PDF(15.4.17 Update!!) - 東京大学 大学院総合文化研究科広域科学

物性物理学 I 演習問題(2015 年度版)
担当: 前田 京剛
平成 27 年 4 月 16 日
(注)問題タイトル後に* 印があるものは,C. Kittel: Introduction to Solid
State Physics 中の章末問題より,また ** 印があるものは,N. Aschcroft
and D. Mermin: Solid State Physics 中の章末問題より,それぞれとって
いる.
0
準備:数値間隔を養う
1 eV は,周波数 (Hz),波数 (cm−1 ), 温度 (K),エネルギー (erg) で表
現すると,それぞれどのくらいか?
1
Drude モデルによる交流伝導度
1.1
Drude の自由電子モデルで,散乱時間 τ → ∞ と考えた運動方程式
m
d2 x
= −eE
dt2
(1)
において,交流電場
E = E0 eiωt
(2)
を加えたとき,単位体積あたりの分極 P が
P = −nex
(3)
1
と与えられることを考慮して,比誘電率 ϵ (以後,しばしばこれを単に
誘電率と呼ぶ)が,
ϵ = 1−
ωp2 =
ωp2
ω2
(4)
ne2
ϵ0 m
(5)
で与えられることを示せ.
(ωp : プラズマ振動数)
1.2
等方的で非磁性の物質中では,
∂ 2D
∇ E = µ0 2
∂t
(6)
E = E0 exp(−iωt) exp(iK · r)
(7)
2
が成り立つことを示せ.
1.3
(6) 式の解として,
の形を仮定したとき,設問1の結果も合わせて,|K|2 を ω の関数として
求めよ.その結果,ω ≷ ωp で,解にどのような差があるか考察せよ.
1.4
√
√
反射率 R が複素誘電率を用いて R = |( ϵ − 1)/( ϵ + 1)|2 の様にあらわ
される。R を ω の関数として図示せよ。
1.5
n = 5× 1022 cm−3 として,ωp に対応する光の波長はどのくらいか?
1.6
本問題からどのようなことが分かるか?
(どのような身近な現象が説明で
きるか?)
2
2
Drude モデルの根底にある考え方:ポアッソ
ン分布 ∗∗
ドルーデモデルでは,任意の無限小の時間間隔 dt の間に,電子 1 個が
衝突にあう確率は dt/τ で与えられる.
(a) 与えられた瞬間に無作為に取り出された電子がその前 t 秒間に衝突を
していない確率は e−t/τ であることを示せ.また,その後 t 秒間衝突を
受けない確率も同じであることを示せ.
(b) 2 個の連続した衝突間の時間間隔が t と t + dt の間にある確率は
(dt/τ )e−t/τ であることを示せ.
(c) (a) の帰結として,いかなる瞬間においても,前の衝突からの経過時
間あるいは次の衝突までの時間の,全電子にわたる平均は τ であること
を示せ.
(d) (b) の帰結として,電子 1 個が 2 回の連続した衝突をする時の,衝突
の時間間隔の平均は τ であることを示せ.
(e) (c) は,いかなる瞬間においても,最後の衝突と次の衝突との間の時
間 T の全電子にわたる平均は 2τ であることを意味する.なぜこの結果
は (d) の結果と矛盾しないのかを説明せよ.
(これを完全に説明するため
には, T に対する確率分布を導き出さねばならない.
)この微妙な問題を
認識しなかったために,ドルーデは,伝導度に対して,σ = ne2 τ /m の半
分の値を与えてしまった.彼は,熱伝導度の表式においては同じ誤りを
犯してはいない.したがって,ローレンツ数の彼の計算には,因子 2 だ
けのずれがある.
3
ジュール発熱 ∗∗
一様な温度において,一様な静電場中に置かれている金属を考えよう.電
子は第 1 回目の衝突を経験した後,時間 t 秒後に第 2 回目の衝突をする.
ドルーデモデルでは,衝突後の電子の平均速度は,前回の衝突の後に電
子が電場より獲得したエネルギーには依存しないので,衝突に際してエ
ネルギーは保存しない.
(a) 時間 t で隔てられた二度の衝突の間にイオンに失われるエネルギーの
平均は, (eEt)2 /2m で与えられることを示せ.
(平均は,電子が第 1 回目
の衝突をしたのち現れるあらゆる方向に渡って行う.
)
(b) 前問 (b) の結果を利用して,電子 1 個あたり,衝突 1 回あたりの格子
に失われるエネルギーの平均は (eEτ )2 /m で与えられる.したがって,単
位時間あたり,1 cm3 あたりの平均エネルギーロスは (ne2 τ /m)E 2 =σE 2
で与えられることを示せ.
3
(c) 長さ L, 断面積 A のワイヤーのパワーロスは I 2 R であることを示せ.
ただし,I はワイヤーを流れる電流,R はワイヤーの抵抗である.
4
熱伝導度(H24 年度大学院総合文化研究科相関
基礎科学系入試問題より)
x 方向に温度勾配 dT /dx が存在する固体中を x 方向に単位面積あたりに
流れる熱流が dT /dx に比例して jq = −κ(dT /dx) と書けるとき,κ を熱
伝導度と呼ぶ。以下で,常温金属の伝導電子による熱伝導度を考えよう。
伝導電子を,一個あたりの平均エネルギー ϵ を持ち,平均の速さ v (た
√
だし,⃗v をベクトルとして v ≡ < ⃗v 2 >)でランダムに飛び回っている,
局所的な数密度が n の古典的な自由電子系と考えよう。電子が散乱を繰
り返すことによってエネルギーが拡散することで熱エネルギーが運ばれ
る。 ϵ, v, n は一般に温度 T の関数である。各電子は平均として散乱時
間 τ 経った後に散乱され,運動方向が初速度に依らず完全にランダムに
なる。同時に,各電子は散乱した場所の温度に対応した ϵ, v を獲得する
とともに,対応する電子濃度 n が実現する。
(1) 平均の速さ v でランダムに飛び回っている電子の x 方向速度成分の
二乗平均 < vx2 > を v で表せ。
(2) 温度 T にある面 S (x=0) を高温側 (x <0) から低温側 (x >0) に貫く
ある電子を考える。この電子の速さは前回散乱した場所の温度 T + ∆T
で決まっており,その平均の値を v + ∆v と表す。この粒子は前回散乱さ
れてから平均として時間 τ 後に面 S を貫いたはずである。前回散乱され
た場所から面 S までの平均距離 ∆x および ∆T を,v + ∆v, τ , dT /dx で
表せ。
(3) 面 S を高温側 (x <0) から低温側 (x >0) に貫く電子は,小問 (2) のよ
うに,∆x 離れた場所からやってきたと考えてよい。面 S を高温側 (x <0)
から低温側 (x >0) に貫く電子によって運ばれるエネルギー密度 jϵ+ を書
き下せ。ただし,∆x 離れた場所での粒子の数密度 (n + ∆n),平均エ
ネルギー (ϵ + ∆ϵ), 平均の速さ (v + ∆v) を用いて良い。
(4) 面 S を低温側 (x >0) から高温側 (x <0) に貫く粒子によって運ばれ
るエネルギー流密度 jϵ − を同様に考えることにより,正味のエネルギー
流密度 jϵ を ϵ, v, n, ∆ϵ, ∆v, ∆n を用いて書き表せ。ただし,微小量の
一次項まで考えればよい。
上問 (4) で求めたエネルギー流密度 jϵ は,熱流密度 jq と電子の正味の
流れによるエネルギー流密度の和である。以下の小問でそのことを考え
よう。
(5) 面 S を貫く電子の正味の流れを表す電子流密度 jn (単位時間当たり
4
に単位面積を貫く電子数)を書き表せ。ϵ, v, n, ∆ϵ, ∆v, ∆n のうち必要
な記号を用いよ。
(6) 電子の正味の流れで運ばれるエネルギー流密度を書き下せ。ϵ, v, n,
∆ϵ, ∆v, ∆n のうち必要な記号を用いよ。
(7) 電子の正味の流れによるエネルギー流は熱流ではないことを考慮し
て,熱流密度 jq を書き下せ。ϵ, v, n, ∆ϵ, ∆v, ∆n のうち必要な記号を用
いよ。
(8) 熱伝導度 κ を求めよ。また,κ を単位体積当たりの電子比熱 C を用
いて表せ。
(9) 電子を古典的粒子と考えるので,温度 T における電子の平均エネル
ギーは ϵ = (3/2)kB T , 平均速度は v = (2ϵ/m)1/2 , 比熱は C = (3n/2)kB
である。ただし,m は電子質量,kB はボルツマン定数とする。これらの
古典的な ϵ, v, C の値は実際の金属における値とは大きく異なる。にもか
かわらず,さまざまな金属に対してこれらの値を小問 (8) で求めた熱伝導
度 κ の表式に代入すると,伝導電子からの寄与のほぼ実測値に近い値が
得られる。(ただし,τ は実測値を用いる。)なぜか,考えを述べよ。
(10) 金属の熱伝導には伝導電子に加えて,格子振動が寄与する。常温金
属の熱伝導において,伝導電子と格子振動のどちらの寄与が大きいと思
うか。日常経験を思い出して,理由とともに応えよ。
5
トムソン効果 ∗∗
金属中に,一様な電場の他に,一様な温度勾配 ∇T がついているとしよ
う.すると,電子は衝突の後,局所温度で決まるエネルギーで現れる.し
たがって,衝突で失われるエネルギーは,衝突の間に電子が電場からど
のくらいエネルギーを得るかに加え,温度勾配中をどのくらい移動する
かに依存するだろう.結果として,パワーロスは,E・∇T に比例する項
を含む(この項は, 2 次のエネルギーロスの項の中で,電場の符号が反
転したときに符号を変える唯一の項なので,他の項と容易に区別できる.
)
ドルーデモデルでは,この項が (neτ /m)(dε/dT )(E・∇T ) で与えられる
ことを示せ.ここで,ε は電子 1 個あたりの平均熱エネルギーである.
(場
所 r − d で衝突した後,r で衝突した電子によって失われるエネルギー
を計算せよ.エネルギーに依存しない一定の緩和時間 τ を仮定し,簡単
な運動学的議論によって,d を電場と温度勾配の 1 次まで(エネルギー
ロスを 2 次まで計算するためにはこれで十分である)求めることが出来
るであろう.
)
5
6
ヘリコン波 ∗∗
金属が z 軸に沿った一様な磁場 H 中に置かれているとしよう.交流電場
Ee−iωt が H に垂直にかけられている.
(a) 電場が円偏光のとき (Ey = ±iEx ),関係式 j(ω) = σ(ω)E(ω) は
(
)
σ0
jx =
Ex , jy = ±ijx , jz = 0
(8)
1 − i(ω ∓ ωc )τ
と一般化されることを示せ.ただし,ωc ≡ eH/mc.
(b) (1.61) 式と関連して,もし k 2 c2 = ϵω 2 , ただし
ωp2
ϵ(ω) = 1 −
ω
(
1
ω ∓ ωc + i/τ
)
(63)
であるとすると, マックスウェル方程式 (1.31) が
Ex = E0 ei(kz−ωt) , Ey = ±iEx , Ez = 0
(62)
の形の解を持つことを示せ.
(c) (Ey = iEx の偏光を選択し)ω >0 に対して ϵ(ω) をスケッチし,
ω > ωp , ω < ωc の周波数に対しては,任意の k に対して k 2 c2 = ϵω 2 の
解が存在することを示せ.
(高磁場極限 ωc τ ≫1 を仮定し,数百キロガウ
スの磁場に対しても ωp /ωc ≫1 である事に注意せよ.
)
(d) ω ≪ ωc に対して,低周波に対する k と ω の関係は
k 2 c2
ω = ωc ( 2 )
ωp
(64)
となることを示せ.この低周波の波はヘリコン波として知られ,多くの
金属で観測されている.波長 1 cm ,磁場を 10 kgauss とし,典型的な金
属の電子密度に対して,ヘリコン波の周波数を評価せよ.
7
表面プラズモン ∗∗
金属の表面に沿って伝播できる電磁波によって,通常の(バルクの)プラ
ズモンの観測は複雑になっている.z >0 の半空間に金属があり,z <0 は
真空であるとしよう.マックスウェル方程式に現れる電子密度 ρ は,金
属の内部, 外部いずれにおいてもゼロであると仮定しよう.
(このことは,
z =0 の平面に集中している表面電荷密度の存在を排除するわけではな
い.
)表面プラズモンは,以下の形のマックスウェル方程式の解である.
Ex = Aeiqx e−Kz , Ey = 0, Ez = Beiqx e−Kz , z > 0
6
′
′
Ex = Ceiqx eK z , Ey = 0, Ez = Deiqx eK z , z < 0
q, K, K ′ は実数, K, K ′ は正の数
(65)
(a) 通常の境界条件(すなわち E∥ が連続,ϵE⊥ が連続)を仮定し,ドルー
デの結果 σ(ω) = σ0 /(1 − iωτ ), σ0 ≡ ne2 τ /m と ϵ(ω) = 1 + (4πiσ/ω) を
利用し,q, K, K ′ を関連付ける 3 個の式を見出せ.
(b) ωτ ≫1 を仮定し,q 2 c2 を ω 2 の関数として描け.
√
(c) qc ≫ ω の極限では,周波数 ω = ωp / 2 において解が存在すること
を示せ.K と K ′ を調べることにより,この波が表面に閉じ込められてい
ることを示せ.また,その分極を記述せよ.この波は表面プラズモンと
して知られている.
7
8
自由電子モデル(量子論)
質量 m, 電荷 −e の N 個の自由電子を, T = 0 K で考えよう。体積 L3
の立方体の箱の中で,波動関数は,箱の中で周期的境界条件を満たすと
する.以下の問いに答えよ。
8.1
個々の電子の固有関数,エネルギー固有値を求めよ.
8.2
フェルミエネルギー EF ,フェルミ波数 kF を求めよ.n = 5× 1022 cm−3
のとき,EF は温度にして何 K くらいか?
8.3
電子ガスの圧力を求めよ.この結果から得られる状態方程式を古典理想
気体のそれと比較せよ。
8.4
1次元,2次元,3次元で,それぞれ,自由電子ガスを考えるとき,状
態密度 N (E) (N (E) は,単位体積あたりで考えた,エネルギーが E と
E + dE の間にある電子の量子状態の数)を E の関数として求め,図示
せよ.
9
電気伝導度について見方を変える
9.1
電気伝導度
σ=
ne2 τ
m
(66)
8
について,自由電子の場合,次のように表現できることを示せ.ただし,
ℓ ≡ vF τ (平均自由行程).
e2 2kF
)
(kF ℓ) (3D)
h 3π
e2
σ = ( )(kF ℓ)
(2D)
h
e2 4
σ = ( ) (kF ℓ) (1D)
h kF
σ = (
(67)
(68)
(69)
9.2
(66) 式と (67), (68), (69) 式 を比較して,その違いに注目して解釈を試
みよ.
9.3
( eh )−1 はいくらか?
2
10
10.1
Fermi gasses in other systems∗
Ferim gasses in astrophysics
(a) Given M⊙ = 2× 1033 g for the mass of the Sun, estimate the number
of electrons in the Sun. In a white dwarf star this number of electrons
may be ionized and contained in a sphere of radius 2 × 109 cm; find the
Fermi energy of the electrons in electron volts.
(b) The energy of an electron in the relativistic limit ϵ ≫ mc2 is related
to the waveneumber as ϵ ≃ pc = ℏkc. Show that the Fermi energy in this
limit is ϵF ∼ ℏc(N/V )1/3 , roughly.
(c) If the above number of electrons were contained within a pulsar of
radius 10 km, show that the Fermi energy would be ∼ 108 eV. This value
explains why pulsars are believed to be composed largely of neutrons
rather than of protons and electrons, for the energy release in the reaction
n→ p + e− is only 0.8 × 106 eV, which is not large enough to enable
many electrons to form a Fermi sea. The neutron decay proceeds only
until the electron concentration builds up enough to creaste a Fermi level
of 0.8 × 10 106 eV, at which point the neutron, ptoron, and electron
concentrations are in equilibrium.
9
10.2
Liquid He3
The atom He3 has spin 12 and is a fermion. The density of liquid He3 is
0.081 gcm−3 near absolute zero. Calculate the Fermi energy ϵF and the
Fermi temperature TF .
11
状態密度
単位体積あたりの,バンド i の状態密度 Ni (E) を「エネルギーが E と
E + dE の間にあるような,バンド i 中の波動ベクトル k の数(単位体積
の試料を考える)の2倍(因子2はスピンの縮退)」と定義する.すると,
∑
Ni (E)dE ≡ 2
δ(E − Ei (k))dE
(70)
k
2
=
(2π)3
∫
δ(E − Ei (k))d3 kdE.
(71)
11.1
自由電子(Ei (k) =
を求めよ.
ℏ2 2
k )について,(71) 式を用いた計算により,Ni (E)
2m
11.2
∫
Ni (E) =
Si
2
dSi
3
(2π) |∇k Ei (k)|
(72)
を示せ.ただし,dS は,エネルギーが E に等しい等エネルギー面の微
∫
小面積要素, S dS は,その面上での積分,∇k は k に関する微分演算で
ある.
10
12
逆格子の体積,逆格子の逆格子 ∗∗
(a) (5.3) 式で定義される逆格子基本ベクトルは以下の式を満たすことを
示せ.
b1・(b2 × b3 ) =
(2π)3
.
a1・(a2 × a3 )
(73)
(ヒント:b1 (b2 や b3 ではだめ) を ai で書き下し,直交関係 (5.4) を使え)
(b) (5.3) 式を用いて基本格子ベクトル ai より bi が作られるのと同様に
して,基本格子ベクトル bi から,基本ベクトルを作るとしよう.それら
は,ai そのものであることを示せ.すなわち,
2π
b2 × b3
= ai , 等.
b1・(b2 × b3 )
(74)
(ヒント:ベクトル恒等式 A× (B× C) = B(A・C) - C(A・B) を用い
て,分子の b3 (b2 ではだめ))を ai で書き下し,直交性 (5.4) 式と上式
(5.15) を利用せよ.
)
(c) ブラベ格子の単位胞の体積は
v = |a1・(a2 × a3 )|,
(75)
で与えられることをしめせ.ここで,ai は3個の基本並進ベクトルであ
る.
((5.15) 式を考慮すると,(5.17) 式より,逆格子の単位胞の大きさが
(2π)3 /v であることがわかる.
)
13
Interplanar separation∗
Consider a plane hkl in a crystal lattice.
13.1
Prove that the reciprocal lattice vector G = ha1 + ka2 + la3 is perpendicular to this plane.
13.2
Prove that the distance between two adjacent parallel planes of the lattice
is d(hkl) = 2π/|G|.
11
13.3
Show for a simple cubic lattice that d2 = a2 /(h2 + k 2 + ℓ2 ).
14
X 線粉末回折実験 ∗∗
異なる3種類の単原子立方晶の粉末試料をデバイ・シェラーカメラで調
べる.この中の一種類は面心立方格子,他の一種類は体心立方格子,そ
して,残りの一種類はダイヤモンド構造であることが判っている.おの
おのの物質の回折リングの最初の4個の大まかな位置は,下表の通りで
ある(図 1 参照).
図 1: デバイ・シェラーカメラの模式図.回折ピークは帯状フィルムに記
録される.
(a) A, B, C の結晶構造を同定せよ.
(b) もし,入射 X 線の波長が 1.5 ˚
A であるとするならば,それぞれの物
質の立方体の一辺はいくらか?
(c) もしダイヤモンド構造を同じ大きさの立方体の閃亜鉛鉱構造で置き換
えたとき,最初の4個の回折は何度に現れるか?
15
回転に対する対称性と準結晶
15.1
2π/n の回転に対する結晶の対称性を考えるとき,許される n の値は,n
= 1, 2, 3, 4, 6 のみであることを示せ.
12
15.2
準結晶(quasi-crystal)について,調べよ.
16
一次元の周期ポテンシャル ∗∗
周期ポテンシャル中の電子のエネルギー準位に関する,ポテンシャル
の詳細な性質によらない一般的解析は,一次元系ではかなり進めること
ができる.一次元系での結果は,多くの場合,一次元系のみに特殊な状
況を含んでいたり(例えばフェルミ面の概念を考える必要がない),ある
いは,誤解を招く恐れもある(例えば,バンドの重なりの可能性‐二次
元や三次元では実際にそうなっている‐がない).にもかかわらず,9・
10・11章で扱うような近似計算によって記述される3次元系のいく
つかの側面が,一次元系の厳密な扱いによって現れるのをみるのは,安
心感がある.
そこで,一次元の周期ポテンシャル U (x) を考えよう (図 8.4).イオンは
ポテンシャルの極小にあり,そこをエネルギーの原点と定義すると便利
である.周期ポテンシャルを,幅 a で中心 x = ±na のポテンシャル障
壁の重ね合わせとみなす立場をとる.
(図 8.4)
U (x) =
∞
∑
v(x − na).
(76)
n=−∞
図 2: 一次元の周期ポテンシャル U (x).イオンは格子定数 a のブラベ格
子の格子点にいる.イオンの位置を,座標 (n + 12 )a をもち,その点でポ
テンシャルがゼロとなるようにとると便利である.
v(x − na) は位置 na に対して互いに反対側にあるイオンの間をトンネル
する電子に対するポテンシャル障壁を表している.簡単のために,v(x) =
v(−x) (本文中で仮定した反転対称性を一次元系に適用したもの)を仮
定するが,それ以外は,v に対する仮定は置かない.したがって,周期ポ
テンシャル U の形は極めて一般的である.
13
図 3: 図 8.4 の周期ポテンシャル中の隣り合うイオンを隔てるバリアの一
つに (a) 左から (b) 右から入射する粒子を図示したもの.入射粒子,透過
粒子,反射粒子はそれぞれ粒子の進行に沿った方向の矢印で,その振幅
に比例した大きさで描かれている.
一次元固体のバンド構造は,一個の単障壁ポテンシャル v(x) が存在する
ときの電子の性質によって,極めて簡単に表現できる.そこで,ポテン
シャル障壁 v(x) に左側から入射するエネルギー 1 ε = ℏ2 K 2 /2m の電子を
考えよう.|x| ≥ a/2 では v(x) = 0 なので,これらの領域では,波動関
数 ψl (x) は以下の形を持つであろう.
ψi (x) = eiKx + re−iKx ,
= teiKx ,
a
x≤−
2
a
x≥ .
2
(77)
これは,模式的に図 8.5a に示されている.
透過係数 t と反射係数 r は電子が障壁を通り抜ける,あるいは障壁に反射
される確率振幅を表している.それらは,入射粒子の波数ベクトル K に
依存し,詳細はポテンシャル障壁 v の詳細によって決められる.しかし,
t と r についての非常に一般的性質だけを考えることにより,周期ポテン
シャル U を持つバンド構造の多くの性質を導き出すことが出来る.v は
偶関数であるから,ψr (x) = ψl (−x) もエネルギー ε のシュレディンガー
方程式の解である.(8.65) 式より,ψr (x) が次の形を持つことがわかる.
ψr (x) = te−iKx ,
= e−iKx + reiKx ,
a
x≤ ,
2
a
x≥ .
2
(78)
図 8.5b に示されるように,これは,明らかに,障壁に右から入射する粒
子を記述している.
ψl と ψr は同じエネルギー固有値に属する単一障壁に対するシュレディン
ガー方程式の二つの独立な解であるので,同じエネルギー固有値に属する
1
注意:この問題では K は連続的な変数であり,逆格子とは何の関係もない.
14
他のいかなる解も,これらの線形結合で表現できる.2:ψ = Aψl + Bψr .
特に,結晶のハミルトニアンは,領域 −a/2 ≤ x ≤ a/2 においては,一
個のイオンにたいするハミルトニアンと同じなので,エネルギー固有値
ε に属する,結晶のシュレディンガー方程式のいかなる解も,その領域で
は,ψl と ψr の重ね合わせで表現できる.
ψ(x) = Aψl (x) + Bψr (x),
a
a
− ≤x≤ .
2
2
(79)
さて,ブロッホの定理は適当な k を選ぶことによって,ψ を,以下の式
を満たすように選ぶことができるということを主張している.
ψ(x + a) = eika ψ(x).
(80)
(8.68) を微分することにより,ψ ′ = dψ/dx が以下の式を満たすことがわ
かる.
ψ ′ (x + a) = eika ψ ′ (x).
(81)
(a) 条件式 (8.68) と (8.69) を x = −a/2 で課し,また (8.65) 式と (8.67) 式
を利用することにより,ブロッホ電子のエネルギーがその波数ベクトル
k と以下の式で関係付けられることを示せ.
cos ka =
1
t2 − r2 iKa
e
+ e−iKa ,
2t
2t
ε=
ℏ2 K 2
.
2m
(82)
この式が,自由電子 (v ≡0) の場合,正しい結果を与えることを示せ.
透過係数と反射係数についてさらに情報を与えることにより,(8.70) 式が
より多くのことを示唆していることがわかる.そこで,複素数 t を振幅と
位相で表現する.
t = |t|eiδ .
(83)
実数 δ は,位相シフトとして知られている.なぜならば,それは,入射波
に対する透過波の相対的な位相の変化を表すからである.電子の保存則
から,透過確率と反射確率の和はつねに1であることが要請される.
1 = |t|2 + |r|2 .
(84)
この式,および,他のいくつかの有用な情報を,以下のようにして証明
することが出来る.ϕ1 と ϕ2 を同じエネルギー固有値に属する単一障壁に
対するシュレディンガー方程式の任意の二つの解としよう.すなわち
−
ℏ2 K 2
ℏ2 ′′
ϕi + vϕi =
ϕi ,
2m
2m
i = 1, 2
2
(85)
n 階の線形微分方程式には n 個の独立な解があるという一般的な定理の特別な場合
である.
15
ここで,ロンスキー行列式 w(ϕ1 , ϕ2 ) を以下のように定義しよう.
w(ϕ1 , ϕ2 ) = ϕ′i (x)ϕ2 (x) − ϕ1 (x)ϕ′2 (x).
(86)
(b) w は x に依存しないことを,(8.73) 式からその微分がゼロになること
を導くことにより,示せ.
(c) v(x) は実関数なので,ψl∗ は,ψl と同一のシュレディンガー方程式の
解になることに注意し,x ≤ −a/2 と x ≥ a/2 で w(ψl , ψl∗ ) を評価するこ
とにより,(8.72) 式を証明せよ.
(d) w(ψl , ψr∗ ) を評価することにより,rt∗ が純虚数であることを証明せよ.
従って,r は以下の形で表せる.
r = ±i|r|eiδ ,
(87)
ここで,δ は (8.71) 式中のものと同じである.
図 4: 関数 cos(Ka + δ)/|t| の形.|t(K)| は常に 1 より小さいので,この
関数の絶対値は,Ka + δ(K) = nπ の解の近傍で,絶対値が1を越えて
しまう.(8.76) 式はこの関数の絶対値が 1 より小さいときのみ,実数の k
に対して満足される.その結果,K (従ってエネルギー ε = K 2 /2m)と
して許される領域(影をつけていない部分)と許されない領域(影をつ
けた部分)とが存在することになる.|t| が1に非常に近い場合(すなわ
ちポテンシャルが弱い場合)は,禁止帯の幅は非常に狭くなるが,|t| が
非常に小さい場合(すなわちポテンシャルが強い場合)は,許容帯の幅
が非常に狭くなる.
(e) (8.70) 式,(8.72) 式,(8.75) 式の帰結として,ブロッホ電子のエネル
ギーと波数ベクトルは以下のように関連付けられることを示せ.
cos(Ka + δ)
= cos ka,
|t|
ε=
ℏ2 K 2
.
2m
(88)
|t| は常に1より小さく,大きな K に対しては1に近づくので(すなわち,
入射粒子のエネルギーが増加すると障壁の効果はますます有効でなくな
16
るので),(8.76) 式の左辺を K に対してプロットすると図 8.6 に示された
ような曲線になる.ある与えられた k に対して,K の許される値(従っ
て,許されるエネルギーの値 ε(k) = ℏ2 K 2 /2m)は,図 8.6 の曲線と,高
さ cos(ka) の水平な直線との交わる部分で与えられる.
Ka + δ = nπ
(89)
を満たす K の値の近傍の K に対しては,| cos(Ka + δ)|/|t| >1 が成り立
ち,従って,いかなる k に対しても,K の値としては許されない.もし,
δ が K の有界な関数であれば(通常はそうであるが),おのおのの k の値
に対して,無数に多くの,禁止されたエネルギーの領域と,無数に多く
の,許されるエネルギーの値が存在することになる.
(f) 障壁が非常に弱いとしよう.
(従って,|t| ∼ 1, |r| ∼ 0, δ ∼ 0). その場
合,エネルギーギャップは非常に狭く,K = nπ/a を含むギャップの幅は,
εgap ∼ 2πn
ℏ2
|r|.
ma2
(90)
となることを示せ.
(g) 障壁が非常に強いとしよう.
(従って,|t| ∼ 0, |r| ∼ 1). その場合,許
容帯の幅は非常に狭く,その幅は,
εmax − εmin = O(|t|).
(91)
となることを示せ.
(h) 建設的な例として,しばしば,v(x) = gδ(x) を考える. ここで δ(x)
はディラックのデルタ関数である.
(これは,クローニッヒ・ペニーのモ
デルの特別な場合である.
)この場合,以下の式が成り立つことを示せ.
cot δ = −
ℏ2 K
,
mg
|t| = cos δ.
(92)
このモデルは一次元周期ポテンシャルに対してよく出てくる教科書的な
例題である.けれども,この問題中で確立してきた描像のほとんどが,か
なりのところまで,|t| や δ が K にどのように依存するかという詳細には
依存しないのである.
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Diatomic chain∗
Consider the normal modes of a linear chain in which the force constants
between nearest-neighbor atoms are alternatively C and 10C. Let the
masses be equal, and let the nearest-neighbor separation be a/2. Find
ω(K) at K =0 and K = π/a. Sketch in the dispersion relation by eye.
This problem simulates a crystal of diatomic molecules such as H2 .
17
18
Soft phonon modes∗
Consider a line of ions of equal mass but alternating in charge, with
ep = e(−1)p as the charge on the pth ion, The interatomic potential
is the sum of two contributions: (1) a short-range interaction of force
constant C1R = γ that acts between nearest neighbors only, and (2) a
coulomb interaction between all ions.
(a) Show that the contribution of the coulomb interaction to the atomic
force constants is CpC = 2(−1)p e2 /p3 a3 , where a is the equilibrium nearestneighbor distance.
∑
(b) From the equation, ω 2 = (2/M ) p>0 Cp (1 − cos pKa), show that the
dispersion relation may be written as
ω
2
/ω02
∞
∑
1
− sin Ka + σ
(−1)p (1 − cos pKa)p−3 ,
2
p=1
2
(93)
where ω02 ≡ 4γ/M and σ = e2 /γa3 .
(c) Show that ω 2 is negative (unstable mode) at the zone boundary
Ka = π if σ >0.475 or 4/7ζ(3), where ζ is a Riemann zeta function.
Show further that the speed of sound at small Ka is imarinary if σ >
(2 ln 2)−1 =0.721. Thus, ω 2 goes to zero and the lattice is unstable for
some value of Ka in the interval (0, π) if 0.475< σ <0.721. Notice that
the phonon spectrum is not that of a diatomic lattice because the interaction of any ion with its neighbors is the same as that of any other
ion.
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Heat capacity of layer lattice∗
(a) Consider a dielectric crystal made up of layers of atoms, with rigid
coupling between layers so that the motion of the atoms is restricted to
the plane of the layer. Show that the phonon heat capacity in the Debye
approximation in the low temperature limit is proportional to T 2 .
(b) Suppose instead, as in many layer structures, that adjacent layers
are very weakly bound to each other. What form would you expect the
phonon heat capacity to approach at extreamely low temperatures?
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