III Evaluation and preparation of a tip for atomic force microscopy... 装置利用支援 H21-JA024

装置利用支援
H21-JA024
原子間力顕微鏡用探針先端の評価と調製 III
Evaluation and preparation of a tip for atomic force microscopy III
新井 豊子
Toyoko Arai
金沢大学大学院自然科学研究科
Graduate School of Natural Science and Technology, Kanazawa University
原子・分子分解能を有する原子間力顕微鏡法(AFM)は導電性材料ばかりではなく、絶縁材料にも利
用できる特筆すべき顕微鏡である.本研究では、収束イオンビーム(FIB)装置と超高真空走査型オー
ジェ電子分光顕微鏡法/分光法装置(SAM/S)を利用して、AFMの分解能を決定する要因の一つである
AFM探針の先鋭度や清浄度の改善、および、その評価を行った.
Atomic force microscopy (AFM) is an indispensable tool to observe the surface of a sample of not only
conductive but also insulating materials. The spatial resolution of the AFM crucially depends on the sharpness and
cleanliness of an AFM tip. In this study we evaluated and fabricated the tip apex by focused ion beam (FIB) and
scanning Auger electron microscopy/spectroscopy (SAM/S). The essential techniques for the evaluation and
fabrication were established.
背景:走査型プローブ顕微鏡法(scanning probe
microscopy: SPM)は、原子スケールで鋭利な探針
を試料表面に近づけることで、原子レベルで表面
構造を描きだせる表面顕微鏡である.その原理は、
探針と試料間で授受される電流や力など探針-試
料間距離に依存する物理量を計測しつつ、その値
が一定になるように距離を保ちつつ、探針を試料
表面に沿って機械的に走査するものである.従っ
て、空間分解能は、探針の鋭さで決まる.また、
探針先端の電子状態もその物理量を変化させる
ので、探針先端の形状および組成を評価・制御す
ることが必要である.我々はその手法の一つとし
て、走査型オージェ電子顕微鏡法/分光法
(scanning Auger electron microscopy/spectroscopy:
SAM/S)に注目し、原子分解能をもつ非接触原子
間力顕微鏡法(non-contact atomic force microscopy:
nc-AFM、SPMの一つ)への応用を検討してきた.
目的:AFM用の市販Si製ピエゾ抵抗型カンチレバ
ー端のSi探針先端には、通常、自然酸化膜や有機
汚染物が存在している.そこで、収束イオンビー
ム(focused ion beam: FIB)加工とSAM/Sを利用し、
AFM探針の評価と先鋭化を行った.図1と2に
AFMカンチレバーと探針の走査型電子顕微鏡
(scanning electron microscopy: SEM)像を示す.
このカンチレバーはピエゾ抵抗部に微小電流を
流すことで加熱できる(5mA程度で約600℃).
Fig. 1 SEM image of a whole piezo resistive AFM
cantilever made of Si taken by SAM/S.
2µm
Fig. 2 SEM image of the the Si tip on the end of
AFM cantilever taken by SAM/S.
Fig. 3 Auger spectra of the Si tip on the cantilever. 1.
No treatment. 2. After Ar ion sputtering to remove C
and O. 3. After oxidation in the SAM/S chamber by
introducing O2 gas and heating the cantilever to form a
protection layer to transfer in air. 4. After heating to
remove the oxide layer.
Fig. 4 Procedure to sharpen a Si tip by FIB using W
deposition by FIB. After W deposition on the tip apex as a
mask, the tip is milled by Ga ion beam.
Fig. 6 Auger spectra of the Si
tip after milled by FIB. (a) just
after introducing the tip into the
SAM/S chamber through air from
the FIB chamber. (b) after Ar ion
sputtering. (c) after heating.
起でW膜を局所的に堆積できる.探針先端先鋭化
加工の保護膜として利用した.
結果と考察:
図3に、SAM/S 中での処理によって、Si 製 AFM
探針の先端が清浄化されていくときのオージェ
スペクトルを示す.とくに、酸化膜形成後に 600℃
程度で通電加熱することによって、清浄な Si 探
針を得ることができる.図4に FIB 加工による先
鋭化の手順を示す.探針先端を残しながら FIB 加
工するために、探針先端に W を堆積した.その
後、先端部を削りすぎないように探針先端部を中
心としたリング状に Ge ビーム照射した.その結
果、図5に示すように先鋭な探針を得ることがで
きた.この針を SAM/S で分析したところ(図 6)、
堆積した W が検出された.残留 W は Ar イオンス
パッタと加熱で除去できた.原料ガスから発生し
たと思われる C, O の除去は不完全であった.
まとめ:
AFM 用 Si 探針を SAM/S と FIB によって評価・
加工し、先鋭な Si 探針を調製できた.
Fig. 5 SIM image of the AFM cantilever with a Si tip
milled by FIB.
実験方法:利用したSAM/Sはアルバック・ファイ
社製SAM670(加速電圧25 kVで電子ビーム径は15
nm以下)である.SAMの超高真空チャンバー内
(到達真空度:1x10-10 Torr)でAFM探針のArイオ
ンスパッタ清浄化、酸素導入による酸化膜形成、
加熱などを行った.利用したFIBは、SIIナノテク
ノロジー社SIM3050で、収束したGaイオンビーム
によって加工ができ、走査型イオン顕微鏡
(scanning ion microscopy: SIM)像の分解能は加
速30kVで4nmに達する.タングステン・カルボニ
ル・ガス源が装着されていて、Gaイオンビーム励
論文発表状況・特許状況
なし
参考文献
1). T. Arai et al.: Jpn. J. Appl. Phys. 36 (1997) 3855.
キーワードとその説明
非 接 触 原 子 間 力 顕 微 鏡 法 ( non-contact (nc)
AFM)
:AFM での力の検出感度を高めて原子分解
能を達成した方式の総称.nc-AFM では、探針−
試料間の相互作用力の変化によってカンチレバ
ーの共振周波数がわずかに変化することを利用
する.この変化量を精度良く計測することによっ
て、探針と試料の接触を避けることでき、試料表
面の原子配列を観察できる.