マ ウス抗 エ ン ドトキシンモ ノクローナル抗体(E5)の エ ン ドトキ シンと

1108
マ ウ ス抗 エ ン ド トキ シ ン モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体(E5)の
エ ン ド トキ シ ン とTNF-α
に よ る血 圧 降 下 作 用 に対 す る効 果
1)岩手 医科 大 学 医 学部 細 菌 学教 室
2)同
高次 救 急 セ ンタ ー
,3)滝 沢 中央 病 院
稲 田
捷 也1)
遠 藤
重 厚2)
山 下
尚 彦1)
鈴 木
美 幸1)
吉 田
寿 子3)
吉 田
昌 男1)
Key
words:
(平成5年7月21日
受 付)
(平成5年9月13日
受 理)
endotoxin
shock,
monoclonal
要
E.coli
J 5株 由来LPSに
TNF-a,
antibody,
anti-endotoxin
hypotension
旨
対 す る マ ウ ス モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体(E5)を
マ ウ ス 血 圧 降 下 作 用 に対 す る 効 果 を 検 討 した .E.coli
0111:
用 い て,LPsとTNF-α
に よる
B4S型LPS2μgとTNF-α8,000単
位を
混 合 して マ ウ ス へ 静 注 す る と相 乗 的 に 血 圧 が 下 降 した(こ れ ら単 独 で は 血 圧 は下 降 し な か っ た) .こ れ に
対 し てE520μgを10分
前 に 投 与 す る と これ らの 混 合 物 に よ る血 圧 下 降 を 有 意 に抑 制 した .ま た,E5を10
分 後 に 投 与 し た 場 合,20μgで
た.特
に100μgのE5は
抑 制 した.こ
の 結 果,E5は
序
ら にE5を30分
が よ りい っ そ う注 目 さ れ て い る .我
グラム陰性菌細胞壁
彩 な 生 体 活 性 を も っ て い る.特
にグ
ラ ム 陰 性 菌 敗 血 症 性 シ ョ ッ ク 即 ち エ ン ド トキ シ ン
シ ョ ッ ク の 発 現 に か か わ っ て お り,そ
の 最 も重 要
な 生 体 活 性 で あ る1).
よ っ て マ ク ロ フ ァ ー ジ か ら産 生 さ れ る メ デ ィエ ー
ン タ ー ロ イ キ ン1(IL1)や
(TNF-α)な
腫瘍壊 死因子
どの サ イ トカ イ ン な どに よ っ て お こ
る と考 え ら れ て き た2).し か し 最 近 は,エ
シ ン とTNF-α
有意に
キ シ ン とTNF-α
IL2が
々 もエ ン ド ト
の 相乗 的 致 死 に対 して さ らに
そ れ を 増 強 す る 事 を 見 い だ し て い る5).
い ず れ に し ろ エ ン ド トキ シ ン が シ ョ ッ ク 発 現 の
鍵 を 握 っ て い る 事 に は 変 わ りな く,エ
ン ド トキ シ
ン シ ョ ッ ク の 予 防 治 療 に は エ ン ド トキ シ ン に 対 す
エ ン ド ト キ シ ン シ ョ ッ ク は エ ン ド トキ シ ン に
タ ー,イ
は有 意 に抑制 し
後 に 投 与 した 場 合 ,100μgのE5は
体 内 で 効 果 的 に 作 用 して い る こ とが 示 さ れ た .
文
エ ン ド トキ シ ン(LPS)は
の 成 分 で,多
は有 意 な 抑 制 効 果 は み ら れ な か っ た が,50μgと100μgで
ほ ぼ 完 全 に抑 制 した.さ
ン ド トキ
と の 併 用 に よ っ て エ ン ド トキ シ ン
る 策 を 考 え な け れ ば な ら な い6).従
来 か ら抗 エ ン
ド トキ シ ン 抗 体 が つ く ら れ エ ン ド トキ シ ン 活 性 の
中 和 に 関 す る 研 究 が 報 告 さ れ て い る7).さ ら に,グ
ラ ム 陰 性 菌 敗 血 症 な い し,シ
る 試 み が な さ れ て い る8).最
のRc変
異 株 で あ るJ5株
ョ ックの 治 療 に 用 い
近,Ecolio111:B4
の全菌体 を マウスに免疫
の 作 用 が 相 乗 的 に 増 強 す る 事 も報 告 さ れ3)4),エ ン
して 得 た 脾 臓 細 胞 とマ ウ ス ミエ ロ ー マ細 胞 との 細
ド トキ シ ン シ ョ ッ ク に お け る サ イ トカ イ ン の 役 割
胞 融 合 に よ っ て 得 ら れ た マ ウ スIgM型
別 刷 請 求先:
(〒620)盛
ロ ー ナ ル 抗 体(E5)が
岡 市 内丸19番1号
臨 床 応 用 され る よ うに な
り9),日 本 で も 第II相 試 験 が 行 わ れ て い る.
岩 手 医科 大 学 医学 部 細 菌学 教 室
稲田
モ ノ ク
捷也
そ こ でLPSとTNF-α
に よ るマ ウス血 圧 下 降
感染 症 学 雑 誌
第67巻
第11号
抗LPS抗
に対 す るE5の 効 果 につ い て 検 討 し た の で 報 告 す
る.
材 料 と方 法
LPS:
Ecoli
型,ク
01111:B4S型
由来, Westpha1
ロ マ ト精 製 品(Sigma社)を
食 塩 水(以
約2分
1109
体 の 抗 エ ン ド トキ シ ソ作 用
用 い た.生 理
下 生 食 水)に 懸 濁 させ,超 音 波 処 理 を
Fig. 1 Dose response effect of endotoxin on blood
pressure. Saline solution (A), 2(B), 10(C) or
100(D) pg of LPS (0.1m1) was injected into mice
(5 animals/group)
and measured blood pressure
for 3 hr. The symbol # and asterisks indicate p<
0.05 compared with (A) saline solution and (D)
100pg of LPS, in each time, respectively (multiple comparison test; Dunnett t-test).
間 施 した の ち 用 いた.
TNF-α:リ
コ ン ビ ナ ン トマ ウ スTNF-α
はGenzyme社
標品
よ り購 入 し,生 食 水 に て 希 釈 し て
用 いた.
マ ウス:ddY(日
体 重30∼40gを
本SLC,静
用 いた.各
岡),雄,6∼8週,
群5頭
投 与 方 法:LPSとTNF-α
と した.
は生 食 水 で適 当 な
濃 度 に 希 釈 調 整 し,使 用 直 前 に混 合 し投 与 容 量 を
0.1mlと
して 静 脈 内投 与 した.対
照 群 に は 生 食 水'
を 投 与 した.
収 縮 期 血 圧 の 測 定:38℃
に 維 持 した プ レー ト上
で マ ウ ス を緩 や か に固 定 し,マ
ウス尾 部 に カ ブを
装 着 し,光 電 式 マ ウ ス非 観 血 的 血 圧 測 定 装 置PS200A(理
研 開 発 製)を 用 い て 収 縮 期 血 圧 を投 与 前
(0分)お
よ び,投 与1,2,3時
各 時 間 毎 に5∼10回
間 後 に測 定 した.
測 定 した も の の 平 均 値 を1つ
の値 と し た.
統 計 学 的 処 理:群
間 の 差 の有 意 性 を 二 元 配 置 分
散 分 析 で求 め た.ま
た 各 時 間 に お け る群 間 の 差 の
有 意 性 をDunnettの
Fig. 2 Effect of mouse recombinant TNF-a on
blood pressure. TNF-a (8,000 units; E or 40,000
units; F) was injected into 5 mice and measured
blood pressure for 3 hr. # indicate p<0.05
compared with (A) saline solution, in each time
(multiple comparison test; Dunnett t-test).
多 重 比 較 法 で 求 め た.p<
0.05で 有 意 差 あ り と した.
成
i) LPSとTNF-α
績
に よ る血 圧 低 下
Fig.1に 示 す よ うにLpsを10μg/マ
は100μg/マ ウス 投 与(図
す る と,3時
ウス あ る い
中LPS10,LPS100)と
間 ま で の 観 察 で 生 食 水 投 与(Saline)
群 に 対 し て 有 意 に血 圧 が 低 下 した.ま
たLPSに
は 用 量 依 存 性 が認 め られ た(10μg投 与 群 と100μg
投 与 群 に は2元
た).し
配 置 分散 分 析 法 で有 意 差 が あ っ
か し2μg/マ ウ ス群(LPS2)で
はSaline群
との比 較 で 有 意 な 差 は見 い だ され な か った.一 方,
投 与 した と こ ろ(Mix),血
TNF-α
群 との2元
配 置 分 散 分 析 法 で,ま
投 与 後2お
よ び3時 間 の水 準 に つ いて 他 群 と有 意
に つ い て は,4万
単 位 投 与(TNF-α40)
で 血 圧 は 低 下 した が,8,000単
位 投 与(TNF-α8)
で は有 意 の 低 下 は 認 め られ な か っ た(Fig.2).
次 に,LPS2μgとTNF-α8,000単
平 成5年11月20日
位 を混合 し
圧 が 有 意 に低 下 した(他
たDunett法
で
の差 を 認 め た)(Fig.3).
ii) LpsとTNF-α
の 混 合 投 与 に 対 す るE5の
稲 田 捷也 他
1110
Fig.
3
Effect
of the
blood
pressure.
units;
E)
or
the
mixture
the
blood
injected
and
3
indicates
hr.#
saline
nett
solution
mixture
LPS
of
and
B),
TNF-a)
TNF-a
these
pressure
p <0.05
(multiple
(LPS
(2ƒÊg;
(Mix;
was
compared
comparison
on
(8,000
G)
measured
was
for
with
(A)
test;
Dun-
t-test).
Fig. 4 Effect of E5 on hypotension induced by the
mixture (LPS and TNF-a)(1).
E5 was injected
10 minutes before the injection of the mixture
(LPS 2,ug and TNF-a 8,000 units)(I;
E5(20)Mix). The symbol # and asterisks indicate p<
0.05 compared with (A) saline solution and (H)
(Saline-Mix; saline solution, instead of E5, was
injected 10 minutes before the injection of the
mixture), in each time, respectively (multiple
comparison test; Dunnett t-test).
Fig. 5 Effect of E5 on hypotension induced by the
mixture (LPS and TNF-a)(2).
Twenty pg (K;
Mix-10-E (20)), 50pg (L; Mix-E5 (50) or 100pg
(M; Mix-10-E5(100))
of E5 was injected 10
minutes after the injection of the mixture (LPS 2
pg and TNF-8 , 000 units). The symbol # and
asterisks indicate p< 0.05 compared with (A)
saline solution and (J) (Mix-10-Saline; saline
solution, instead of E5, was injected 10 minutes
after the injection of the mixture), respectively
(multiple comparison test; Dunnett t-test).
し た.
E5前 投 与(10分
20μg/マ
ウ ス(図
前)の
効 果(Fig.4):予
めE5を
中E5(20)-Mix)ま
たは対照 と
し て 生 食 水 を 投 与 し(Saline-Mix),10分
2μgとTNF-α8,000単
位 の 混 合 物 を 静 注 し,E5
の 抑 制 効 果 を 検 討 し た.そ
TNF-α
後 にLPS
の 結 果,E5はLPSと
の 混 合 投 与 を 部 分 的 な が ら も有 意 に 抑 制
す る こ と が わ か っ た.即 ちSaline群
間 で は2元
法 で 投 与2,3時
Saline群
を 含 め て3群
配 置 分 散 分 析 で 有 意 で あ り,Dunnett
間 の 各 水 準 でE5(20)-Mix群
に 対 し て も,Saline-Mix群
は
に対 して も有
意 の 差 を 認 め た.
E5後
投 与(10分
後)の
効 果(Fig.5):そ
こ で20
μg/マ ウ ス あ る い は そ れ よ り高 濃 度 のE5を,LPS
2μgとTNF-α8,000単
位 の混合 物 を投与 してか
ら10分 後 に 投 与 し て そ の 効 果 を 検 討 し た.混
与 群 は 混 合 物 投 与10分
(Mix-10-Saline)と
抑制 効果
そ こでLPS2μgとTNF-α8,000単
合投
後 に 生 食 水 を 投 与 した 群
し,比
較 し た.そ
の 結 果,混
合
投 与 群 の 血 圧 下 降 に 対 し てE520μg(Mix-10-
位 の混 合 投
与 に対 す るE5の 抑 制 効 果 に つ い て 検 討 す る事 に
E5(20))に
は 有 意 な抑 制 効 果 は み られ な か った
が,50μg(Mix-10-E5(50))と100μg(Mix-10感染 症 学 雑 誌
第67巻
第11号
抗LPS抗
1111
体 の抗 エ ン ドトキ シ ン作 用
Fig. 6 Effect of E5 on hypotension induced by the
mixture (LPS and TNF-a)(3).
Fifty pg (0;
Mix-30-E5 (50)) or 100,ug (P; Mix-30-E5(100)) of
E5 was injected 30 minutes after the injection of
the mixture (LPS 2,ug and TNF-a 8,000 units).
The symbol # and asterinks indicate p < 0.05
compared with (A) saline solution and (N)
(Mix-30-Saline; saline solution, instead of E5,
was injected 30 minutes after the injection of the
mixture),
respectively
(multiple comparison
test; Dunnett t-test).
AやRaLPSに
り,ヒ
対 す る 結 合 定 数Kdは
ト型 抗LPSモ
Kdが100nMに
る11).こ
あ
ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体HA-1Aの
対 して優 れ てい る との報 告 もあ
の よ うにE5はLPSの
ピ ドA部
数nMで
活性 中心で あ る リ
分 に 結 合 す る 事 が 示 唆 さ れ る.
し か し,E5やHA-1Aが,in
vitmで
のLPSに
よ る ヒ ト単 球 か ら のIL-1,IL-6,TNFの
ウ ス 脾 臓 細 胞 の 増 殖,LALの
産 生,マ
活 性 化 に つ い て はそ
の 抑 制 効 果 は 弱 い こ とが 報 告 さ れ て い る12).我
々
も マ ウ ス 腹 腔 侵 出 マ ク ロ フ ァ ー ジ のLPSに
よる
一 酸 化 窒 素(NO)産
生 に 対 し てE5は 顕 著 な 抑 制
効 果 を 示 さ な か っ た(未 発 表 デ ー タ).し か しE5は
ザ イ モ サ ソ や ホ ル ボ ー ル エ ス テ ル に よ る好 中 球 の
化 学 発 光 に 対 す るLPSの
増 強(priming)効
果 を
部 分 的 な が ら も抑 制 し た と の 報 告 も あ る13).
エ ン ド トキ シ ン のin
vivo試
験 に お け るE5の
抑 制 作 用 に つ い て 報 告 は 少 な い.Romuloら14)は,
SPFラ
ッ トに 緑 膿 菌 を 感 染 さ せ て 白 血 球 減 少 と
し,発 熱 し た 時 点 でE5を
静 注 す る と,ラ
ッ トは 対
照 の モ ノク ロ ー ナル 抗 体 投 与 群 に比 較 して 有 意 に
E5(100))
μgのE5は
のE5で
有 意 な 抑 制 が み ら れ た.特
後)の
効 果(Fig.6):次
2μgとTNF-α8,000単
ら30分 後 に50あ
合 物 投 与 後30分
ウ ス のE5を
投 与
後 に 生 食 水 を投 与 した 混
合 投 与 群(Mix-30-Saline)と
比 較 し た.そ
50μgのE5(Mix-30-E5(50))で
し た も の の2元
にLPs
位 の混 合物 を投与 してか
る い は100μg/マ
の 結 果,
は抑 制 傾 向 を 示
的 配 置 分 散 分 析 で は有 意 差 は み ら
れ な か っ た(p=0.1278).し
の血圧
E5がin
vitroでS型
のLPSや
結 合 す る 事 はELISAやRIAで
い る10)11).ま た,E5を
リ ピ ド
確 認 され て
プ レ ー トに 固 定 し,こ
各 種S型
やR型LPSあ
る い は リ ピ ドAを
させ,次
に カ ブ トガ ニ 血 球 ラ イ セ ー ト(LAL)を
反 応 さ せ る 方 法(chromogenic
capture
assay)で
調 べ る と,E5は
LAL
れに
捕 捉
antibody
こ れ ら のLPS
標 品 と結 合 す る と報 告 さ れ て い る11).ま た,リ ピ ド
平 成5年11月20日
与 に よっ
量 も対 照 群 に
ら に,ciprofloxacin
と 併 用 す る と よ り効 果 的 で あ っ た.
我 々 もLPSとTNF-α
お よ びIL2に
よ る相乗
的 な マ ウ ス の 致 死 性 作 用 に 対 し てE5は
こ と を 報 告 し た15).こ
400μg/マ
抑制 す る
の 報 告 で は30分 前 にE5を
ウ ス 投 与 す る と,EcoliOlll:B4LPS
50μgとTNF-α1万
単 位,IL25万
部 分 的 に 抑 制 し た.前
単 位 の併 用
た,E5200μgで
述 のinvitroの
る い はHA-1A)で
制 し て い な い.従 っ てE5は
も
報 告12)で は
る い はHA-1A)は100P9のLPSに
100μgのE5(あ
察
やR型
比 較 し て 有 意 に 低 下 し た.さ
E5(あ
下 降 と比 較 し て 有 意 に 抑 制 し た.
Aに
ら に,E5投
投 与 に よ る 致 死 を 抑 制 し た.ま
か し,100μgの
E5(Mix-30-E5(100))はMix-30-Saline群
考
生 残 し た と報 告 し て い る.さ
て 血 中 の エ ソ ド トキ シ ソ やTNF-α
ほ ぼ 完 全 に 抑 制 し た.
E5後 投 与(30分
し て,混
に100
対 して
も ほ とん ど抑
生体 内で効果 的に作用
し て い る 可 能 性 が あ る.
こ こ で はLPSとTNF-α
下 に 対 す るE5の
に よるマ ウス血圧 低
抑 制 効 果 を 検 討 し た.な
単 独 投 与 法 を 用 い ずTNF-α
お,LPS
と併 用 した の は 以 下
の 理 由 に よ る.
1) LPSとTNF-α
は 相 乗 効 果 を 示 す こ とが す
で に 報 告 さ れ て い る が,LPS単
独 の 作 用 機 構 と,
稲田 捷也 他
1112
LPSとTNF-α
の相 乗 効 果 の機 構 が異 な る との
kg当 た り約3mgで
あ り,日 本 でE5の
第II相 臨 床
報 告 が あ る16).最 近 我 々 は ヒ トに お い て 血 中 の エ
ン ド トキ シ ン濃 度 が 極 め て 高 濃 度 で もシ ョ ック を
試 験 が 行 わ れ て い る ヒ トで の 投 与 量2mg/kgに
発 現 しな い一 方 で,あ
ン ド トキ シ ン量 は 測 定 は して は い な い が 計 算 上 は
らか じめTNF-α
やIL-2が
当 す る.マ
ウ スへ のLPS2μ9静
異 常 高値 を 持 続 し,そ の後 正 常 値 をわ ず か に越 え
μgな い し数 百ng/mlと
る エ ン ド トキ シ ン血 症 と血 圧 低 下 が ほ ぼ 同 時 に み
経 験 で は,ヒ
られ る場 合 の あ る こ と を 明 らか に し,ヒ
トの エ ン
ド トキ シ ン シ ョ ックで も エ ン ド トキ シ ン感 受 性 の
はlng/mlを
相
注 の 際 の血 中 エ
推 定 され る.一 方,我 々 の
トの 敗 血 症 で の エ ン ド トキ シ ン濃 度
越 え る こ とは な い17).従 って,こ れ ら
の こ と か らE5の 第II相 臨 床 試 験 の 投 与 量2mg/
関 与 が あ る こ とを 示 唆 し た17).即 ち この よ うな エ
kgは 少 な く と も一 過 性 の エ ン ド トキ シ ン血 症 に
ン ド トキ シ ン シ ョ ックで は サ イ トカ イ ンが エ ン ド
は十 分 な 量 とい え よ う.
トキ シ ン に対 す る生 体 の感 受 性 の 増 強 に重 要 で あ
またE5の
投 与 時 期 をLPS投
与 前,投 与10分 後,
る こ とを 推 定 させ る.ま た,動 物 実 験 の 結 果 か ら,
30分 後 と変 化 させ た 場 合,血 圧 低 下 に対 す るE5の
あ らか じめ 生 体 が感 染 刺 激 な どで エ ン ド トキ シ ン
抑 制 効 果 は,E5の
投 与 が 遅 れ るほ ど弱 ま り高 用 量
に 対 す る感 受 性 を獲 得 す る と,微 量 の エ ソ ド トキ
を 必 要 と した.こ
の 結 果 か らE5の 投 与 のtiming
シ ン で も シ ョ ック を 生 ず る と す る 報 告 も あ
は そ の効 果 を 期 待 す る上 で 重 要 な ポ イ ン トで あ る
る2)18).また 我 々は,IL-2は
こ とが示 唆 され た.
な い がLPSとTNF-α
そ れ 自身 に致 死 活 性 は
に よるマ ウスの致 死作 用
を 高 め る こ とを 明 らか に し,サ
イ トカ イ ンの 重 要
性 を 確 認 して い る5).
りもサ イ トカ イ ン を併 用 す る こ とが よ り ヒ トの エ
ン ド トキ シ ン シ ョ ッ クに 近 い もの で あ る と考 え ら
れ る.
独 投 与 よ り もLPS量
が 少 量 で 済 み,
結 果 的 に こ れ を 抑 制 す る た め の 抗LPS剤
で 済 む と期 待 され る.マ
も少 量
ウ ス は エ ン ド トキ シ ンに
対 す る感 受 性 が 鈍 く,必 然 的 に 大 量 のLPSを
い な け れ ば な らず,そ
の結 果,そ
用
の反 応 を 抑 制 す
る た め に は,そ れ に対 応 して 大 量 の薬 剤 を 用 い る
必 要 が あ り,エ ン ド トキ シ ン に感 受 性 が 高 い と言
わ れ て い る ヒ トに 用 い る量 を は る か に越 えて しま
う可 能 性 が あ り,そ の 結 果 を ヒ トに外 挿 す る こ と
が 困難 に な る.
こ の研 究 で は比 較 的 少 量 のLPSで
55μg/kg)のLPSと8,000単
あ る2μg(約
位 のTNF-α
に よる
相 乗 的 な 血 圧 降 下 作 用 に着 目 し,E5の 抑 制 効 果 に
つ い て検 討 した.そ の 結 果,LPSの10倍
20μ9のE5の
量 であ る
前 投 与 で これ ら混 合 物 に よ る血 圧 降
下 作 用 を抑 制 した.ま
倍 のE5(100μg)で
に よ る血 圧
下 降 に対 して 抑 制 効 果 を 示 し,E5は 生 体 内 で よ り
効 果 的 に作 用 し て い る こ とが 示 唆 され た.
この よ うに エ ン ド トキ シ ソ の単 独 投 与 モ デ ル よ
2) LPS単
以 上 の よ うにE5はLPSとTNF-α
た10分 後 の 投 与 で もそ の50
有 意 に抑 制 す る こ とが で きた.
さて マ ウス に投 与 した100μgのE5量
は,マ ウ ス
文
献
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内 毒 素 の コ ア ・リ ピ ドA構
る モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体 の 生 物 活 性.
造 を 認識 す
医 学 細 菌 学4
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平 成5年11月20日
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稲田 捷也 他
1114
Inhibitory Effect of Mouse Antiendotoxin Monoclonal Antibody (E5) on Hypotension
Induced by Endotoxin and TNF-a
Katsuya
INADA1), Shigeatsu ENDO2), Hisahiko YAMASHITA1),
Hisako YOSHIDA3) & Masao YOSHIDA1)
1)Department
of Bacetriology
and 2)Critical
Care and Emergency
and 3)Takizawa
Mouse
anti-endotoxin
assessing
of E5
clinical
on
hypotension
programmable
Sigma,
(ddY,
10
min
induced
by
the
lethality
E5
effective
by
endotoxin
and
or the
induced
for
before,
blood
the
was
injection
of endotoxin
injection
activity
by
30
of
effectect
the
min
of endotoxin,
blood
pressure
The
mixture
was
the
of
8000
observed
control.
E5
endotoxin
injection
later.
We
TNF-a
trial
University,
(PhaseII)
to evaluate
(Genzyme,
pressure
70%
the
clinical
method.
TNF-a
blood
inhibited
(100ƒÊg/mouse)
a concomitant
inhibition
of
Iwate Medical
attempted
Systolic
tail-cuff
to about
Center,
SUZUKI1),
Morioka
under
We
TNF-a.
mouse
abrogated
definitely
of E5
the
change
pressure
is now
levels.
recombinant
significantly
mixture
by
and
the
Hospital,
(E5)
and
using
2ƒÊg/mouse)
decreased
injected
later,
antibody
endotoxin
plasma
induced
6-8-weeks-olds),
significantly
min
monoclonal
and
sphygmomanometer
O111:B4,
mice
findings
Central
Miyuki
and
of E5
(50,
previously
and
IL-2.
an
wa
of
3 hrs.
TNF-a.
100 ƒÊg/mouse),
coli
mixture
was
hypotension
injected
E5 prevents
Theseresults
a
into
which
The
that
(E.
injected
The
(20 ƒÊg/mouse),
found
with
endotoxin
were
by
effect
measured
units)
for
in Japan
inhibitory
suggest
10
the
that
in vivo.
感 染症 学 雑誌
第67巻
第11号