頸動脈エコー検査

平成25年度 臨床検査技師実習技能研修
頸動脈エコー検査
仙台西多賀病院 臨床検査科
三上秀光
血管エコー検査のためには
“質” よりよい画像、正確な血流情報など
“意味”
正常?異常?
“臨床的意義” 患者さんにどう活かされるか
本日のメニュー
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頸動脈の解剖
装置設定
検査手順
評価項目
症例提示
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頸動脈の解剖
装置設定
検査手順
評価項目
Case Study
断層法で描出可能な範囲
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頸動脈の解剖
装置設定
検査手順
評価項目
Case Study
使用するプローブと特徴
探触子と性能
周波数
低周波
2.5 - 3.5 - 5 - 7.5 - 10
距離分解能
(MHZ)
良い
減衰
用途
高周波
大きい
深部臓器
表在組織
リニアプローブ
コンベックスプローブ
装置の設定
•
•
•
•
•
ゲイン
STC
ダイナミックレンジ
フォーカス
ティッシュハーモニックイメージング
ダイナミックレンジの変更に伴う
画質の変化
超音波検査でどの程度
小さいものが計測できるか!!
超音波の1波長より短いものは
分離して認識できない
• 生体内での超音波速度を1530m/s、
周波数を7.5NHzとすると、1波長の距離は
約0.2mm
1,530m
7.5MHz
≒ 0.2×10-3m ≒
0.2mm
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頸動脈の解剖
装置設定
検査手順
評価項目
Case Study
注意:頭部の傾斜を大きくすると
胸鎖乳突筋が緊張しアプローチが
困難になる
短軸アプローチの操作
短軸アプローチ
長軸アプローチ
画像の表示方法
横断面
縦断面
心臓側
(中枢)
右側
左側
被検者の尾側(足側)から眺めた像
末梢側
心臓(中枢)側が左側、末梢側が右側にな
る像
左側
右側
頸部血管: 心臓側
頭側
上肢血管: 心臓側
手先側
下肢血管: 心臓側
足先側
注)頸動脈長軸方向断面像の表示方向については従来の循環器領域としての方式と全身
臓器の一部と考える方式で意見が分かれている。
Jpn J Med Ultrasonics Vol.36 No.4(2009)
血管をきれいに
描出するために
超音波ビームの照射角度
静脈をウィンドウにする。
静脈
ドプラ法
血管の角度とカラー表示
スラント角度の変更
スラント角度をかけ過ぎると
22.2cm/s
11.6cm/s
内頸動脈と外頸動脈の鑑別
内・外頸動脈の鑑別
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頸動脈の解剖
装置設定
検査手順
評価項目
Case Study
超音波による頸動脈病変の標準的評価法
• 日本超音波医学会用語・診断基準委員会
委員長
貴田岡正史
• 頸動脈超音波診断ガイドライン小委員会
委員長
松尾汎
副委員長
谷口信行
委員
尾崎俊也、金田智、遠田栄一、
長束一行、原田烈光、平井都
始子、伏見悦子、矢坂正弘
血管径
• 狭窄や瘤形成の判定に用いる血管径の計測
は、病変部を計測する。
• スクリーニング検査
心拡張時相(動脈収縮時相)
計測ポイントは内膜間距離または(偽)外膜
間距離
血管径の計測
IMT:intima-media thickness
(内膜中膜複合体厚)
• 必須の計測項目は左右の総頸動脈、頸動脈
球部、内頸動脈での最大内膜中膜複合体
(max IMT)
• 選択項目として、総頸動脈での平均内膜中
膜複合体(mean IMT)を用いる。
IMT:intima-media thickness
IMTの計測誤差
Leading edgeによる計測
健常者の総頸動脈maxIMTの年代別分布
早期動脈硬化研究会より
近位壁の石灰化病変ではmaxIMTは
計測困難
閉塞病変ではmaxIMTは除外
mean IMT
• 頸動脈球部を含まない左右の総頸動脈で計
測する。
• 2点以上の複数点の平均値
自動計測
CCAにおけるmaxIMTの両サイド1cmの位置
で計測し3点の平均値を求める方法 など
プラークの定義
「max IMTが1.0mmを超え、I
MC表面に編曲点を有する限
局性の隆起病変。」
但し、Vascular Remoderingの症例は
隆起の有無に関係なくPlaqueとする。
プラークの観察項目
① 最大厚や隆起部の範囲を含め
たサイズ
② 表面の形態
③ 内部の性状
④ 可動性
①プラークの計測
二断面で判断しよう
このプラークのmax IMTは?
2.4mm
短軸像
×
○
ICA・ECA分岐部
①②
ICA
ECA
①
②
②プラーク表面の形態
• 平滑(smooth)
• 不規則(irregular)
• 潰瘍(ulcer)
小潰瘍病変の検出
③プラークの内部性状
プラークのエコー輝度を評価する際、
• プラーク周囲のIMCと比較する
高輝度(Calcificated p)
石灰化に伴いプラークの
ほぼ全領域が高輝度で、
後方が音響陰影で欠損
プラークの一部が石灰化
により高輝度で、その後方が
音響陰影で欠損する病変。
ただし、一部に低輝度領域を
伴う場合は、低輝度不均一
等輝度(iso echoic)
プラーク全体がほぼ均一で、
周囲のIMCと比較して
同程度か、やや高輝度な病変
周囲のIMCと比較して、
等輝度からやや高輝度
の領域が混在する病変、
音響陰影を伴う高輝度や
低輝度領域は含まない。
低輝度(hypo echoic)
周辺のIMCに比べ
明らかに低輝度で、
ほぼ均一な病変
周囲のIMCに比べ
明らかに低輝度な
領域を一部で認める
パルスドプラ法による血流計測
1)血管径が変化する部位、血
管分岐部付近、血管の蛇行部
は流速が一定せず、血流の乱
れが生じることがあり不適切。
2)サンプルサイズは血管径の
1/2以上で血管内腔に収まる
サイズで血管中央部に設定
3)ドプラ入射角は60°以内
60°
ドプラ画像
時間的に定常な流れ(流速が
時間によって変化しない)では、
流速は管の中心で最も速く、
中心から遠ざかるほど遅くなる。
ドプラ法の原理
超音波周波数f0
受信信号周波数 f0 + fd
Fd:ドプラ偏移周波数
θ
流速V
fd =
2 × V × f0×cos θ
C
C : 生体の音速
V=
fd×C
2 × f0×cos θ
角度補正
1.0
5
0.75
4
cos θ
3
0. 5
補正無しでは
60degで2倍の値
2
0.25
0
1 / cos θ
1
20
40 60 80
角度 [deg]
V=
θ
0
fd×C
2 × f0×cos θ
20
40 60
角度 [deg]
80
角度補正
θが小さいほど
誤差が少ない
総頸動脈の血流波形記録部位
内頸動脈の血流波形記録部位
ドプラゲインと血流波形
血流波形の計測
狭窄病変の評価
ECST法
C
A
C― A
100(%)
×
C
NASCET法
A
B
B― A
100(%)
×
B
面積狭窄率
A
A―B
100(%)
×
A
ドプラ法による狭窄率の推定
• 狭窄部の収縮期最高流速(PSV)が
・1.5m/sを超える場合:NASCET 50%以上
・2.0m/s以上の場合:NASCET 70%以上
の狭窄を疑う
優位狭窄病変の血流波形
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頸動脈の解剖
装置設定
検査手順
評価項目
症例提示
症例1
• 30歳 男性
• 自衛官
• 柔剣道の練習中に左の首を突かれた(左眼
がかすんだ)為さいたま市内の病院を受診。
3日後よる右麻痺の状態を妻が発見し119
通報。
頸動脈エコー
ドプラ波形による鑑別
• CCA血流
EDV(拡張期血流速)の顕著な
低下
PSVの低下
EDV血流なし
to and fro
症例2
• 49歳 男性
• 主訴:意識障害、 左不全麻痺
• 現病歴:朝から1升飲んでいた。17時過ぎか
ら頸部の異和感自覚。18時ごろ野球観戦中
に意識消失したが自然回復。20時20分ごろ
に左不全麻痺出現。当院救急搬送。
CTで頭蓋内に明らかな出血や選挙性病変な
し。MRAで右MCA分枝途絶
RT CCA~ICA分岐部に
6.7×12.7mmの血栓様
エコー像あり。側壁に付着。
当日、緊急CEA
病理:一部が内膜側からほぼ1/2
まで線維化した弾力線維型の動脈
線維性肥厚の近傍にフィブリン様沈着
赤血球、血小板、フィブリンよりなる
急性血栓
症例3
• 64歳 男性
• 主訴:目のかすみ
• 現病歴
H17年 左ICAに対しCEA施行(他院)
H24年 右ICAに対しCAS施行(他院)
CT
MRA
RT CCA~ICAステント部
最大血流波形
PSV 656cm/s
EDV 254cm/s
RI 0.61
PTA施行後
PTA施行前
PTA施行後
PTA施行後 MRA
症例4
• 80歳 男性
• 6月18日 RT ICAにCAS施行
6月25日 LT ICAにCAS施行
CCAから続くulcerationを伴う不正な
狭窄であり、ステント2本を用いgood dilation
を得た。
6か月後のエコー
LT CCAステント入り口付近に狭窄部あり。その中枢側には出血or粥腫を
思わせる不安定プラークあり。
頸動脈解離
ご静聴ありがとうございました。