 波 状 と 変 性 の段 階 で は胞 体 内原 線 維 構 造 は粗 大,不 規 則 な り,と ころ どころ で あ た か も縮 れ た 毛 髪 の ご と とな り,繊 細 な網 状 構 造 は 消 失 す る .中 等 度 変 性 で は そ の 程 度 が 進 展 し,原 線 維 の乱 れ は著 し くな き観 を呈 す る. る・変 性 が高 度 に な る と胞 体 は崩 壊 し,原 線 維 構 造 は 全 く認 め られ な くな る.Niss1物 質 の 分布 じる こ とが あ る.そ れ が次 々 と連 な り,そ の 結果 あた か も神 経 突 起 自体 の太 さが不 規 則 に な つ た か お よび染 色 性 は対 照 に くらべ 著 し く 変 化 し て い の ご と く見 られ る こ とも あ る .非 感 染 の神 経 突 起 る. は一 般 に滑 らか な 線 維 と して 見 出 さ れ,時 (2)核 お よび核 小 体 の 変化: (ii)感 染 培 養 の 神 経 突 起 に 不 規 則 な腫 瘤 の 生 と して 主幹 部 に大 型 の膨 隆 や末 端 部 に小 型 の 念 珠 形 成 を 軽 度 の変 性 に おい ては 核 は まだ 明瞭 で あ つ て 円 示 す こ とが あ るが,こ れ らは 感染 培 養 に お け る不 形 化 は 顯 著 で な く,核 内 に不 均 等 な数 コ の穎 粒 が 規 則 な腫 瘤 形 成 と一 見 して 明 白 に 区 別 せ られ る も 出 現 す る.核 小 体 には さ して著 しい 変 化 は認 め ら の で あ る. れ な い.中 等 度 変 性 の 場 合 は 核 は 崩 壊 し数 コ ない し十 数 コの 粗 大,不 り,核 規 則 な穎 粒 状 物 の集 合 と な 小 体 も崩 壊 し,上 (iii)感 染 培 養 に お け る神 経 突 起 の主 幹 部 に は しば しば縦 あ るい は横 の方 向 の 断裂 が み られ る. 述 の顯 粒 状 物 と混 在 す そ のた め神 経 突 起 は濃 淡 不 定 の数 本 の線 維 の集 合 る.こ の状 態 は比 較 的長 く持 続 し,高 度 変 性 の 結 の ご と き観 を呈 した り,あ るい は破 線 状 に見 え た 果 胞 体 成 分 が ほ とん ど消 失 した後 も残 存 す る こ と りす る. が 少 くない.む しろ か よ うな穎 粒 状 物 か ら,そ の 以 上 の 変性 像 は,免 疫 血 清 と混 じた ウ イル ス を 部 位 にか つ て 核 の 存 在 した こ と を推 定 す る こ とが 接 種 した 揚合 に は全 く現 わ れ な か つ た.従 可 能 で あ る.し か し,こ れ も窮 極 的 に は消 失 して この 変 性 は ウ イル ス に よつ て 特 異 的 にひ きお こ さ つ て, 287 昭 和39年11月20日 高 度 に分 化 した神 経 細 胞 の培 養 には 種 々 の 困難 れ た もの と到 定 す る こ とが出 来 た. 供 試 動 物 の種 あ るい は ウ イル ス の株 に よつ てP が 伴 うゆ え,成 績 の均 一 性 再 現 性 を期 す る た め諸 細 胞 の 変 性 に相 違 が あ る か否 か,と い う点 に つ い 種 の要 因 を可 及 的 厳 密 に老 慮 す る必 要 が あつ た. て は,本 研 究 の範 囲 内 に 関 す る限 り本 質 的 な 差異 本 研 究 では 特 に下 記 の 点 に 注 意 が 払 わ れ た. は ない も の と考 え られ た.し か し一 方,変 性 の量 (1)可 能 なか ぎ り新 鮮 な材料 を用 い,か つ 培 的 な強 弱 も し くは出 現 様 式 に若 干 の微 妙 な差 異 の 養操 作 に要 す る時 間 を出 来 るだ け短 縮 して 非 特 異 あ る こ とも否 定 し得 な かつ た.特 に イ ヌ,ネ コ の 的 な影 響 を極 力 除 くよ うに した. 小 脳 組 織 に つい て,根 岸 ウ イル ス に よ るP細 胞 の 変 性 が 日脳 ウ イル ス(G1株 お よ びJATH株) (2)ウ イル ス接 種 あ るい は 固定 染 色 に先 立 つ て カ バ ー ス リ ヅプ上 の培 養 組 織 片 をル ー ペ で丁寧 に よ るそ れ よ りも激 甚 で あ り,経 過 も急 速 で あ る に検 し,成 長 帯 の 良好 に発 育 した培 養 片 の み を選 傾 向が 認 め られ た. 揮 した. 神 経 細 胞 以外 の エ レメ ン ト,た とえ ば グ リア細 (3)ウ イル ス感 染 並 び に対 照非 感 染 の 培 養 を 胞,線 維 芽 細 胞,大 貧 喰 球 な どに ウ イル ス感 染 に な るべ く多 数 に作 製 す る と と もに,そ れ ら を出来 伴 う特 異 的 な変 性 が 出現 す るか 否 か,と い う問 題 る だ け同 一 条 件 下 に処 理 して両 者 の所 見 を綜 合 的 に つい て は現 在 の とこ ろ確 実 な結論 を 得 て い な に対 比 した. い.し か しあ る種 の変 化 の観 察 され る こ とは 否定 神 経 細 胞 培 養 の成 否 を左 右 す る重 要 な 因子 の1 出 来 ない よ うで あ り,今 後 検 討 を進 め る必 要 が あ つ は 出 発 材 料 の幼 若 度 で あ る が,本 実 験 に供 試 し る. た 組 織 は この点 で は問 題 が な か つ た ・わ れ わ れ の 対 照 非 感染 お よび ウ イル ス感 染Purkinje細 胞 の定 型 的 所 見 を第4∼17図 に示 す.免 疫 血 清 に よ 経 験 した 限 り,ヒ る変 性 抑 制 の模 様 は第18お よび19図 に,ま た 非 特 得 る こ とに は成 功 しな かつ た. 異 的 な慢 性 変 性 像 の例 は第20,21図 にそれぞれ示 ト,サ ル,イ ヌ,ネ コ の い ず れ につ い て も成 熟 体 の脳 組 織 か ら神 経 細 胞 の培 養 を これ らの材 料 を使 用 して まず ウ イル ス増 殖 曲線 され る通 りで あ る.な お,感 染 経 過 の概 略 を模 式 実 験 をお こなつ た 成 績 は,前 報(第4篇)8)と 1的に あ らわ す と第22図a,b,c,dの 様 に,ウ 考 ご と く とな る. 察 同 イル ス の株 に よつ て か な りの差 異 を示 し た.特 にJATH株 が ヒ トお よび イ ヌの小 脳 組 織 本 研 究 の 目的 は,い わ ゆ る 向神 経 性 ウ イル ス の 一 種 で あ る 日脳 ウ イ ル スお よびそ れ に 関連 す る根 の 培 養 で比 較 的 良 好 な増 殖 を営 ん だ が,こ れ に反 岸 ウ イル スの 神 経 組 織 培 養 に対 す る親 和 性 を検 討 よ うな ウ イ ル スの 株 に よ る増 殖 曲線 の相 異 に関 す す る こ とに あつ た.す なわ ち,培 養 神 経 組 織 に お しK.Inoue株 の 増 殖 は 余 り良 好 で な か つ た.か る意義 は 前 報 でや ゝくわ し く老 察 したゆ え ・ こ ゝ け るウ イ ル スの 増 殖 を し らべ る と と もに,出 現 し で は これ 以 上 に 触 れ ない.大 得 べ き形 態 学 的 変 化 を特 にPurkinje細 数 の 日脳 ウ イル ス株 の マ ウ ス病 原 性 を此 較 した 結 胞 を中心 と して 追 求 した の で あ る. 果,ウ 供 試 組 織 は生 後1週 以 内 の イ ヌお よび ネ コ,並 び に ヒ ト胎 児 の小 脳 皮 質 で あつ た.イ ヌ,ネ コ を 選 ん だ理 由 は,こ れ らが系 統 発 生 的 に ヒ トに此 較 的 近 い こ と,そ の 神 経 細 胞 の組 織 培 養 学 的 知 見 が 谷(1963)17)は 多 イル スの マ ウ ス脳 内 増 殖 性 に差 の あ る こ と を明 らか に して い る.そ の 成 績 と著 者 らが こ ゝに 得 た 神経 組織 培養 に お け る成 績 とが 関 連 す るか 否 か の 問題 は将 来 検 討 の 必要 が あろ う と思 わ れ る. 次 に,以 上 の ご と くウ イル スに 感染 した 培 養 組 あ る程 度 明 らか に され て い る こ とな どに よ る もの 織 に お い て毎 常 一定 の 変 化 がPurkinle細 で あ つ た.ヒ う まで も め られ た.前 述 した よ うに,培 養 神 経細 胞 の 所 見 な く日脳 ウ イル ス を ヒ ト病 原性 の もの と してi理解 の解 釈 は慎 重 で な け れ ば な らな い が,そ の 点 を充 した い た め で あ る. 分 に 老慮 した上 でな お か つ 感 染 細 胞 に み られ る変 ト組織 を用 い た理 由 は,い 胞 に認 288 日本 伝 染 病 学会 雑 誌 化 は有 意 で あ る と到 定 され た.さ らに,免 疫 血 清 第38巻 第8号 胞 を変 性 に 陥 らせ る とい う可能 性 も想 定 され る. と混 じた ウ イル ス に よつ て は 惹 起 され な い こ とか これ らの 点 は ウ イル スの感 染 とい う見 地 か らの み ら,か ゝる変 化 は ウ ィル ス感染 に伴 う特 異 的 な も な らず,神 経 組 織 の機 能 とい う観 点 か らも重 要 な の と結 論 され た.従 つ て これ は 日脳 ウ イ ル スに よ 問題 で あ り,将 来 さ ら に深 く追 求 さ るべ き こ とが る一 種 の細 胞 変 性効 果(CPE)と らで あ る. み るべ きで あ る. 最 後 にわ れわ れ は培 養 イ ヌ神 経 細 胞 の変 性 か ら こ の事 実 の もつ 意 義 の一 つ は,日 脳 ウ イル ス の 類 推 して,イ ヌ脳 内 に直 接 日脳 ウ イル ス を接 種 す 感 染 を生 体 外 の神 経 細 胞 の レベ ル で追 求 す る手 段 る実 験 を試 み た.イ が 与 え られ た とい う こ とで あ ろ う.今 後 は,単 に い て は笠 原 ら(1936),9)三 本 研 究 で採 用 され た観 察 方 法 の み で な く,各 種 特 ら(1956)20)の 殊 染 色 法,螢 光 抗 体 法,電 子 顯 微 鏡 観 察 な ど諸 技 性 成 績 も報告 され て お り,な お 検 討 の 余 地 が あ る 術 を併 行 的 に適 用 して研 究 を進 め るべ き で あ る. もの と老 え られ た.著 者 らの 実 験 成 績 に よれ ば, これ に 関連 して な お次 の 点 を考 慮 す る必 要 が あ る.第1に,ウ イル ス の 種 類 ない し株 に よつ て ヌの 日脳 ウ イル ス感 受性 に つ 田村 ら(1938),12)戸 田 感 染 陽 性 成 績 が あ るが,一 方,陰 日脳 ウ イ ル ス を脳 内注 射 された 幼 若 イ ヌが高 率 に 特 異 な麻 痺 症 状 を発 す る こ と,そ の脳 内 で ウ イル 神 経 細 胞 侵 襲 に質 的 あ るい は 量 的 の 差 異 が あ る スが 増 殖 す る こ と,お か 否 か とい う こ と で あ る.こ 徴 的 な変 性 像 が認 め られ る こ とな どが 示 さ れ た の こ とは,ウ ス の 向 神1経性(Neurotropism)な (Neurovirulemce),よ (Neuromoviruleme)の に な るか も しれ ない.今 る限 り,Purkinle細 い し神 経 毒性 り 厳 密 に い え ば,向 細 胞 性(Neuromtropism)な イル 神経 い し神 経 細 胞 毒性 (Hottaら,1964).5)こ の こ とは,組 織 培 養 の成 績 が 生 体 の成 績 に直 接 結 び つい た1例 とみ る こ と も出 来 る.さ よ うな意 味 で,日 脳 ウ イル スの感 染 一 側 面 に光 を 投 げ る こ と 機 作 を生 体 内 と生 体 外 の両 面 か ら併 行 的 に追 求 す 回 の実 験 の範 囲 内 に お け る上 に幼 若 イ ヌお よび そ の 神経 組織 の 培 養 が 用 う べ き手 段 の1つ で あろ う と老 え られ る. 胞 の変 性 像 は供 試 各 材料 の 間 で本 質 的 に ほ ぐ同様 の もの と考 え られ た が,一 方,相 互 に微 妙 な差 異 の存 す る こ と も否 定 出 来 な か つ た.全 般 的 に み て,根 岸 ウ イル スの 培 養 神 経 細 胞 に対 す る侵 襲 は 日脳 ウ イル スの そ れ よ りも強 度 で あ る傾 向 が うか"わ れ た.も と,培 養 神 経 細 胞(特 よび感 染 イ ヌ脳 組織 に 特 しそ うだ とす る に1ヒ トの そ れ)に 対 す る親 結 論 (1)ヒ ト,イ ヌ,ネ コ の小 脳 皮 質 を培 養iし, Purkinje細 胞 を主 とす る神 経 細 胞 の培 養 を得 た. (2)こ れ に マ ウ ス通 過 日脳 ウ イ ル ス(G1株, JATH260株, K.Inoue株)お よび 根 岸 ウ イ ル ス を接 種 して ウ イ ル ス増 殖 曲線 実 験 を お こ な 和 性 を もつ て ヒ ト病 原 性 ウ イル ス の"向 神 経 性" い,い ず れ の 場 合 に もウ イル ス の 増 殖 を 証 明 し を推 定 す る こ とは あ なが ち不 可能 で ない こ とに も た.た"し な り,さ よ うな推 論 の 可 否 は さ ら に検 討 の償 値 が は 供 試 ウ イル ス株 の間 で有 意 の差 を示 した.さ あ る と思 わ れ る. 第2に,"ウ イ ル スの 見掛 け上 の増 殖"と"神 経 細 胞 の 変性 の程 度"と の 関 係 のい か ん で あ る. 培 養液 相 中 の活 性 ウ イル ス の最 高 力 償 よ うな意 味 で,日 脳 ウ イル ス の 神経 組 織 培 養 に 対 す る親 和 性 は株 に よつ て か な り相 違 す る こ とが 知 ら れ た.組 織 の種 類 に つ い て は,本 実 験 条 件 下 に関 この 両 者 が 平 行 す る揚 合 と,平 行 しない 場 合 とが す る限 り,イ ヌ小 脳 組 織 に お け る各 種 ウ イ ル ス の 考 え られ る.平 行 しない 揚 合 の 内 に は,ウ イル ス の 見掛 け上 の増 殖 が良 好 で あ るに か ゝわ らず 神 経 増 殖 が ネコ の そ れ よ りも此較 的 高 い,と い う傾 向 細 胞 の 変 性 が あ ま り強 度 で ない とい う例 も あ り得 る で あ ろ う.さ よ うな 場合,ウ イル ス は まず 神経 細 胞 以 外 の細 胞 で増 殖 し,つ い で 二次 的 に 神 経 細 が認 め られ た. (3)ウ イル ス を接 種 さ れた 培 養 組 織 に お い て, Purkinle細 胞 は特 徴 的 な変 性 像 を示 した.と わ けBodian鍍 り 銀 法 に よ る所 見 の概 略 は次 の通 り 昭 和39年11月20日 289 で あつ た. (i)胞 6) 体 内神 経 凍 線 維 は粗 大 とな り,そ の 配 れ ら の変 化 は感 染 経 過 の進 行 と とも にそ の程 度 を 7) (ii)樹 状 突 起 は小 分 枝 を失 い,樹 状 突 起 内 の 神 経 原 線 維 は胞 体 内 のそ れ と同 じ経 過 をた どつ て 8) 変 化 す る. (iii)神 経 突 起 はそ の 主幹 部 に不 規 則 な膨 隆 あ な お,Nissl染 色 に よ れ ば,胞 体 内Niss1物 質 ル ス以 外 の要 因,特 に培 養 条 件 の不 利 に よつ て惹 起 され た変 化 とは 明 らか に 区別 され ,ま た,ウ イ ル ス に免 疫 血 清 を添 加 す る こ とに よつ てそ の出 現 が 麹 制 さ れ る事 実 か ら,ウ イル ス感 染 に伴 う特 異 的 な現 象 と到 定 され た. (4)以 上 の成 績 に 関 しウ イル ス学 的,神 経 病 理 学 的 考 察 の 二,三 を加 え た. 2) 3) 4) 5) に よ る各 応 に つ い て, 日伝 染 会 誌 , 37: 369-377, 1964, 堀 田 進, 大 山 昭 夫 , 広 瀬 長 敏, 大 野 幹 人: 組 織 培 養 に よ る 日本 脳 炎 ウ イ ル ス の 研 究, IV ヒ ト 38, 10) 124-132, 笠 原 四 郎, 田 良 三, 現 す る こ とが認 め られ た.こ れ らの 変性 像 は ウ イ 1) 血 漿 包埋 チ ェ ー ブ培 養 法 種 組 織 の 培 養 に お け る ウ イ ル ス の 増 殖 , 日伝 染 会 誌, 37: 335-342, 1963. 堀 田 進, 大 山 昭 夫, 竹 原 学 , 青 木 英 夫: 組 織 培 養 に よ る 日本 脳 炎 ウ イ ル ス の 研 究. IIIト リ プ シ ン処 理単 層 細 胞 培 養 を用 い た一 二 の 検 討 ,特 に 無 血 清培 養液 に よ る培 養 並 び に 赤 血 球 吸着 反 会 誌, 9) が減 少 あ るい は消 失 し,胞 体 内 に異 常 な空 胞 の出 文 献 Fernandes, M. V. & Pomerat, C. 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Culture Growth Studies on Japanese and Cytopathogenicity Cultures Susumu of JBE of Mammalian HOTTA, Akio Mikito OHYAMA, Hiroshi and Chu Cha Cerebellar tissues from were cultivated sisted of 50% human salt solution, cellular JATH in MUSASHI, LIAO. and Kobe. kittens, 1 to 15-day-old, as well as from human by the roller-tube technique. Culture ascitic fluid, 5% chick embryo extract, glucose growth was 37C. brain passages; puppies cancerous Viruses Tissues. of Microbiology, School of Medicine, on a coverslip 300 mg% and Viruses 1,000 u/ml penicillin. used were: 260 strain, 45% Gey's balanced Temperature JBE G1 strain, medium con- of incubation K. Inoue strain, perature of incubation following virus inoculation was 34C. All of the viruses tested multiplied in the cerebellar tissue cultures. however, tion. JBE JATH cultures; strain the highest virus virus about 106, which usually were different in each virus multiplied titers strain-culture of the Tem- The grades system of combina- well in puppy and human embryonicerebellar in fluid phase were attained for of the 240th to 245thmouse of the 1st to 4th mouse brain passages; of the 2nd or 3rd mouse brain passages; and Negishi strain virus, a member Russian Spring-Summer encephalitis group, of the 7th to 10th mouse brain passages. viral multiplication, 第8号 Virus. Related Nervous Kobe University, embryos and Central OHNO Department B Encephalitis 第38巻 (mouse-intracerebral 5 to 7 days after inoculation LD50/0.02 ml) of virus. were Contrarily, growth of K. Inoue strain virus was inferior in every of the culture systems employed, the highest titers in fluid phase being 102 to 102.5. Viral growth in kitten cerebellar tissue cultures was generally slighter in the affinity between In the cells exhibited stain were staining virus virus-infected as follows: strains cultures degeneration. properties than that in puppy and nervous stained cerebellar tissue cultures by either (1) In, the mild unusual infection granules; cultures. Difference was evident. Bodian or Nissl method, the Purkinje Some of the characteristic and contained tissue changes stage, revealed by the the nuclei changed the neurofibrils Bodian the original both in the cell body and in the dendrited staines rather roughly; branches of the dendrites were shortened or reduced in number; the neurites showed abnormal appearance such as breaking, swelling, serpentine turnings, etc. (2) In the advanced into masses of debris and the neurofibrilar became rudimentary; the neurites were stained preparations, of various These antisera which the tigroid been subjected Morphological stage, the nuclei were disintegrated patterns were completely lost; the broken and could not be fully traced. lost their original sizes were seen in the cytoplasm. alterations were prevented by mixing prior to inoculation. had substances infection changes to disadvantageous the staining viruses ability,and such vacuoles with the specific anti-viral noted in the Purkinje conditions dendrites In Nissl cells in cultures as prolonged incubation 291 昭 和39年11月20日 without changing from the changes therefore, medium or incubation that occurred that the degeneration by the viruses. Virological in higher inevitably of Purkinje temperatures, in the virus-infected cells observed and neuropathological significances were apparently cultures. different It was concluded, as above was caused specifically of the findings are discussed.
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