平成24年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿 血液透析用穿刺針先端の流れの可視化評価 桐蔭横浜大学大学院 江戸川病院 医用工学専攻 ○頼住啓一、髙橋怜美、山内 忍、本橋由香、佐藤敏夫 阿岸鉄三 1. はじめに リル製の水槽に擬似血管を沈めた。穿刺針を血液透 血液透析では一般的に脱血用と返血用の穿刺針が 析回路の静脈側接続部に繋ぎ、動脈側接続部は可視 それぞれ患者のシャント血管に挿入される。血液透 化用微粒子を混合した水を貯めたバケツに入れた。 析中はおよそ 200ml/min から 250ml/min 程度の流 穿刺針から脱血する水の流量は 200ml/min と設定 量で血液が体外循環される。その際に血液は穿刺針 した。擬似血管の下方からレーザーシート光を擬似 の内径 1mm 程度の非常に狭い空間を通り抜ける。 血管に照射し、高速度カメラを用いて擬似血管の側 特に返血側の穿刺針の先端ではジェット流れが形成 方から穿刺針先端付近の流れの様子を撮影した。得 されたり、あるいは乱流が発生したりする。このジ られた画像を専用のソフトウェア FLOW-EXPERT ェット流れや乱流はシャント血管にダメージを与え、 (カトウ光研)を用いて流れ解析を試みた。 血管の狭窄やそれに伴う血液凝固を引き起こす恐れ 3. 実験結果 もある。そのため各社から様々な工夫を凝らした穿 実験から Fig.2 に示すように、返血時には穿刺針 刺針が販売されているが、穿刺針として理想的な形 の先端からチューブ内に勢いよく水が流出している 状が提案されていないのが現状である。そこで我々 様子が確認できた。このことから長時間にわたって は、既に市販されている幾つかの穿刺針の先端付近 血液が勢いよく血管内壁に当たることによって、血 の流れを Fig.1 に示すような実験システムを構築し、 管内膜の肥厚や血液の滞留による凝血が発生する可 粒子画像流速計(PIV、カトウ光研)を用いて流れ 能性があることが示唆された。また、返血時には穿 の可視化実験を試みた。 刺針の側孔からほとんど血液が流れ出ていなかった。 すなわち、穿刺針の側孔は穿刺針の先端におけるジ ェット流れの形成を抑えるにはほとんど効果がない ことが確認できた。 Fig.1 PIV による流れの可視化実験システム 2. 実験方法 医療現場において最も使用頻度の高いとされるプ ラスチック製のクランピングチューブ付きメディカ ットカニューラの側孔が有るタイプと無いタイプ、 金属製の AVF ニードルセット、セーフティタッチ AVF ニードルセットの計 4 種類の穿刺針を用いた。 Fig.2 返血時の穿刺針先端の流れの様子 4. 今後の課題 今回の実験では可視化しやすい条件で実験を行う 太さはすべて 17G とした。内径 12mm の PVC 製チ ためにチューブ径 12mm の PVC 製チューブを用い ューブの擬似血管内にこれらの穿刺針を挿入し、人 たが、更にシャント血管に近い条件にするためにチ 工心肺用ローラーポンプを用いて擬似血管内に流量 ューブ径 6mm の PVC 製チューブを用いて同様の実 700ml/min で水を循環させた。チューブ表面におけ 験を行う予定である。 るレーザー光の乱反射を防ぐため、水を張ったアク
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