Page 1 Page 2 ナノスクラッチ試験による SisN繍/Cu薄膜界面損傷機構

884
日本機械学会論文集(A編)
論文N0.04-1089
71裳706号(2005一石)
U
C
/
4
ナノスクラッチ試験によるSi3N
薄膜界面損傷機構*
于赤
志正
谷鳥
池白
弘゛1,
強
井 武
樹゛1,
*1
志*2
Mechanism of Damage Process on the Si3N4/Cu lnterfacein
Nanoscratch
Test
Tadahiro SHIBUTANI*3,Qiang
YU,
Masaki SHIRATORl
and Takeshi AKAI
“jFaallty
’ひ
79
「E11gilleering,Yok(,hama
Nationa1 University,
Tuk∃wadai,Hodogaya一一ku,Yokohama-shi.Kanagawa,24C一一8501
Japan
As t.heshrinkag
and inteRration nf electric devices,all interfacial fracture between thjn l]ms
wilh several nanometers becomes mcst important. This paper aims that the mechanism
of damage
process al,!11gthe interface betweel・lmulti-layered films dur∃nR nanoscratch tests,Using the edge cf
indenter of Berknvich typ{!,nalloscratchtest was conducted in suh-micro↑l films of Si,N4/Cu/TaN
fabricated on siljcr】n
sLlbstrate. lnitiation of damage takes p】ace near the SiaN4/Cu interface which
has poor interfacialstrenglh befclrefracture 「SigN,.Damaged
spot appears ullderthe scratched ]ine
and ils size is withill severa]11anometers.Measured
critica】va】uesin nanoscratch
tests and three
dimensh】nahlorl ・linear finiteelement. allalysisreveal that shear slress c(lncentration appears backward the indellter and it agree w迂h the behavior of spot-like damage area from observation hy
means
of microscope
qualitatively. 111ordel・t.nexamine
the validity of damage
mechanism,
another
nalloscratch testin the oppositc diredion c)lscratch was carried out. The va]ue of criticalload takes
the lal'gern】yuhan that ilUhe ol・iRinaltestdue tnthedifferenceoftheshapeofjndenter,but
the stress
analysis reveals that iniliatioll
o r spol.-likedamage
on the iTlterfaCereach the same
JR;が?jy
lnj
「s: Micn)mccha
takeM〕lace whn
the values of peak stress ac↑ing
in hoth leSts.
「cs.Materjal
Testin只,Delamination,Finite Element Method, Reliability。
Thin Films, Nalloscratch Test,lnterlacial Damage, Advanced
LSI
1.緒 言
強度が低い場合が多く,また多層構造であるため従来
現在,LSI配線に代表される電子デバイスの多くが,
のスクラッチ評価手法をそのままサブミクロンサイズ
基板上に多数の材料を薄膜として積層させた薄膜積層
の多層膜に適用することは難しい.スクラッチ過程に
体であり,性能の向上や小型化などが実現されている.
おいて,薄膜表面は接触・摩擦を含め多数の非線形現
微細化とともに,異材問の変形のミスマッチに起因し
象が混在する,また,実際の対象とする界面における
た界面はく離が信頼性の士.で大きな問題となっており,
損傷(はく離)等の検出も極めて困難であることから
界面強度を定性的または定量的に評価する手法が提案
その損傷メカニズムについて体系的に検討されている
されている白一円.特に,膜を引っ掻いて損傷したとき
例は皆無である.
の荷重を測定するスクラッチ試験(69)は,汎用性が高
本研究では,多層サブミクロン薄膜のナノスクラッ
く広範囲で用いられている手法のー・つである.しかし,
チ試験における損傷機構を解明することを目的として,
評価値に表面の破壊や膜の非線形挙動を含んでいるた
実際のLSI配線用多層薄膜を対象としてナノスクラッ
め,定量的な界面強度評価には問題点が多い.従来,
チ試験を行い,内部に発生する損傷過程を観察した.
スクラッチ試験は耐熱コーティング皮膜などの密着性
とくに,表層摸に透明な保護膜ぐSi3N4)を有する試料を
の高い叫隔膜に対しての特性評価などに用いられてき
対象とすることによって,スクラッチの過程において
た剛j9).肺導体デバイスなどにおいては相対的に界面
内部に発生する損傷を観察することができる.そこで,
界面近傍に発生する損傷挙動を観察するとともに,庄
゛│京橋弓・付 丿珀IJ
4.11111 5 11.
“正M,横浜国立.入学大学院2,[学研究院(萄2匍S51111横浜市
保土今行区常盤台79 5).
゛横浜一田々大学大学院工学府,
E mail: shib1團swan.mc.yllu.ac.jp
子および多層膜をモデル化した3次元弾塑性FEM解析
を行い,着目界面近傍の応力・ひずみ分布を求め損傷
メカニズムについて検討した.
4 −
ナノスクラッチ試験によるSi3NjCu薄膜界面損傷櫓臍
885
2.ナノスクラッチ試験
2.1試験方法 スクラッチ試験は,大別すると負荷方
法によって一方向に引っかく単純負荷試験陶ヽ(9印1)や
振動圧子を用いる方法(7い閲などが開発されている.い
ずれの試験も,薄膜の基板に対する界面特性を定性的
に評価する点においては優れた手法であり広く用いら
れる.また,はく離を含め損傷の検出法にとしては(i)
負荷荷重(垂直荷重や摩擦荷重)の急変点凶'凶,(ii)AE
による検出(ll'.(閲(iii)表面観察(9)などが挙げられる.サ
ブミクロン以下の薄膜については膜厚の微小性に起因
Fig.2 Schematic
して(i)や(旧の手法は膜の破壊とはく離発生を分離す
illustration of cross-section of
tcstcd material
ることが極めて困難であり,表面観察により損傷を検
出する場合が多い.本研究では,損傷過程のメカニズ
ムの解明を目的として,負荷過程が単純な押し込み型
のスクラッチ試験を採用するとともに表面観察により
損傷発生を評価した.図1は,ナノスクラッチ試験の
概要を示す.先端の局率半径の小さい圧子に負荷を加
えながら試料に対して水平方向にスライドさせること
で表面近傍に損傷を発生させる.スクラッチ過程にお
ける押し込み変位および負荷量を測定し,試験後の表
面観察により損傷発生点を決定する.
Fig.3 Tesling apparatus ror nanoscratch test.
2.2供試材および試験方法 供試材の複式図を図2に
示す.実際のLSI配線と同様にシリコン基板上にバサ
質薄膜を積層させることにより非線形挙動の影響を軽
ア膜としてTaNが製膜されており,その上にCu(金
減させることが界面物性評価に有効であることが報告
属配線),Si3Nバ保護膜)が積層されている.SらN4/Cu
されている凶Jj.
界面の異材間のミスマッチか大きく,最弱界面となっ
試験は,室温・大気中で実施した.図3は,試験装
ておりはく離はこの界面近傍で発生する場合が多い川.
置{MTS
保護層であるSj3N4は,透明であり銅表面における損
Syslcms Corporalion製Nailo lndcnter xP}を示
す.ナノスケールの変位を精密Rつ連続的に測定する
傷を確認することができる.また,表面層が比較的硬
い材料であるため,内部の損傷に表面の摩擦や破壊が
為に,除板台の上に設置されるとともに周囲も防振壁
及ぼす影響を抑制することが期待できる.インデンテ
に摺われている.征子は図目こ示すBerk・vich型圧子
ーションを用いたはく趨発生試験などにおいても,硬
を用い,先端局率半径は約50nmである.圧子におけ
る負荷荷重および変位を連続的に記録することが可能
であり,分解能はそれぞれlnN,0.002nmである.ス
lndente
クラッチ距離を£==200μm,最大荷重戸,…=│-5mNとし
て一定速度{│,10μm/s}で圧子をスライドさせた.また,
0
圧子の非対称性を利用して図1に示すように異なろス
クラッチ方向(0-o,π)について試験を実施した.試験
後,スクラッチした面をマイクロヌコープ{キーエンス
VH2250,x25001で観察を行い,損傷の有無を確認し
移動距離から損傷発生時の荷重鳥を算■した.
3.結果と考察
3.1ナノスクラッチ試験における内部損傷 図4は、
戸、J5m執心/jz=10μm/s(0=0)のときの初期における
Fig.1Schemalic illustrati(ln or nanoscralch
スクラッチプロファイルを示している.横軸が、スク
systemwith an indenter of Berkovich lype.
一
ラッチ距離乙、縦軸が測定された押し込み深さ量を表
5−
886
ナノスクラッチ試験によるSらNむ/Cu薄膜界面損傷機構
0 0
`b
ある(0=O).横軸は最大負荷荷重値を示す.各試験条件
において,臨界荷重値のばらっきは比較的小さく10%
Ec.f笠の︵︶
以内であった.また,0-oにおいてはスクラッチ速度
が臨界荷重に及ぼす影響は小さい.すなわち,0哺の
-100
場合スクラッチ過程における破壊の時間依存性は小さ
-150
い.押し込み速度が増大するとともに,発生荷重は減
少しているがその差は約20%であり負荷速度の変化に
-200
比べると小さい.また,/)..が2
mN以上では臨界荷
-250
0
50 100 150
200 250
Scratch
μm
distance L
Fig、4 ScrMch
重値の変化も小さくなっており収束する傾向が見られ
る,図7は,0=πの場合の臨界荷重を示す.スクラッ
チ方向が0=πの場合の方が,0=0の場合に比べて発生荷
pronle、
重はピーク荷重が大きい場合は約2倍以上大きくなっ
ている.これは,0哺の場合圧子稜線部がスクラッチ
方向と一致しており,高い応力集中が発生する為であ
ると考えられる.この場合においても,低スクラッチ
速度(1μm/s)で臨界荷重の収束傾向が認められる.これ
は,両試験において垂直負荷速度dPZdLが小さくスク
ラッチ速度が大きいとき,充分に圧子と表面が接触し
1
aNf︶
0 0
zE必
。&
している.負荷開始より単調に押し込み深さは増大し
4
of microscopc.
 ̄
4二心
1 (N
1
0
leo!l!)9
bymcans
due to nanQscratch
〇
peol
Fig.5 1nlerfacialdamage
哺’九jm/s
-10Um/s
0
自 1
ている.£=50μm近傍において,若干深さが不連続に
0 2 4
変化する点が認められるがその変化量は小さく,荷重
Peak
に大きな変化は見られない.
図5は,垂直負荷速度j/)/血=0.25
Figji
Load
6
戸,mN
Critical load (0-0)・
mN/sのときのス
1.2
クラッチ痕のマイクロスコープ写真を示す.従来の臨
ZE.
界荷重値として定義される点よりもかなり初期の段階
ノ
Jニー一
1
(ゐ=0,44 mN)でスクラッチ痕の直下に局所的な損傷が
0
. 60
︲0
4 .2
peol
lEc)!1!JO
認められる.そこで,大気中において長時間放置後再
度観察を行ったところ,損傷は銅特有の赤褐色を有し
ていた.これは内部のCu薄膜が酸化したものであり,
局所的な損傷はShN4/Cu界面近傍において発生してい
ると考えられる.また,最初の損傷が発生した近傍に
おいては,Si3N4膜において表面クラックの発生は認め
られなかった.本研究においては,最初に局所損傷が
匹
→’知m/s
-●’10μm/s
I I
0 2 4
て,そのメカニズムについて検討する.
Peak Load
図6は,損傷発生荷重の結果をプロットしたむので
Fig.7Cr削calload(e=幻・
一
現れた位置における荷重を損傷発生荷重として定義し
石−
P, mN
6
ナノスクラッチ試験によるSi3N/Cu薄膜界面損傷機構
y。
887
Tabie l Material properties
Young'
Poisson's
Material Modulus
E[GPa]
四
Si3N4 304
り
(1
Cu l30
.
t \ X
根太
Si l70
1ndenler 1143
Yield strcss
gY IMPa]
27
4000
34
44002)
.
0
ratio
0
,3
0
.2
4
L
r
−
﹄
酬
j−
μ−jlllHPI−−ll 四 一 一
1500
900
300
・300
Fig.8 Analysis model.
・900
ていないことが考えられる.したがって,本試験では
低スクラッチ速度かつ適切な押込み負荷速度において,
-i5{}0
iMPs】
スクラッチ速度や押し込み速度の影響は小さい,
0)で9
3.23次元弾塑性応力解析による損傷過程の検討 ス
クラッチ試験における損傷過程のメカニズムを解明す
a.30
るために,3次元弾塑性解析を行った.図8は,解析
モデル(e=0)を示す 圧子一膜表面接触郎近傍の局所領
0.18
域(10×9×4.5μm)を対象として1/2領域についてモデ
0.06
ル化している,圧子上面において垂直方向変位を拘束
し,多層膜試料の底面において水平方向変位を拘束し
-0.06
た.試料の底面において垂直荷重7)を表面の圧力とし
-0.18
て負荷を加えるとともに圧子上面に水平方向変位liを
0,30
負荷している.解析は汎用非線形有限要素コードMare
を用いた.用いた要素は8節点1次要素を用いており,
要素数,節点数は13504,15588である,TaN層につい
(♭)y。,
ては,その影響か小さく解析においては考慮していな
Fig.9 Cont(lurmaps of shearstressand plasticstrain
い,一般に≒スクラッチ試験においては水平方向のス
nearlhejnderlter.
ライド量が大きくそのまま解析を行うと規模が大きく
Cuの降伏応力がバルタ材の値に比べて高めとなって
なり非常に計算負荷が増大する.そこで,本研究にお
いるが,サブミクロンCu薄膜(膜厚400
いては以下のように2段階で負荷を加えた.まず,発
生荷重値(発生時の25C)nm手前)近くまで負荷を加える.
用しているm).また,Si3N,薄膜については,インデ
その後,損傷発生荷重値まで負荷を加えた.このとき,
ンテーション試験で得られた硬さの│/3の値を用いた.
1段階目の負荷荷重値は実験結果より算出した.用い
た要素の寸法は接触部近傍においては50
nm)のナノイ
ンデンテーション試験から得られる値を文献値より採
他の膜の物性値については文献値より得られたものを
nm とした
用いている‘I°].
解析においては/要素の大変形を考慮しており,接触
解析において,臨界荷重時の押込み量は約50nmであ
部近傍の大きな幾何学的変形に対しても安定的に解析
り,これは実験における押込みプロファイル(図4)とほ
することが可能となっている.圧子と表面の接触部に
ぼ一嶽している.図94a)は,スクラッチ試験において
おける摩擦は考慮していない.表Iは,各材料の材料
発生したせん断応力7.y分布4e=0)を示す.図は対称面
物性を示している.SらN4,Cu膜については弾完全塑
よりみた等高線図となっている.SilN4膜内羞において,
性体,その他の材料は等方弾性体として解析を行った.
一
一
フー
888
ナノスクラッチ試験によるSiボ4ノCu薄膜界面梢傷機構
高い応力集中が現れている.とくに,Si3N4/Cu界面近
あることを考慮すると実験で確認された離散的な界面
傍においては,庄子後方部に廿ん断応力集中が現れて
近傍の損傷の要因である可能性は小さい,すなわち,
いる,スクラッチ圧子前方において損傷が発生すると
界面近傍の損傷は応力による起因したものであると考
その領域は拡大する場合が多い.すなわち,今回の実
えられる.図10は界面に接するCu側要素内の積分点
験で観察された離散的な損傷は圧子後方郎における応
における応力およびひずみ値を離散的に表示したもの
力場・ひずみ場によると考えられる.図9(bUよ,
である.≒,におけるピーク値は,圧子後方のスクラッ
Si3N4/Clj界面近傍におけろせん断塑性ひずみhv分布
チライン(中心線)上に現れており,このとき損傷はス
を示す.ひずみ集中部は圧子接触表面とCu膜内部に
クラッチ痕の直下に現れる可能性が高い.また,圧子
集中している.この場合,銅膜の内部損傷や表面摩擦
後方にピーク値が存在することから離散的な損傷が発
による損傷などが考えられるが,集中城が圧子前方で
生し易い.なお,応力集中が認められる領域は約100
S
ag
a
S
-
a
M
吸
賠
箭
恣
咽
腿 溺疸 詞 磁 儲
哩 善
図 征
副
鼠 詣
m
9 僧
豚
臨
妬
諾漣
殴
屠
懇
喩
順
同
ー
斟
忽・
:‘JJ謳
惣
−ー
釧
肩
陛ご
りZ
眉
ぶ
3g
冶豹 詣 諒
誤報 副 a 函
を
ふEa
籾・3
眉に 惣
犯
茫
痢 殺 証 脳 面詰
・胴
優 万皿否 回 曇 鵬
に.・唄・
諭 箔 附
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f・・・
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瑕覗
結腸
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-1200
-
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-240
fMPa]
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唐 暦
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|
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-1600
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ト
2こごぶ1≧
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・
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(c)oy。
0 0 0 00 60
16 10 0 ︲4 4 JI
0.30
0.18
0.06
-0.06
・0.18
0.30
一心一
トx
scrとごごぷぶ≧ion
叶x
scrl:ごごj:三jlion
(bけ。 (d)h、
一
Fjg.10 Djstributjon of slresses lnd slrain ncar thc Si3N4/Cu interace in the case of O−0(Side
8−
「
889
ナノスクラッチ試験によるSi3N,/Cu薄膜界面損傷機構
∼150 nm となっており,実験で観察された損傷の大き
のようにまとめられる.
さとほぼ同程度である,図10(b)および(c)はそれぞれ
0)ナノスクラッチ試験において,表面の硬質層の影
界面近傍における仙,cりy分布を示す.両者とも応力
響により膜に大規模な不安定破壊が現れる前に
集中城は圧子前方に存在しており,離散的な損傷は発
Si3N4/Cu界面近傍において損傷が発生していた.
生しにくい.また,T。はスクラッチ痕から少し離れた
損傷は局所的に発生しておりその領域は|ミクロ
箇所においてピークが存在している.図10(d)に示すぜ
ン程度であった.
ん断塑性ひずみ7.yは,圧子後方剖の敲れた箇所にひず (2)初期損傷発生時の荷重値/)。は,nerkovieh圧子種
I■I ・・■
● ・『●ミ。
線に沿ったケースではスクラッチ速度および押込
み集中部が存在するが,これは解析において初期水平
方向変位が250
み速度の影響は小さい.
nm しかない為に発生したものである.
圧子近傍(100`200nm)においては,ひずみ集中は圧子
0)3次元FEM非線形応力解析より,他の応力成分が
前方に発生しており,離散的な損傷の要因とはなりに
庄子前方に集中城が存在するのに対レせん断応
くい,すなわち,今回観察された界面近傍の損傷はせ
力≒については圧子後方において応力集中が発生
ん斯応力1;9に起因したものであると考えられる.
する.
図Hは,0=釧こおける界面近傍におけるi,y分布を示
している.0=0と同様に,圧子後方において応力値は
高い値を示している.なお,前方においても比較的応
力は高くなっているものの若干圧子後方部のほうが高
りy このとき,実験においても同様の損傷が現れてい
ることから,0==7rにおいてもnyによる損傷が発生して
いる可能性が商い.
図12は,スクラッチ線上におけるSi3N4/Cu界面の
せん断応力成分をプロットしたものであるバ旦し,0=77
については,方向が反対であるためスクラッチ方向を
正としてプロットしている,応力値はCu側の積分点
より外挿した値を用いている.スクラッチ試験時の圧
子の接触形態によらず,損傷発生時の圧子後方におけ
{MPal
るi,y応力値はほぼ同程度となっている.これは,負荷
X
形態によらず界面近傍における応力値があるー一定の値
ぐニ=コ
Scratch
に遂したときに損傷が発生することを示唆しており,
界面近傍の損傷に対する抵抗性(強度値)を定量的に評
Fig.11 Distribution oF てxy near the Sけも/Cu
価できる可能性を示している.損傷の発生領域が非常
interface
in thc case or O=π(Sideof Cu
に小さい(│ミクロン以下)であることを考慮すると,
300
損傷は応力のビーク値が一定の値に達したときに発生
れ応力のビーク値は239
MPa,241
ed1N“&s
1sajls﹂Sω£の
すると考えられる.e=0およびπの場合においてそれぞ
MPaとなっており
ほぼ一致している.すなわち,本論文で用いた試料に
おいて,解析より得られるshN4/Cu界面損傷発生の臨
界値(y。=240MPaは負荷形態に依らない値となっていろ.
4.結 言
ナノスクラッチ過程における多層薄膜界面近傍の損
傷メカニズムを解明することを目的として,代表的な
LSI配線用のSilN4/Cu汀aN構造の多層膜に対してナノ
200
100
0
-100
-200
-300
スクラッチ試験を実施するとともに庄子と反面の接触
-750
-500
-250
0
250
ずみ場について詳細に検討した.得られた結果は以下
Fig.12 Distrihutian or 19 along tlleSi3Ni/Cu
一
を考慮した3次元非線形有限要素法解析より応力・ひ
Distarx:e from the center of indenter, 「171
9−
890
ナノスクラッチ試験に
よるSi,N,/Cu薄膜界面損傷機構
(5)謐谷,鶴賀,于,白鳥,日本機械学会論文集(A),
69-685,1368-1373(2003)・
(4)スクラッチ方向を反転することにより圧子の接触
形態を変化させた試験においては,稜癩に沿って
(6)
押した場合(0=0)と『同様にスクラッチ初期に局所
(7)
的な損傷が発生した.また,そのときの荷重値は
(8)N.
0=・oの場合に比べて大きくなるが,試験に依らず
M. T, Laugier, Thhl Solid Films, 117,2・13-249(1984).
A,Kinbara
(1988).
R.
Moody、
Angelo、D.P.Norwood
and S,Baba,71』'・S油・d FI・/剤ぷ,63,67-73
R.
Q.
Hwsng、
S.
ald
lW.
venka-Taraman、
j.E.
W.Gerberichttp://www..、46-2、585-597(1998).
jcla
損傷発生時のFEM解析より得られるせん断応力
l,yは約240
MPa
(9)武藤,許,宮下鮑,日本機械学会論文集(A),68-670,
となる.
909-91512002),
(10)A.Kinbara,S.Baba,A.Kikuchi,771j,hS・j,‘d Fj`1.j,171,
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工学/機械一機械シス私図書
2005/7/4
日本機械学会論文集.A
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